📚 海外の英語授業実践シリーズ Vol.2
Think-Pair-Share(シンク・ペア・シェア)で
「沈黙の教室」を30秒で変える!
~ 考える→話す→共有する——たった3ステップで全員が英語を話し出す奇跡のメソッド ~
✅ 準備時間ゼロ・教材不要
✅ 授業のどこにでも挟める
✅ スピーキング不安を構造的に軽減
✅ 40年超の研究エビデンスあり
💭 Think-Pair-Shareとは何か?
Think-Pair-Share(TPS)とは、教師が質問を投げかけた後、生徒が①1人で考え(Think)→ ②ペアで話し合い(Pair)→ ③クラス全体で共有する(Share)という、たった3ステップの協働学習テクニックです。
1981年にメリーランド大学のFrank Lyman教授によって開発されて以来、40年以上にわたって世界中の教育現場で使い続けられている、アクティブラーニングの原点とも言える手法です。
💡 従来の「挙手→指名」との決定的な違い
従来の授業 → 教師が質問 →「はい、誰かわかる人?」→ 同じ3〜4人だけが手を挙げる
Think-Pair-Share → 教師が質問 → 全員が考える → 全員がペアで話す → 代表が共有
「考える時間」と「ペアで話す時間」の2段階を挟むことで、挙手できなかった生徒も含めて100%がアウトプットする仕組みになっています。
🌍 どこの国で実践されているの?
TPSはアメリカの教育研究者が開発した手法ですが、そのシンプルさと汎用性の高さから、ESL/EFL教育の世界でも爆発的に広がっています。
パレスチナの大学でのEFL研究(Raba, 2017)では、8週間のTPS導入後に生徒の議論・協力・勇気が大幅に向上し、学習満足度は5段階中平均4.02という非常に高い値を示しました。
インドネシアの中学校での研究では、TPS導入前後でライティングスコアが平均52.05点から85.82点へ約34ポイント上昇(N-Gain値0.70=高効果)したことが報告されています。
オマーンの高校生を対象としたEFL研究では、TPSによって自信の向上・不安の軽減・口頭コミュニケーション力の改善・楽しい学習体験・英語を話す動機づけの増大という5つの効果が確認されています。
🔧 Think-Pair-Shareの具体的な手順(完全版)
教師が質問やプロンプトを提示し、生徒に1人で考える時間を与えます。このとき、考えをメモ・ノートに書かせるのが海外の先生の鉄則です。
🌟 質問のパターン例
教科書の内容理解
“What do you think is the author’s main message?”
意見を引き出す
“Do you agree that social media is harmful for teenagers? Why?”
文法の理解確認
“What is the difference between ‘I have been’ and ‘I went’?”
「考える時間」を絶対にスキップしないこと! いきなり「ペアで話して」と言うと、英語が得意な生徒だけが話し、苦手な生徒は黙ってしまいます。1人で考える時間があるからこそ、全員がペアワークに参加できるのです。
隣の席の生徒とペアを組み、自分の考えを英語で伝え合います。これがTPSの心臓部であり、世界中のEFL教師が「スピーキング不安を最も効果的に下げる瞬間」と口を揃えるフェーズです。
🔄 ペアワークの流れ(約2〜3分)
🅰️
生徒Aが話す
1分|自分の意見を伝える
🅱️
生徒Bが話す
1分|自分の意見を伝える
🤝
共通点・相違点を確認
30秒|比較して要約
🗣 Pair段階で使わせたいフレーズ
“I think ___ because ___.”
“I agree with you because ___.”
“I see your point, but I think ___.”
“Can you tell me more about ___?”
“That’s interesting. What about ___?”
ペアワークの後、教師がいくつかのペアを指名してクラス全体に共有させます。
🔄 Shareの3つの方法
方法①:代表ペア指名
教師が3〜4ペアを指名し、クラス全体に報告させる。最も一般的な方法
方法②:パートナー紹介
「自分の意見ではなくパートナーの意見を紹介する」形式。発表のプレッシャーが大幅に軽減
方法③:ホワイトボード提示
各ペアが要点をミニホワイトボードに書いて掲げる。発話なしでも共有可能
🗣 Share段階で使わせたいフレーズ
“My partner and I both think that…”
“We agreed that… but we had different ideas about…”
“My partner said… and I added…”
“One interesting point from our discussion was…”
アメリカの教育研究者Cooper et al.(2021)は、Shareの際に「クラス全体の前で発表させること」が一部の生徒にとって強い不安の原因になると指摘しています。対策として、「方法②パートナー紹介」形式にすると、自分の意見ではないためプレッシャーが大幅に軽減されます。
🎯 なぜThink-Pair-Shareが効果的なのか?(5つの理由)
① 「考える時間」が全員の参加を保証する
即座に挙手を求めると、反応できるのは上位の生徒だけ。TPSでは「待ち時間(Wait Time)」が組み込まれているため、英語が苦手な生徒も自分のペースで考えを整理でき、ペアワークに参加する準備が全員に平等に与えられます。
② スピーキング不安を劇的に下げる
オマーンのEFL研究では、TPSによって自信の増大・不安の軽減が報告されています。クラス全体の前で話すのは怖いけど、隣の1人に話すだけなら怖くない。この「心理的安全性」がTPSの最大の武器です。
③ 準備ゼロで、どんな授業にも挟める
模造紙もプリントもICTも不要。教師がやることは「良い質問を1つ投げかける」だけ。授業の導入・展開・まとめ、どの段階にでも3〜7分で挿入可能。日常的に繰り返し使えるからこそ、生徒のスピーキング習慣が根づきます。
④ 批判的思考力を鍛える
TPSの開発者Lyman自身が、この手法の目的を「生徒の批判的思考を促進すること」と明言しています。自分で考え → 他者の視点と比較し → クラスに発信するプロセスは、単なる暗記とは次元の異なる思考の深まりを生みます。インドネシアの高校での研究でも、TPSが批判的思考スキルを向上させることが確認されています。
⑤ クラスの規模を選ばない
Lyman(1981)の研究でも強調されているように、TPSは少人数から大教室まで、あらゆるクラスサイズに対応します。40人学級でも「隣とペア」なら20ペアが同時にスピーキング練習できます。
📋 日本の授業で使える!応用アイデア5選
💬 応用① 教科書の読解チェックに使う(毎授業OK)
教科書のパラグラフを1つ読んだ後に、“What is the main idea of this paragraph?”とTPSを挟みます。毎回のルーティンにすれば、生徒は自然と「読みながら要旨を考える」癖がつきます。訳読の前に入れるだけで授業の質が激変します。
💬 応用② Think-Write-Pair-Share(書く版)
Think段階で考えを英語で3文書かせてからペアワークに入るバリエーション。書くことで思考が整理され、スピーキングの質が格段に上がります。さらに教師が机間巡視でノートをチェックすれば、ライティングの形成的評価にもなります。
💬 応用③ Think-Pair-Square(4人拡張版)
ペアでの話し合い後に、隣のペアと合流して4人グループでさらに議論を深めるバリエーション。インドネシアの比較研究では、Think-Pair-Squareは通常のTPSよりもさらに高い学習成果と学習動機づけを示しました。ディスカッション活動の足場がけとして最適です。
💬 応用④ リスニング後のTPS
リスニング音声を聞いた後に“What did you understand?” “What was the speaker’s opinion?”とTPSを入れます。「聞き取れた内容」をペアで突き合わせることで、部分的にしか聞き取れなかった生徒も全体像をつかめます。共通テストのリスニング対策にも効果的です。
💬 応用⑤ 文法導入前の「気づきTPS」
新しい文法を教える前に、ターゲット文法を含む例文を2〜3文見せて“What do you notice about these sentences? What pattern do you see?”とTPSで考えさせます。教師が説明する前に生徒自身が「発見」することで、文法の記憶定着率が飛躍的に上がります。
⚠️ 失敗しないための注意点
⏱ 明日からすぐ使える!50分授業タイムテーブル
TPSの最大の魅力は、50分の授業のどの場面にでも挿入できることです。以下は、1回の授業でTPSを3回挟むフル活用パターンのタイムテーブルです。
| ⏰ 時間 | 📝 内容 |
|---|---|
| 0:00〜0:02 | Today’s goal の説明(英語で) |
| 0:02〜0:08 | 🔥 導入TPS①「今日のトピックについて何を知ってる?」(既有知識の活性化) |
| 0:08〜0:22 | 教科書の読解活動(音読・黙読・語彙確認) |
| 0:22〜0:29 | 🔥 展開TPS②「筆者の主張に賛成?反対?理由は?」(内容の深い理解) |
| 0:29〜0:38 | 文法ポイントの説明・練習問題 |
| 0:38〜0:43 | 教師のフィードバック&重要表現の整理 |
| 0:43〜0:48 | 🔥 まとめTPS③「今日一番大事だったことは何?」(振り返り・記憶定着) |
| 0:48〜0:50 | 次回予告&宿題の指示 |
🗣 Sentence Frames(話し出しテンプレート)完全版
TPSを日本のEFL教室で成功させる最大のカギは、生徒に「話し方の型」を与えることです。以下のSentence Framesを印刷して全員に配布するか、教室に常時掲示しましょう。
📊 研究で実証されている効果
TPSの教育効果は、世界各地の多様なEFL/ESL環境で繰り返し検証されています。
パレスチナのAn-Najah National大学でのEFL研究(Raba, 2017)では、8週間のTPS実施後に学生の口頭コミュニケーション力が観察・インタビュー・質問紙のすべてで向上。学習満足度は5段階で平均4.02を記録しました。
インドネシアのMTs Negeri 1 Kota Magelangでの研究では、TPSを用いたライティング授業でプリテスト平均52.05点からポストテスト平均85.82点へ約34ポイント上昇。N-Gain値0.70(高効果)が確認されました。
台湾の高校でのEFL準実験研究(Shih & Reynolds, 2015)では、TPSとリーディングストラテジー指導を組み合わせた授業が内発的動機づけを統計的に有意に向上させたことが報告されています。
インドネシアのジャカルタの中学校でのスピーキング研究では、TPS群のスピーキングパフォーマンスが統制群より統計的に有意に高いことが確認され、男女ともに等しく恩恵を受けたことが報告されています。
さらに2025年の最新研究では、TPSにAIチャットボットを組み合わせた実験が行われ、従来型TPSと比較してスピーキング不安の軽減と学習楽しさの向上が確認されるなど、TPSはデジタル時代にも進化を続けています。
✨ まとめ
Think-Pair-Shareの真の価値は、そのシンプルさにこそあります。模造紙もグループ分けも移動も不要。教師がやることは「良い質問を投げかけて、考える時間を1分、話す時間を2分、共有する時間を3分与える」——たったそれだけです。
しかし、この「たったそれだけ」が、日本の英語教室で最も深刻な問題——「生徒が英語を口に出さない」という壁を、最も低コスト・最も低リスクで突破する最強のツールなのです。
明日の授業で、質問の後に「30秒の沈黙」を作ってみてください。
たった30秒が、教室の空気を変えます。💭
• Lyman, F. (1981). “The responsive classroom discussion.” In Anderson, A. (Ed.), Mainstreaming Digest. College Park: University of Maryland Press.
• Raba, A. A. A. (2017). “The Influence of Think-Pair-Share on Improving Students’ Oral Communication Skills in EFL Classrooms.” Creative Education, 8, 12-21.
• Cooper, K. M., et al. (2021). “Reconsidering the Share of a Think-Pair-Share.” CBE—Life Sciences Education, 20(1).
• Shih, Y-C., & Reynolds, B. L. (2015). “Teaching Adolescents EFL by Integrating Think-Pair-Share and Reading Strategy Instruction.” RELC Journal, 46(3).
• Purnamasari, A., & Pardede, P. (2024). “The Effectiveness of Using TPS on Students’ English-Speaking Performance.” JET (Journal of English Teaching), 10(3).
• Proceeding UNESA (2025). “Application of the TPS Method to Improve Writing Skills.” MTs Negeri 1 Kota Magelang.
• JOLLT (2024). “Promoting Critical Thinking in Speaking Classes Using TPS.” SMAN, Aceh, Indonesia.
