靴下をはいて寝ると早く眠れる、という研究は6人だけの実験だった
ウラ取りライフハックNo.072

靴下をはいて寝ると早く眠れる、という研究は6人だけの実験だった

足より、おなかを温めるほうが効いた実験もある。

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この判定の対象「靴下をはいて寝ると、早く眠れる」

うなり度 読む時間8分 出典6件 確認した事実28件
もくじ
  1. ソウル大学の実験では、靴下をはくと寝つくまでの時間が16分から8.5分に縮んだ
  2. 実験に参加した本人たちは、靴下ありとなしの違いを感じていなかった
  3. 眠る前、体は手や足から熱を逃がして、体の芯の温度を下げる
  4. オランダの実験では、足より胴体を温めたほうが早く寝つけた
  5. 電気あんかやカイロを朝まで使うと、低温やけどのおそれがある
  6. 深掘り講義
  7. まとめ
  8. 英語で読む(A2・4択5問)
  9. 出典・ウラ取り

冬の夜、布団に入っても足先が冷たくて、なかなか眠れない。そんなときの裏ワザとして、「靴下をはいて寝ると早く眠れる」とよく言われます。

「靴下で早く眠れる」という話の根拠として、よく引用される研究があります。2018年に、韓国のソウル大学のチームが発表したものです。靴下をはいて寝ると、寝つきが平均7.5分早くなり、睡眠時間は32分長くなった、という結果でした。

ただ、論文を開いてみると、実験に参加したのは若い男性6人でした。この記事では、まず、ソウル大学の実験の中身を紹介します。次に、足を温めると眠くなるしくみを説明します。そのあと、足より胴体を温めたほうが効いたオランダの実験と、低温やけどの注意点を紹介します。

01ソウル大学の実験では、靴下をはくと寝つくまでの時間が16分から8.5分に縮んだ

実験のやり方は、こうです。参加したのは、平均22.7歳の健康な男性6人。室温23℃の、少しひんやりした部屋で、夜0時から朝7時まで眠ってもらいました。

一人が2回ずつ眠ります。1回は靴下なしです。もう1回は、寝る1時間ほど前から靴下をはいたままです。どちらを先にするかは、くじで決めました。靴下は、電気で温めるものではありません。ポリエステルでできた、普通の寝る用の靴下です。論文によると、韓国では冬に寝るための靴下が人気です。普段の靴下より少し緩く、柔らかい生地だそうです。

眠っているかどうかは、手首につけた小さな機械で決めました。手首の動きから、眠っている時間を計算するしくみです。

結果は、靴下をはいた夜のほうが、どの数字もよくなりました。寝つくまでの時間は、16.0分から8.5分に縮みました。夜中に目が覚めた回数も、ほぼ半分になりました。一方で、体の芯(内側)の温度や心拍数には、はっきりした差は出ませんでした。

02実験に参加した本人たちは、靴下ありとなしの違いを感じていなかった

ソウル大学の研究には、あまり紹介されない結果もあります。研究チームは、朝起きたときに、参加者にアンケートをとりました。よく眠れたか、深く眠れたか、すっきり起きられたか、という質問です。その答えには、靴下ありとなしで、はっきりした差が出なかったのです。

本人が答えた「寝つくまでの時間」は、靴下なしで平均47分、ありで37.5分でした。機械が測った8〜16分より、ずっと長くなっています。しかも、靴下ありとなしの差は、はっきりしませんでした。

研究チームは、本人が差を感じなかったわけとして、二つを挙げています。人数が少なかったことと、部屋がそれほど寒くなかったことです。そして、人数を増やし、女性や高齢者、もっと寒い部屋でも確かめる必要があると書いています。

03眠る前、体は手や足から熱を逃がして、体の芯の温度を下げる

では、なぜ足を温めると眠くなるのでしょう。手がかりは、体が熱をどう外に逃がすかにあります。

人の体の芯の温度は、夜に向かって少しずつ下がります。オランダの研究チームは、この温度の低下は、主に肌の血流が増えて熱が外へ逃げるためだと説明しています。熱を外へ出す場所として働くのが、手や足です。眠る前は手足の血管が広がり、肌が温かくなります。そして、手足の肌から熱が逃げていきます。

スイスのバーゼルの研究チームは2000年、このことを数字で示しました。比べたのは、手足の肌の温度と、胴体など体の真ん中に近い肌の温度です。手足が温まって、この二つの温度の差が小さくなっている人ほど、早く寝つけたのです。寝つきの速さを予想する手がかりとして、この差は、ほかの目安よりすぐれていました。体の芯の温度や、眠気のホルモン、本人が感じる眠さよりも、よい手がかりだったのです。

靴下で足を温めると、足から熱が逃げやすくなります。熱が逃げれば体の芯の温度が下がり、眠りに入りやすくなるはずです。これが、靴下で眠くなるという説の理屈です。

眠る前、体は手や足の血管を広げて熱を逃がし、体の芯の温度を下げていく
眠る前、体は手や足の血管を広げて熱を逃がし、体の芯の温度を下げていく

04オランダの実験では、足より胴体を温めたほうが早く寝つけた

ところが、足を温めればよいとは言い切れない実験もあります。2005年、オランダのチームは、8人で144回の寝つきを測る実験をしました。体の芯の温度、手足の肌の温度、胴体の肌の温度を、それぞれ少しずつ変えたのです。

その結果、寝つきを早めたのは、胴体の肌を温めたときでした。胴体の肌を約0.78℃温めると、寝つくまでの時間が26%(約3分)短くなりました。手足の肌を約0.74℃変えても、効果は出ませんでした。体の芯の温度を変えても、効果は出ませんでした。

2007年、同じチームは、足の温め方をいくつか比べました。高齢者ではない大人では、明かりを消した後に靴下をはくと、寝つきが早まりました。温めた靴下だけでなく、温めない靴下でもです。眠りに問題のない高齢者でも、温めない靴下や温かい足湯で、寝つきが早まりました。

けれども、高齢で不眠になやむ人たちでは、どの方法でも寝つきは早まりませんでした。この人たちは、そもそも明かりを消した後に、足の温度があまり上がらなかったのです。

05電気あんかやカイロを朝まで使うと、低温やけどのおそれがある

足を温めるなら、注意すべきことがあります。製品評価技術基盤機構(NITE)は、冬の足元の暖房の事故を紹介しています。

低温やけどとは、体温より少し高いくらいの温度でも、長く触れていると起きるやけどです。低温やけどは、44℃で3〜4時間、46℃で30分〜1時間、50℃で2〜3分で起きると言われています。熱い物が体に押しつけられていると、さらに短い時間で起きます。

NITEは、電気あんかを朝まで布団に入れたままにして、やけどをした例を挙げています。カイロを寝るときに使って、やけどをした例もあります。高齢の人は熱さを感じにくく、重いやけどになりやすいとも書いています。

靴下そのものは熱を出しません。緩めの靴下をはくのは、寝るときに足を温める、おだやかなやり方の一つです。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

手や足は、体の熱を外へ逃がす場所として働く

人の体は、内側の「芯」と外側の「殻」に分けて考えることができます。芯は、脳や内臓のある部分です。芯の温度は、ほぼ一定に保たれます。殻は、皮膚や手足です。殻の温度は、周りの温度に合わせて変わります。

手や足は、体重のわりに表面積が大きく、熱が出入りしやすい場所です。韓国の論文も、手足は人の体の「熱交換器」として働くと説明しています。熱交換器とは、熱を受けわたしする装置のことです。眠る前、手足の血管が広がると、芯の熱が血液で手足に運ばれます。そして、手足の皮膚から熱が逃げていきます。その結果、芯の温度が下がります。

この熱の流れを測る目安が、DPGです。DPGは、手足の皮膚の温度から、胴体の皮膚の温度を引いた差のことです。普段起きているとき、手足は胴体より冷たいので、DPGはマイナスです。眠りに近づくと、手足が温まって胴体との差が小さくなり、DPGは0に近づきます。2000年のバーゼルの研究は、このDPGが、寝つきの速さを一番よく予想する手がかりだと示しました。

足を温めるべきか胴体を温めるべきかは、研究によって結果が違う

ここで一つの問題が出てきます。DPGが大事なら、足を温めればよいはずです。ところが2005年のオランダの実験では、手足の皮膚を少し温めても、寝つきは変わりませんでした。寝つきが早まったのは、胴体を温めたときでした。

研究者たちは、皮膚の温度が、脳の中の眠りを調節する部分に信号を送っている、と考えています。ただ、どの場所の皮膚の温度が、どれだけ強い信号になるのかは、まだはっきりしていません。

また、2005年の実験と、靴下や足湯の実験では、温め方も違います。2005年の実験は、温度を細かく管理した条件で行われました。快適な範囲の中で、温度をほんの少しずつ変えたのです。靴下や足湯のように、普通に暮らしの中でできる方法とは、条件が異なります。

6人の実験でも差は見つけられるが、女性や高齢者に当てはまるかは分からない

6人の実験でも、同じ人で「靴下あり」と「なし」を比べれば、差を見つけやすくなります。このように、同じ人が両方の条件を順番に試す実験を、クロスオーバー試験といいます。人による体質の違いを消せるのが強みです。

ただし、6人の若い男性で分かったことを、女性や高齢者、不眠になやむ人にそのまま当てはめることはできません。実際、2007年のオランダの研究では、高齢で不眠の人には、足を温めるどの方法も効きませんでした。

もう一つ、論文を読むときの注意点があります。韓国の論文の要旨(はじめにある短いまとめ)には、「目が覚めた回数が7.5倍少ない」と書かれています。けれども表を見ると、16.3回が8.8回になったので、正しくは「7.5回少ない」です。足の温度も、要旨では「平均1.3℃高い」とあります。ところが表(5人分)では34.2℃と35.0℃で、差は0.8℃です。要旨だけを読んで数字を引用すると、間違いが広がるおそれがあります。

手首の機械で測った眠りと、本人が感じた眠りはずれることがある

韓国の実験では、眠っているかどうかを手首の動きで判定しました。手首が動かなければ「眠っている」とみなす方法です。脳波で眠りを測る方法に比べると、手軽ですが大まかです。そして本人のアンケートでは、靴下の効果ははっきりしませんでした。

一方、2000年の九州芸術工科大学の研究では、女性9人の眠りを脳波などで測りました。入浴の後も、足湯の後も、寝つきは早くなりました。入浴では、体の芯の温度が約1℃上がりました。でも、足湯では上がりませんでした。足だけを温めれば、体を温めすぎずに寝つきを助けられる可能性を示す結果です。このように、測り方が違う研究を何本も重ねて、少しずつ全体のようすが見えてくるのです。

06まとめ

「靴下をはいて寝ると早く眠れる」には、体のしくみの上で理屈があります。眠るとき、体は手足から熱を逃がして、芯の温度を下げるからです。韓国の実験でも、靴下をはくと寝つきが7.5分早まりました。

ただし、韓国の実験に参加したのは若い男性6人で、本人たちは違いを感じていませんでした。オランダの実験では、足より胴体を温めたほうが効きました。試すなら、電気あんかやカイロではなく、緩めの靴下にしましょう。NITEによると、44℃でも3〜4時間触れ続けると、低温やけどになると言われています。

人に話すなら、こう言おう

靴下をはいて寝ると寝つきが早くなるって研究があるんだけど、実験したのは6人だけなんだって。しかも本人たちは、違いをあまり感じていなかったらしいよ。
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英語で読む

Do Socks Help You Fall Asleep?

CEFR A2224 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

On cold nights, some people wear socks in bed.寒い夜、靴下をはいて寝る人がいます。 They say it helps them fall asleep faster.そのほうが早く眠れると言うのです。 Is there any science behind this idea?この考えに、科学の裏付けはあるのでしょうか。

In 2018, researchers at Seoul National University in Korea tested bed socks.2018年、韓国のソウル大学の研究者たちが、寝るための靴下を試しました。 Six young men slept in a cool room for seven hours, once with socks and once without.6人の若い男性が、涼しい部屋で7時間眠りました。靴下ありで1回、なしで1回です。 With socks, they fell asleep about 7.5 minutes faster.靴下をはくと、約7.5分早く眠りにつきました。 They also woke up fewer times during the night.夜中に目が覚める回数も少なくなりました。

Why would warm feet help?なぜ足が温かいと役に立つのでしょう。 Before sleep, your body lets heat out through your hands and feet.眠る前、体は手と足から熱を外へ逃がします。 The blood vessels there open wider, and the inside of your body cools down a little.そこの血管が広がり、体の内側が少し冷えていきます。 Warm feet may make this easier.足が温かいと、これがしやすくなるのかもしれません。

But the study was very small.でも、この研究はとても小さなものでした。 The six men did not feel much difference in the morning.6人の男性は、朝になってもあまりちがいを感じていませんでした。 Also, a machine on each man's wrist decided when he was asleep, so the results were only a rough guess.また、眠っているかどうかは手首につけた機械が判断したので、結果はおおまかな目安にすぎませんでした。 In a study in the Netherlands, warming the skin of the body worked better than warming the hands and feet.オランダの研究では、手足よりも胴体の皮膚を温めたほうが効果がありました。 Socks also did not help older people with sleep problems.また、眠りに悩む高齢者には、靴下は役に立ちませんでした。

So socks may help some people, but not everyone.だから、靴下は一部の人には役立つかもしれませんが、全員ではありません。 If you try it, choose soft, loose socks.試すなら、やわらかくてゆるい靴下を選びましょう。 Do not keep a heater or a hot pack on your feet all night.ヒーターやカイロを一晩じゅう足に当てたままにしてはいけません。 You can get a burn even from mild heat if it touches your skin for hours.それほど熱くない温度でも、何時間も皮膚に触れていると、やけどをすることがあるからです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How many people took part in the Korean study?

    韓国の研究には何人が参加しましたか。

  3. Q3What does your body do before sleep?

    眠る前、体は何をしますか。

  4. Q4In paragraph 5, the word "loose" is closest in meaning to ...

    第5段落の loose に最も意味が近いものはどれですか。

  5. Q5Which is true about the study in the Netherlands?

    オランダの研究について正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • fall asleep熟語
    眠りにつく、寝入る

    I fell asleep on the train.

    電車で寝てしまった。

    💡 fall の過去形は fell。be asleep は「眠っている」状態。

  • researcher名詞
    研究者

    The researcher works in a big laboratory.

    その研究者は大きな研究所で働いている。

    💡 research(研究)+ -er(人)。

  • wake up熟語
    目が覚める

    I usually wake up at six.

    私はたいてい6時に目が覚める。

    💡 過去形は woke up。get up は「起き上がる」。

  • heat名詞
    熱

    The heat from the sun warms the earth.

    太陽の熱が地球を温める。

    💡 動詞では「温める」。heater は温める機械。

  • blood vessel名詞
    血管

    Blood vessels carry blood around the body.

    血管は血液を体じゅうに運ぶ。

    💡 vessel は「入れ物、管」。ship の意味もあります。

  • skin名詞
    皮膚、はだ

    Use sunscreen to protect your skin.

    日焼け止めで皮膚を守りなさい。

    💡 果物の皮も skin と言います(banana skin)。

  • loose形容詞
    ゆるい

    These pants are a little loose.

    このズボンは少しゆるい。

    💡 lose(失う)とつづりが似ているので注意。反対は tight。

  • mild形容詞
    おだやかな、ほどよい

    The weather is mild today.

    今日はおだやかな天気だ。

    💡 カレーの「マイルド」(辛くない)と同じ言葉。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 28件)。

  1. Ko, Y. & Lee, J.-Y. (2018) Effects of feet warming using bed socks on sleep quality and thermoregulatory responses in a cool environment, Journal of Physiological Anthropology 37:13doi.org
  2. Kräuchi, K. ほか (2000) Functional link between distal vasodilation and sleep-onset latency?, American Journal of Physiology 278:R741doi.org
  3. Raymann, R. J. ほか (2005) Cutaneous warming promotes sleep onset, American Journal of Physiology 288:R1589doi.org
  4. Raymann, R. J. ほか (2007) Skin temperature and sleep-onset latency: changes with age and insomnia, Physiology & Behavior 90:257doi.org
  5. Sung, E. J. & Tochihara, Y. (2000) Effects of bathing and hot footbath on sleep in winter, Journal of Physiological Anthropology and Applied Human Science 19:21doi.org
  6. 就寝時の"足元"暖房にご用心!(製品評価技術基盤機構 NITE、2025)nite.go.jp

文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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