見出しの気になる言葉スラング考現学 第11回
衣装を着て遊ぶゲームの名前「LARP」が、「なりきり野郎」をからかう言葉になるまで
原田英語がお届けします
火曜日のコーナー「見出しの気になる言葉」…英字ニュースや新聞の見出しに出てきた、気になるスラング・新語を深掘り。記者はなぜその言葉を選んだのか。元の見出しへのリンクつき。 コーナー一覧
火曜日は「見出しの気になる言葉」です。9月29日、アメリカの新聞が「ゲームの用語だったLARPが、なぜ“気取り屋”を指す言葉になったのか」という記事を出しました。この夏から秋にかけて、英語圏のニュースの見出しに何度も出てきた4文字です。
1見出しに並んだ4文字
LARP(ラープ)は live-action role-playing の頭文字です。テーブルの上でサイコロを振るのではなく、本当に衣装を着て、剣や杖の小道具を持ち、自分の体で役を演じるゲームのことを言います。公園や森に集まって、騎士や魔法使いになりきって一日を過ごす遊びです。
ところが今年の見出しに出てくる LARP は、この遊びの話ではありません。8月には「larper はネットの新しいお気に入りの悪口」、9月には「IT業界の誰もが急に LARP の話をしている」という記事が出ました。そして9月29日のアメリカの新聞が、「ゲームの用語が、なぜ気取り屋を指す言葉になったのか」と正面から取り上げました。
いまのlarpは、本当はそうでもないのに、それっぽく演じていることを指します。お金持ちのふり、専門家のふり、不良のふり。SNSで見せている姿と中身がずれている人を、「それ larping でしょ」とからかうわけです。
2「役を演じる」から「ふりをしている」へ
なぜ遊びの名前が悪口になったのでしょう。LARP のもともとの意味は「現実の世界で、自分ではない役を演じること」です。この「自分ではない役を演じる」という部分だけが切り取られ、「本当の自分ではないものを演じている人」へと意味が広がりました。
ネットでこの使い方が目立ち始めたのは2020年代の初めごろです。そして2026年に入ると、TikTokやXで一気に増えました。3月には、何でもかんでも「それ LARP」と言う人たちをまねして茶化す動画が数百万回再生されるほどで、流行りすぎてパロディになる段階まで来ていました。
使い方は、動詞なら larping as ~(~のふりをしている)、人なら larper です。He's larping as a millionaire. なら「あいつ、大富豪気取りだね」。レンタルの高級車や、借りた服で撮った写真が、からかわれる典型的な例として挙がっています。
3記者がこの語を選ぶ理由
見出しを見比べると、記者が LARP を選んだ理由が見えてきます。似た意味の言葉なら、昔からあるposer(ポーズだけの人、見かけ倒し)や fake があります。それでも LARP が使われるのは、「わざわざ衣装をそろえて演じている」という、手間をかけたなりきりの感じが出せるからです。
9月のIT業界の記事では、実際の仕事より見た目や話題づくりを優先しているように見える起業家が「LARPer」と呼ばれていました。子どものスラングとして始まった語が、大人の仕事の世界の批判にも使われるようになったわけです。
一方で、9月21日付のアメリカの学生新聞は「LARP はもう意味をなくした」という論評を載せました。気に入らない相手なら誰にでも貼れるレッテルになってしまった、という指摘です。流行語が広まりきったときに必ず出てくる声です。
4日本語なら「エアプ」「イキり」のあたり
日本語に置きかえるなら、「〇〇気取り」「なりきり」「イキり」が近いでしょう。知らないのに知っているふりをする意味では、ゲーム用語から来たエアプ(エアプレイ=実際には遊んでいない)がよく似ています。
ゲームの用語が悪口になる流れは、英語にも日本語にもあります。英語のNPCは、ゲームの中の「プレイヤーが操作しないキャラ」から、「自分の頭で考えずに決まった反応しかしない人」をからかう言葉になりました。エアプも LARP も NPC も、ゲームの世界の「本物かどうか」の感覚を、そのまま現実の人に当てはめた言葉です。
なお、本来の LARP を楽しんでいる人たちにとっては、自分たちの趣味の名前が悪口として広まるのは複雑な話です。英語で「趣味の LARP」の話をするときは、悪口の意味と取られないように、live-action role-playing と言い直すと誤解がありません。
見出しで見かけた知らない語の後ろには、たいてい何十年分かの歴史が隠れています。明日の水曜日は「今週の旬JK語」をお届けします。
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