エベレストの山頂の石は、むかし海の底でできた
思わず唸るNo.088

エベレストの山頂の石は、むかし海の底でできた

頂上の石に、三葉虫のかけらが入っていた。

ホントTRUE

この判定の対象「エベレストの山頂の石は、海の底でできた」

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もくじ
  1. エベレストの山頂の石から、三葉虫などの海の生き物のかけらが見つかった
  2. 山頂の石ができたのは4億年以上前で、ヒマラヤ山脈ができ始めるよりずっと前
  3. インドの大陸がアジアにぶつかって、海の底が押し上げられた
  4. エベレストの山頂のすぐ下には、岩がずれ動いた大きな割れ目がある
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

世界でいちばん高い場所、エベレストの山頂。標高は8849メートルです。

その山頂の石をくわしく調べると、中に三葉虫のかけらが入っていました。三葉虫は、大昔の海にいた、ダンゴムシに少し似た生き物です。

つまり、世界一高い場所の石は、もともと海の底でできたのです。それも、4億年以上前の海です。

この記事では、まず、山頂の石を調べた論文から、石の中に何が入っていたかを紹介します。次に、海の底でできた石が、どうやって世界一高い場所まで上がったのかをたどります。最後に、エベレストがなぜこんなに高いのかについて、2026年の今も続いている研究者の議論を紹介します。

01エベレストの山頂の石から、三葉虫などの海の生き物のかけらが見つかった

2005年、エベレストの山頂の石を調べた論文が出ました。書いたのは、日本の酒井治孝(さかい・はるたか)らと、中国の研究者のチームです。

チームが調べたのは、山頂から見つかった石灰岩です。石灰岩は、貝殻や骨のような、生き物のかけらが積もってできることが多い岩です。

この石灰岩の中に、3種類の海の生き物のかけらが見つかりました。

  • 三葉虫:体が縦に3つに分かれた、海の節足動物(体や足に節がある動物)。
  • ウミユリ:花のような形をした、ウニやヒトデの仲間。
  • 貝形虫(かいけいちゅう):2枚の殻をもつ、ごく小さな生き物。エビやカニと同じ甲殻類の仲間。

かけらは、小石くらいの大きさでした。チームの考えは、こうです。海の中には、まわりより浅くなった高まりがあった。その高まりのはしでできた生き物のかけらが、まわりの海底へ流れて積もった。つまり、石の中のかけらは、生き物が暮らしていた場所にそのまま残ったものではなく、少し流されてきたものだったのです。

02山頂の石ができたのは4億年以上前で、ヒマラヤ山脈ができ始めるよりずっと前

論文によると、山頂の石灰岩は、オルドビス紀という時代のものです。国際的な地球の年代表では、オルドビス紀は、約4億8700万年前から4億4300万年前にあたります。

あとで説明するように、インドとアジアがぶつかったのは約5000万年前です。山頂の石ができたのは、それより9倍ほども昔なのです。

では、4億年以上前の海の底でできた石が、なぜ8849メートルの高さにあるのでしょうか。

03インドの大陸がアジアにぶつかって、海の底が押し上げられた

アメリカ地質調査所(USGS)の解説を見てみましょう。約2億2500万年前、インドはオーストラリアの沖にある大きな島でした。インドとアジアの間には、テチス海という広い海がありました。

その後、インドは北へ動き始めました。約8000万年前には、インドは、アジアから南へ約6400キロ離れた所にありました。動く速さは、100年に約9メートルです。

そして約4000万〜5000万年前、インドはアジアにぶつかりました。2つの大陸は、同じ大きさで比べたときの岩の重さ(密度)が同じくらいです。そのため、どちらかがもう一方の下にもぐりこむことができませんでした。行き場のなくなった岩は、上へ上へと押し上げられました。こうしてできたのが、ヒマラヤ山脈です。

山頂の石灰岩も、この動きの中で、海の底から今の高さまで運ばれてきたのです。

大陸どうしがぶつかって、海の底の地層が山のてっぺんまで押し上げられた
大陸どうしがぶつかって、海の底の地層が山のてっぺんまで押し上げられた

04エベレストの山頂のすぐ下には、岩がずれ動いた大きな割れ目がある

酒井らは、山頂の近くで断層も見つけました。断層とは、岩がずれ動いた割れ目のことです。北側の斜面の標高8520メートル付近に、断層が地面に出ている場所があったのです。

この断層は、「チョモランマ・デタッチメント」と呼ばれます。チョモランマは、チベットでのエベレストの呼び名です。

断層の上と下では、岩の様子がまったく違いました。断層の上の石灰岩は、割れ目は多いものの、地下の熱や押される力(圧力)で変わった様子は、ほとんどありません。だから、三葉虫のかけらも形が残っていました。

一方、断層の下には、「イエローバンド」と呼ばれる黄色っぽい地層があります。こちらは、地下深くで熱と圧力を受けて、性質が変わった岩(変成岩)です。

つまり、エベレストの山頂の部分は、性質の違う下の岩の上に、断層をはさんで乗っかっているのです。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

山頂の石灰岩が、地下の熱で変わらずに残ったわけ

ヒマラヤの岩の多くは、地下深くで熱と圧力を受けて、性質が変わっています(変成)。ところが、山頂の石灰岩は、ほとんど変成していません。そのおかげで、化石のかけらが形を保っていました。

そのわけは、山頂の下を走る断層、チョモランマ・デタッチメントにあります。2003年、イギリスのサール(Mike Searle)らは、この断層が、山頂のピラミッドのようにとがった部分に出ていると報告しました。断層は、北へ15度未満のゆるい角度で傾いています。断層をはさんで、上の層と下の層は、別々の歴史をたどってきたのです。

酒井らは、断層の下のイエローバンドにふくまれる雲母(薄くはがれる鉱物)の年代を測りました。すると、イエローバンドの岩は、約3330万年前と約2450万年前の2回、性質が変わっていたことが分かりました。

さらに、約1550万〜1440万年前の短い間に、断層のまわりの岩の温度が、約350℃から130℃まで急に下がっていたことも分かりました。

エベレストが特に高いのは、山の中に厚い花こう岩の板があるからだと考えられている

海の底が持ち上がっただけでは、8849メートルにはなりません。サールらは、エベレストと、そのとなりのローツェ、ヌプツェという山の中に、巨大な花こう岩の板があることを示しました。

花こう岩は、地下でとけた岩が冷えて固まったものです。エベレストの花こう岩の板は、厚さが最大3000メートルもあり、標高7800メートルまで達しています。サールらは、この花こう岩の板が、エベレストとヌプツェが特に高い主な理由だと考えました。

エベレストが今も高くなっている理由を、川で説明する説と、その反論がある

エベレストは、ヒマラヤのほかの最高峰クラスの山々より、約250メートル高い山です。2024年、中国とイギリスの研究チーム(ハンら)が、エベレストが特に高い理由の一部を、近くの川で説明しようとしました。

チームによると、GPSで測ると、エベレストは最近、1年に約2ミリずつ高くなっています。これは、長い期間の平均(1年に約1ミリ)より速いペースです。

チームは、約8万9000年前に、近くの川が別の川の上流を「うばった」と考えました。ある川が、別の川の水を自分の流れに取りこんでしまうことです。これを河川争奪と言います。

川の水が増えると、谷が深く削られます。地面が削られて軽くなった分だけ、地殻(地球の表面をおおう固い岩の層)はゆっくり浮き上がります。このしくみを、アイソスタシーと言います。チームは、エベレストの高さのうち約15〜50メートルは、このしくみで説明できると提案しました。

ところが2026年7月、アメリカの研究者レナードとウィップルが、同じ雑誌で反論を出しました。2人の主張は、こうです。山の斜面で雨が多く降る場所では、川の形が変わる。その雨の降り方を考えに入れれば、川の争奪がなくても、今の川の形は説明できる。これに対して、元のチームも、同じ日に、反論への反論(再反論)を出しました。

山頂の石が海でできたことは、化石が示すはっきりした事実です。その石を今の高さまで持ち上げたのは、インドとアジアの衝突です。この2つの点では、この記事で紹介した研究はどれも同じ立場です。一方、「エベレストがなぜ今の高さなのか」は、2026年の今も、研究者の間で議論が続いている問題なのです。

05まとめ

エベレストの山頂の石は、オルドビス紀(約4億8700万〜4億4300万年前)の海でできた石灰岩です。山頂の石からは、三葉虫・ウミユリ・貝形虫のかけらが見つかっています。

インドがアジアにぶつかって、その海の底が今の高さまで押し上げられました。山頂の少し下には断層があります。断層の上の石灰岩は、地下の熱で性質が変わらずに残りました。

世界一高い場所に立った登山家の足もとには、4億年以上前の海の生き物のかけらが埋まっているのです。

人に話すなら、こう言おう

エベレストのてっぺんの石って、4億年以上前の海の底でできた石灰岩なんだって。頂上の石から、三葉虫やウミユリのかけらが見つかってるらしいよ。
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英語で読む

Sea Animals on Top of the World

CEFR A2226 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

Mount Everest is the highest mountain on Earth.エベレストは地球でいちばん高い山です。 Its top is 8,849 meters above the sea.その頂上は海面から8849メートルの高さにあります。 But the rock at the top was once at the bottom of a sea.でも、頂上の岩は、かつて海の底にありました。

In 2005, a team of Japanese and Chinese scientists studied limestone from the summit.2005年、日本と中国の科学者のチームが、山頂の石灰岩を調べました。 Inside the rock, they found small pieces of trilobites, sea animals with hard bodies.岩の中に、かたい体をもつ海の動物、三葉虫の小さなかけらが見つかりました。 They also found pieces of sea lilies and tiny animals with two shells.ウミユリのかけらや、2枚の殻をもつ小さな動物のかけらも見つかりました。 The rock formed more than 440 million years ago.その岩は4億4000万年以上前にできました。

About 80 million years ago, India was far south of Asia.約8000万年前、インドはアジアのずっと南にありました。 It moved north, about 9 meters every 100 years.インドは100年に約9メートルずつ北へ動きました。 Between 40 and 50 million years ago, it hit Asia.4000万年前から5000万年前のあいだに、インドはアジアにぶつかりました。 Neither land could go under the other, so the rocks were pushed up into the sky.どちらの陸も相手の下にもぐれなかったので、岩は空へ押し上げられました。

The scientists also found a fault, a large crack where rocks have moved.科学者たちは、断層、つまり岩がずれ動いた大きな割れ目も見つけました。 It runs just below the summit, at about 8,520 meters.それは山頂のすぐ下、約8520メートルのところを走っています。 The rocks below it were changed by heat, but the limestone above it was not.その下の岩は熱で変化していましたが、上の石灰岩は変わっていませんでした。 That is why the old pieces of sea animals are still there.だから、古い海の動物のかけらが今も残っているのです。

Scientists still argue about why Everest is so much higher than its neighbors.エベレストがなぜ近くの山よりずっと高いのかについては、科学者たちが今も議論しています。 In 2024, one team said a river helped push it up.2024年、あるチームは川がそれを押し上げるのを助けたと言いました。 In 2026, other scientists said rain could explain the same data.2026年、別の科学者たちは、雨で同じデータを説明できると言いました。 But the fossils are clear: the top of the world was once under the sea.でも化石ははっきり示しています。世界のてっぺんは、かつて海の下にあったのです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2When did India hit Asia?

    インドはいつアジアにぶつかりましたか。

  3. Q3Why are the pieces of sea animals still in the summit rock?

    なぜ海の動物のかけらが今も山頂の岩に残っているのですか。

  4. Q4In paragraph 5, the word "argue" is closest in meaning to

    第5段落の "argue" に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話について正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • summit名詞
    山頂、頂上

    We reached the summit at noon.

    私たちは正午に山頂に着いた。

    💡 「首脳会議(サミット)」も同じ語。いちばん上に立つ人たちの会議。

  • limestone名詞
    石灰岩

    The old church is made of limestone.

    その古い教会は石灰岩でできている。

    💡 lime(石灰)+ stone(石)。セメントの原料にもなる。

  • shell名詞
    貝がら、殻

    She found a pretty shell on the beach.

    彼女は浜辺できれいな貝がらを見つけた。

    💡 卵の殻(eggshell)やカメの甲らにも使う。

  • fossil名詞
    化石

    This fossil is millions of years old.

    この化石は何百万年も前のものだ。

    💡 ラテン語の「掘り出されたもの」から。fossil fuel は化石燃料。

  • fault名詞
    断層

    Earthquakes often happen along a fault.

    地震は断層に沿って起こることが多い。

    💡 ふだんは「欠点、責任」の意味。It's my fault.(私のせいだ)

  • push up句動詞
    押し上げる

    The plant pushed up through the snow.

    その植物は雪を押し上げて出てきた。

    💡 腕立てふせの push-up もここから。

  • neighbor名詞
    近くのもの、隣人

    Our neighbor has a big dog.

    うちの隣の人は大きな犬を飼っている。

    💡 アメリカつづり。イギリスでは neighbour。

  • argue動詞
    議論する、言い争う

    They argued about the best way to go.

    彼らは一番よい行き方について議論した。

    💡 名詞は argument(議論、口論)。e が消えるつづりに注意。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 18件)。

  1. Sakai, H. et al. (2005) Geology of the summit limestone of Mount Qomolangma (Everest) and cooling history of the Yellow Band under the Qomolangma detachment, Island Arc 14doi.org
  2. Searle, M. P. et al. (2003) The structural geometry, metamorphic and magmatic evolution of the Everest massif, High Himalaya of Nepal–South Tibet, Journal of the Geological Society 160doi.org
  3. The Himalayas: Two continents collide(USGS, This Dynamic Earth)pubs.usgs.gov
  4. Han, X. et al. (2024) Recent uplift of Chomolungma enhanced by river drainage piracy, Nature Geoscience 17doi.org
  5. Leonard, J. S. & Whipple, K. X. (2026) Himalayan rivers reflect rainfall patterns, not river piracy, Nature Geoscience 19doi.org
  6. International Chronostratigraphic Chart v2024/12(International Commission on Stratigraphy)stratigraphy.org

文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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