A rolling stone gathers no moss.
ア・ローリング・ストーン・ギャザーズ・ノー・モス
「①転がる石には苔が生えない(腰を据えない者は何も身につかない)②動き続ける者は錆びつかない」
石が転がり続けていると、表面に苔はつきません。転がるのをやめて、じっと同じ場所にいる石にだけ、苔は積もっていきます。
この絵が、まずあります。
Wikipediaによれば、いちばん古い記録は1023年ごろ、リエージュのエグベルトが集めた文章にあります。のちにエラスムスが『格言集』で広め、英語の形になったのは1546年、ジョン・ヘイウッドのことわざ集です。
もともとの読み方は、はっきりと否定的でした。あちこち移り住んで根を持たない人は、責任からも逃げてしまう。苔は、腰を据えた者だけが手にできるもの。そういう戒めです。
中学で吹奏楽、高校で写真部、いまは軽音。どれも楽しかったけれど、どれも1年で替わった。
親戚に言われます。「転がる石には苔が生えないぞ」。
ここで覚えておいてほしいのは、この一言を英語で言われたとき、褒められている可能性があることです。同じ文なのに、話し手がイギリス寄りの読み方をしているか、アメリカ寄りの読み方をしているかで、意味が正反対になります。
なぜこの意味になるのか
gather は「集める、少しずつためる」。moss は苔。石が主語になって「苔を集めない」と言っているところがこの文の作りです。日本語だと「苔が生えない」と苔を主語にしたくなりますが、英語は石の側から見ています。この視点の違いが、苔を財産として読ませる手がかりになっています。
使うときの注意・使い分け
会話で使うと、どちらの意味か聞き返されることがあります。それくらい割れている言い回しです。書き言葉で使うときは、前後で自分の立場をはっきりさせておくと誤解されません。
例文で確かめる
He has changed jobs five times. A rolling stone gathers no moss.
彼は5回も転職している。転がる石に苔は生えない。
Some people say a rolling stone gathers no moss, but she calls it freedom.
転がる石に苔は生えないと言う人もいるが、彼女はそれを自由と呼ぶ。
My grandfather believed in staying put. A rolling stone gathers no moss, he would say.
祖父は一か所にとどまることを信じていた。転がる石に苔は生えない、が口ぐせだった。
発音・リズム
moss は「モス」。口を丸めず、短く切ります。rolling の l は舌先を上につけたまま、ゆっくり ing へ移ります。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①長文の異文化・価値観のテーマで出て、筆者がどちらの意味で使っているかを問う形。②自由英作文の締めに使わせる形。③空所補充で moss / dust / rust のどれを入れるかを選ばせる形。
- ここで外す
- 「苔が生えない=いつも新鮮でいい」と、無条件に良い意味で訳す誤りが定番です。もともとのイギリスの読み方では苔こそが財産で、転がる石は何も得ていない側です。どちらの意味かは、必ず前後の文が決めます。rust(錆)を入れて A rolling stone gathers no rust. と書く誤りもよく見ます。
- 決め手
- 前後で settle down / roots / stability を肯定していれば戒めの意味、freedom / change / adventure を肯定していれば「錆びつかない」の意味です。
A rolling stone gathers no moss.
- 誤答
- 転がる石は苔をつけないので、いつまでも新しく美しいままだ
- 正答
- 転がる石に苔は生えない。腰を落ち着けない者は、何も身につかない
読み方が変わる
Before
「苔が生えない」を、汚れがつかないという良い意味だと思い込んでいた。長文で筆者が定住や地域のつながりを肯定しているのに、このことわざを褒め言葉として読み、筆者の主張と反対の選択肢を選んでいた。
After
苔が財産の側にあると分かると、前後の文がどちらを肯定しているかで意味を決められるようになる。前後を見るという一手が入るので、価値観を問う設問で取りこぼしが減る。
こぼれ話
1950年、ブルース歌手のマディ・ウォーターズが「Rollin' Stone」という曲を出しました。1962年に結成されたローリング・ストーンズは、この曲から名前を取っています。戒めだった言葉が、動き続けることを誇る名前になったわけです。言葉の意味を変えるのは辞書ではなく、使う人たちだということがよく分かる例です。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- Jack of all trades, master of none.
- 反対の意味
- Slow and steady wins the race.
A rolling stone gathers no moss. を教室で使う(7分)
ねらい: 同じことわざが、文化によって反対の意味になることを体験させる
- 「A rolling stone gathers no moss. これ、いい意味? 悪い意味?」と聞いて、挙手で分けます
- 分かれたところで「実は、どっちも正解です」と言います
- 「もともとのイギリスの読み方では、苔は財産。転がる石は何も持っていない」と黒板に描きます
- 「ところがアメリカでは、逆になった。動き続ける人は錆びつかない、と読む」と付け足します
- 「ではみんなは、どっち派?」とペアで2分。理由を英語で1文だけ書かせます
出口チケット: 「I think a rolling stone ___ . の形で、自分の考えを1文書いてください」
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
あなたは英語の先生です。A rolling stone gathers no moss. ということわざについて、次のことをしてください。①このことわざを肯定的に使った短い英文の段落と、否定的に使った短い英文の段落を、それぞれ4文ずつ作る。②どちらの段落にも、そのことわざを最後の1文として置く。③各段落の下に、どちらの読み方かを日本語で1行だけ書く。④語彙は高校1年生が読める範囲にする。⑤ことわざの解説は書かない。