原田先生のとっておきの話

「砂糖をはちみつに変えるだけ」で 本当に体は変わるのか? ― 130万人が見たXポストを、論文とデータで徹底検証 ―

HONEY × BLOOD SUGAR × SCIENCE

「砂糖をはちみつに変えるだけ」で
本当に体は変わるのか?

― 130万人が見たXポストを、論文とデータで徹底検証 ―

🍯 いま話題のポスト、見ましたか?

「はちみつ専門店で10年働く友達に”砂糖をはちみつに変えな”って言われて試したら、午後の眠気が減って甘いもの欲しくなくなった」――X(旧Twitter)で130万回以上閲覧されたこのポスト。「GI値が全然違う」「寝る前のスプーン1杯で睡眠改善」など、気になる情報が盛りだくさん。でも、これって本当なのでしょうか? 論文とデータで検証してみました。

2026年2月9日、Xに投稿された1本のスレッドが大きな反響を呼びました。

https://x.com/oki_asset/status/2020967196302901447?s=20

投稿主の@oki_assetさんが紹介したのは、「砂糖をはちみつに置き換えるだけで体が変わる」というシンプルなメッセージ。GI値の違い、寝る前のスプーン1杯、料理での置き換え比率……。わかりやすい体験談と具体的なTipsが支持を集め、いいね3,300超、ブックマーク800超という爆発的なエンゲージメントを記録しています。

こうしたバイラル情報は「面白いけど、鵜呑みは危険」と感じるセンサーが働きます。そこで今回は、このポストの主要な主張をひとつひとつ科学的に検証していきます。

🔬 検証①:「砂糖のGI値は100以上、はちみつは半分」は本当か?

📌 ポストの主張:

「砂糖のGI値は100以上、はちみつは種類によっちゃ半分くらい」

▶ 判定:方向性は正しいが、数値に誇張あり

まず「GI値」とは、Glycemic Index(グリセミック・インデックス)の略で、食品が血糖値をどれだけ上昇させるかを示す指標です。ブドウ糖を100として、各食品の数値が決められています。

実際のデータを見てみましょう。

甘味料 GI値 分類
ブドウ糖 100 基準値
上白糖(一般的な砂糖) 60〜110 高GI
はちみつ(百花蜜など) 40〜65 低〜中GI
アカシアはちみつ 30〜40 低GI

養蜂場のデータや複数の栄養学文献によると、上白糖のGI値は測定方法によって60〜110程度と幅があります(杉養蜂園の監修データでは上白糖GI値110、みつばちのーとの管理栄養士監修データでは砂糖GI値91)。一方、はちみつは種類にもよりますが30〜65程度。ポストの「半分くらい」は、アカシアはちみつなら確かに成り立ちます。

ただし注意すべき点もあります。「砂糖のGI値が100以上」という表現は、ブドウ糖(GI値100)と上白糖を混同している可能性が高い。ショ糖(砂糖の主成分)のGI値は国際的な文献では約60前後とされるケースも多く、「100以上」は必ずしも正確ではありません。

💡 英語メモ:GI値は英語で “Glycemic Index” 。”low GI foods”(低GI食品)は英語圏の健康記事でも頻出する表現です。覚えておくと海外の健康情報を読むときに役立ちます。

🔬 検証②:「血糖値の急上昇→急降下ループが甘味依存の原因」は?

📌 ポストの主張:

「甘いもの止められない人は大体、砂糖で血糖値が急上昇→急降下して、またすぐ欲しくなるループにハマってる」

▶ 判定:科学的に概ね正しい

これは栄養学では「血糖値スパイク」と呼ばれる現象で、医学的にも広く認められています。高GI食品を摂取すると血糖値が急上昇し、それに対してインスリンが大量に分泌されます。その結果、血糖値が急降下して「反応性低血糖」が起き、再び甘いものが欲しくなるという悪循環に陥ります。

2022年にトロント大学の研究チームが発表したメタ分析(18の臨床試験、1,000名以上が対象)では、はちみつ――特に非加工の生はちみつやアカシアはちみつ――が、健康的な食事パターンの一部として摂取された場合、空腹時血糖値やコレステロール値の改善に寄与する可能性が示されました。

研究者のTauseef Khan氏は「はちみつは約80%が糖分だが、希少糖やタンパク質、有機酸など複雑な組成を持っており、健康上のベネフィットがある可能性が高い」とコメントしています。

🔬 検証③:「寝る前のスプーン1杯で睡眠が改善する」は?

📌 ポストの主張:

「寝る前にスプーン1杯舐めると、睡眠中の血糖値が安定して夜中に目が覚めにくくなる」

▶ 判定:メカニズムには一定の根拠あり。ただしエビデンスは限定的

この主張の背景にあるメカニズムはこうです。睡眠中に血糖値が急低下すると、体はコルチゾール(ストレスホルモン)を分泌して血糖値を回復させようとします。コルチゾールは体を覚醒させる作用があるため、中途覚醒や歯ぎしり、浅い眠りの原因になります。

はちみつのブドウ糖と果糖が穏やかにエネルギーを供給することで、この夜間低血糖を防ぐという理論です。山田養蜂場の医学博士・福島忍氏も「はちみつは血糖値が緩やかに上がるため、血糖値を長時間安定させる作用がある」と説明しています。

また、はちみつに含まれるアミノ酸の一種トリプトファンが、睡眠ホルモンであるメラトニンの生成をサポートするという指摘もあります。

ただし、これらの効果を直接証明した大規模な臨床試験はまだ少なく、管理栄養士の中には「科学的根拠が見つけられなかった」と指摘する専門家もいます。体験談レベルでは「夜中に目覚めにくくなった」という声が多いものの、プラセボ効果との切り分けは難しいのが現状です。

⚠️ 注意:適量はティースプーン1杯(約5g)。大さじ1杯(約21g、69kcal)だとカロリー過多になる可能性があります。糖尿病の方は必ず医師に相談を。

🔬 検証④:「料理で砂糖の2/3量でOK」は?

📌 ポストの主張:

「はちみつの方が甘味度が高いから、料理では砂糖の2/3の量で十分」

▶ 判定:ほぼ正しい

はちみつは砂糖の約1.3倍の甘さがあります。つまり、砂糖と同じ甘さを出すなら約75%の量で済む計算で、「2/3(約67%)の量でOK」はやや少なめの表現ですが、おおむね正しいと言えます。

カロリー面でも、砂糖が100gあたり384kcalなのに対し、はちみつは294kcalと約23%低い。少ない量で十分な甘さが出せるうえにカロリーも低いので、置き換えのメリットは実際に存在します。

ただし、はちみつには独特の風味があるため、料理によっては味のバランスが崩れることも。万能の置き換えというわけではありません。

🔬 検証⑤:「非加熱じゃないと栄養がほぼ意味なくなる」は?

📌 ポストの主張:

「加熱すると酵素やビタミンが壊れるから、非加熱じゃないとはちみつ本来の栄養がほぼ意味なくなる」

▶ 判定:過大な表現。実態はもっとグレー

これは非常に議論の分かれるポイントです。

全国はちみつ公正取引協議会は、公式見解として次のように述べています。「はちみつの一般的な製造工程の湯煎で行われる結晶を溶解させる程度の加温では、分解する栄養成分はほぼありません」。つまり、通常の加工レベルでは「栄養がほぼ意味なくなる」というのは言い過ぎです。

確かに、60℃以上の高温で長時間加熱すれば酵素やビタミンCなどが損なわれます。しかし、はちみつに含まれるビタミンやミネラルはそもそも微量であり、栄養素の主要な供給源としてはちみつを位置づけること自体に疑問を呈する専門家も少なくありません。

さらに重要な点として、はちみつの酵素(インベルターゼなど)は40℃以上で不活化するものもありますが、これらの酵素ははちみつが作られる過程でその役割をほぼ終えています。口に入った後は胃酸で分解されるため、「酵素が生きている」ことの健康上の意義は限定的です。

とはいえ、2022年のトロント大学のメタ分析でも、非加工の生はちみつ(raw honey)で最も大きな健康効果が見られたのは事実。風味の面でも非加熱の方が花の香りが豊かで、こだわる価値はあります。ただし「加熱したら無意味」は科学的に正確ではありません。

📊 検証結果まとめ

主張 判定 補足
砂糖のGI値100以上、はちみつは半分 △ 概ね正しいが誇張 砂糖GI値60〜110、はちみつ30〜65
血糖値の急上昇→急降下が甘味依存の原因 ○ 科学的に正しい 血糖値スパイクは医学的に認知
寝る前のスプーン1杯で睡眠改善 △ メカニズムに根拠あり 大規模臨床試験はまだ少ない
料理で砂糖の2/3量でOK ○ ほぼ正しい 甘味度1.3倍は確認済み
非加熱じゃないと栄養がほぼ意味なし ✕ 過大な表現 通常の湯煎では栄養損失は僅か

🤔 このポストの「上手さ」と「落とし穴」

公平に言えば、このポストの方向性は概ね正しいです。砂糖をはちみつに置き換えることで、血糖値の上昇が緩やかになり、カロリーも抑えられるという基本的なメッセージには科学的裏付けがあります。

しかし、いくつかの「落とし穴」も見逃せません。

まず、ポストには複数のアフィリエイトリンク(#ad表記あり)が含まれています。情報提供とマーケティングが一体化しているため、推奨商品の客観性には注意が必要です。

次に、GI値の数値は測定方法や参照する基準値によって大きく変動します。「砂糖は100以上」という表現は、上白糖のGI値110を採用する場合には成り立ちますが、ショ糖のGI値60を基準にすると話が変わってきます。一般の読者にはこの違いがわかりづらく、ミスリードの余地があります。

そして、はちみつは確かに砂糖より優れた面がありますが、糖質を多く含む食品であることに変わりはない。WHO(世界保健機関)は「遊離糖類」の摂取を1日の総カロリーの10%未満に抑えることを推奨しており、はちみつもこの「遊離糖類」に含まれます。

📝 では、はちみつとの「正しい付き合い方」は?

研究データを総合すると、以下のようなアプローチが合理的です。

✔ 適量を守る:1日の目安は大さじ1〜2杯(15〜30g)程度。トロント大学の研究では40g/日で効果が見られましたが、他の糖質摂取とのバランスが重要です。

✔ 種類を選ぶ:アカシアはちみつはGI値30〜40と低く、血糖値が気になる方に特におすすめ。百花蜜はGI値が高めになる傾向があります。

✔ 「純粋はちみつ」を選ぶ:加糖はちみつは砂糖水あめが添加されているので、置き換えの意味がありません。成分表示を必ず確認しましょう。

✔ 過大な期待はしない:はちみつは「魔法の食品」ではなく、あくまで「砂糖よりマシな甘味料」。食生活全体のバランスが最も重要です。

⚠ 1歳未満の乳児には絶対に与えない:ボツリヌス菌のリスクがあります。これは非加熱・加熱に関わらず共通です。

🗣️ 英語で言うと? はちみつ関連の英語表現

最後に、英語教師らしく、はちみつに関する英語表現をいくつかご紹介。海外の健康記事を読むときに役立つはずです。

🍯 基本用語

raw honey = 非加熱の生はちみつ

pasteurized honey = 加熱処理済みはちみつ

glycemic index (GI) = グリセミック・インデックス

blood sugar spike = 血糖値スパイク

💬 使える表現

“Swap sugar for honey”
=「砂糖をはちみつに置き換える」

“in moderation”
=「ほどほどに」「適量で」

“too good to be true”
=「うますぎる話」(情報を検証する時に)

トロント大学の研究者Khan氏の言葉が印象的でした。“We’re not saying you should start having honey if you currently avoid sugar. The takeaway is more about replacement.”(現在砂糖を避けている人にはちみつを勧めているわけではない。ポイントは「置き換え」だ)。つまり、砂糖をどうしても使う場面で、はちみつに替えましょう、ということですね。

✨ おわりに ― バズる健康情報との付き合い方

今回のXポストは、130万回以上閲覧されたバイラルコンテンツです。方向性として「砂糖よりはちみつの方がベター」というメッセージは科学的に支持されていますが、GI値の数値や「非加熱じゃないと無意味」といった部分には誇張が含まれていました。

バイラルな健康情報に出会ったとき、英語圏では“Do your own research”(自分でも調べてみよう)と言います。これはまさに今回やったことです。

SNSの健康情報は「入口」としては優秀です。しかし、それだけで行動を変えるのではなく、論文やデータに当たって「自分なりの判断軸」を持つこと。それが、情報の海を泳ぐための最強のスキルだと、英語教師としても確信しています。

📚 参考:トロント大学メタ分析(2022)、山田養蜂場 健康科学研究所データ、金沢駅前内科・糖尿病クリニック解説、全国はちみつ公正取引協議会 公式見解

📝 この記事が面白かったら、ぜひシェアしてください。「原田先生のとっておきの話」では、英語や言葉にまつわる「知って得する雑学」を発信しています。

関連記事