電子レンジで温めた水が突然ふき出す「突沸」は、きれいなコップほど起きやすい
ウラ取りライフハックNo.076

電子レンジで温めた水が突然ふき出す「突沸」は、きれいなコップほど起きやすい

温める前に、木のマドラーを入れておく。

ホントTRUE

この判定の対象「電子レンジで温めた水は、突然ふき出すことがある」

うなり度 読む時間7分 出典6件 確認した事実24件
もくじ
  1. 国の機関には3年あまりで突沸の事故が16件届き、7件が電子レンジでの事故だった
  2. 泡のもとになる傷やごみがないと、水は100℃を超えても沸かない
  3. 洗剤できれいに洗ったコップほど、突沸が起きやすい
  4. 突沸を防ぐには、温めすぎず、粉を先に入れ、すぐに取り出さない
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

ガラスのコップを、洗剤とスポンジでぴかぴかに洗います。そこに水を約180g入れて、700Wの電子レンジで2分20秒温めます。取り出して、インスタントコーヒーの粉をスプーン1杯入れました。すると、約20gの水が飛び散りました。

これは、NITE(製品評価技術基盤機構)が2009年に行った再現実験です。NITEは、製品の事故を調べる国の機関です。同じ条件で2分41秒温めたときは、取り出す前に、電子レンジの中で水がはじけました。飛び散った水は、約70gでした。やけどのおそれがあるので、家でまねをしないでください。

温めた水が急にふき出す現象を、突沸(とっぷつ)といいます。「電子レンジで温めた水は危ない」という話は、ネットのうわさではありません。実際に事故が起きています。

この記事では、まず、NITEに届いた突沸の事故を紹介します。次に、水が100℃を超えても沸かないことがある理由を説明します。最後に、突沸を防ぐ方法と、どれくらいの湯気が一気に出るのかの計算を紹介します。

01国の機関には3年あまりで突沸の事故が16件届き、7件が電子レンジでの事故だった

NITEによると、2006年4月から2009年8月までに、突沸による事故が16件、NITEに届きました。そのうち7件が電子レンジでの事故で、4件は重傷でした。NITEは、届いた件数は多くないものの、実際にはもっと多く起きている可能性がある、と書いています。

事故の例を見てみましょう。2008年には、電子レンジで温めたコーヒーが、飲もうとしたときにカップからふき上がりました。飲もうとした人は、顔に重いやけどを負いました。NITEは、原因を次のように判断しています。飲み物用ではなく、食べ物用の「あたためボタン」で温めたため、温めすぎになった、というものです。

別の例では、陶磁器のカップでインスタントコーヒーを1分温め、30分ほど電子レンジの中に置いていました。それを40秒ほど温め直し、カップをのぞきこんだ瞬間に、コーヒーがふき上がって顔に当たりました。この人は、全治3か月のやけどと、左目の角膜(黒目の表面の膜)のけがを負いました。

アメリカの食品医薬品局(FDA)も、同じような報告を受けたと注意をよびかけています。カップの湯がふき出して、手や顔に重いやけどを負ったという報告です。

02泡のもとになる傷やごみがないと、水は100℃を超えても沸かない

水は100℃で沸く、と学校で習います。でも、それには条件があります。沸騰とは、水の中に水蒸気の泡がどんどんできることです。ところが、何もないところに最初の泡を生み出すのは、とても難しいのです。

普通は、容器の細かい傷や、水にまじった小さなごみが泡のもと(たね)になります。傷のすき間に残った空気から、泡が育っていくのです。

泡のたねがないと、水は100℃を超えても泡を出せず、静かなままでいられます。この状態を過加熱(かかねつ)といいます。見た目は落ち着いていますが、とても不安定な状態です。

過加熱の水に、粉を入れる、コップを持ち上げる、といった小さなきっかけが加わります。すると、水にたまっていた熱で、一気に水蒸気ができます。そして、水がふき出します。これが突沸です。

泡のたね(細かい傷や粒)があると水は100℃で普通に沸く。たねがないと、熱をためこんだまま静かにしている
泡のたね(細かい傷や粒)があると水は100℃で普通に沸く。たねがないと、熱をためこんだまま静かにしている

03洗剤できれいに洗ったコップほど、突沸が起きやすい

NITEは、器の洗い方にも触れています。ガラスや磁器のように、表面がなめらかな器があります。それを洗剤とスポンジで完全に洗うと、泡のたねになる細かい汚れが取りのぞかれます。そのため、過加熱になりやすくなるのです。はじめに紹介した実験で、わざわざコップをぴかぴかに洗ったのは、このためです。

電子レンジのしくみも、過加熱を起こしやすくしています。オーストラリアのニューサウスウェールズ大学に、ジョー・ウルフ(Joe Wolfe)という物理学者がいます。ウルフは、やかんと比べて説明しています。

やかんでは、一番熱い水は、底のヒーターのすぐそばにあります。そこで泡が生まれ、上へのぼっていきます。一方、電子レンジでは、水がマイクロ波(電子レンジが出す電波)をよく吸います。そのため、容器より水のほうが熱くなりがちです。一番熱いのが、泡のたねになる容器の壁ではないので、泡ができにくいのです。

04突沸を防ぐには、温めすぎず、粉を先に入れ、すぐに取り出さない

突沸を防ぐ方法は、NITEやFDAが具体的に示しています。

  • 温めすぎない:設定時間はひかえめにする。温め直しのときは特に注意する(NITE)。飲み物は飲み物用のボタンで温める(NITEの事故例から)。
  • 泡のたねを先に入れる:インスタントコーヒーや砂糖は、温める「前」に入れる(FDA)。粉のコーヒーは、温める前にかき混ぜておく(NITE)。
  • 口の広いカップを使う:口の小さい容器は、突沸のときに割れるおそれがある(NITE)。
  • すぐに取り出さない:温めすぎたときは、2分以上待ってから取り出す(NITE)。

ウルフは、温める前に、木のマドラーのような金属でない物を入れておく方法もすすめています。表面がざらざらした物が、泡のたねになるからです。どの方法でも、のぞきこまず、顔を近づけないことが大切です。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

水が100℃で沸くのは、水と水蒸気が触れあう面があるときだけ

水の沸点が100℃(1気圧のとき)というのは、正確には「水と水蒸気が触れあう面があるとき」の話です。ウルフはこう説明しています。水面や、すでにある泡の表面では、水は100℃で水蒸気に変わります。でも、なめらかな容器の中の純粋な水では、最初の泡を一つ作るのがとても難しいのです。すでにある泡が大きくなるより、ずっと起こりにくいといいます。

この「最初の泡を一つ作ること」を、専門用語で核生成(かくせいせい)といいます。泡のたねになる傷や粒は、最初の泡ができるのを助ける足場です。同じしくみで、水は0℃より冷えても凍らないことがあります。これを過冷却といいます。過冷却は、氷のもとになるたねがないために起こります。

コップ1杯の水が100℃を1℃超えただけで、500mLのペットボトル1本分以上の湯気が出る

過加熱の水に最初の泡ができると、水は100℃まで一気に下がろうとします。そのとき、100℃を超えていたぶんの熱が、水を水蒸気に変えます。どれくらいの量になるか、計算してみましょう。使うのは、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が出している水のデータです。

水1gの温度を1℃上げる熱は、約4.2ジュール(ジュールは熱の量の単位)です。100℃の水1gを水蒸気にするには、約2257ジュールが必要です。そして、100℃・1気圧の水蒸気1gの体積は、約1.67リットルです。

コップ1杯、180gの水が、100℃を1℃だけ超えていたとします。100℃を超えたぶんの熱は、180×4.2で約760ジュールです。この熱で蒸発する水は、約0.34gです。その湯気の体積は、約0.56リットルになります。500mLのペットボトル1本分以上の湯気が、水の中で一瞬で生まれる計算です。100℃を超えた温度が大きければ、湯気もそれだけ増えます。ウルフも、水面ではなく水の中で大量の湯気が一度にできるから水が飛び出す、と説明しています。

化学の実験室でも、電子レンジで温めた液体が沸点より熱くなる

過加熱そのものは、電子レンジでなくても起こります。2015年の論文は、電子レンジは過加熱を「起こしやすくする」と書いています。この研究では、アルコール類を、かき混ぜずに電子レンジで温めました。すると、普通の沸点より14〜28℃も高い温度になりました。

この論文は、もう一つの現象も区別しています。沸騰が始まったあとも電子レンジで温め続けると、液体が沸点より高いまま、荒々しく沸き続けることがあるのです。著者たちはこれを「スーパーボイリング」と呼び、電子レンジに特有の現象だとしています。

実験室では、過加熱を防ぐために、沸騰石(ふっとうせき)を入れたり、かき混ぜたりします。沸騰石は、小さなすき間がたくさんある粒で、泡のたねになります。論文も、すばやくかき混ぜることと沸騰石で、過加熱が抑えられると報告しています。台所で「先に砂糖や粉を入れる」「木のマドラーを入れる」のは、この沸騰石と同じ役目です。

静かな水でも、沸点より熱いことがある

普通、私たちは、ぐつぐつ泡が出ていれば「熱い」、静かなら「まだ大丈夫」と判断します。過加熱は、この見分け方が通用しない状態です。FDAも、見た目に沸騰のしるしがないまま、沸点より熱くなると説明しています。見た目のようすと、本当の温度がずれることがあります。突沸は、その分かりやすい例です。

05まとめ

電子レンジで温めた水が突然ふき出す「突沸」は、本当に起きる事故でした。水は、泡のたねになる傷やごみがないと、100℃を超えても静かなまま熱をためこみます。そこに粉や振動が加わると、ためこんだ熱で一気に湯気ができて、水がふき出すのです。

そして、洗剤できれいに洗ったなめらかなコップほど、突沸は起きやすくなります。飲み物を温めるときは、温めすぎないようにしましょう。粉や砂糖は、温める前に入れます。温めすぎたら、2分以上待ってから取り出しましょう。

人に話すなら、こう言おう

電子レンジで温めた水って、100℃を超えても泡が出ないことがあるんだって。そこにコーヒーの粉を入れると一気にふき出す。きれいに洗ったコップのほうが起きやすいらしいよ。
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英語で読む

The Quiet Water That Jumps

CEFR A2229 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In 2009, a safety group in Japan did a test with a very clean glass.2009年、日本のある安全の機関が、とてもきれいなガラスのコップで実験をしました。 They put about 180 grams of water in it and heated it in a microwave oven.コップに水を約180グラム入れ、電子レンジで温めました。 Then they took the glass out.そして、コップを取り出しました。 Then they added a spoon of instant coffee, and hot water jumped out of the glass.そこへインスタントコーヒーをスプーン1杯入れると、熱い水がコップから飛び出しました。

This is called superheating.これは過加熱と呼ばれます。 Water usually boils at 100 degrees, but it needs a small place to start a bubble.水はふつう100度で沸きますが、泡が生まれるための小さな場所が必要です。 Tiny scratches or bits of dirt in a cup can do this job.カップの細かい傷や小さな汚れが、この役目をします。 Without them, water can get hotter than 100 degrees and still stay quiet.それがないと、水は100度より熱くなっても静かなままでいられます。

A microwave oven makes this easier.電子レンジは、これを起こりやすくします。 In an electric kettle, the hottest water is next to the heater, so bubbles start there.電気ケトルでは、いちばん熱い水はヒーターのすぐそばにあるので、そこで泡が生まれます。 In a microwave, the water often gets hotter than the cup.電子レンジでは、水のほうがカップより熱くなることがよくあります。 A smooth, clean cup has almost no places for bubbles to begin.なめらかできれいなカップには、泡が生まれる場所がほとんどありません。

When something moves the water, a lot of steam forms at once.何かが水を動かすと、一度にたくさんの湯気ができます。 The water can explode out of the cup and burn your hands or face.水がカップから噴き出して、手や顔にやけどをすることがあります。 From 2006 to 2009, the group got reports of 7 accidents like this with microwave ovens.2006年から2009年までに、その機関には電子レンジでのこうした事故が7件報告されました。

So do not heat drinks for too long.だから、飲み物を長く温めすぎないでください。 Put in sugar or coffee before you heat the water, not after.砂糖やコーヒーは、温めたあとではなく、温める前に入れましょう。 If you heated it too much, wait at least 2 minutes before you take it out.温めすぎてしまったら、少なくとも2分待ってから取り出しましょう。 Quiet water is not always safe water.静かな水が、いつも安全な水とはかぎらないのです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How many microwave accidents did the group get reports of from 2006 to 2009?

    2006年から2009年までに、その機関に報告された電子レンジの事故は何件ですか。

  3. Q3Why do bubbles start next to the heater in an electric kettle?

    電気ケトルでは、なぜヒーターのそばで泡が生まれるのですか。

  4. Q4In paragraph 2, the word "scratches" is closest in meaning to ...

    第2段落の "scratches" に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話の内容と合っているのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • microwave oven名詞
    電子レンジ

    I warmed the soup in the microwave oven.

    電子レンジでスープを温めた。

    💡 会話では the microwave だけでよい。microwave は「マイクロ波」のこと。

  • heat動詞・名詞
    温める/熱

    Heat the milk for one minute.

    牛乳を1分温めてください。

    💡 heat up で「温め直す」。heater(ヒーター)も同じ仲間の語。

  • boil動詞
    沸く、沸かす

    The water is boiling now.

    お湯が今、沸いている。

    💡 boiling point は「沸点」。boiled egg は「ゆで卵」。

  • bubble名詞
    泡

    The children made soap bubbles.

    子どもたちはシャボン玉を作った。

    💡 数えられる名詞。小さな泡がたくさんなら bubbles。

  • steam名詞
    湯気、水蒸気

    Steam came out of the hot cup.

    熱いカップから湯気が出た。

    💡 steam engine は「蒸気機関」。

  • scratch名詞・動詞
    ひっかき傷/ひっかく

    There is a scratch on my phone.

    私のスマホに傷がある。

    💡 from scratch は「ゼロから、最初から」という決まった言い方。

  • explode動詞
    爆発する、はじける

    The balloon exploded with a loud bang.

    風船が大きな音をたててはじけた。

    💡 名詞は explosion。

  • accident名詞
    事故

    Nobody was hurt in the accident.

    その事故でけがをした人はいなかった。

    💡 by accident は「偶然に」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 24件)。

  1. 調理中の突然沸騰(突沸)による事故の防止について(注意喚起)(製品評価技術基盤機構 NITE、2009)nite.go.jp
  2. 製品安全セミナー 製品の安全な使い方(製品評価技術基盤機構 NITE、2012)nite.go.jp
  3. Microwave Ovens(U.S. Food and Drug Administration)fda.gov
  4. Guthrie, J., Wolfe, J. (2004) Ask the Experts(superheating), The Science Teacher 71(3)(ニューサウスウェールズ大学 物理学科)phys.unsw.edu.au
  5. Ferrari, A. ほか (2015) Microwave-Assisted Superheating and/or Microwave-Specific Superboiling of Liquids…, Molecules 20doi.org
  6. Thermophysical Properties of Fluid Systems(NIST Chemistry WebBook)webbook.nist.gov

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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