英語の goodbye の good は、もとは God(神)だった
言葉と語源No.217

英語の goodbye の good は、もとは God(神)だった

昔の英語では、goodbye を godbwye と書いた。

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もくじ
  1. goodbye のもとは「God be with you」
  2. 1570年代の詩では、さようならを「1ガロン」と量で数えていた
  3. シェイクスピアの劇では、goodbye のつづりがばらばらだった
  4. God が good に変わり始めたのは1600年代
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

1570年代のイギリスに、ゲイブリエル・ハーヴェイ(Gabriel Harvey)という人がいました。ケンブリッジ大学で暮らしていた人です。ハーヴェイは、手紙の下書きや詩をノートに書きためていました。

そのノートの冗談の詩に、「gallonde of godbwyes」という言葉が出てきます。今のつづりに直すと「a gallon of goodbyes」。「1ガロン分のさようなら」です。

godbwye は、今の goodbye の古い書き方です。よく見ると、最初の部分は good ではなく god です。God は英語で「神」のことです。

英語の辞書によると、goodbye は、ある別れの言葉が縮んだものです。その言葉は「God be with you(神があなたと共にありますように)」です。「よい」という意味の good が入ったのは、あとからでした。

この記事では、まずハーヴェイのノートの詩を紹介します。次に、シェイクスピアの劇で、このあいさつがどんなつづりで書かれていたかを見ます。最後に、God が good に変わった時期と理由について、辞書に何が書かれているかを調べます。

01goodbye のもとは「God be with you」

まず、アメリカの辞書を見てみます。『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』は、goodbye を「God be with you が変わった形」と説明しています。英語の辞書サイト Dictionary.com も、「God be with ye を縮めたもの」と書いています。ye は昔の英語で「あなた(たち)」という意味です。

次に、イギリスの『オックスフォード英語辞典』(OED)も見てみます。OED の最初の版は、『A New English Dictionary』(NED)という名前でした。NED は、言葉が実際に使われた昔の文を集め、年の順にならべた辞典です。goodbye の項目がある第4巻は、1901年に出ています。

NED も、goodbye を「God be with you(または ye)を縮めた形」と書いています。3つの辞書の説明は、この点では一致しています。

ただし、どの辞書も同じことを言っているのは、ここまでです。いつから使われたのか、なぜ God が good になったのかでは、書き方が少しずつ違います。

021570年代の詩では、さようならを「1ガロン」と量で数えていた

ハーヴェイのノートは、1884年に本になりました。もとになったのは、大英博物館にあった原本です。ノートは1573年から1580年までのもので、全部ハーヴェイ自身の手書きです。本の編集者は、詩の下書きの部分を「ほとんど読めない走り書き」と書いています。

godbwye が出てくるのは、ある粉屋(小麦などの穀物を粉にひく仕事の人)の手紙に答える詩です。粉屋は、くだらない手紙と、ばかげた詩を送ってきました。それに、田舎の娘が言い返すという形の詩です。ハーヴェイは、知り合いの娘のためにずっと前に書いた詩だ、と書きそえています。

詩の中で、娘は「1ガロンの godbwye へのお返しに、1ポトルの howedye を返します」と書きます。ポトルは、昔のイギリスで液体の量を量った単位です。2クォート(約1.9リットル)で、ちょうど1ガロンの半分にあたります。

howedye は、「how do ye(ごきげんいかが)」という古いあいさつのつづりの一つです。NED の「How-do-ye」の項目に、1500年代の書き方として howedye がのっています。今の howdy(ハウディ、「やあ」)も、この how do ye から来た言葉です。

つまり娘は、「さようならを1ガロンもらったから、ごきげんいかがを半ガロン返すわ」と言っているのです。あいさつを、液体のように量で数えてみせる冗談です。

あいさつを量で数えた1570年代の詩(イメージ)
あいさつを量で数えた1570年代の詩(イメージ)

03シェイクスピアの劇では、goodbye のつづりがばらばらだった

NED は、昔の書き方を10通り以上ならべています。god be wy you、god b'uy、godbwye、god buy you などです。wy は with のことです。

シェイクスピア(William Shakespeare)の劇にも、このあいさつは何度も出てきます。NED が引いている例を年の順にならべると、次のようになります。

  • 『恋の骨折り損』(NED では1588年):God be wy you。
  • 『ヘンリー六世 第3部』(NED では1591年):God b'uy。
  • 『ハムレット』(NED では1602年):God buy' ye。

同じ作者の劇なのに、つづりがばらばらです。それだけではありません。『オセロー』のあるせりふは、印刷された本によって「God be with you」とも「God bu'y」とも書かれています。同じ場面の同じせりふなのに、縮めずに書いた本と、縮めて書いた本があるのです。

04God が good に変わり始めたのは1600年代

NED には、昔の書き方を時代ごとに分けた一覧があります。その一覧で、good で始まる形(good-buy など)は1600年代の欄に入っています。NED が引いている例文では、1694年の本の good-b'wy が、good で始まる最初の例です。そのあと、1707年の Good bwi't'ye、1719年の Good B' w' 'y と続きます。

でも、God で始まる形がすぐに消えたわけではありません。NED の一覧では、1600年代の欄に、god で始まる形と good で始まる形の両方が入っています。1668年のピープス(Pepys)という人の日記にも、元の形の「God be with you」が出てきます。1600年代には、2つの形が一緒に使われていたことになります。

では、なぜ God が good に変わったのでしょうか。NED の説明はこうです。「good day」「good night」などの別れのあいさつと結びつけられたためかもしれない。どちらも、人と別れるときに言う言葉です。

アメリカン・ヘリテージ英語辞典は、もっとはっきりと「good day の影響を受けて変わった」と書いています。こちらには「かもしれない」がついていません。同じ説を、片方は控えめに、片方は言い切って書いているわけです。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

goodbye の一番古い記録の年は、辞書ごとに違い、同じ辞典の中でも違う

Dictionary.com は、goodbye の最初の記録を「1565〜75年」としています。NED の goodbye の項目は、一番古い例としてハーヴェイのノートを挙げ、年を「1573〜80年」としています。Dictionary.com は根拠にした本を書いていないので、なぜ年がずれるのかは分かりません。

さらに、NED の中でも年が違います。goodbye の項目では、ハーヴェイの詩の年は「1573〜80年」です。ところが、同じ詩の同じ行が、「How-do-ye」の項目と「Gallon(ガロン)」の項目では「1575年」の例として引かれています。

goodbye の項目の「1573〜80年」は、ノートが書かれた期間(1573〜1580年)と同じ幅です。しかもハーヴェイ自身が、この詩は「ずっと前に書いた」と書きそえています。ノートのどの年に書かれたのかも、詩そのものがいつ作られたのかも、はっきりしないのです。辞書の「初出(一番古い使用例)」の年は、こうした推定を含んだ数字だと考えて読む必要があります。

「God buy you=神があなたを救う」が語源だという説を、NED は昔のつづりを根拠に退けた

goodbye の語源には、別の説もありました。もとは「God buy you」という言葉で、God be with you と結びついたのは後の時代だ、という説です。この説では、God buy you は「God redeem you(神があなたを救いますように)」という意味だとされます。

NED はこの説を紹介したうえで、「一番古い書き方を見ると、この説は支持されない」と書いています。古い書き方の多くは、書いた人が「縮めた言葉だ」と知っていたことを示す形になっている、というのが理由です。

NED は、どの書き方がそうなのかを1つずつは挙げていません。分かりやすい例は、god b'uy や god bu'y(e) です。これらには「'」の印が入っています。この印はアポストロフィといい、文字を省いた所を示します。今の英語の don't(do not)の「'」と同じです。もし本当に buy(救う)という1つの単語だったなら、途中に「'」を入れる必要はありません。昔の人のつづりそのものが、語源の証拠として使われているのです。

God のつくあいさつには、よく使われるうちに縮んだものがほかにもある

NED の「God」の項目には、goodbye 以外の例も出ています。God のつくあいさつのいくつかは、よく使われるうちに縮んだり崩れたりした、と NED は書いています。その例として、God be with you が縮んだ「Godb'wy ye」が挙がっています。「God yield you(神があなたに報いますように)」が「goddilge yee」のような形になった例も出ています。

さらに、今も使われる言い方の中には、God がまるごと落ちたものもある、と NED は書いています。例に挙げられているのは bless you(あなたに祝福を)です。goodbye の場合は、God が消えずに good へと形を変えました。そして B'w'y や By'e のように、もっと短い形も生まれました。

別れのあいさつに「神」が入る言語は、英語だけではない

フランス語の adieu(アデュー)は、「a dieu」、つまり「神に(あなたをゆだねます)」から来ています。スペイン語の adiós(アディオス)も、「a Dios(神に)」から来ています。どちらも、goodbye と同じように「神」が入った別れのあいさつです。

日本語の「さようなら」は違います。『日本国語大辞典』によると、もとは「さようならば」、つまり「それならば」という意味の言葉でした。この辞典が、別れのあいさつとして使われた一番古い例に挙げているのは、1788年の本の「さやうなら、御きげんよふ」です。はじめは「ごきげんよう」などとくっついた形で使われ、江戸時代の後半になって、それだけで言う別れの言葉として広まりました。

05まとめ

英語の goodbye は、「God be with you(神があなたと共にありますように)」という別れの言葉が縮んだものです。1570年代のハーヴェイのノートでは godbwye と書かれ、「1ガロンのさようなら」と量で数えられていました。シェイクスピアの劇では、同じあいさつが God be wy you、God b'uy などばらばらのつづりで書かれています。good で始まる形が出てくるのは1600年代で、NED の例文では1694年の good-b'wy が最初です。God が good になった理由について、NED は good day や good night と結びつけられたためかもしれない、と書いています。今度 goodbye と言うときは、最初の good が、もとは God(神)だったことを思い出してみてください。

人に話すなら、こう言おう

goodbye って、もとは God be with you(神さまがあなたと一緒に)が縮んだ言葉なんだって。God が good になったのは、good night とかと結びついたからかもしれないんだって。
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英語で読む

When Goodbye Had God in It

CEFR A2229 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In the 1570s, a man named Gabriel Harvey lived at Cambridge in England.1570年代、ゲイブリエル・ハーヴェイという男の人が、イギリスのケンブリッジで暮らしていました。 He wrote poems and letters in a notebook.彼はノートに詩や手紙を書いていました。 In one funny poem, he wrote the word "godbwye."ある冗談の詩の中で、彼は「godbwye」という言葉を書きました。 This was an old way to spell goodbye.これは goodbye の古いつづり方でした。 Look at the first three letters.最初の3文字を見てください。 They are not "goo." They are "god."それは「goo」ではありません。「god」です。

Dictionaries say that goodbye comes from a longer phrase, "God be with you."辞書によると、goodbye は「God be with you(神があなたと共にありますように)」という、もっと長い言い方から来ています。 People said it when they parted from friends.人々は、友だちと別れるときにこの言葉を言いました。 They said it so often that it became shorter.あまりによく言ったので、言葉が短くなっていきました。

In Harvey's poem, a country girl answers a silly letter from a miller, a man who makes flour.ハーヴェイの詩では、田舎の娘が、粉屋(小麦粉を作る人)からのくだらない手紙に答えます。 She says, "For your gallon of goodbyes, I give you back half a gallon of how do ye."娘は「1ガロンのさようならのお返しに、半ガロンのごきげんいかがを返します」と言います。 "How do ye" was an old way to say "How are you?"「how do ye」は「お元気ですか」の古い言い方でした。 She measures greetings like water.娘はあいさつを、水のように量で数えているのです。

Writers spelled the phrase in many different ways.書き手たちは、この言葉をいろいろなつづりで書きました。 One old dictionary shows more than ten spellings.ある古い辞書には、10通りを超えるつづりがのっています。 In Shakespeare's plays, we can find "God be wy you" and "God b'uy."シェイクスピアの劇には、「God be wy you」や「God b'uy」という形が出てきます。 In one of his plays, the same line was printed in two ways in different books.彼の劇の一つでは、同じせりふが、本によって2通りに印刷されました。

In the 1600s, people started to write "good" instead of "God."1600年代になると、人々は「God」の代わりに「good」と書き始めました。 Why did this happen?なぜそうなったのでしょうか。 One old dictionary says that people may have connected it with other words for parting, like "good day" and "good night."ある古い辞書は、「good day」や「good night」のような、ほかの別れの言葉と結びつけられたのかもしれない、と書いています。 So the next time you say goodbye, remember the first word was once God.だから今度 goodbye と言うときは、最初の言葉がもとは God だったことを思い出してください。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2When did people start to write "good" instead of "God"?

    人々が「God」の代わりに「good」と書き始めたのはいつですか。

  3. Q3Why did the phrase "God be with you" become shorter?

    「God be with you」という言い方は、なぜ短くなったのですか。

  4. Q4In paragraph 3, the word "measures" is closest in meaning to

    第3段落の measures という語に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話について正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • phrase名詞
    言い回し、句

    "Thank you very much" is a useful phrase.

    「どうもありがとう」は便利な言い回しだ。

    💡 いくつかの単語がまとまった表現。a set phrase で「決まり文句」。

  • part動詞
    別れる

    We parted at the station.

    私たちは駅で別れた。

    💡 名詞の part(部分)と同じ語。part from ~ で「~と別れる」。

  • spell動詞
    (単語を)つづる

    How do you spell your name?

    あなたの名前はどうつづりますか。

    💡 名詞は spelling(つづり)。過去形は spelled。

  • gallon名詞
    ガロン(液体の量の単位)

    We bought a gallon of milk.

    私たちは牛乳を1ガロン買った。

    💡 アメリカの1ガロンは約3.8リットル。

  • measure動詞
    (量・長さなどを)測る

    Please measure the water in this cup.

    このカップの水の量を測ってください。

    💡 名詞の measure は「単位、ものさし」。measurement で「測定」。

  • miller名詞
    粉屋(粉をひく人)

    The miller made flour from wheat.

    粉屋は小麦から小麦粉を作った。

    💡 mill(粉をひく工場、水車小屋)+ -er(人)。

  • print動詞
    印刷する

    This book was printed in 1901.

    この本は1901年に印刷された。

    💡 printer(印刷機、プリンター)も同じ仲間。

  • instead of熟語
    ~の代わりに

    I drank tea instead of coffee.

    私はコーヒーの代わりに紅茶を飲んだ。

    💡 instead だけなら「その代わりに」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 29件)。

  1. Murray, J. A. H. ほか編 (1901) A New English Dictionary on Historical Principles, Vol. IV(F・G)「Good-bye」「God」(OED 初版、archive.org)archive.org
  2. Murray, J. A. H. 編 (1901) A New English Dictionary on Historical Principles, Vol. V(H〜K)「How-do-ye」(OED 初版、archive.org)archive.org
  3. Scott, E. J. L. 編 (1884) Letter-Book of Gabriel Harvey, A.D. 1573-1580, Camden Society(archive.org)archive.org
  4. goodbye(The American Heritage Dictionary of the English Language)ahdictionary.com
  5. goodbye(Dictionary.com)dictionary.com
  6. adieu(The American Heritage Dictionary of the English Language)ahdictionary.com
  7. さようなら(精選版 日本国語大辞典、コトバンク)kotobank.jp

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