「手柄の横取り」は英語で?steal one's thunderの意味
入試に出るイディオム 第29回
ことわざから1つ、フェンシング由来の会話表現から1つ、劇作家の逸話が生んだ慣用句から1つ、3つの表現を取り上げます。それぞれの由来といまの使われ方、入試での問われ方までまとめました。
監修:原田高志(原田英語.com)
今日も3つの表現を由来から見ていきます。1920年代の広告業界で生まれたことわざ、フェンシングの掛け声、そして劇作家の悔しい逸話。どれも由来を知ると、意味がすっと入ってくる表現です。
A picture is worth a thousand words.
ア・ピクチャー・イズ・ワース・ア・サウザンド・ワーズ 説得のことば1枚の絵や写真は、言葉で長く説明するよりも多くのことを伝えられる、という意味のことわざ。「百聞は一見に如かず」に近い場面で使われます。
1921年、広告業界誌『プリンターズ・インク』に、フレデリック・R・バーナードが"One look is worth a thousand words."という一文を寄せ、これを『ある日本の哲学者の言葉』として紹介しました。1927年には同じ雑誌が形を変えて『中国のことわざ、一枚の絵は一万語に値する』として掲載します。実際にはそのような哲学者もことわざも見つかっておらず、バーナード自身が『東洋の言葉だとした方が説得力が出る』と考えて作った可能性が高いとされています。それでも『中国のことわざ』という説明は、その後何十年も辞典や記事に引用され続けました。
発表の準備で、伝えたいことを全部書こうとしてスライドが文字だらけになった。友達に見せると『何が言いたいのか分からない』と言われる。代わりにグラフを1つだけ貼ったスライドに変えると、一目で数字の変化が伝わった。A picture is worth a thousand words.(絵は言葉より雄弁)とは、まさにこの瞬間のことだ。
こう使う
The chart didn't need any explanation. A picture is worth a thousand words.
そのグラフには説明は要らなかった。まさに、絵は言葉より雄弁だ。
Instead of describing the mess, she just sent a photo. A picture is worth a thousand words, after all.
彼女は散らかった部屋の様子を説明する代わりに、写真を1枚送った。結局のところ、絵は言葉より雄弁だから。
発音:wordsの語尾は/z/の音で終わります。日本語の『ワーズ』よりも、舌先を上の歯につけない濁った音を意識してください。worthのthも忘れずに、舌を軽く歯にはさんで発音します。
- こう問われる
- ①長文の要旨把握で、視覚情報の効果を説明する一文の言い換えとして選ばせる形。②会話文で、写真や図を見せる場面の応答として空所に入れる形。③文字どおりの意味(絵に高い値段が付く)ではなく、比喩の意味を選ばせる形。
- ここで外す
- worth(〜の価値がある)とword(語)のつづりを混同し、a picture is worth a thousand wordsをa picture is word a thousand wordsのように書いてしまう誤りが定番です。
- 決め手
- worthのあとに数量を表す語(a thousand words)が続いていれば『〜の価値がある』という意味のworthです。wordsの前にworthがあるかを必ず確認します。
Instead of writing three paragraphs, he simply showed a chart, because a picture is worth a thousand words.
- 誤答
- 彼は3段落分の文章を書く代わりに、単に高価な絵を見せた。なぜなら、その絵は千語分の値段がしたからだ。
- 正答
- 彼は3段落分の文章を書く代わりに、単にグラフを見せた。なぜなら、1枚の絵は千の言葉よりも多くを伝えるからだ。
Before
wordを見て、『言葉の代わりに絵を使う』という程度の意味だと思い、なぜthousandという数字が付くのか気にしていなかった
After
情報量の多さを誇張して表す言い方だと分かり、要旨把握の設問で『視覚情報の効果』を述べた一文だとすぐに見抜ける
動画で見る
A picture is worth a thousand words. を教室で使う(5分)
ねらい: 視覚情報の効果を説明する場面で、この表現を使わせる
- 先生「言葉で説明するより、写真や図を見せたほうが伝わった経験は?」と問いかける
- 文字だらけのスライドと、グラフ1つだけのスライドを見比べさせ、どちらが伝わるか確認する
- ペアで、自分のスマホの写真を1枚見せながら、A picture is worth a thousand words.を使って説明させる
- 出口チケットで、この表現を使った1文を書かせる
出口チケット: 『説明を書くより、写真を1枚見せたほうが早かった』という場面を、A picture is worth a thousand words.を使って英語で書きなさい。
Touché.
トゥーシェイ 脱帽のことば相手の指摘や切り返しが的を射ていて、こちらが一本取られたと認めるときの一言。「一本取られた」「それを言われると弱い」に近い。
フランス語のtoucher(触れる)の過去分詞touchéは、もとはフェンシングの試合で、相手の剣先が自分に触れたことを認める掛け声でした。英語では1902年から使われはじめ、1907年ごろには試合の外、つまり議論や会話の場でも、相手のうまい指摘を認める一言として使われるようになりました。剣の代わりに、言葉の切れ味で一本取られる、という置き換えです。
『ゲームばかりしてないで勉強したら』と言った相手に、『そういう自分こそスマホばかり見てるじゃん』と返された。たしかにその通りで、何も言い返せない。こういうとき、英語ならTouché.(一本取られたよ)の一言で済ませられる。
こう使う
"You always say you're busy, but you watched three movies this week." "Touché."
「いつも忙しいって言うけど、今週映画3本見たよね。」「一本取られたね。」
"If you're so against fast food, why is there a burger wrapper in your bag?" "Touché."
「ファストフードにそんなに反対してるなら、なんでカバンにハンバーガーの包み紙が入ってるの?」「それを言われると弱いな。」
発音:語尾のchéは日本語の『シェ』に近い音で、最後にアクセントを置きます。『トゥーチ』のように読まないように注意してください。
- こう問われる
- ①会話文で、相手の切り返しに『一本取られた』と認める応答として空所に入れる形。You've got a point there. や I can't argue with that. と並べられます。②Touché.の意味を、『負けを認める謝罪』ではなく『相手の指摘のうまさを認める』軽いニュアンスで選ばせる形。③フェンシング由来だと知ったうえで、比喩的な使い方を選ばせる形。
- ここで外す
- Touché.を『ごめんなさい』のような謝罪の言葉だと訳してしまう誤りが定番です。謝罪ではなく、相手の指摘のうまさを認める軽い一言です。
- 決め手
- 直前に相手の鋭い指摘や矛盾を突く発言があれば、Touché.は謝罪ではなく『一本取られた』という意味です。深刻な謝罪の場面には使いません。
- 誤答
- I'm terribly sorry.(深刻な謝罪。相手の指摘のうまさを認める軽さがない)
- 正答
- Touché.(『一本取られたね』という、相手の指摘のうまさを認める軽い一言)
Before
Touché.を見ると、フランス語だから発音も意味も分からず、そのまま読み飛ばしていた
After
フェンシングの『一本取られた』という絵が浮かび、相手の鋭い指摘に対する軽い返しだとすぐに分かる
動画で見る
Touché. を教室で使う(5分)
ねらい: 相手の指摘のうまさを認める場面で、Touché.を使わせる
- 先生「友達に矛盾を指摘されて、何も言い返せなかったことは?」と問いかける
- フェンシングで剣が触れる場面の絵を見せ、touchéが『一本取られた』の掛け声であることを確認する
- ペアで、片方が軽い矛盾を指摘し、もう片方がTouché.で認める会話を演じさせる
- 出口チケットで、この表現を使った会話を1組書かせる
出口チケット: 『部活を休むと言いながらゲームをしていたことを指摘された』という場面を、Touché.を使って英語で書きなさい。
steal someone's thunder
スティール・サムワンズ・サンダー 横取りのことば人の手柄や注目を、先に横取りする。人が発表しようとしていたことを先に言ってしまい、注目を奪う。
18世紀初めの劇作家ジョン・デニスは、自作の劇『Appius and Virginia』(1709年)のために、舞台裏で雷の音を再現する仕掛けを考えました。ところがこの劇はすぐに打ち切りになってしまいます。その後、同じ劇場で上演された『マクベス』で、デニスの考えた雷の仕掛けだけが、断りなく使われているのを客席で聞いてしまいました。伝えられている言葉は『あれは私の雷だ。芝居は上演させないくせに、雷だけは盗みおって』というもので、正確な言い回しは記録によって少しずつ違い、はっきりとは分かっていません。この逸話が1753年の伝記集で活字になり、そこから比喩表現として広まりました。
委員会で自分が新しい企画を発表するつもりだった。ところが会議の最初に、別の委員が同じ内容を先に話してしまう。悪気はなさそうだったが、拍手はその人に向いていた。He stole my thunder.(彼に先を越されてしまった)とは、まさにこの状況を指す。
こう使う
I was about to announce our engagement, but my sister stole my thunder by posting it online first.
私たちの婚約を発表しようとしていたのに、姉が先にネットに投稿して先を越されてしまった。
He didn't mean to steal her thunder; he just didn't know she was planning to share the news herself.
彼は彼女の手柄を奪うつもりはなかった。彼女自身がそのニュースを発表するつもりだとは知らなかっただけだ。
発音:thunderの語頭thはthinkと同じ無声音です。日本語の『サ』ではなく、舌を上下の歯の間に軽くはさんで息を出す音を意識してください。
- こう問われる
- ①長文の内容一致で、登場人物が自分の手柄や発表の機会を奪われた場面の言い換えとして選ばせる形。②会話文で、誰かが先に話してしまって注目を奪われた状況を表す形として空所に入れる形。③文字どおりの『雷を盗む』ではなく、比喩の意味を選ばせる形。
- ここで外す
- stealをtookなど別の動詞に置き換えて書いてしまう誤りが定番です。steal one's thunderは決まった形で使い、動詞を入れ替えると不自然になります。
- 決め手
- thunderの前にsomeone's(またはmy / his / herなど)が付き、steal(盗む)と組み合わさっていれば、天候の話ではなく『人の手柄や注目を奪う』という比喩です。
The intern hadn't meant to steal his manager's thunder, but the client praised the intern's idea before the manager could present it.
- 誤答
- そのインターンは、上司の雷雨を盗むつもりはなかったが、上司が発表する前に、顧客がインターンのアイデアを褒めてしまった。
- 正答
- そのインターンは、上司の手柄を奪うつもりはなかったが、上司が発表する前に、顧客がインターンのアイデアを褒めてしまった。
Before
steal one's thunderを見て、『雷を盗む』という不思議な組み合わせのまま丸暗記しようとしていた
After
劇作家の逸話が浮かび、『人の見せ場や手柄を先に奪う』という比喩だとすぐに読み取れる
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steal someone's thunder を教室で使う(5分)
ねらい: 人の手柄や発表の機会を奪ってしまった、または奪われた経験を、steal someone's thunderで言わせる
- 先生「発表しようとしていたことを、先に誰かに言われてしまったことは?」と問いかける
- 劇作家ジョン・デニスの逸話を板書し、thunderが比喩として使われるようになった経緯を確認する
- ペアで、先を越された(または越してしまった)経験を1つ話し、steal someone's thunderを使って言い直させる
- 出口チケットで、SheまたはHe stole my thunderの形で1文を書かせる
出口チケット: 『自分が話そうとしていたことを、先に友達が言ってしまった』という場面を、steal someone's thunderを使って英語で書きなさい。