海外の英語授業実践シリーズ

【海外の英語授業実践シリーズ Vol.6】Running Dictation(ランニング・ディクテーション)で 教室が「走る英語教室」に変わる!

📚 海外の英語授業実践シリーズ Vol.6

Running Dictation(ランニング・ディクテーション)で
教室が「走る英語教室」に変わる!

~ 読む→覚える→走る→伝える→書く──身体ごと英語に没入する究極の4技能統合アクティビティ ~

この記事では、British Council・Cambridge English・アメリカ国務省(American English)が公式教材として推薦し、世界中のESL/EFL教室で愛され続けている「Running Dictation(ランニング・ディクテーション)」を、日本の中高英語の先生方向けに超わかりやすく解説します。

✅ 準備は印刷するだけ
✅ 教室が爆発的に盛り上がる
✅ 4技能が1つの活動で全部鍛えられる
✅ 中1〜高3まで難易度調整自在

🏃 Running Dictationとは何か?

Running Dictation(ランニング・ディクテーション)とは、ペアまたは小グループで「走る人(Runner)」と「書く人(Writer)」に分かれ、壁に貼られたテキストを読んで覚え、走って戻ってパートナーに英語で伝え、書き取らせるアクティビティです。

生徒は何度も壁と席を往復しながら、Reading(読む)→ Memory(記憶する)→ Speaking(口頭で伝える)→ Listening(聞き取る)→ Writing(書く)という5つのプロセスを繰り返します。最終的に、最も正確にテキストを再現できたペアが勝ちという、ゲーム性の高い協働学習です。

💡 普通のDictation(書き取り)との違い

普通のDictation → 「先生が読む → 生徒が書く」(受動的)
Running Dictation → 「生徒が読む → 覚える → 走る → 伝える → 書く」(全身で能動的)

先生は読み上げません。生徒同士が情報の送り手と受け手になるため、「聞こえなかった」「もう一回言って」というリアルなコミュニケーションが教室中で自然発生します。

🌍 どこの国で実践されているの?

Running Dictationは、英語教育の世界三大機関とも言えるBritish Council、Cambridge English、アメリカ国務省のAmerican Englishプログラムがすべて公式に推薦している数少ないアクティビティです。

国・地域 実践の特徴
🇬🇧 イギリス British Councilが公式Teaching Resourceとして掲載。Pre-Intermediate以上のあらゆるレベルで推奨
🇺🇸 アメリカ 国務省American Englishプログラムが教師研修用スライドを公開。ESL全レベルで活用
🇮🇩 インドネシア 中高のWriting授業で多数の研究。SMAでのプレテスト74.5→ポストテスト92.7の向上報告
🇰🇷 韓国 英語教育の著名講師Jackie Bolenが20年以上の実践経験からベストアクティビティの1つとして紹介
🇺🇸 アメリカ(移民教育) Colorín Coloradoがバイリンガル・ELL向けの戦略ライブラリに収録。多言語環境での有効性を強調

インドネシアのSMA Negeri 2 Pematang Siantarでの準実験研究では、Running Dictationを導入した実験群のプレテスト平均が74.5点からポストテスト92.7点へ約18ポイント向上し、統制群(63.2→79.4)と比べて有意に高い改善が確認されました。

また、SMAN 1 Nitaでの語彙指導研究では、Running Dictationを3サイクル実施した結果、平均スコアが62.35から87.44へと25ポイント以上向上し、習熟度達成率が22%から100%に跳ね上がりました。

🔧 Running Dictationの具体的な手順(完全版)

📌 STEP 1:テキストを準備して壁に貼る(授業前5分)

教科書の本文やオリジナルのパッセージを、大きめのフォント(20pt以上)で印刷します。同じテキストを3〜4枚用意し、教室の壁や廊下に少し高めの位置に貼ります。

🌟 テキスト例(中2「My Favorite Season」の場合)

My favorite season is autumn. The leaves turn red, orange and yellow. I like walking in the park with my dog. The air is cool and fresh. I always drink hot chocolate after school. My mother makes it with marshmallows. I think autumn is the most beautiful season in Japan.

💡 目安:中1〜中2 → 50〜80語 / 中3〜高1 → 80〜120語 / 高2〜高3 → 120〜180語

🔑 準備のコツ:複数のペアが同じ紙に殺到しないよう、同じテキストを最低3枚壁の異なる場所に貼りましょう。Cambridge Englishは「教室の外の廊下まで使う」ことも推奨しています。
📌 STEP 2:ペア分け&役割説明(2分)

2人1組のペアを作り、Runner(走る人)Writer(書く人)を決めます。

役割 やること 鍛えられるスキル
🏃 Runner 壁のテキストを読む → 覚える → 戻ってパートナーに伝える Reading / Memory / Speaking / Pronunciation
✍️ Writer Runnerの言葉を聞き取る → 書く → 不明点を質問する Listening / Writing / Spelling / Questioning
⚡ 超重要ルール3つ:
① Runnerはささやき声(whisper)でパートナーに伝える(叫ばない!)
② Runnerは絶対に書いてはいけない(口頭のみ)
③ 途中で必ず役割を交代する(半分で「SWITCH!」と声をかける)
📌 STEP 3:Running Dictation スタート!(15〜20分)

「Ready, set, GO!」でスタートします。

🔄 1ラウンドの流れ

👀

① 読む

壁のテキストを読み
できるだけ多く記憶

🧠

② 覚える

一度に3〜5語が限界
何往復もする!

🏃

③ 走る

パートナーの元に
急いで戻る

🗣

④ 伝える

ささやき声で
英語を口頭伝達

✍️

⑤ 書く

Writerが聞き取った
英語を書き取る

🗣 活動中に自然発生する英語コミュニケーション

“Can you say that again?”

“How do you spell ‘marshmallows’?”

“Wait, was it ‘turn’ or ‘turned’?”

“I think the next word is ‘beautiful’.”

“No, it’s ‘fresh’, not ‘flesh’!”

⚡ 超重要ポイント:
これらはすべて教師が指示していない「自発的な英語使用」です。「もう一回言って」「スペルは?」「過去形だった?」というやり取りが、教師の介入なしに教室中で起こります。これがRunning Dictation最大の魅力です!
📌 STEP 4:答え合わせ&フィードバック(10分)

全ペアが完成したら(または制限時間が来たら)、原文をスクリーンに映して答え合わせをします。

📝 Step A:自己チェック

ペアで原文と比較し、間違いに赤ペンでマークを入れる

📊 Step B:エラー分析

スペリング・語順・冠詞・時制など、間違いの種類を分類する

🏆 Step C:優勝ペア発表

最も正確に再現できたペアを表彰。スピードだけでなく正確性を評価

🗣 答え合わせで使わせたいフレーズ

“We wrote ‘turn’ but the correct word was ‘turned’.”

“We missed the article ‘the’ before ‘park’.”

“Our biggest mistake was the spelling of ‘beautiful’.”

“We got 5 out of 7 sentences completely correct.”

“The hardest part was remembering the word order.”

🎯 なぜRunning Dictationが効果的なのか?(5つの理由)

① 4技能+記憶力を同時に鍛える唯一の活動

Reading(壁で読む)→ Speaking(パートナーに伝える)→ Listening(聞き取る)→ Writing(書く)に加え、Memory(記憶保持)まで要求される活動は他にほとんどありません。Ratey(2008)の脳科学研究が示すように、身体運動は脳を学習に最適な状態にします。

② 「意味のある繰り返し」が自動的に発生する

生徒は一度に3〜5語しか覚えられないため、同じテキストを何度も読み、何度も口に出し、何度も聞くことになります。これはSLA(第二言語習得)で言う「meaningful repetition」そのもの。機械的なリピート練習とは比べものにならないほど深い定着が起こります。

③ ゲーム要素で「やらされ感」がゼロになる

「最も正確に速く完成させたペアの勝ち」というルールがあるだけで、生徒のモチベーションは劇的に上がります。Lindt & Miller(2017)の研究でも、身体的な動きを取り入れた授業は生徒のエンゲージメント・モチベーション・集中力を大幅に高めることが実証されています。

④ 発音の正確性が否応なく鍛えられる

Runnerが不正確な発音で伝えると、Writerが正しく書き取れません。「通じないと負ける」という構造が、発音への意識を自然に高めます。”fresh” と “flesh” の違い、”turn” と “tan” の違いなど、音と文字の対応関係に生徒が自分から注目するようになります。

⑤ 文法・スペリングのエラーに「気づく」仕組みがある

答え合わせの段階で、自分たちが書いたテキストと原文を比較する作業は、SLAのNoticing仮説(Schmidt, 1990)に直結します。「あ、三単現のsを落としてた!」「冠詞のaとtheを間違えた!」という自発的な気づきは、教師から教わるよりも遥かに深い学びになります。

📋 日本の授業で使える!応用アイデア5選

🔥 応用① 教科書の新出本文の導入に使う

教科書の新しいレッスンの本文をそのままRunning Dictationの素材にします。「初めて読む文章」を自分の力で復元する体験は、従来の「先生が読んで日本語に訳す」導入よりも圧倒的に記憶に残ります。

🔥 応用② 文法ターゲットを狙い撃ちする

過去形・現在完了・受動態など、特定の文法項目が多く含まれるテキストを使います。インドネシアのSMA Negeri 2の研究では、現在時制に焦点を当てたRunning Dictationでプレテスト74.5→ポストテスト92.7の大幅な向上が報告されています。

🔥 応用③ 宝探し型Running Dictation

テキストを文ごとにバラバラに切り分け、教室中の異なる場所(机の下・窓際・ドアの裏など)に隠します。ペアは文を1つずつ見つけて書き取り、最終的に正しい順番に並べ替えます。読解力・論理的思考力も同時に鍛えられます。

🔥 応用④ 読解問題つきRunning Dictation

壁に貼るのはテキストではなく内容理解問題にします。ペアの手元にはテキストがあり、Runnerが壁で問題を読んで覚え、Writerに伝え、2人で答えを探します。ESL教材サイトTeach-Thisが推奨する上級バリエーションです。

🔥 応用⑤ チーム対抗4人制Running Dictation

Cambridge Englishの推奨アレンジ。4人チームで全員に番号を振り、1番が読みに行って2番に伝え、2番が3番に伝え、3番が4番に伝え、4番が書くという「伝言ゲーム型」にします。情報の正確な伝達がより難しくなり、上級者にも手応えのある活動になります。

⚠️ 失敗しないための注意点

😱 よくある失敗 ✅ 対策
教室中が大騒ぎになる 「ささやき声ルール」を厳守。叫んだペアは1分間のペナルティ停止
走って転ぶ・衝突する 「Walking Dictation」に変更。早歩き限定にし、障害物を事前に除去する
Runnerが書いてしまう Runnerにはペンを持たせない。手ぶらルールを徹底する
テキストが長すぎて終わらない 最初は50語以下から始める。時間制限を設け「完成しなくてもOK」とする
レベル差でペア間の差が大きい 上位ペアには追加のボーナス文を用意。下位ペアにはキーワードだけ穴埋めにする

⏱ 明日からすぐ使える!50分授業タイムテーブル

⏰ 時間 📝 内容
0:00〜0:03 ルール説明&デモンストレーション(教師がRunnerの動きを実演)
0:03〜0:05 ペア分け&役割決め&教室セッティング
0:05〜0:20 🔥 Running Dictation 第1ラウンド(15分)
0:20〜0:28 答え合わせ&エラー分析&優勝ペア発表
0:28〜0:30 テキスト入れ替え&役割交代
0:30〜0:42 🔥 Running Dictation 第2ラウンド(12分・難易度UP)
0:42〜0:47 答え合わせ&教師によるエラー頻出ポイント解説
0:47〜0:50 Reflection(振り返りシート:「今日難しかった単語」「聞き取れなかった音」)

📊 研究で実証されている効果

Running Dictationの教育効果は複数の国の研究で裏付けられています。

インドネシア(SMA Negeri 2 Pematang Siantar)での準実験研究では、Running Dictationを用いた実験群のプレテスト平均74.5がポストテスト平均92.7へと約18ポイント上昇し、従来型指導の統制群(+16.2ポイント)を大きく上回りました。t検定でも統計的に有意な差が確認されています。

インドネシア(SMAN 1 Nita)での語彙指導研究では、Running Dictationを3サイクル実施した結果、習熟度達成率が22.22%から100%へ劇的に改善。平均スコアも62.35→77.26→87.44と着実に上昇しました。

インドネシア(SMAN 1 Bawang Banjarnegara)のライティング研究では、Descriptive Textの作文スコアがCycle 1で72.7、Cycle 2で81.27、ポストテストで86.20まで向上。質問紙調査でも生徒の大多数がRunning Dictationによる学習に肯定的な反応を示しました。

さらに、アメリカの脳科学者Ratey(2008)の研究に基づき、Lindt & Miller(2017)は身体運動を伴う授業が生徒のエンゲージメントと集中力を有意に向上させることを実証しています。Running Dictationはまさにこの「movement-based learning」の典型例です。

✨ まとめ

Running Dictationの魅力は、その「単純さ」と「爆発的な盛り上がり」の共存にあります。準備は紙を印刷して壁に貼るだけ。特別な教材もICTも一切不要。なのに、授業が始まった瞬間から教室中に英語が飛び交い、生徒は目を輝かせて走り回ります。

「英語は座って勉強するもの」という固定観念を壊し、「英語は体を使って体験するもの」に変えてくれるのが、この活動です。

明日の授業で、教科書の1段落を壁に貼ってみてください。

「先生、もう1回やりたい!」の声が教室に響くはずです。🏃‍♂️

参考文献・出典:
• British Council. “Running Dictation.” TeachingEnglish.
• Cambridge English. “Running Classroom Dictation Activity.” Cambridge English Blog.
• Peterson, J. (2021). “The Art of the Running Dictation.” American English Live Teacher Professional Development Series, U.S. Department of State.
• Colorín Colorado. “Running Dictation.” ELL Classroom Strategy Library.
• Aini, A. A. (2015). “The Use of Running Dictation Technique to Improve Students’ Writing in Descriptive Text.” Thesis, Semarang State University.
• SMA Negeri 2 Pematang Siantar (2023). “Using Running Dictation Game to Improve Grade Ten Students’ Understanding on Simple Present Tense.” ResearchGate.
• Selvina, S. et al. (2026). “Employing Running Dictation for Developing Students’ Vocabulary Mastery.” Journal of Innovative and Creativity, 6(1), 5819-5833.
• Ratey, J. J. (2008). Spark: The Revolutionary New Science of Exercise and the Brain. Little, Brown.
• Lindt, S. F. & Miller, S. C. (2017). “Movement and Learning in Elementary School.” Phi Delta Kappan, 98(7), 34-37.
• Teach-This.com. “ESL Dictation Activities.”
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