アメリカンフットボールには、残り1回の攻撃でどうするかを選ぶ場面があります。
安全に蹴って、ボールを相手に渡す。距離は失うが、守りは整う。あるいは、蹴らずに攻め続ける。成功すれば前へ進めますが、失敗すればその場で攻撃権を失います。
後者を選ぶことを、英語で go for it と言います。蹴らない、という選択です。
この一言が励ましの言葉として広まったのは1980年代だと言われます。安全な選択肢があると分かっていて、それでも取りにいく。その決断のほうを指す語だということは、覚えておいて損がありません。
校内選考の用紙が、机の上に3日置いてある。出せば落ちるかもしれない。出さなければ、落ちることもない。
友達に相談する。相手はたぶん、長い言葉をくれません。Go for it.
この3語の強さは、迷いがあると分かったうえで押しているところにあります。すでに走っている人には、誰もこの言葉を使いません。
そしてもう1つの意味も、あなたはよく知っています。「これ借りていい?」「ああ、どうぞ」。Sure, go for it. 押している方向は、こちらもまったく同じです。
なぜこの意味になるのか
for は「〜を求めて、〜を目指して」。go for it で「それを目指して進め」です。アメリカのスポーツの現場から広まったと言われます。アメリカンフットボールには、残り1回の攻撃で、安全に蹴って相手にボールを渡すか、それとも攻め続けるかを選ぶ場面があります。攻め続けるほうを選ぶことを、英語で go for it と言います。失敗すればその場で攻撃権を失う。それでも取りにいく。この一言に「あと戻りできない選択を、それでもする」という手ざわりが残っているのは、そのためです。
使うときの注意・使い分け
①と②は、同じ一言です。どちらも「迷っている相手の背中を押す」という同じ働きで、押す先が挑戦なら①、許可なら②になるだけ。Try it. より押しが強く、Good luck. より当事者に近い。言われた側は、もう迷わなくていいという気持ちになります。
例文で確かめる
If you really want to try out for the team, go for it.
本当にそのチームの選考を受けたいなら、思い切ってやってみなよ。
Can I take the last piece?
最後の一つ、もらっていい?
Sure, go for it.
ああ、どうぞ。
She thought about it for a week, then decided to go for it.
彼女は一週間考えて、それから思い切ってやることに決めた。
発音・リズム
3語をつなげて「ゴウフォリッ」と一息で。for は弱く、it の t はほとんど飲みこまれます。1語ずつ切って読むと、励ましに聞こえません。速さがそのまま励ましの強さになる、珍しい表現です。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①会話文の応答選択。相手が迷っているときの返事として選ばせる形。②許可を求められたときの返事として選ばせる形。③下線部の言い換えで Go ahead. / Give it a try. を選ばせる形。
- ここで外す
- 「がんばれ」だけで覚えていると、許可の意味で出たときに選べません。Can I take this seat? — Go for it. を「この席、がんばって」と読んでしまう。もう1つ、Good luck. との取り違えも多い。Good luck は見送る言葉、Go for it は押す言葉で、立ち位置が違います。
- 決め手
- 相手が「やっていいか/やるべきか」で止まっているときの返事なら、挑戦でも許可でも Go for it.すでに動き出している相手には使いません。
- 誤答
- このパソコン使っていい?
—ああ、がんばって - 正答
- このパソコン使っていい?
—ああ、どうぞ使って
読み方が変わる
Before
Go for it. は「がんばれ」。それだけ知っていれば足りると思っていた。許可の返事として出てきたとき、意味がつながらず読み飛ばしていた。
After
どちらも「迷っている相手の背中を押す」一言だと分かる。2つの訳を覚えるのではなく、1つの働きが2方向に出ると分かる。会話文で、この3語が来た場面の空気まで読めるようになる。
こぼれ話
Go for it! は1980年代のアメリカで、スポーツ中継から日常会話へ一気に広がった言い方です。日本語の「いけー!」に近い勢いを持ちながら、相手が迷っているときにしか使わないという条件があります。すでに走り出している人に go for it とは言いません。迷いがあるから、押す価値があるのです。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- Give it a try.Go ahead.Do it.
- 反対の意味
- Think twice.Hold on.
Go for it. を教室で使う(5分)
ねらい: 同じ一言が、励ましにも許可にもなることを、実際に言わせて体感させる。
- 2つのやりとりを板書する。「I might apply for it. — Go for it.」「Can I sit here? — Go for it.」訳は書かない。
- 「同じ返事なのに、意味が違う。何が共通してる?」と投げる(1分)。『迷っている』が出れば成功です。
- ペアで、片方が迷っている一言を日本語で言い、もう片方が Go for it. とだけ英語で返す。役を交代して2回(1分30秒)。
- 最後に発音だけ整える。「ゴウフォリッ」と一息で。1語ずつ切ると励ましに聞こえないことを、両方言って聞かせる。
出口チケット: Go for it. と Good luck. の違いを、日本語で1行書きなさい。
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
あなたは大学入試の英語を教えるベテラン講師です。私は高校2年生です。Go for it. の2つの意味(①思い切ってやってみなよ ②どうぞ、やっていいよ)を、私が会話文で見分けられるようにしてください。条件:①両方の意味が出てくる会話文を4本作る(各4往復以内・日本語訳つき) ②高校生の生活の場面だけを使う ③どちらの意味かを問う設問を4問、各問の解説で「相手が何に迷っていたか」に必ず触れる ④Go ahead. / Good luck. / Give it a try. との違いを表で整理する ⑤最後に、私が会話文でこの手の短い返事に強くなるための練習法を1つ教えてください。