4世紀。ローマには、土曜に断食するという習慣がありました。ミラノには、ありません。
両方の街を行き来する人にとって、これは笑い事ではない。作法を間違えれば、信仰そのものを疑われかねない時代です。どちらが正しいのか。
問われたミラノの司教アンブロシウスは、どちらが正しいとは答えなかった、と伝えられています。答えたのは、こうでした。「ローマにいるときはローマのやり方で。ここにいるときは、ここのやり方で。」
正解を1つに決めなかった。それが、この一言が千数百年残った理由だと思います。書き残したのはアウグスティヌスで、いまの英語の形に整ったのは18世紀ごろです。
見学に行った部活。準備の手順も、あいさつの仕方も、片づけの順番も、全部あなたの知らない形で動いている。
口を出したくなる場面が、たぶん2つか3つある。もっと早いやり方を、あなたは知っているから。
それでも最初の日は、黙って同じようにやってみる。そこにあるやり方には、たいてい理由があります。理由が見えるまでは、合わせておいたほうが早い。
When in Rome. とは、そういう一言です。自分を捨てろ、ではありません。まず理由を見てから動け、です。
なぜこの意味になるのか
4世紀の教会の記録にさかのぼると伝えられています。当時、ローマでは土曜に断食する習慣があり、ミラノにはその習慣がありませんでした。どちらに合わせるべきか迷った相手に、ミラノの司教アンブロシウスが「ローマにいるときはローマのやり方で、ここではここのやり方で」と答えた。この助言をアウグスティヌスが書き残したことで、宗教上の作法の話が、そのまま処世の言葉として千数百年生き残りました。いまの英語の形に整ったのは18世紀ごろです。
使うときの注意・使い分け
「そこのやり方に合わせなさい」という助言です。自分を曲げろ、という説教ではありません。その土地にはその土地の理屈がある、という前提に立った、わりと現実的な言い回しです。短く When in Rome. だけで使われることも非常に多い。
例文で確かめる
I don't usually eat this, but when in Rome, do as the Romans do.
ふだんはこれを食べないのですが、郷に入っては郷に従え、ですね。
Everyone takes their shoes off here, so when in Rome.
ここではみんな靴を脱ぐから、それに合わせよう。
She learned the local greetings first, doing as the Romans do.
彼女はまず土地のあいさつを覚え、その土地のやり方に合わせた。
発音・リズム
when in ROME で一度切り、do as the ROMANS do と後半を一息で。ROMANS の s は「ズ」。短く When in Rome. だけで言い切ることも多いので、その言い方も口に入れておくと会話文で強い。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①整序問題で as / the / Romans / do を並べさせる形。②長文の異文化理解のテーマで、筆者の立場を問う設問。③会話文で、留学や旅行の話題の締めとして空所に入れる形。
- ここで外す
- Romans を Roman's と書いてしまう誤りが、群を抜いて多い。「ローマ人の」だと思ってアポストロフィを打つと、うしろの do が主語を失って文が壊れます。もう1つ、when の前後に主語と be動詞を足してしまう誤りも定番です(when you are in Rome の短縮なので、これで完成しています)。
- 決め手
- do as the Romans do の Romans は「ローマ人たち」という複数の主語。あとの do を動かしているのがこれです。アポストロフィを打った瞬間、動く人がいなくなります。
When in Rome, do as the ______ do.
郷に入っては郷に従え。(ローマにいるときは、ローマの人たちがするようにしなさい)
- 誤答
- Roman's / 所有格にすると、あとの do を動かす人がいなくなる
- 正答
- Romans / ローマ人たちが主語。だから do がそのまま続く
読み方が変わる
Before
「郷に入っては郷に従え」の英語だと丸暗記していた。だからつづりはうろ覚えで、整序問題では s を落としたりアポストロフィを打ったりしていた。
After
do as the Romans do は「ローマ人たちがするように、する」という、主語と動詞のそろった文だと分かる。丸暗記が文の構造になるので、書いても並べても崩れなくなる。
こぼれ話
英語圏では後半をまるごと省いて When in Rome... と言い、あとは相手に察してもらう使い方が定番です。慣れない料理に手を伸ばすとき、その土地の服装に合わせるとき、肩をすくめて一言。全部言わないほうが、こなれて聞こえるという珍しいことわざです。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- Do in Rome as the Romans do.adapt to local customs
When in Rome, do as the Romans do. を教室で使う(6分)
ねらい: ことわざを丸暗記ではなく文の構造として見せ、同時に「合わせる/通す」を自分の言葉で考えさせる。
- 黒板に When in Rome, do as the Roman's do. と、わざと誤った形で書く。「1文字おかしい。見つけて」と投げる(1分)。
- 見つかったら、「なぜ s なのか」を説明させる。『ローマ人たちがする』の主語だから、という答えが出れば、この項目は終わりです。
- ペアで1問。「合わせたほうがいいと思った場面/それでも合わせたくなかった場面を、1つずつ」(2分)。日本語でよい。
- 全体で2人だけ共有し、最後に When in Rome. とだけ言って終わる。後半を省く言い方を、その場で1回聞かせておく。
出口チケット: Romans を Roman's と書いてはいけない理由を、1行で書きなさい。
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
あなたは大学入試の英語を教えるベテラン講師です。私は高校2年生です。英語のことわざ When in Rome, do as the Romans do. について、以下を作ってください。条件:①このことわざが自然に使える場面を、高校生の生活(留学・部活・アルバイト・親戚の家)から4つ挙げ、それぞれ短い会話(英語4往復以内・日本語訳つき)にする ②4つのうち1つは、あえてこのことわざが当てはまらない場面にして、なぜ使えないかを説明する ③整序問題を3問作り、選択肢に Roman's や Rome's などの誤った形を混ぜる ④最後に、このことわざと似た意味の英語表現を3つ、硬さの違いつきで挙げてください。