宇宙のちりは、毎年約5200トンも地球に降っている
宇宙と地球No.161

宇宙のちりは、毎年約5200トンも地球に降っている

南極の井戸の底から、宇宙のちりが見つかった。

ホントTRUE

この判定の対象「宇宙のちりは、毎年何千トンも地球に降っている」

うなり度 読む時間8分 出典6件 確認した事実29件
もくじ
  1. 宇宙から地球に落ちる物質は、重さで比べるとほとんどが小さなちり
  2. 南極点では、飲み水の井戸の底に宇宙のちりがたまる
  3. 研究チームは南極の雪を切り出して溶かし、宇宙のちりを筆で1粒ずつ拾った
  4. 宇宙のちりは、1か所に降る量はほんのわずかでも、地球全体では1年に約5200トンになる
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

今この瞬間も、宇宙から地球へ、目に見えないほど小さなちりが降っています。

2021年に発表された研究によると、地球の表面に届く宇宙のちりは、1年に約5200トン。1日に直すと、約14トンです。それだけの「宇宙の粉」が、毎日、世界のどこかに降り積もっていることになります。

でも、ちりは小さすぎて、普通の地面ではほかの砂やほこりと見分けがつきません。では、研究者はどうやって数えたのでしょうか。

研究者が使ったのは、南極の雪です。人のいない雪原の雪を何トンも切り出して溶かし、残った粒を顕微鏡で1つずつ拾ったのです。南極点の基地では、もっと意外な場所から宇宙のちりが見つかっていました。基地の飲み水を作る井戸の底です。

この記事では、まず、地球に落ちる宇宙の物質のほとんどが、ちりであることを説明します。次に、南極で宇宙のちりを集めた2つの方法を紹介します。最後に、1年に約5200トンという数字が、どうやって出されたかを見ます。

01宇宙から地球に落ちる物質は、重さで比べるとほとんどが小さなちり

宇宙から落ちてくる物と聞くと、大きな隕石を思いうかべるかもしれません。でも、重さで比べると、いちばん多いのは小さなちりのほうです。

NASAには、宇宙から来た試料を管理する部署があります。その説明によると、宇宙のちりは「とても小さいが、毎年地球に落ちる地球外の物質の重さの大部分を占める」のです。2021年の研究も、地球に降る地球外の物質は1ミリより小さい粒が大部分だと書いています。

宇宙のちりには、地上に届くまでに溶けないものと、溶けて丸くなるものの2つのタイプがあります。0.1ミリより小さいちりは、大気に入ると空気にぶつかってすぐに速さが落ちるので、あまり熱くなりません。もう少し大きい粒は、大気の中で熱で溶け、丸い粒になって落ちてきます。地上に届いた宇宙のちりを、微隕石(びいんせき)といいます。

02南極点では、飲み水の井戸の底に宇宙のちりがたまる

南極点には、アメリカのアムンゼン・スコット基地があります。NASAの説明によると、この基地では、飲み水を外から運んでいません。地下の氷の中に熱い装置を下ろして氷を溶かし、井戸のようにして水をくみ上げているのです。

南極には、宇宙のちりが少しずつ、休まず降り続いています。そのちりは、雪と一緒に氷の中に閉じこめられます。井戸で氷を溶かすと、氷に閉じこめられていたちりが外に出て、井戸の底に沈んでいきます。

研究チームは1995年と2000年の2回、この井戸の底に特別な採集の道具を下ろしました。そして、7000個をこえる微隕石を回収したのです。基地の人たちが毎日飲む水を作る井戸は、宇宙のちりを集める、大きな「ちりとり」にもなっていました。

03研究チームは南極の雪を切り出して溶かし、宇宙のちりを筆で1粒ずつ拾った

1年に5200トンという数字を出したのは、ロハス(J. Rojas)らのチームです。フランスのパリ・サクレー大学などの研究者が参加しました。調べた場所は、南極の内陸のドームCという所にある、フランスとイタリアのコンコルディア基地。海岸から1100キロも内陸に入った、標高3200メートルの雪原です。

チームが気をつけたのは、人間がまき散らす汚れでした。基地に人が住み始めたのは1995年ごろです。そこで、それより前に積もった、深さ2メートルより下の雪だけを使いました。さらに、雪を取る溝は、基地の風上の、数百メートルから数キロ離れた場所に掘りました。のこぎりとシャベルは、水とアルコールで洗ってから使いました。

調査は2001〜2002年、2005〜2006年、2015〜2016年の、南極の夏に行われました。夏でも、溝の中は−45℃から−55℃です。切り出した雪は、60リットルのたるに15〜20キロずつ詰めて基地へ運びました。

雪は、ステンレスの専用の装置でゆっくり溶かしました。溶けた水を、目の細かい網でこします。網に残った物は、フランスのほこりの少ない実験室で顕微鏡で調べ、細い筆で1粒ずつ拾い上げました。網には、防寒着や手袋の繊維、たるのプラスチックのかけらも混ざっていました。宇宙のちりは、その中から見分けたのです。

雪を切り出し、溶かして、残った粒を顕微鏡で拾う
雪を切り出し、溶かして、残った粒を顕微鏡で拾う

04宇宙のちりは、1か所に降る量はほんのわずかでも、地球全体では1年に約5200トンになる

こうして見つかったのは、溶けていない微隕石が1280個、溶けて丸くなった粒が808個。どれも直径0.03〜0.35ミリほどです。雪1キロに含まれる丸い粒は、平均0.135個でした。1個見つけるのに、雪が7キロほど必要な計算です。

積もった雪の量から、1平方メートルに1年で降るちりの重さも出せます。この大きさ(直径0.03〜0.35ミリ)の粒だと、合わせて約8.6マイクログラムです。1マイクログラムは、1グラムの100万分の1です。100メートル四方の校庭でも、1年に0.09グラムほどにしかなりません。

でも、地球はとても広いのです。チームは、測った粒より小さいものや大きいものも含めて、地球全体の量を計算しました。その答えが、1年に約5200トンでした。

この研究では、ちりが降った年も分かります。雪が積もる速さから計算すると、調べた粒は1920年から1980年ごろに降ったものでした。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

宇宙のちりの量を正しく出すには、ちりが「どの広さに何年分」降ったものか、何割拾えたかを知る必要がある

宇宙のちりの量を測るには、2つのことを正確に知る必要があります。ロハスらの論文は、その2つをはっきり書いています。

一つは、「どれだけの広さに、どれだけの時間、降ったちりを集めたか」です。論文はこの量を、面積と時間をかけた量(平方メートル×年)で表しています。普通の場所では、集めたちりが何年分なのかを正しく知るのは難しいものです。ドームCの雪は、毎年ほぼ同じ速さで積もります。だから、溶かした雪の重さから、「何平方メートルに何年分」かが計算できるのです。

論文によると、ドームCの雪は、1平方センチあたり1年に約2.7グラム積もります。1平方メートルなら、1年に約27キロです。つまり、雪を27キロ溶かせば、「1平方メートルに1年間に降ったちり」を集めたことになります。いくつかの測定のうち、ある1組の測定でチームが溶かした雪は、合わせて3561キロです。これは、約132平方メートルに1年間降ったちりにあたります。132平方メートルは、小さな数字に見えます。でも、集めた広さと年数をはっきり決められることが、この方法の強みです。

もう一つは、「集めたちりの何割を、取りこぼさずに拾えたか」です。チームは、装置のかべを丁寧に磨き、溶かすたびによく洗い流しました。その結果、ちりの回収率は約90%と見積もられています。

南極の内陸は、この2つの条件を満たす、めずらしい場所です。人がほとんどおらず、土ぼこりも少なく、ちりが水に触れて変わってしまうことも少ないのです。

1年に地球の大気に入る宇宙のちり約1万5000トンのうち、地面まで届くのは約5200トン

論文は、大気に入る前の宇宙のちりを、1年に約1万5000トンと見積もっています。地表に届くのは約5200トン。論文が使ったモデル(計算のしくみ)は、大気に入ったちりが熱で溶けたり、蒸発したりする様子を計算に入れています。地表に届く量が少ないのは、大気の中で失われる分があるからです。

ただし、モデルの計算と、実際に見つかった粒の数には、ずれもあります。0.1ミリより小さい、溶けていない粒は、モデルが予想するより少ししか見つかりませんでした。論文は、理由として2つの可能性を挙げています。もろい小さな粒が、今の集め方ではすりぬけている可能性。そして、宇宙にある小さな粒が、予想より少ない可能性です。「5200トン」は確かな測定にもとづく数字ですが、答えが完全に決まったわけではないのです。

ほかの資料の数字と比べるときも注意が必要です。NASAの流星と隕石の解説ページは、地球に落ちる隕石の物質を「1日に約48.5トン」と見積もっています。ただし、これはアメリカ式のトンで、日本で使う1トン(1000キロ)より軽い単位です。ページには4万4000キロとも書かれています。1トン=1000キロのトンに直すと、1日に約44トン。1年にすると約1万6000トンで、ロハスらの地表の値の約3倍です。NASAのページには、これが大気に入る前の量か、地表に届く量かは書かれていません。どの大きさの粒まで数えたのか、大気に入る前か後か。それによって、数字は大きく変わります。

見つかった宇宙のちりの多くは、彗星から来たと考えられている

ロハスらのモデル計算では、見つかった微隕石の多くは、木星の近くを回る「木星族彗星」という彗星から来たと考えられています。小惑星帯から来たものは一部です。

1粒ごとの成分から、ちりがどこから来たかを探る研究もあります。2007年、テイラー(S. Taylor)らは、南極点の井戸の微隕石を調べました。そして、その約0.5%が、小惑星帯にある大きな小惑星「ベスタ」から来たと考えられている隕石の仲間と、成分がよく似ていることを示しました。論文の題は「ベスタの地殻のかけら」。ただし著者たちは、こう書いています。成分だけでは、火星の岩とも区別しきれない。ベスタから来た可能性が高いことを示してはいるが、証明はしていない。データから言えることと言えないことを、はっきり分けているのです。

05まとめ

地球には、1年に約5200トン、1日に約14トンの宇宙のちりが降っています。この数字は、南極の人がいない雪原の雪を切り出して溶かし、顕微鏡と筆で1粒ずつ拾って出したものです。

南極点の基地では、飲み水を作る井戸の底に、7000個をこえる宇宙のちりがたまっていました。南極点で暮らす人たちは、宇宙のちりが閉じこめられていた氷を溶かした水を、毎日飲んでいるのです。

人に話すなら、こう言おう

宇宙のちりって、毎年5200トンくらい地球に降ってるんだって。南極点の基地では、氷を溶かして飲み水を作る井戸の底に、宇宙のちりがたまってたらしいよ。
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英語で読む

Dust from Space in Our Water

CEFR A2219 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

Every day, tiny pieces of dust from space fall on the Earth.毎日、宇宙から来た小さなちりが地球に落ちてきています。 They are too small to see with our eyes.それは小さすぎて、私たちの目では見えません。 But together, they are very heavy.でも、全部合わせると、とても重いのです。 A study from 2021 says that about 5,200 tons reach the ground every year.2021年の研究によると、毎年約5200トンが地面に届いています。

How did scientists count something so small?科学者は、そんなに小さなものをどうやって数えたのでしょうか。 They went to a snowy place in the middle of Antarctica.彼らは南極の真ん中にある、雪の場所へ行きました。 The snow there is very clean, and it piles up at the same speed every year.そこの雪はとてもきれいで、毎年同じ速さで積もります。 The team cut blocks of old snow with saws and carried them in barrels.チームは古い雪のかたまりをのこぎりで切り出し、たるに入れて運びました。

Then they melted the snow and passed the water through a fine net.それから雪をとかし、その水を目の細かい網に通しました。 They looked at the net under a microscope.彼らは顕微鏡で網を調べました。 They picked up each tiny grain with a thin brush.小さな粒を一つずつ、細い筆で拾い上げました。 They found more than 2,000 pieces of space dust.宇宙のちりが2000個以上見つかりました。

At the South Pole, there is an American research station.南極点には、アメリカの研究基地があります。 The people there do not bring in drinking water.そこの人たちは、飲み水を外から運びこみません。 Instead, they melt ice under the ground to make water.かわりに、地下の氷をとかして水を作ります。 Space dust that was frozen in the ice drops to the bottom of the well.氷の中にこおっていた宇宙のちりが、井戸の底にしずみます。 Scientists collected more than 7,000 pieces there.科学者はそこで7000個以上を集めました。

Space dust falls on cities, too.宇宙のちりは、町の上にも降っています。 In 2017, a team found about 500 large pieces on the roofs of buildings.2017年、ある研究チームは建物の屋根の上で、大きめの粒を約500個見つけました。 So the next time you look at a roof, remember that it may hold a little dust from space.だから次に屋根を見るときは、そこに宇宙から来たちりが少しのっているかもしれないと思い出してください。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How much space dust reaches the ground every year?

    毎年どれくらいの宇宙のちりが地面に届きますか。

  3. Q3Why did the scientists go to Antarctica?

    科学者たちはなぜ南極へ行ったのですか。

  4. Q4In paragraph 3, the word "grain" is closest in meaning to ...

    第3段落の "grain" に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the South Pole station?

    南極点の基地について正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • dust名詞
    ちり、ほこり

    There was a lot of dust on the old desk.

    古い机の上にはほこりがたくさんあった。

    💡 space dust で「宇宙のちり」。数えられない名詞。

  • tiny形容詞
    とても小さい

    The baby has tiny fingers.

    その赤ちゃんの指はとても小さい。

    💡 small よりさらに小さいイメージ。

  • melt動詞
    とける、とかす

    The ice cream melted in the sun.

    アイスクリームが日なたでとけた。

    💡 反対は freeze(こおる)。melting point は「融点」。

  • microscope名詞
    顕微鏡

    We looked at a leaf under a microscope.

    私たちは顕微鏡で葉を見た。

    💡 micro(小さい)+ scope(見る道具)。telescope は「望遠鏡」。

  • grain名詞
    粒

    A grain of sand got in my eye.

    砂粒が目に入った。

    💡 「穀物」の意味もある。a grain of 〜 で「1粒の〜」。

  • well名詞
    井戸

    The village gets its water from an old well.

    その村は古い井戸から水を得ている。

    💡 副詞の well(上手に)と同じつづり。文の意味で見分ける。

  • frozen形容詞
    こおった

    The lake was frozen in January.

    1月、その湖はこおっていた。

    💡 freeze-froze-frozen。frozen food は「冷凍食品」。

  • research名詞
    研究、調査

    She does research on whales.

    彼女はクジラの研究をしている。

    💡 a research station で「研究基地」。do research on 〜 で「〜を研究する」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 29件)。

  1. Rojas, J. et al. (2021) The micrometeorite flux at Dome C (Antarctica), monitoring the accretion of extraterrestrial dust on Earth, Earth and Planetary Science Letters 560doi.org
  2. The NASA Cosmic Dust Collections(NASA Astromaterials Acquisition and Curation Office)curator.jsc.nasa.gov
  3. South Pole Water Well (SPWW) Collection(NASA Astromaterials Acquisition and Curation Office)curator.jsc.nasa.gov
  4. Taylor, S., Herzog, G. F. & Delaney, J. S. (2007) Crumbs from the crust of Vesta: Achondritic cosmic spherules from the South Pole water well, Meteoritics & Planetary Science 42doi.org
  5. Genge, M. J. et al. (2017) An urban collection of modern-day large micrometeorites, Geology 45doi.org
  6. Meteors & Meteorites Facts(NASA Science)science.nasa.gov

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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