Strike while the iron is hotの意味と、紀元前ローマの教え
入試に出るイディオム|第45回
好機を逃さないStrike while the iron is hot.、勝負を受けて立つYou're on.、期待以上の努力を表すgo the extra mile。今日はことわざ・会話表現・比喩表現を1つずつ、由来から入試の外し方まで四幕で見ていきます。
監修:原田高志(原田英語.com)
『いまやるしかない』と感じた瞬間を逃してしまった経験はありませんか。今日はそんな場面で使われることわざから始めて、勝負を受けて立つ一言、期待以上の努力を表す言い方まで、3つ紹介します。
Strike while the iron is hot.
ストライク・ワイル・ジ・アイアン・イズ・ホット 好機のことば好機を逃さず、行動すべきときにすぐ行動する
鍛冶屋(かじや)は、炉で真っ赤に熱した鉄を、柔らかいうちに一気にハンマーで打って形を作ります。鉄は冷めると硬くなり、もう思うようには曲がりません。
この絵は古くから知られていて、紀元前1世紀のローマの作家プブリリウス・シルスは『鉄は熱いうちに打つべきだ』という趣旨の言葉を残しています。英語での比喩としての使用は1300年代のチョーサーの作品にまでさかのぼり、1546年のジョン・ヘイウッドのことわざ集にも収められています。
何百年ものあいだ、『機会は、熱があるうちにしか形にならない』という同じ絵が、姿を変えずに使われ続けてきました。
オープンキャンパスで、気になる部活の先輩を見かけたことがあります。話しかけようと思った瞬間はあったのに、『あとでいいか』と先延ばしにして、結局その日は声をかけられませんでした。
あとになって、Strike while the iron is hot. という言葉を知り、あの一瞬が『鉄が熱かった』瞬間だったんだと気づきました。
こう使う
The store was offering a huge discount, so we decided to strike while the iron was hot and bought the tickets right away.
その店が大幅な割引をしていたので、私たちは好機を逃さず、すぐにチケットを買うことにしました。
If you want to ask for a raise, strike while the iron is hot — right after you finish a big project.
昇給を頼みたいなら、好機を逃さないことです。大きなプロジェクトを終えた直後がそのときです。
発音:iron は『アイロン』ではなくアイアンと読みます。真ん中にrの音が入り、日本語の家電の『アイロン』とは発音がずれるので注意してください。
- こう問われる
- ①長文の内容一致問題で、登場人物がなぜすぐに行動を起こしたのかを問う形。②会話文で、迷っている相手に行動を促す一言として空所に入れる形。③文字どおり『鉄を打つ』作業の話だと誤読させる形。
- ここで外す
- 字義どおり『金属加工の話』だと取り違える誤りが定番です。文脈に、ある人物が機会やチャンスについて話している場面があれば、これは比喩です。また、Make hay while the sun shines.(日が照っているうちに干し草を作れ)という似た意味のことわざと混同することもあります。
- 決め手
- 直前・直後に、チャンスや機会(opportunity, chance)についての言及があるかどうかを見ます。あれば、これは『好機を逃すな』ということわざです。
She got a great response to her first video, so she decided to strike while the iron was hot and posted a follow-up the very next day.
- 誤答
- 彼女は鉄でできた道具を、熱いうちに使うことにした、という意味です
- 正答
- 彼女は好機を逃さず、すぐに次の行動を取ることにした、という意味です
Before
『いまがチャンスだ』と感じても、それを一言で言い表す英語を知らず、行動をためらう理由を無駄に長く説明していた
After
Strike while the iron is hot. の一言でその感覚を言い表せるようになる。長文で似た比喩に出会っても、行動を促す場面だとすぐに見抜ける
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Strike while the iron is hot. を教室で使う(6分)
ねらい: 熱した鉄がすぐ冷める、という物理的なイメージを『好機』の比喩に結びつけて理解させる
- 「アイロンを熱く温めてから、しばらく放置するとどうなりますか」と聞き、『冷める』という答えを引き出します
- 「冷めたアイロンで、しわはうまく伸ばせますか」と聞き、『伸ばせない』ことを確認します
- Strike while the iron is hot. を板書し、「鉄も同じで、熱いうちにしか形を変えられません」と説明します
- 「自分の経験で、『あのときすぐやればよかった』と思ったことはありますか」と聞き、2〜3人に発表させます
- 発表の内容を、I should have struck while the iron was hot. の形にまとめて黒板に書きます
出口チケット: 自分の経験を1つ選び、I should have struck while the iron was hot because ~ の形で英語にして書かせる
You're on.
ヨア・オン 闘志のことばその勝負(挑戦・賭け)、乗った。受けて立つ
on には、スイッチが入って『作動している』状態を表す使い方があります。The party is on.(パーティーは予定どおり開催される)のように、予定や取り決めが『有効である』ことを表すonです。
You're on. は、相手が持ちかけた賭けや挑戦に対して、『その話、有効にします』『その取り決め、成立させます』と応じる言い方から生まれたと考えられています。挑戦や賭けを受けて立つときの決まり文句として、口語で長く使われてきました。
友達に『今日の宿題、どっちが先に終わらせられるか勝負しよう』と言われたことがあります。負けず嫌いなので、思わず引き受けたくなる場面です。
そんなとき、Sure.(いいよ)よりも一歩踏み込んで、You're on. と言い返せば、『その勝負、受けて立つ』という闘志がそのまま伝わります。
こう使う
"I bet I can run faster than you." "You're on. First one to the gate wins."
「私のほうが君より速く走れると思うよ。」「その勝負、乗った。門まで先に着いたほうの勝ちね。」
"Loser buys lunch tomorrow." "You're on!"
「負けたほうが明日のランチをおごるってことで。」「よし、乗った!」
発音:You're はヨアと短くまとめ、on を強く言ってヨア・オンと続けます。You are on. と一語ずつ区切って発音すると、決まり文句らしさが薄れるので注意してください。
- こう問われる
- ①会話文の応答選択で、挑戦や賭けを持ちかける発言のあとに続く一言として選ばせる形。②You're on. を『あなたは(何かの)上にいる』と直訳させる誤答を混ぜた形。③You're up.やDeal.との使い分けを問う形。
- ここで外す
- You're on. を文字どおり『あなたは上にいる』と読んでしまう誤りが定番です。onを前置詞の『〜の上に』としか習っていないと起こります。直前に賭けや挑戦を持ちかける発言(Bet you can't ~. / I bet ~.)があるかどうかが見分ける手がかりです。
- 決め手
- 直前の発言が、賭け・挑戦・勝負を持ちかける内容(Bet you can't ~. How about a race?など)であれば、You're on. はその挑戦を受け入れる返事です。
- 誤答
- You're up/これは『次はあなたの番だ』という意味で、勝負を受ける返事ではありません
- 正答
- You're on/持ちかけられた勝負を『受けて立つ』という返事にあたります
Before
友達に勝負を持ちかけられたとき、OK. としか返せず、勝負に乗る気持ちが伝わりにくかった
After
You're on. の一言で、挑戦を受けて立つ気持ちをそのまま表せるようになる。onを前置詞としてしか知らなかった状態から抜け出し、会話文の応答選択でも迷わなくなる
You're on. を教室で使う(5分)
ねらい: onの『有効になっている』というイメージを、賭けや挑戦を受ける場面と結びつけて理解させる
- 「電気のスイッチがonのとき、どんな状態ですか」と聞き、『動いている、有効になっている』を確認します
- 「賭けや勝負も、両方が了承すれば『成立』しますね」と言い、You're on. を板書します
- 「Bet you can't eat three hamburgers. と言われたら、何と返しますか」と聞き、You're on. を引き出します
- ペアで、賭けを持ちかける役と、受けて立つ役を交代しながら、You're on. を使った短いやり取りを練習させます
- 最後に、Deal.(それで決まりだ)やI'm in.(私も参加する)との違いを一言添えます
出口チケット: Bet you can't solve this problem in one minute. に対する自然な返事を1文書かせる
go the extra mile
ゴウ・ジ・エクストラ・マイル 誠意のことば期待されている以上のことをする、一歩踏み込んで努力する
この表現は、新約聖書『マタイによる福音書』5章41節にさかのぼるとされています。イエスは、『誰かがあなたに1マイル運ぶよう強制するなら、その人と一緒に2マイル行きなさい』と教えました。
背景には、当時のローマ帝国の法律がありました。ローマの兵士は、道で出会った一般人に、自分の荷物を1マイルだけ運ばせる権利を持っていたのです。イエスの教えは、その強制された1マイルに、自分から進んでもう1マイルを付け加えなさいという、逆境への向き合い方を示したものでした。
実際の文章で確かめられるのは、まず go the second mile(2マイル目を行く)という形で、1816年の宗教書に出てきます。いまの go the extra mile の形は、1901年のアメリカの新聞(Cambridge Chronicle)に記録が残っています。
文化祭の案内係を頼まれ、掲示物を1枚作ってほしいと言われたことがあります。文字だけでも十分だったのですが、自分から手書きのイラストを1つ添えてみました。
それを見た先生に『よくやってくれたね』と言われたとき、まさに go the extra mile(期待以上のことをする)を体現した瞬間だったのだと、あとから気づきました。
こう使う
The hotel staff went the extra mile by arranging a birthday cake for our daughter without being asked.
ホテルのスタッフは、頼んでもいないのに娘の誕生日ケーキを用意してくれるなど、期待以上のことをしてくれました。
If you want to stand out in your job search, go the extra mile and research the company thoroughly.
就職活動で目立ちたいなら、期待以上の努力をして、その会社を徹底的に調べておくことです。
発音:extra はエクストラ、最初の音節にアクセントがあります。mile は『マイル』ではなくマイオに近い音で、lの音をやわらかく響かせます。
- こう問われる
- ①長文の内容一致問題で、ある人物の仕事ぶりや姿勢を評価する表現として問う形。②extra mileを文字どおり『追加の1マイル』という距離の話だと誤読させる形。③会話文で、相手の努力を称える一言として空所に入れる形。
- ここで外す
- go the extra mile を、文字どおり『あと1マイル余分に歩く』という移動の話だと取り違える誤りが定番です。文脈に、仕事や勉強で期待以上の努力をしたという話があれば、これは比喩表現です。
- 決め手
- 直前・直後に、『求められている以上のことをした』『期待を超えた』という内容があるかどうかを見ます。あれば、これは努力を評価する比喩表現です。
Our teacher always goes the extra mile, staying after class to help students who are struggling.
- 誤答
- 先生はいつも、余分に1マイル歩いて通勤している、という意味です
- 正答
- 先生はいつも、期待されている以上のことをしている、という意味です
Before
『あの人はよくやってくれる』という気持ちを、do a good jobのような平板な言い方でしか表せなかった
After
go the extra mile という1つの比喩で、期待以上の努力への敬意を表せるようになる。長文でextra mileという語に出会っても、距離の話ではなく人の姿勢の話だと見抜ける
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go the extra mile を教室で使う(6分)
ねらい: 『強制された1マイル』に自分から1マイルを足す、という聖書の場面を通じて比喩の成り立ちを理解させる
- 「誰かに無理やり1つ仕事を頼まれたら、どんな気持ちになりますか」と聞きます
- 「では、頼まれた1つに、自分からもう1つ付け加えたら、相手はどう思うでしょうか」と聞きます
- go the extra mile を板書し、「もともとは、強制された1マイルに、自分からもう1マイルを足す、という聖書の教えから来ています」と説明します
- 「自分の経験で、頼まれた以上のことをした・してもらったことはありますか」と聞き、2〜3人に発表させます
- 発表の内容を、He/She went the extra mile by ~ing の形にまとめて黒板に書きます
出口チケット: 自分の経験を1つ選び、I went the extra mile by ~ing の形で英語にして書かせる
よくある質問
Strike while the iron is hot. はどこに由来しますか?
鍛冶屋が真っ赤に熱した鉄を、柔らかいうちにハンマーで打って形作る作業に由来する比喩です。英語での比喩としての使用は1300年代のチョーサーの作品にまでさかのぼります。
You're on. と Deal. はどう使い分けますか?
どちらも合意や了承を示しますが、You're on. は特に賭けや挑戦を「受けて立つ」場面でよく使われます。Deal. はより一般的な取引や約束の成立に使われます。
go the extra mile はどこに由来しますか?
新約聖書マタイによる福音書5章41節にあるイエスの教えに由来するとされています。ローマ帝国の法律で一般人が兵士の荷物を1マイル運ばされる強制労働があり、そこにさらに1マイルを自分から加えなさい、という教えが元になっています。