みんなの「これどういう意味?」スラング考現学 第22回
「強く投げる、Z世代語で」の答えは4文字――クロスワードに出た yeet
原田英語がお届けします
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「Throw hard, in Gen Z slang(強く投げる、Z世代のスラングで)」。今週、アメリカで「throw hard」が意味を調べる言葉として急に検索されました。きっかけは新聞の小さなクロスワード。土曜日の「これどういう意味?」は、その答えの4文字yeetを取り上げます。
1検索候補に出てきた「throw hard」
原田英語では、アメリカやイギリスの Google で「what does ◯◯ mean」「slang meaning of ◯◯」と一緒に検索されている言葉を毎日集めています。今週、そこにふつうの英語の throw hard(強く投げる)が入ってきました。スラングでも何でもない2語が、なぜ意味を調べられているのでしょうか。
答えはクロスワードでした。アメリカの大手新聞が毎日出している小さなクロスワードの10月15日の回に、「Throw hard, in Gen Z slang」というヒントが出たのです。マスは4つ。解く人たちが「Z世代の言葉なんて知らない」と検索に走り、検索候補に跡が残りました。
正解は YEET です。クロスワードの答えになるくらい、アメリカでは大人にも知られた言葉になっています。それでも年代によっては見当もつかない、ちょうど境目にある言葉だということも、この検索の増え方からわかります。
2もとはダンスの名前だった
yeet の出発点は2014年のダンスです。腕を勢いよく振り下ろす振りつけが「yeet」と呼ばれ、短い動画アプリの Vine で、少年がこのダンスを踊る動画が大きく広まりました。この時点ではまだ「投げる」という意味はありません。
そのあと Vine では、物を思いきり放り投げながら「Yeet!」と叫ぶ動画が出てきます。ここから yeet は、投げるときのかけ声として使われるようになりました。
流行はいったん落ち着きますが、2018年ごろにミームとして息を吹き返します。かけ声だった yeet は動詞にもなり、yeet the phone(スマホをぶん投げる)のように目的語をとるようになりました。ダンスの名前から、かけ声、そして動詞へ。数年のうちに品詞まで変わったことになります。
3辞書に載った「ぶん投げる」
2022年9月、アメリカの辞書 Merriam-Webster が新しく370の語を加えたとき、その中に yeet が入りました。スラングの印がついて、喜びや勢いを表す間投詞と、「勢いよく投げる」という動詞の2つの意味で載っています。
動詞として載ったので、過去形もあります。ふつうは yeeted です。I yeeted my alarm clock.(目覚まし時計をぶん投げた)のように使います。冗談で、throw と threw のような不規則変化をまねて yote と言う人もいます。
大事なのは「投げ方」のニュアンスです。ただ強く投げるのではなく、行き先や物の扱いをまったく気にしない、ヤケ気味の投げ方です。日本語なら「ぶん投げる」「放り投げる」が近く、「パスする」や「投球する」とは違います。
4かけ声としての yeet、今どきの使い方
いまの yeet は、物を投げる場面だけでは使われません。テストが終わった、夏休みが始まった、という「やったー」の瞬間に YEET! と叫ぶ使い方も残っています。日本語の「ヒャッホー」に近い感覚です。
似た立ち位置のかけ声に、驚いたときのsheeshや、テンションが上がったときのlet's goooがあります。どれも意味より「勢い」を伝える言葉で、文の頭や終わりにぽんと置けるのが特徴です。
rizzやbussinのような新しめのスラングにくらべると、yeet は2010年代後半のネットの空気をまとった、少し前の世代の言葉です。それでもクロスワードの答えになるほど、英語の中に定着しました。
ふだんの英語の throw hard が検索候補に出てきたのは、クロスワードのヒントにスラングが隠れていたからでした。わからない言葉に出会って検索した人の数が、そのまま言葉の広まり具合を教えてくれます。来週の土曜日も、みんなの「これどういう意味?」に答えます。
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