月は、毎年約3.8cmずつ地球から遠ざかっている
宇宙と地球No.025

月は、毎年約3.8cmずつ地球から遠ざかっている

月に置いた鏡にレーザーを当てて測っている。

ホントTRUE

この判定の対象「月は、毎年約3.8cmずつ地球から遠ざかっている」

うなり度 読む時間9分 出典8件 確認した事実23件
もくじ
  1. 月の上には、レーザーをはね返す反射板が今も5枚置いてある
  2. 地球から撃った光が鏡に届くのは2500万粒に1粒で、戻るのはさらに少ない
  3. 潮の満ち引きが月を遠ざけ、同時に地球の1日を伸ばしている
  4. 約4億年前のサンゴの化石では、1日に1本できる線が、1年ぶんで約400本あった
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

地上の望遠鏡から、月に向けてレーザーの光を撃ちます。光は、月面に置かれた鏡に当たってはね返り、約2.5秒後に戻ってきます。

ただし、撃った光のほとんどは、鏡まで届きません。NASAによると、地球から撃った光の粒(光子)が、アポロ11号が置いた鏡に届く確率は、約2500万分の1です。月に届いたわずかな光が、はね返って地球まで戻ってくる確率は、さらに低くなります。ある見積もりでは、2億5000万分の1です。研究者は、戻ってきた数少ない光子をつかまえて、月までの距離をミリ単位で測っています。

こうして分かったのが、「月は年に約3.8cmずつ地球から遠ざかっている」という事実です。NASAは、この速さを、人の爪が伸びる速さと同じくらいだと説明しています。

この記事では、まず、3.8cmという数字をどうやって測ったかをたどります。次に、月が遠ざかるのと同じ仕組みで、地球の1日が伸びてきたことを説明します。最後に、そのことを4億年前のサンゴの化石から確かめた研究者の話を紹介します。

01月の上には、レーザーをはね返す反射板が今も5枚置いてある

月面には、レーザーをはね返すための反射板が、5枚あります。NASAによると、アポロ11号と14号の反射板には鏡が100個ずつ、15号の反射板には300個並んでいます。旧ソ連の無人探査車ルノホート1号と2号にも、14個ずつの鏡がついています。

最初に置かれたのは、1969年のアポロ11号の反射板です。46センチ四方のアルミの板に、コーナーキューブが100個、碁盤の目のように並んでいます。1つ1つは、直径3.8センチの、石英ガラスでできたものです。

コーナーキューブは、サイコロのようなガラスの立方体の、角を切り取った形をした鏡です。どの方向から来た光も、来た方向へそのまま返します。電源はいりません。1999年のNASAの記事は、置いてから30年たっても「完璧に動いている」と伝えています。

02地球から撃った光が鏡に届くのは2500万粒に1粒で、戻るのはさらに少ない

なぜ、光はそんなに少ししか届かないのでしょうか。NASAによると、地上では幅数メートルのレーザーが、月に着くころには2キロ以上に広がっています。46センチ四方の鏡に当たるのは、そのごく一部です。

鏡ではね返った光は、帰り道でさらに広がります。そして、行きも帰りも、地球の厚い空気の層を通るあいだに、光はあちこちへ散らばります。

それでも、測定の精度(正確さ)は上がり続けてきました。1999年のNASAの記事によると、レーザーと電子機器の改良が続き、当時の測定は約2センチの精度に達していました。2020年のNASAの記事では、光の往復の時間から、距離を「数ミリ以下」の精度で計算できるとしています。

2020年には、NASAがもう1つの成果を発表しました。月の周りを回る探査機LRO(ルナー・リコネサンス・オービター)には、鏡12個の小さな反射板がついています。この反射板からも、光が戻ってきたというのです。フランスのグラースの観測所が、2018〜2019年の何日かに、数万回の光を撃ちました。そして、約200個の光子を受け取りました。

たくさん撃った光のうち、戻ってくるのはほんの数粒
たくさん撃った光のうち、戻ってくるのはほんの数粒

03潮の満ち引きが月を遠ざけ、同時に地球の1日を伸ばしている

月が遠ざかる原因は、潮の満ち引き(潮汐)です。1999年のNASAの記事は、「月が地球に起こす海の潮汐が、月の軌道に直接影響している」と説明しています。

仕組みを、順に見てみます。月の引力で、地球の海は、月の側と、その反対側にふくらみます。地球は1日1回、こまのように自転しています。そのため、NASAの解説によると、海のふくらみは、地球が回る向きに運ばれて、月の真下より少し先にずれます。

先にずれたふくらみは、月を、月が進む向きへ少しずつ引っぱります。引っぱられた月は、少しずつ大きな軌道(回る道すじ)へ移っていきます。つまり、地球から遠ざかっていきます。

反対に、地球の自転にはブレーキがかかります。月が、ふくらみを月の方向へ引き戻そうとするからです。こうして、月が遠ざかるのと同時に、地球の1日は少しずつ長くなっていきます。

年3.8cmは、100年たっても3.8メートルです。1年で変わる距離は、地球と月の距離(約38万キロ)の100億分の1ほどしかありません。この小さな変化を測れるのが、月面の5枚の鏡とレーザーです。

04約4億年前のサンゴの化石では、1日に1本できる線が、1年ぶんで約400本あった

地球の1日が長くなってきたのなら、大昔は1日が短く、1年の日数が多かったはずです。物理学者は、昔からそう考えていました。でも、確かめる方法がありませんでした。

1963年、ジョン・ウェルズ(John W. Wells)が、科学誌ネイチャーに論文を出しました。ウェルズは、アメリカのコーネル大学の古生物学者(大昔の生き物を調べる学者)でした。2ページあまりの短い論文で、題は「サンゴの成長と地質年代測定」です。

サンゴの骨格の外側には、細い成長の線が、毎日1本ずつ加わります。また、季節の変化によって、年に1回、太い帯ができます。伝えられているところでは、ウェルズは太平洋の島で生きたサンゴを調べたとき、このアイデアを思いつきました。昼に活動して夜に休むという、サンゴの性質がヒントになったそうです。

ウェルズは、ニューヨーク州でとれた、デボン紀(約4億年前の時代)のサンゴの化石を調べました。太い帯1本のあいだにある細い線を数えると、平均約400本でした。今のサンゴで数えた約360本より、はっきり多い数です。デボン紀より後の時代、石炭紀のサンゴでは、約390本でした。

地球が太陽の周りを1周する時間(1年の長さ)が変わらないとすれば、1年の日数が多いほど、1日は短くなります。つまり、デボン紀の1日は、今より短かったことになります。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

昔の日食の記録からも、地球の1日が長くなってきたことが分かる

月が遠ざかると同時に地球の自転が遅くなるなら、1日の伸びは、レーザーとは別の方法でも確かめられるはずです。

2016年、研究者のスティーブンソン(F. Richard Stephenson)らは、2種類の記録をまとめて分析しました。1つは、紀元前720年から紀元1600年までの日食の記録です。もう1つは、1600年から2015年までの「月が星をかくす現象(掩蔽)」の記録です。

日食がどの町で見えるかは、地球の自転の進み具合で決まります。そこで、昔の記録にある町と、自転がずっと同じ速さだった場合に日食が見えるはずの場所を比べます。すると、自転がどれだけ遅れたかが分かるのです。

その結果、1日の長さは、100年あたり平均+1.8ミリ秒(1ミリ秒は1000分の1秒)のペースで長くなっていました。ところが、潮の満ち引きのブレーキだけで計算すると、100年あたり+2.3ミリ秒になるはずです。記録から分かった1日の伸びのほうが、計算より小さいのです。

この差は、潮の満ち引きのほかにも、地球の自転の速さを変える原因が重なって生まれたと考えられています。論文は、これまで出されてきた説明を挙げています。たとえば、後氷期隆起です。氷河期が終わって重い氷がとけたあと、地面がゆっくり持ち上がる現象です。地球の中心部(核)と、その外側の岩の層(マントル)が、おたがいの回り方に影響し合うことも、挙げられています。論文は、自分たちの測定が、こうした効果を調べる手がかりになるとしています。さらに、10年から100年ほどの単位で、自転の速さが揺らいでいることも分かりました。

サンゴの細い線の数は、1年の日数とぴったり同じにはならない

ウェルズの方法は、「細い線は1日に1本できる」という考えにもとづいています。この考えを支えているのは、今のサンゴで1年ぶんの線を数えると、1年の日数に近い本数になることです。ただ、PRIの解説によると、ウェルズが今のサンゴで数えた本数は、平均約360本でした。ぴったり365本にはなりません。サンゴの線は、時計のように正確な目盛りではないのです。

それでも、ウェルズの結果は、「昔ほど1年の日数が多い」という天文学者や物理学者の計算と、同じ結果になりました。デボン紀のサンゴでは平均約400本、その次の石炭紀では約390本。時代が新しくなるほど、1年ぶんの線の本数が減っていきます。

月の鏡を使った観測は、重力の物理学などにも役立ってきた

月にレーザーを当てて距離を測る観測は、月が遠ざかる速さを測るためだけのものではありません。1994年、科学誌サイエンスに、この観測の研究をまとめた論文(総説)が載りました。総説によると、アポロ11号の鏡から始まったこの観測は、いくつもの分野で成果を生みました。天文学、月の科学、重力の物理学、測地学(地球の形や動きを測る学問)です。

挙げられている成果は、次のようなものです。

  • 月の位置を前もって計算する精度が、大きく上がったこと
  • 月の自転の、わずかな揺れを測ったこと
  • 「重さの違うものが同じように落ちる」という決まり(等価原理)が、重い天体どうしでも成り立つかを、精密に確かめたこと
  • 地球の自転軸の首ふり運動(歳差)を測ったこと
  • 潮の満ち引きのせいで、月の動きが少しずつ変わる量を測ったこと

年3.8cmという数字は、この長い観測の成果の一部なのです。

ウェルズは、虫めがねと化石で、地球の1日の変化を調べた

PRIの解説によると、イギリスの科学者ハルデーンは、ニューヨーク・タイムズでウェルズの発見を取り上げました。大金をかけた装置がなくても、「虫めがねと注意深い観察」だけで偉大な科学ができる例として、挙げたのです。

月までの距離をレーザーで測るには、巨大な望遠鏡を使います。それとは反対に、ウェルズは、手のひらにのる化石と虫めがねを使いました。そして、「地球の1日はどう変わってきたか」という同じ問いに、答えを出したのです。

05まとめ

月が年に約3.8cmずつ遠ざかっていることは、レーザーで測られています。月面の反射板に向けて光を撃っても、アポロ11号の反射板に届くのは2500万粒に1粒です。研究者は、そこからさらにわずかに戻ってくる光を受け取って、距離を測っているのです。月を遠ざける潮汐は、地球の1日も、少しずつ伸ばしてきました。

デボン紀のサンゴの化石には、1年ぶんに約400本の線が刻まれていました。ウェルズが線を数えたサンゴの標本は、一時行方不明になっていましたが、2019年、「サンゴ年代学の資料」と書かれた箱の中から見つかりました。

人に話すなら、こう言おう

月って毎年3.8cmずつ遠ざかってるんだけど、アポロが置いた鏡にレーザーを撃っても、鏡に届く光は2500万粒に1粒。そこから戻れるのは、さらに2億5000万粒に1粒なんだって。
READ IN ENGLISH

英語で読む

Mirrors on the Moon

CEFR A2225 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

Every year, the Moon moves about 3.8 centimeters away from Earth.毎年、月は地球から約3.8センチ遠ざかっています。 That is about as fast as your fingernails grow.それは、あなたの爪がのびるのと同じくらいの速さです。 But how can anyone measure such a small change?でも、どうしてそんな小さな変化を測れるのでしょうか。

In 1969, the Apollo 11 astronauts left a special mirror on the Moon.1969年、アポロ11号の宇宙飛行士たちは、月に特別な鏡を置いてきました。 It has 100 small glass corners on a flat metal board.それは平らな金属の板の上に、100個の小さなガラスの角が並んだものです。 Each corner sends light straight back to where it came from.それぞれの角は、光を来た場所へまっすぐ返します。 Today there are five of these mirror boards on the Moon.今、月にはこうした鏡の板が5枚あります。

Scientists shoot a laser at a mirror and wait for the light to return.科学者は鏡にレーザーを撃ち、光が戻ってくるのを待ちます。 The trip there and back takes about 2.5 seconds.行って帰ってくるのに約2.5秒かかります。 It is not easy, because the beam becomes more than 2 kilometers wide on the Moon.簡単ではありません。光は月に着くころには幅2キロ以上に広がるからです。 Only about one in 25 million bits of light even reach the Apollo 11 mirror.アポロ11号の鏡にたどり着く光の粒は、約2500万粒に1粒しかありません。

Why is the Moon moving away?月はなぜ遠ざかっているのでしょうか。 The answer is the ocean tides.答えは海の潮の満ち引きです。 The Moon pulls on the oceans, and the tides also pull back on the Moon.月は海を引っぱり、潮もまた月を引っぱり返します。 At the same time, the tides slowly make Earth spin more slowly, so our days get longer.同時に、潮は地球の回転をゆっくり遅くするので、1日は長くなっていきます。

In 1963, a scientist named John Wells found proof of this in old corals.1963年、ジョン・ウェルズという科学者が、古いサンゴの中にその証拠を見つけました。 Corals add a thin line every day and a thick band every year.サンゴは毎日細い線を、毎年太い帯を作ります。 In corals from about 400 million years ago, he counted about 400 lines in one year.約4億年前のサンゴで、彼は1年に約400本の線を数えました。 Back then, one year had about 400 shorter days.そのころは、1年に約400回の、今より短い1日があったのです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How long does the laser light take to go to the Moon and come back?

    レーザーの光が月まで行って帰ってくるのに、どのくらいかかりますか。

  3. Q3Why do so few bits of light reach the mirror?

    鏡にたどり着く光の粒がとても少ないのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 5, the word "proof" is closest in meaning to ...

    第5段落の "proof" に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    本文の内容と合っているのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • measure動詞
    測る

    We measured the height of the tree.

    私たちはその木の高さを測った。

    💡 名詞 measurement(測定)。

  • mirror名詞
    鏡

    She looked at herself in the mirror.

    彼女は鏡で自分の姿を見た。

    💡 look in the mirror で「鏡を見る」。

  • astronaut名詞
    宇宙飛行士

    The astronaut walked on the Moon.

    その宇宙飛行士は月の上を歩いた。

    💡 astro-(星)+ naut(船乗り)。

  • laser名詞
    レーザー

    The teacher used a laser pointer.

    先生はレーザーポインターを使った。

    💡 もとは light amplification by stimulated emission of radiation の頭文字。

  • beam名詞
    光線、光のすじ

    A beam of light came through the window.

    窓から一すじの光が差しこんだ。

    💡 a beam of light で「一すじの光」。

  • tide名詞
    潮、潮の満ち引き

    The tide is high in the morning.

    朝は潮が満ちている。

    💡 high tide(満潮)、low tide(干潮)。

  • proof名詞
    証拠、証明

    Do you have any proof?

    何か証拠はありますか。

    💡 動詞は prove(証明する)。

  • coral名詞
    サンゴ

    Many fish live around the coral.

    サンゴのまわりにはたくさんの魚がすんでいる。

    💡 coral reef で「サンゴ礁」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 23件)。

  1. Laser Beams Reflected Between Earth and Moon Boost Science(NASA, 2020)nasa.gov
  2. Apollo 11 Experiment Continues to Return Valuable Data(NASA JPL, 1999)jpl.nasa.gov
  3. Dickey, J. O. et al. (1994) Lunar Laser Ranging: A Continuing Legacy of the Apollo Program, Science 265doi.org
  4. Stephenson, F. R., Morrison, L. V. & Hohenkerk, C. Y. (2016) Measurement of the Earth's rotation: 720 BC to AD 2015, Proc. R. Soc. A 472doi.org
  5. Wells, J. W. (1963) Coral Growth and Geochronometry, Nature 197doi.org
  6. John W. Wells & Coral Geochronometry(Paleontological Research Institution, 2023)priweb.org
  7. Tides(NASA Science)science.nasa.gov
  8. Moon Fact Sheet(NASA NSSDCA)nssdc.gsfc.nasa.gov

文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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