2026年3月22日。
読売新聞の朝刊に載った一つの記事が、X(旧Twitter)を火の海にしました。
「小学校で英語を教科化したにもかかわらず、
中学校段階の英語の力が低下した」
読売新聞編集委員室の公式ポストに対して、英語教師、保護者、予備校講師、元受験生……あらゆる立場の人々が一斉に反応。「そりゃそうだろ」「文科省の責任だ」「いや、コロナのせいでは?」と、議論は数万ポストに膨れ上がりました。
この記事では、何が起きているのか、なぜこうなったのか、そして私たちはどうすればいいのかを、データ・現場の声・SNSの反応を交えて徹底的に解説します。
まず、数字を見てください。
文部科学省が実施する「経年変化分析調査」の結果です。
| 教科(中3) | 2021年度 | 2024年度 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 国語 | 511.7 | 499.0 | ▼12.7 |
| 数学 | 511.0 | 503.0 | ▼8.0 |
| 英語 | 501.1 | 478.2 | ▼22.9 |
全教科が下がっていますが、英語だけが22.9ポイントという突出した下げ幅です。国語の約1.8倍、数学の約2.9倍。
さらに、「書く」問題の正答率が激しく低下しています。
特に「書く」の壊滅ぶりが目を引きます。
😱 衝撃の具体例
「一人称単数過去進行形の肯定文を正確に書く(例:私は〜していた)」
正答率:2021年 27.2% → 2024年 19.2%(8ポイント減)
「基本的な文法(現在進行形)を理解して応答する」
正答率:2021年 41.7% → 2024年 30.8%(10.9ポイント減)
無解答率:2021年 15.1% → 2024年 21.3%(6.2ポイント上昇)
つまり、「そもそも解こうとすらしない生徒」が増えているということです。
2020年から小学5・6年生で英語が正式に「教科」になりました。
しかし実態はどうか。
💡小学校英語の現実
・フレーズは覚えるが文法は教えない
・単語は音読・リスニングできるが書けない
・英語の授業の約56%を学級担任が担当
・英検準1級以上を持つ小学校教員はわずか1.5%
Xでもこんな声が。
これが核心です。小学校では「音で遊んだだけ」なのに、中学に入ると「小学校で習った単語は既習扱い」として教科書に載っている。書けるわけがありません。
学習指導要領の改訂で、中学校で学ぶ単語数が大幅に増加しました。
| 段階 | 旧課程 | 現行課程 |
|---|---|---|
| 小学校 | 指定なし | 600〜700語 |
| 中学校 | 1,200語 | 1,600〜1,800語 |
| 高校 | 1,800語(計3,000語) | 1,800〜2,500語(計4,000〜5,000語) |
中学だけで400〜600語も増え、しかも授業時間は旧課程と同じ週4時間のまま。さらに「授業は基本的に英語で行う」方針まで加わりました。
現行の指導要領では「コミュニケーション重視」が掲げられ、ペアワークや会話活動の時間が大幅に増えました。
一見良さそうに聞こえますが、問題は「文法と語彙の反復練習」が削られたこと。
小学校に英語を導入するために、国語や算数の授業時間が削られました。その結果、英語だけでなく国語と算数(数学)の学力も下がっています。
この「三教科同時低下」は、英語教育の問題だけでなく教育課程全体の設計ミスを示唆しています。
文科省の保護者調査によると、中3の平日のスマホ・ゲーム利用は合計3時間44分(3年前より40分以上増加)。一方、学習時間は約10分減少しています。
もちろんスマホだけが原因ではありませんが、「学ぶ時間が減り、画面に向かう時間が増えた」ことは無視できない要因です。
実はこの問題、「全員が下がった」のではありません。
英語が得意な層はむしろ伸びているのです。
英検3級相当以上の中3の割合は2016年の約36%から2024年には約50%に増加。しかし同時に、最下層の生徒が増え、「書くこと」の問題で0点の生徒が約5割という衝撃的なデータも。
📊 つまりこういうこと:
🔝 上位層:塾や家庭学習で先取り → 英検2級・準1級を小中で取得
📉 下位層:学校の授業についていけない → 中1で脱落 → 英語放棄
→ 「平均」が下がっているのは、下位層が大きく膨らんでいるから
| 🏛️ 文科省の主張 | 🔥 現場・SNSの反論 |
|---|---|
| 「コロナ禍の臨時休校やスマホの長時間利用が影響した可能性」 | 「コロナは全教科に影響するはず。英語だけ突出して下がっている理由の説明になっていない」 |
| 「英検3級相当以上の生徒の割合は年々増加し、50%を達成」 | 「その調査自体のデータの取り方が怪しい。教員の『見なし判断』を含んでおり、客観的な検証になっていない」 |
| 「現行の学習指導要領の方向性は妥当」 | 「授業時間を増やさず単語だけ1.5倍にして、教科書が急激に難化。ついていけない生徒が大量発生している」 |
SNS上の議論と専門家の意見を総合すると、大きく3つの方向性が浮かび上がります。
まず母語(日本語)をしっかり固める
「思考力は母語で構築するのが効率がいい」という意見が多数。国語の授業時間を削って英語に充てた結果、国語力も低下している現状は本末転倒。
文法と語彙の反復を復活させる
「会話重視」は理想的だが、それは基礎があってこそ。文法・単語の泥臭い反復なしに「楽しい会話」は成立しない。スポーツでいえば基礎練習なしに試合をやらせるようなもの。
単語数・学習内容を現実的な量に戻す
授業時間を増やさないなら、詰め込む内容を減らすべき。「目標ありき」で現場に無理を押し付ける構造そのものを変える必要がある。
💡
次期学習指導要領の改訂スケジュール
小学校は2030年、中学校は2031年、高校は2032年に次期学習指導要領が実施予定。読売新聞の記事によれば、文科省も「読み書きへの移行段階の指導を明確化」「単語の重要度を整理し、教科書で扱う語数の見直し」の方向性を示しています。今回の「失敗」がどこまで反映されるかが注目です。
制度が変わるのを待っていられない人へ。
今日からできることをまとめました。
この問題の構造を一言でまとめると——
「会話重視」の理念は間違っていない。
しかし、基礎(文法・語彙・書き取り)を削って会話に時間を回したのが致命的だった。
しかも授業時間は増やさず、単語数だけ1.5倍に増やし、小学校で「遊んだだけ」の内容を「既習」扱いにした。
結果、できる子はより伸び、できない子はより落ちる「二極化」が加速。
これは個人の努力不足ではなく、制度設計の問題です。
英語教育TOEIC満点講師のMorite2(もりてつ)氏が放ったこの一言が、この騒動の本質をズバリ突いています。
「勉強する単語を増やしたり、
学ぶ事項を前倒ししたら
英語嫌いを増やすに決まってるじゃない!」
——Morite2(もりてつ)@morite2toeic
制度が変わるのを待つだけでは、子どもたちの英語力は守れません。
保護者も、教師も、学習者本人も——「基礎を固める」という原則に立ち返ることが、今もっとも必要なことです。
