Pandora's boxの意味は?箱ではなく壺だった
入試に出るイディオム|第82回
今日の3つは、ギリシャ神話から来た open a Pandora's box、100年以上前の作家の言葉が広まった When life gives you lemons, make lemonade.、値段の交渉で最後に出る Take it or leave it. です。比喩表現・ことわざ・会話表現を1つずつ、由来から入試の出方まで見ていきます。
監修:原田高志(原田英語.com)
よかれと思って言った一言で、思ってもみなかった問題が次々に出てくることがあります。部活の試合が雨で流れて、がっかりする日もあるはずです。フリマアプリで値下げを頼んだら、「この値段でなければ売りません」と返ってくることもあるかもしれません。この3つの場面を英語で何と言うか、由来から入試の出方まで順に見ていきます。
open a Pandora's box
オウプン・ア・パンドーラズ・ボックス 後悔のことば思いもよらない問題を次々に引き起こすことに手をつける
英語版 Wikipedia によると、この言い方は、紀元前700年ごろのギリシャの詩人ヘシオドスの『仕事と日』に出てくる神話から来ています。
プロメテウスが天から火を盗みました。神々の王ゼウスは仕返しとして、プロメテウスの兄弟エピメテウスに、パンドラという女性を与えます。
パンドラは、預けられていた入れ物を開けてしまいます。中からつらい労働や重い病気など、たくさんの災いが人間の世界へ飛び出しました。あわてて閉めたとき、中に1つだけ残ったものがありました。ふつう「希望」と訳されるものです。
だから「パンドラの箱を開ける」は、思いもよらない問題をたくさん引き起こすことを始めるという意味になりました。
クラスのグループLINEで、あなたが軽い気持ちで送りました。
「この前の模試の点数、みんなで見せ合おうよ」
すぐに既読が30を超えます。「点数で人を比べるの?」「見せたくない人もいるよ」「じゃあ言い出した人から出して」。通知が止まりません。
「こんなことになるなら、言わなければよかった」
英語なら I opened a Pandora's box. と言えます。
こう使う
Asking about his past might open a Pandora's box.
彼の過去について聞くと、思いもよらない問題が次々に出てくるかもしれない。
Changing the rules opened a Pandora's box of complaints.
決まりを変えたら、不満が次々に噴き出した。
発音:Pandora の「ドー」を強く「パンドーラズ・ボックス」と言います。日本語の「パンドラ」のように平らに言うと伝わりにくくなります。box の o は口を縦に大きく開けます。
- こう問われる
- ①下線部 open a Pandora's box の言い換えで、cause many problems that nobody expected(だれも予想しなかった問題をたくさん起こす)を選ばせ、find a hidden treasure(隠れた宝を見つける)や keep a secret(秘密を守る)を並べる形。②open a Pandora's ( ) の空所に box を入れさせ、bag や door を並べる形。③That could open a Pandora's box. を訳させる形。
- ここで外す
- 「パンドラの箱=宝箱」と読んで、find a hidden treasure を選ぶ誤りが出ます。もう1つは、同じ「入れ物を開ける」絵の let the cat out of the bag(秘密をもらす)と混ぜて、空所に bag を入れる誤りです。
- 決め手
- 開けたあとに何が起きると書いてあるかを見ます。problems・trouble・arguments のような悪いことが次々に続いていれば Pandora's box、秘密が知られたという話なら let the cat out of the bag です。
Changing the school rules could open a Pandora's box.
- 誤答
- 校則を変えれば、思いがけない宝物が手に入るかもしれない。
- 正答
- 校則を変えれば、思いもよらない問題が次々に起きるかもしれない。
Before
Pandora's box を「パンドラの箱」と直訳して、宝箱のような良いものだと思い、言い換えで find a hidden treasure と迷っていた
After
開けると災いが飛び出す入れ物と読めば、「問題を次々に引き起こすこと」とすぐ取れる。言い換えでは cause many problems that nobody expected を選び、treasure を外せる
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open a Pandora's box を教室で使う(5分)
ねらい: open a Pandora's box を「思いもよらない問題を次々に起こす」と読み、由来を一言で説明できるようにする
- 黒板に大きな壺の絵を描き、「この中から、病気やつらい仕事が飛び出してきたら、どうなりますか」と聞きます
- 「ギリシャ神話で、パンドラという女性が入れ物を開けて、災いが世界に広がったという話があります。そこから生まれた言い方です」と伝えます
- 「もとの話では、箱ではなく大きな壺でした。16世紀の学者が箱と書きかえたとされています」と付け足します
- Letting students use phones in class might open a Pandora's box. を板書し、「どんな問題が出てきそうですか。隣の人と2つ挙げてください」と聞きます
出口チケット: 「その話題に触れると、問題が次々に出てくるかもしれない」を、open a Pandora's box を使って英文1文で書かせる
When life gives you lemons, make lemonade.
ウェン・ライフ・ギヴズ・ユー・レモンズ、メイク・レモネイド 前向きのことばつらいことが起きたら、それを良いことに変えてしまえ
英語版 Wikipedia によると、この言い方が活字になった最初の例として知られているのは、作家エルバート・ハバードの言葉です。1909年の雑誌『リテラリー・ダイジェスト』に、こう載りました。
A genius is a man who takes the lemons that Fate hands him and starts a lemonade-stand with them.(天才とは、運命が手渡したレモンを受け取り、それでレモネード屋を始める人のことだ)
ハバードは1915年にも、俳優マーシャル・P・ワイルダーへの追悼文で同じたとえを使いました。体に障害をかかえながら活躍した人を、運命が送ってきたレモンを拾って、レモネード屋を始めたとたたえています。
酸っぱいレモンは、そのままでは食べにくい。でも砂糖と水を足せば、おいしい飲み物になる。英語版 Wikipedia によると、同じ考え方は、そのあともいろいろな言葉で言い表されてきました。
ずっと練習してきた、テニス部の練習試合の日です。朝から雨で、外のコートでの試合は中止になりました。
がっかりして体育館に集まると、顧問の先生が言います。「今日は1日、体育館が使える。苦手なサーブだけ、とことん練習しよう」
夕方には、ずっと入らなかったセカンドサーブが、少しずつ入るようになっていました。
「中止になったおかげで、いちばん練習したかったことができた」
英語なら When life gives you lemons, make lemonade. と言えます。
こう使う
I failed the audition, but I learned a lot. When life gives you lemons, make lemonade.
オーディションには落ちたけれど、たくさん学べた。つらいことは、良いことに変えればいい。
The train stopped, so we studied at the station café. When life gives you lemons, make lemonade!
電車が止まったので、駅のカフェで勉強した。悪いことも、生かしてしまえばいい!
発音:lemons と lemonade を強く「レモンズ……レモネイド」と言います。lemonade は「ネイ」を強く長めに言います。日本語の「レモネード」の「ネー」のまま平らに言わないこと。
- こう問われる
- ①When life gives you lemons, make ( ). の空所に lemonade を入れさせ、juice や lemon tea を並べる形。②このことわざの言い換えで make the best of a bad situation(悪い状況をできるだけ生かす)を選ばせ、avoid sour things(酸っぱいものを避ける)や give up easily(すぐあきらめる)を並べる形。③会話文の応答選択で、予定が台無しになった友達への返事にこのことわざを選ばせ、Don't cry over spilled milk.(済んだことを悔やんでも仕方ない)を並べる形。
- ここで外す
- lemons を「良いもの」と読み、「人生が幸運をくれたら、それを楽しめ」と訳す答案が出ます。もう1つは、Don't cry over spilled milk. との取り違えです。こちらは「悔やむな」で止まり、悪い状況を生かして何かを作る、という意味まではありません。
- 決め手
- そのあとに「この状況を生かして何かしよう」という提案が続くかを見ます。続いていれば When life gives you lemons, make lemonade.、「悔やんでも仕方ない」で終わっていれば Don't cry over spilled milk. です。
- 誤答
- Don't cry over spilled milk./悔やむなと言うだけで、時間を生かして動画を作ろうという B の続きにつながりません
- 正答
- When life gives you lemons, make lemonade./悪い状況を良いことに変えよう、で「この時間を使って動画を作ろう」という提案につながります
Before
lemon を果物のレモンとしか読めず、「人生がレモンをくれたら」で止まって、Don't cry over spilled milk. との違いも分からなかった
After
レモン=酸っぱい、つらいこと。レモネード=それを変えて作ったものと読めば、「悪い状況を生かせ」とすぐ取れる。会話文では、提案が続けばこちら、悔やむなで終われば spilled milk と選び分けられる
When life gives you lemons, make lemonade. を教室で使う(6分)
ねらい: When life gives you lemons, make lemonade. を「つらいことを良いことに変えよう」と読み、Don't cry over spilled milk. と場面で使い分けられるようにする
- 「レモンをそのまま1個かじったら、どんな味がしますか」と聞き、「酸っぱい」と答えさせます
- 「では、そのレモンに砂糖と水を足すと、何ができますか」と聞き、「レモネード」を引き出します
- 黒板に When life gives you lemons, make lemonade. と書き、「レモンは人生のつらいこと、レモネードはそれを変えて作った良いものです」と伝えます
- Don't cry over spilled milk. を並べて書き、「試合が中止になった友達に『その時間で練習しよう』と言うなら、どちらですか」と聞いて答えさせます
出口チケット: 「つらいことがあったら、それを良いことに変えればいい」という考えを、When life gives you lemons, make lemonade. を使って、自分の経験に合わせて英文2文で書かせる
Take it or leave it.
テイク・イット・オア・リーヴ・イット 強気のことばこの条件のまま受けるか、断るかのどちらかにしてくれ(これ以上は変えない)
この言い方の生まれた場面は、はっきり分かっていません。まず、この絵を頭に置いてください。
売り手が、品物を1つだけ机に置きます。「これを持っていく(take it)か、ここに置いていく(leave it)か。ほかの選び方はありません」。
英語には、同じ考え方を表す古い言い方があります。Wiktionary がこの表現の関連語に挙げている Hobson's choice です。英語版 Wikipedia によると、イギリスのケンブリッジで貸し馬屋をしていたトマス・ホブソン(1544〜1631年)から来ています。
ホブソンは40頭ほどの馬を持っていたとされます。それでも客に許したのは、戸口にいちばん近い馬に乗るか、どれにも乗らないかだけでした。良い馬ばかりが選ばれて、くたびれてしまうのを防ぐためだったとされています。
フリマアプリで、ほしかったスニーカーが4,000円で出ていました。
あなたはコメントします。「3,000円になりませんか?」
返事はすぐに来ました。「すでに相場より安くしています。4,000円から下げるつもりはありません。」
「この値段で買うか、やめるかだ、ってことか」
出品者の気持ちを英語にすると、Take it or leave it. です。
こう使う
This is my final offer. Take it or leave it.
これが最後の条件です。このまま受けるか、断るかにしてください。
I can take it or leave it. Coffee is fine, but I don't need it.
どちらでもいいよ。コーヒーは嫌いじゃないけど、なくてもかまわない。
発音:take と leave を強く「テイキット・オア・リーヴィット」と言います。take it と leave it は、それぞれ1語のようにつなげます。leave の「リー」は長くのばします。短く言うと live(住む)に聞こえます。
- こう問われる
- ①会話文の応答選択で、値下げを頼まれた売り手の返事として Take it or leave it. を選ばせ、Take your time.(ゆっくりどうぞ)や Take it easy.(気楽にね)を並べる形。②Take it or ( ) it. の空所に leave を入れさせ、give や lose を並べる形。③I can take it or leave it. の意味を選ばせる形(「好きでも嫌いでもない」)。
- ここで外す
- leave を「去る」と読んで、「それを持って立ち去れ」と訳す答案が出ます。もう1つは、take it で始まる Take it easy. との取り違えです。こちらは相手を落ち着かせる言葉で、条件を突きつける意味はありません。
- 決め手
- 直前に、値段や条件をめぐるやりとりがあるかを見ます。相手が条件を変えてほしいと頼み、それを断る場面なら Take it or leave it.、相手が焦っていて落ち着かせる場面なら Take it easy. です。主語が I で I can take it or leave it. なら「どちらでもいい」です。
- 誤答
- Take it easy./相手を落ち着かせる言葉なので、値段は変えないという B の返事につながりません
- 正答
- Take it or leave it./「この値段で買うか、やめるか」で、最後の値段だという B の言葉につながります
Before
leave を「去る」とだけ覚えていて、「それを取るか去るか」と訳し、Take it easy. や Take your time. と同じ仲間だと思っていた
After
leave it = その場に置いていくと読めば、「この条件のまま受けるか、断るか」とすぐ取れる。会話文では、条件の交渉を断る場面でこれを選び、Take it easy. を外せる
Take it or leave it. を教室で使う(5分)
ねらい: Take it or leave it. を「この条件のまま受けるか断るか」と読み、Take it easy. と場面で使い分けられるようにする
- 机にペンを1本置き、「このペンを持っていくか、ここに置いていくか。ほかの選び方はありません」と言います
- 黒板に Take it or leave it. と書き、「leave は『去る』ではなく『置いていく』です」と確認します
- ペアを作り、1人が「この消しゴム、100円で売ってよ」と値下げを頼み、もう1人が「200円が最後。Take it or leave it.」と返す練習を2回させます
- Take it easy. を並べて書き、「試験の前で焦っている友達には、どちらを言いますか」と聞いて答えさせます
出口チケット: 値下げを頼まれた売り手として、最後の値段を言ってから Take it or leave it. で締める英語の返事を2文で書かせる
よくある質問
open a Pandora's box は、どこから来た言い方ですか?
英語版 Wikipedia によると、紀元前700年ごろのギリシャの詩人ヘシオドスの『仕事と日』に出てくる、パンドラの神話から来ています。パンドラが入れ物を開けたせいで、つらい労働や病気などの災いが人間の世界に広がった、という話です。
パンドラの「箱」は、本当に箱だったのですか?
いいえ。英語版 Wikipedia によると、ヘシオドスの原文では pithos(ピトス)という大きな貯蔵用の壺でした。16世紀の学者エラスムスが、1508年のことわざ集『アダギア』でこれを pyxis(箱)と書きかえたのが、「箱」になったもとだとされています。
When life gives you lemons, make lemonade. のレモンは何のたとえですか?
英語版 Wikipedia によると、レモンは酸っぱさ、つまり人生のつらいことのたとえです。それをレモネードにするとは、悪い状況を良いものに変えることを言います。
Take it or leave it. は失礼な言い方ですか?
強い言い方です。Wiktionary は「条件を変えずにそのまま受け入れるか、まるごと断るかのどちらかだ」という意味だと説明しています。これ以上は譲らない、と相手に伝える言葉なので、ていねいに頼まれた場面で軽く使うと、突き放した感じになります。