しかし英語圏では、❌は「選択する」「該当する」という肯定的な意味でも使われます。
投票用紙にXを書いたら「反対」?いいえ、「この人に投票します」という意味。
──なぜ、たった1つの記号でここまで文化が衝突するのか?
1日本の「❌=バツ」は世界の非常識?衝撃の事実
日本人にとって「❌」は生まれた時から「ダメ」「不正解」「NG」を意味する記号です。テストの答案に赤い❌がつけば間違い。テレビのクイズ番組で❌が出れば不正解。腕をクロスさせれば「ノー」のジェスチャー。
ところが、この「❌=否定」という感覚は、実は世界共通ではありません。
英語圏では「X」には驚くほど多様な意味があり、その中には肯定的なものも数多く含まれているのです。
⭕ = 正解・OK・該当
「バツ」は100%ネガティブ
腕をクロス → 「ノー」のジェスチャー
✓ = 正解・OK・該当
「X」は文脈で意味が激変
腕クロス → 意味が通じない!
日本人が腕をクロスさせて「ダメ」を示すジェスチャーは、欧米ではほとんど通じません。英語圏で否定を示すときは、口で「No」と言うか、首を横に振るのが基本です。
2英語圏での「X」の7つの意味──否定だけじゃない!
英語圏における「X」は、日本語の「バツ」とは比べものにならないほど多面的な記号です。ここでは代表的な7つの意味を紹介します。
意味①:❌ 不正解・間違い(Wrong / Incorrect)
これは日本と同じ使い方。テストや○✕クイズで「間違い」を示すために使われます。ただし、アメリカでは不正解のマークとして❌よりもスラッシュ(/)を使うことが多く、教師によって記号が異なるのが実情です。
意味②:✗ 選択する・該当する(Select / Check off)
ここが最大の文化ギャップ。英語圏では、アンケートや投票用紙で「該当するものにXをつける」のが一般的です。日本なら⭕で囲む場面で、欧米では✗をつける。つまり「Xをつける=これを選ぶ」というポジティブな意味になります。
イギリスの選挙の投票用紙にて──
☐ Candidate A
☒ Candidate B ← これは「反対」ではなく「この人に投票」!
☐ Candidate C
※日本人は「Xをつけた=拒否した」と誤解しがち
意味③:✕ 閉じる・削除する(Close / Delete)
パソコンやスマホのウィンドウ右上にある「✕」ボタン。これは世界共通で「閉じる」の意味。cross out(線を引いて消す)やex out(✕をつけて消す)という動詞表現もあります。
意味④:X marks the spot(宝のある場所)
宝の地図で「X」が示すのは「ここに宝がある」という最高にポジティブな意味。ロバート・ルイス・スティーブンソンの小説『宝島』(1883年)で有名になったこの表現は、今でも「まさにここだ!」「ビンゴ!」という意味で日常的に使われます。
意味⑤:X = キス(Hugs and Kisses)
英語圏のメールや手紙の末尾に書かれる「XOXO」は「キスとハグ」の意味。Xがキス、Oがハグを表します。恋人や親しい友人への愛情表現として、「X」は温かいポジティブな記号でもあるのです。
意味⑥:X = 元カレ・元カノ(Ex)
接頭辞「ex-」(=かつての)から派生して、「X」は「ex-boyfriend / ex-girlfriend(元恋人)」の略として使われます。SNSで❌絵文字が使われる場合、「あの人はもう終わった存在(ex)」というスラング的な意味になることも。
意味⑦:X = 掛け算(Multiplication)
数学の「3 × 5 = 15」の掛け算記号も「X」。英語では “times” と読みます。また、サイズ表記の「100cm × 200cm」のようにも使われます。
つまり、英語の「X」は文脈によって「ダメ」にも「OK」にも「愛」にも「宝」にもなる万能記号。日本語の「バツ=100%ネガティブ」という感覚で理解しようとすると、大きな誤解が生じるのです。
3⭕と❌──採点記号が世界でバラバラという衝撃
「正解は⭕、不正解は❌」──日本人にとってこれは呼吸と同じくらい自然な常識です。しかし、世界の採点記号を比較すると、驚くべき事実が浮かび上がります。
驚愕の事実①:イギリスやフィリピンでは⭕が「不正解」を意味する場合がある。
驚愕の事実②:フランスでは✗が「正解」を意味する。
驚愕の事実③:フィンランドとスウェーデンでは✓(チェックマーク)が「不正解」。
つまり、「この記号は正解」「この記号は不正解」という世界共通のルールは存在しないのです。
日本の教育では⭕をつけて「正解」を強調し、間違いには控えめなチェックマークを使う傾向があります。これは「正解にフォーカスする」という日本的な教育文化の表れ。一方、アメリカでは間違いに赤い✗をつけて注意を引くスタイルが一般的で、「間違いから学ぶ」という発想が根底にあります。
4PlayStationの⭕✕ボタン問題──26年間の文化戦争
「⭕と❌」の文化ギャップが最も劇的に表面化した事例が、PlayStationのコントローラーです。
1994年の初代PlayStation発売時、Sonyのデザイナー後藤禎祐氏は、⭕と✕ボタンにそれぞれ明確な意味を込めていました。⭕は「はい(決定)」、✕は「いいえ(キャンセル)」──日本文化における⭕❌の意味そのままです。
ところが、海外版PlayStation では、この割り当てが逆になりました。
✕ボタン = キャンセル(いいえ・戻る)
理由:日本文化で⭕=肯定、✕=否定
⭕ボタン = キャンセル(いいえ・戻る)
理由:下ボタンが「メイン」というゲーム慣習
そして2020年、PS5の発売に伴い、Sonyはついに全世界統一で「✕ボタン=決定」に変更しました。日本のゲーマーにとっては、26年間の常識が覆る衝撃的な出来事でした。
PS5発表時の日本ゲーマーの声──
😤 「26年間の筋肉記憶を返してほしい」
🤔 「ApexやFortniteで慣れてるから意外と大丈夫かも」
Sonyの広報は「地域間の操作の混乱を解消し、開発者の負担を軽減するため」と説明。文化より統一性を優先した決断でした。
この問題は単なるボタン配置の話ではありません。「⭕=はい」「✕=いいえ」という日本文化の根本的な記号体系が、グローバル化の波に飲み込まれた象徴的な出来事なのです。
5ビジネスで大事故!日本式⭕❌△が海外で通じない実例
シリコンバレーで人事として働く日本人のエピソードが話題になりました。日本チームがプレゼンで使った「⭕❌△」の記号を見て、アメリカのチームメンバーが完全に混乱したというのです。
グローバル企業のプレゼンにて──
△ = 要検討(Maybe)
✕ = 対応不可(NG)
△ = 警告?注意?意味不明…🤔
✕ = 該当する?チェック済み?🤔
→ 全員が「プレステのコントローラーみたいな記号は何?」と困惑
問題の根本は、⭕△✕という「暗黙のランキングシステム」が日本独自のものだということです。欧米では以下のような表現が一般的です:
グローバルビジネスのヒント:海外向けの資料では、⭕❌△の代わりに色(🟢🟡🔴)や英単語(Yes / No / TBD)を使いましょう。記号に「暗黙の了解」を期待すると、必ず誤解が生まれます。
6SNS時代の「❌」──Cancel Cultureとの深い関係
SNSの普及により、❌絵文字の使われ方はさらに複雑になっています。英語圏のSNSでは、❌は主に以下のような文脈で使われます。
SNSでの❌の使い方①:否定・拒否
最もシンプルな使い方。「これはダメ」「受け入れられない」という意味で、日本語の感覚とほぼ同じです。
“Working on weekends ❌” (週末出勤はナシ)
SNSでの❌の使い方②:✅との対比で使う
「やるべきこと」と「やるべきでないこと」を対比する投稿で頻出。日本のSNSでもよく見る形式です。
SNSでの❌の使い方③:「Cancelled(キャンセル)」の象徴
2010年代後半から急速に広まった「Cancel Culture(キャンセルカルチャー)」。問題発言をした有名人やブランドに対して、SNS上で大規模な批判と不買運動が展開される現象です。この文脈で❌は「この人/ブランドは終わり」「もう支持しない」という強い否定のシンボルとして使われます。
面白いことに、Elon Musk がTwitterを「X」にリブランドしたことで、プラットフォーム名自体が「❌」と連想されるようになりました。「Cancel culture has been canceled(キャンセルカルチャーはキャンセルされた)」というMuskの発言は、「X」という名前とも皮肉に重なっています。
SNSでの❌の使い方④:「元カレ/元カノ(Ex)」の隠語
(あなたが元カレ(元カノ)なのには理由がある)
ここでの❌は、”ex”(元恋人)を絵文字で表現したスラング。日本語の「バツイチ」と偶然にも似た発想ですが、英語では「X = ex = former」という言葉遊びが元になっています。
7英語で「❌」を表現する完全フレーズ集
日本語の「バツ」に相当する英語表現を、シチュエーション別に整理しました。
🔴 「不正解・間違い」を表す表現
🟡 「ダメ・禁止・NG」を表す表現
🟢 「❌」のポジティブな英語表現
8日本人が間違えやすい⭕❌の落とし穴3選
日本では腕を交差させて「✕」を作る「ダメ」のジェスチャーが一般的ですが、欧米ではこのジェスチャーの意味が通じません。場合によっては「何のポーズ?」と困惑されます。英語圏で否定を示したい場合は、はっきり “No” と言うか、首を横に振りましょう。
対処法:“No, thank you.” “I’m afraid not.” “That won’t work.” など、言葉で明確に伝えるのが英語圏のマナーです。
英語の書類やフォームで “Mark X in the appropriate box” と指示されたとき、日本人は無意識に⭕を書いてしまうことがあります。しかし欧米では「⭕をつける」という習慣自体がないため、記号の意味が伝わらないか、最悪の場合「空欄」と見なされてしまいます。
対処法:海外の書類では指示通り「X」か「✓」をつけましょう。「⭕で囲む」ではなく「✗をつける」が国際標準です。
日本式の⭕❌△ランキングは、海外では「プレステのボタンの記号」としか認識されないことがあります。特に△の「まあまあ」という日本独自のニュアンスは、翻訳不能に近い概念です。
対処法:グローバルチームとの資料では、色(🟢🟡🔴)、英単語(Yes / Partial / No)、またはアイコン(✅ / ⚠️ / ❌)を使いましょう。
ある日本人留学生が西洋の学校でテストを返却されたとき──
🇯🇵 日本の感覚:「チェック=不正解の印。全問間違えたのか…😱」
🇺🇸 実際の意味:「チェック=正解の印。ほぼ全問正解!🎉」
この留学生は泣きそうになって先生に聞きに行ったそうです。文化の違いを知らないと、こういう悲劇(?)が起きます。
まとめ──記号1つで世界が変わる
たった1つの「❌」という記号が、
文化によってこれほど意味を変える。
それは言語を超えた「文化のOS」の違いなのです。
「⭕と❌」は日本文化の美しい記号体系。
しかし世界に出た瞬間、その意味は反転する。
記号の「暗黙の了解」に頼らず、
言葉で伝える力こそが、真のグローバルスキル。
