でもふと考えたことはありませんか?
英語でじゃんけんする時、「最初はグー」って言うの?
結論から言うと──ない。英語圏にこの概念は存在しません。
しかし、そこには想像以上に面白い文化の違いが隠れていました。
1結論:「最初はグー」に相当する英語は存在しない
いきなり結論ですが、英語には「最初はグー」に直接対応する表現はありません。
英語圏でのじゃんけんは “Rock, Paper, Scissors!” と掛け声をかけ、最後の “Scissors!” もしくは追加の “Shoot!” のタイミングで手を出します。「全員でまずグーを出して、リズムを合わせてから勝負する」という発想自体が英語圏の文化に存在しないのです。
→「じゃんけんぽん!」で手を出す
2段階のリズム合わせがある
→ “Shoot!” で手を出す
前置きなし、掛け声一発
つまり、英語圏の人にとって「最初はグー」の概念を説明すると、「え、なんでわざわざ全員グーを見せるの?」という反応になります。彼らはそもそもタイミングが合わなくて困るという問題をあまり深刻に感じていないのです。
英語圏では拳を上下に振りながら “Rock, Paper, Scissors” と唱え、そのリズムでタイミングを合わせます。つまり掛け声自体がリズム合わせの役割を果たしているため、別途「最初はグー」を設ける必要がないのです。
2そもそも「最初はグー」は志村けんの大発明だった
「最初はグー」が日本中に定着しているせいで、大昔からある掛け声だと思っている人も多いのではないでしょうか。しかし実は、この掛け声が全国に広まったのは1980年代のこと。生みの親は、あの志村けんさんです。
「最初はグー」誕生秘話
そこで志村さんが一言──
「違う違う違う、はい、グー出してグーって」
全員がまずグーを出すことで拳のタイミングが揃い、スムーズにじゃんけんができた。この体験を番組内のコント「ジャンケン決闘」(1981〜1982年)に取り入れたところ、子どもたちの間で爆発的に広まったのである。
番組でのフルバージョンの掛け声はこうでした:
当時の『8時だョ!全員集合』は驚異的な視聴率を誇った番組。そこで志村さんが使ったフレーズが全国の子どもたちにコピーされ、やがて「最初はグー」の部分だけが定着していきました。
2020年3月、志村さんが亡くなった際には日本じゃんけん協会が公式に追悼コメントを発表。「日本でこれほどじゃんけんが広まったのは、志村さんが考案した『最初はグー』があったからに他なりません」と称えました。
つまり「最初はグー」は、たった一人のコメディアンの飲み屋での思いつきが、一億人以上の日本人の日常行動を変えたという、極めて稀有な文化現象なのです。そしてこの天才的発明は──英語圏には輸出されなかった。
3英語圏のじゃんけん掛け声──”Rock, Paper, Scissors, Shoot!”
では、英語圏では実際にどうやってじゃんけんをしているのでしょうか?
英語でじゃんけんは “Rock, Paper, Scissors”(ロック、ペーパー、シザーズ)と呼ばれます。掛け声にはいくつかのバリエーションがあります。
重要なのは、どのバージョンにも「まず全員でグーを出す」というステップが存在しないこと。英語圏のプレイヤーは掛け声を唱えながら拳を振り、最後の音節で一斉に手を出します。
ハワイは例外的に、日系人が多く住んでいる影響で “Jan-ken-pon!” がそのまま通じることもあります。文化の伝播の面白さですね。
4日本 vs 英語圏──「手を出すタイミング」が根本的に違う
実は日本と英語圏では、じゃんけんの手を出すタイミングのメカニズムがまったく異なります。この違いこそが「最初はグーが不要」な理由の核心です。
ここに面白い文化の違いが見えます。日本式は「準備動作+本番」の2段階構造。英語圏は「掛け声がそのまま準備動作」の1段階構造。日本人は念入りにタイミングを合わせたい。英語圏の人はサッと始めてサッと決めたい。この感覚の違いが、まさに「最初はグー」の有無を生んでいるのです。
なぜ英語圏はタイミングが合うのか?
英語の “Rock, Paper, Scissors” は3つの単語で3拍のリズムを作り、拳を振る動作と完全に同期します。つまり掛け声がメトロノームの役割を果たしている。一方、日本語の「じゃんけんぽん」は一気に発音されるため、拍が取りづらく、「最初はグー」という前奏が必要になったと考えられます。
5世界のじゃんけん掛け声比較──こんなに違う!
「最初はグー」は日本独自のものですが、じゃんけんの掛け声自体は世界中にバリエーションがあります。しかも、手の形や呼び方まで国によって違うのが驚き。
特に注目すべきはインドネシア。なんと石・紙・ハサミではなく「ゾウ・人・アリ」で勝負します。ゾウは人に勝ち、人はアリに勝ち、アリはゾウに勝つ(耳に入って倒す)。三すくみの関係は同じでも、モチーフがまったく違うのが面白い。
そしてフィリピンの「ジャック・エン・ポイ」は明らかに日本語の「じゃんけんぽん」が変化したもの。じゃんけんが日本から世界に伝播した証拠です。
フランスの「井戸」ルール:4種類目の手として「Puits(井戸)」が存在。手で筒を作る形で、石とハサミは井戸に落ちるので負け、紙は井戸にフタをできるので勝ち。ただしバランスが崩れるため、公式大会では使われません。
6「あいこでしょ」も英語にない!?日本独自のシステム
「最初はグー」だけでなく、実は「あいこでしょ!」に相当する英語もありません。
日本では引き分けになると「あいこでしょ!」の掛け声でスムーズに次のラウンドに入りますが、英語圏ではそのような専用フレーズがないため、単に “Rock, Paper, Scissors, Shoot!” を最初から繰り返すだけです。
テンポが途切れない
専用の掛け声がある優秀設計
→ 最初から掛け声を繰り返す
テンポがリセットされる
このことからわかるのは、日本のじゃんけんは「テンポ感」と「同期性」を極限まで追求したシステムだということ。「最初はグー」でリズムを合わせ、「じゃんけんぽん」で勝負し、「あいこでしょ」でシームレスに再戦。この3段階構造は、世界的に見ても極めて洗練されています。
さらに日本には「あっち向いてホイ!」という追加ゲームまであり、じゃんけんのエコシステムの豊かさは世界随一と言えるでしょう。
7じゃんけんは日本発祥?──意外な歴史と世界への広がり
じゃんけんの起源については意外な事実があります。
三すくみの手遊び自体は中国の漢王朝時代(紀元前206年〜紀元220年)にまで遡ります。しかし現在の「グー・チョキ・パー(石・ハサミ・紙)」のじゃんけんは、19世紀の日本で成立したものと考えられています。
じゃんけんの歴史
興味深いのは、ヨーロッパでは19世紀以前にじゃんけんの記録が存在しないこと。20世紀に日本との接触を通じて初めて伝わったとされています。1921年のシドニーの新聞記事では「大陸で出会った変わった遊び」として紹介されているほど、当時の欧米人にとっては未知のゲームだったのです。
そしてアメリカではじゃんけんが独自の発展を遂げ、なんと手の種類が5種類(Rock-Paper-Scissors-Lizard-Spock)、さらには25種類、果ては101種類まで拡張されたバージョンが作られています。
8知っておくと盛り上がる!英語でじゃんけんする時のフレーズ集
外国人とじゃんけんする機会に備えて、使えるフレーズをまとめました。
🟢 基本フレーズ
🔵 勝敗の表現
🟡 盛り上がるネタフレーズ
豆知識:統計によると、じゃんけんで最もよく出される手はグー(Rock)で全体の約35.4%。次いでパー(33.3%)、チョキ(31.3%)の順。つまり統計的にはパーを出すのが最も有利。ストレスがかかると人はグーを出しやすくなるという研究結果もあります。
まとめ──「最初はグー」は世界に誇る日本の発明
「最初はグー」は英語に存在しない。
でもそれは、日本のじゃんけんがいかに洗練されているかの証明です。
たった一つの掛け声に、これだけの文化と歴史が詰まっている。
次にじゃんけんをする時、ちょっとだけ誇らしく「最初はグー」と言えるはず。
