原田英語のスラング・新語辞典

見出しの気になる言葉スラング考現学 第32回

今年の言葉は「maxxing」――英語の見出しが一斉に「全力」モードに

 原田英語がお届けします

火曜日のコーナー「見出しの気になる言葉」…英字ニュースや新聞の見出しに出てきた、気になるスラング・新語を深掘り。記者はなぜその言葉を選んだのか。元の見出しへのリンクつき。 コーナー一覧

火曜日は「見出しの気になる言葉」です。アメリカの辞書サイト Dictionary.com が、2026年の Word of the Year(今年の言葉)に「maxxing」を選びました。発表の日、英語のニュースサイトには「全力」「残念なお知らせ」など、記者の遊び心がにじむ見出しがずらりと並びました。

1月曜の朝、見出しが「マックス」だらけに

10月26日(アメリカ時間の月曜日)、Dictionary.com が2026年の今年の言葉を発表しました。選ばれたのは「maxxing」。テレビの朝の情報番組から通信社、テック系のニュースサイトまで、その日のうちに一斉に記事が出ました。

Dictionary.com は、検索の回数、SNSでの広がり、ニュースでの使われ方、その年の文化をどれだけ映しているかを見て選んでいます。辞書を運営する会社の辞書編集の責任者は、取材に「とにかくどこにでもあった」という趣旨のことを答えています。

2maxxing は「とことんやる」の万能パーツ

maxxing は maximizing(最大にする)の短縮で、何かを限界までやる、できるかぎり最適化することを言います。単独で「I'm maxxing.」とも言えますが、ふつうは別の語のうしろにくっつけて使います。

gymmaxxing(筋トレを極める)、sleepmaxxing(睡眠を整えまくる)、cozymaxxing(くつろぎを極める)。AIのツールをわざと使い倒す tokenmaxxing という言い方まで紹介されました。名詞にも動詞にも形容詞っぽくも使える、組み立てブロックのような語です。

出発点は、見た目をとことん磨く looksmaxxing です。男性向けのネット掲示板で使われていた言葉が、2020年代のはじめにTikTokの男性クリエイターを通じて広まりました。見た目の話だった語が、睡眠や筋トレ、勉強にまで広がったことが、今年の言葉に選ばれた大きな理由です。

3見出しの書き方で、記者の気分がわかる

並べた見出しを読みくらべると、同じニュースでも温度がかなり違います。USA TODAY 系の見出しは「goes all out(全力を出す)」。maxxing の意味そのものにかけた言葉遊びで、見出しだけで中身が伝わるようにしています。

Gizmodo は「We Regret to Inform You(残念ながらお知らせします)」。不合格通知や訃報の決まり文句をわざと使い、「またネットスラングが選ばれたか」というため息を笑いに変えています。ほかにも「depressing(気がめいる)」と書いた見出しや、「全部を最適化しなきゃいけない時代」という空気を読み取る記事もありました。

見出しの記者たちが楽しそうなのは、maxxing が説明しやすく、しかも自分でも使ってみたくなる語だからでしょう。どの記事も、gymmaxxing や sleepmaxxing のような例を並べるだけで、読者に意味が伝わるように書かれていました。

4最後まで残ったほかの候補

最終候補には、ほかに4つの語が残っていました。若い世代が「ちょっとイケてない年上の人」をからかう unc(uncle の短縮)、物価高で暮らせるかどうかを言う affordability、AIを支えるデータセンターを指す data center、そしてクリストファー・ノーラン監督の映画で注目された odyssey です。

スラングが2つ、経済とテクノロジーの言葉が2つ、映画から1つ。2026年のアメリカが何を検索していたかが、5つの語からざっくり見えてきます。ちなみに去年、2025年の今年の言葉は、意味のない合言葉として小中学生に大流行した 67 でした。

5日本語なら「〜活」と「ガチる」の間くらい

日本語で近いのは「朝活」「推し活」の「〜活」です。何かにくっつけて「それに力を入れている」と言える点は同じですが、「〜活」はわりと前向きで、続けること自体を楽しむ感じがあります。

maxxing のほうは「限界まで」「最適化」の気配が強く、少しやりすぎ感をからかうニュアンスもあります。日本語にするなら「〜を極める」「〜をガチる」、人を指すなら「ガチ勢」が近いところです。友達が週末ずっと寝ていたら「sleepmaxxing してたの?」と聞けば、ちょうどいい冗談になります。

毎年この時期から年末にかけて、英語圏の辞書が次々と今年の言葉を発表します。どの辞書がどんな語を選ぶのか、見出しの言葉遊びと一緒にまたお届けします。

このコラムに出てきた言葉

曜日ごとのコーナー

原田英語が毎日1本、曜日ごとにちがうコーナーでお届けします。超特大のバズがあった日は、コーナーを差し替えて速報します。

月
ヒップホップ・洋楽スラング解剖

最新のヒップホップ・R&B・ポップの曲名や、話題の曲から広まった超絶スラングを解剖。意味・由来・なぜバズったか、知って得するうんちくまで。

火
見出しの気になる言葉

英字ニュースや新聞の見出しに出てきた、気になるスラング・新語を深掘り。記者はなぜその言葉を選んだのか。元の見出しへのリンクつき。

水
今週の旬JK語今日

いま中高生・Z世代でメチャクチャ旬な日本語を1つ。どこから来て、どう使うのか。そして「英語で言うと?」

木
バズミーム解説

いまSNSでバズっているミームやフレーズの元ネタ・広まり方・使いどころを、超絶楽しく解説。

金
ことばの仕組み・日英くらべ

rizz はなぜ charisma の真ん中? the ick と蛙化現象は同じ? スラングが生まれる仕組みを、日本語とくらべて。

土
みんなの「これどういう意味?」

読者からのリクエストや、国内・海外の質問サイトでよく聞かれている英語スラングを、なぜ迷うのかから解決。

日
今週のスラングまとめ

今週辞書に加わった新語から、特におもしろい語をピックアップして小ネタつきでおさらい。

バックナンバー