サメは、木よりも古くから地球にいる生き物だった
思わず唸るNo.023

サメは、木よりも古くから地球にいる生き物だった

ただし今のサメの仲間は、木よりずっと新しい。

ホントTRUE

この判定の対象「サメは、木よりも古くから地球にいる」

うなり度 読む時間8分 出典7件 確認した事実22件
もくじ
  1. いちばん古いサメの化石は小さなうろこだけで、本当にサメかどうかは確実ではない
  2. いちばん古い歯の化石のサメ、レオノドゥスは、歯がゆっくりしか生えかわらなかった
  3. いちばん古い森の木は、葉がなく、幹の中が空っぽだった
  4. 今いるサメとエイのグループで数えると、木のほうが約1億9000万年古い
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

今の海を泳いでいる、サメやエイ。今いるサメとエイのグループの確かな化石は、約2億年前、ジュラ紀の初めから見つかります。

いっぽう、地球でいちばん古い森の化石は、約3億9000万年前のものです。つまり、「今いるサメの仲間」で数えると、木のほうが約1億9000万年古いのです。

それなのに、「サメは木より古い」という雑学は、間違いではありません。どういうことでしょうか。実は、どこまでの生き物を「サメ」と呼び、どこまでの植物を「木」と呼ぶかで、答えが変わるのです。

この記事では、3種類の化石を順に見ていきます。サメらしいうろこ1枚、歯の化石で最も古いサメのすり減った歯、そして最初の森の、中が空っぽの幹です。最後に、今いるサメのグループと比べると、答えがどう変わるかを確かめます。

01いちばん古いサメの化石は小さなうろこだけで、本当にサメかどうかは確実ではない

1996年、科学誌ネイチャーに、小さなうろこの論文が載りました。うろこは、アメリカ・コロラド州の砂岩から見つかったものです。地層は、オルドビス紀の後期です。国際的な年代表では、約4億5800万〜4億4300万年前にあたります。

この発見で、知られている最古のサメの化石の年代は、約2500万年古くなりました。それまで最古とされていたのは、シルル紀の初めのものです。ネットでよく見る「サメは4億5000万年前から」の根拠の一つが、このうろこです。

ただし、論文はこのうろこを、「サメと考えられる(putative)」と慎重に書いています。体の骨格は、見つかっていません。いちばん古いサメの話は、小さなうろこにもとづいた話なのです。

02いちばん古い歯の化石のサメ、レオノドゥスは、歯がゆっくりしか生えかわらなかった

歯の化石では、レオノドゥス(Leonodus carlsi)が、知られている中で最古の「歯をもつサメ」です。スペインの、デボン紀前期(約4億1960万〜3億9350万年前)の地層から出ました。

2009年、研究チームが、レオノドゥスの歯1103本を調べました。今のサメは、歯がどんどん生えかわることで知られています。ところが研究チームは、レオノドゥスの歯はとてもゆっくりしか生えかわらなかった、と結論しました。手がかりは、次の3つです。

  • 歯のすり減り方。
  • 歯の内部のつくり。
  • 同じ列にならぶ歯の、大きさの変わり方。

「サメといえば次々に歯が生えかわる」という特徴は、最初からあったわけではないのです。

03いちばん古い森の木は、葉がなく、幹の中が空っぽだった

では、木はどうでしょう。2024年、ケンブリッジ大学などのチームが、約3億9000万年前の森の化石を報告しました。場所は、イングランド南西部の海岸の崖です。知られている中で、最も古い森です。

森を作っていたのは、カラモフィトンという植物です。高さは2〜4メートルほどで、幹は細く、中が空洞でした。葉はなく、枝に小枝のようなものが何百もついていました。私たちが思いうかべる「木」とは、だいぶ違います。

アメリカ・ニューヨーク州のギルボアでは、1870年代に、根もとから立ったままの切り株の化石が見つかりました。ギルボアは、「最古の森」と呼ばれてきました。ところが、切り株から上がどんな形だったかは、130年ほども分かりませんでした。

2007年、同じニューヨーク州のスコハリー郡で、上の部分までつながった化石が見つかります。その結果、ギルボアの切り株は、ワッティエザという植物だと分かりました。高さ8メートル以上の、木生シダ(木のように大きくなるシダ)のような植物です。

2020年には、同じニューヨーク州のカイロという町の近くで、アーケオプテリスの仲間の根が見つかりました。根は、化石になった土(化石土壌)の中にありました。その根は、今の種子植物とほとんど変わらないほど、進んだつくりでした。研究チームは、木と森の始まりを、中期デボン紀(約3億9300万〜3億8300万年前)としています。

最初の森の木は、葉がなく、中が空洞だった
最初の森の木は、葉がなく、中が空洞だった

04今いるサメとエイのグループで数えると、木のほうが約1億9000万年古い

ここまでを、並べてみます。サメらしいうろこ(オルドビス紀後期、4億4300万年前より前)は、最古の森(約3億9000万年前)より、5000万年以上古いことになります。歯の化石(デボン紀前期)で数えても、木より前です。

ところが、2018年に、動物分類学の専門誌ズータクサに載った論文があります。その論文によると、今のサメ・エイにつながるネオセラキ類の化石は、ペルム紀前期(約2億9000万年前)までたどれる程度です。それも、ばらばらの歯の化石だけです。今いるサメとエイのグループそのものの化石が現れるのは、ジュラ紀前期(約2億年前)からです。

つまり、4億年以上前の「サメ」は、今のサメの遠い親戚にあたる生き物たちです。「今のサメ」と「最初の木」を比べると、木のほうが約1億9000万年古いのです。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

「サメ」という言葉が指す生き物の範囲は、少なくとも3通りある

生物の名前は、どこまでの生き物を含めるかで、指す範囲が変わります。サメの場合、大きく3段階に分けると分かりやすくなります。

  1. 軟骨魚類全体:サメやエイを含む軟骨魚類と、その絶滅した親戚。オルドビス紀のうろこやレオノドゥスはここに入ります。
  2. ネオセラキ類:今のサメ・エイにつながる系統。歯の化石でペルム紀前期までたどれるとされます。
  3. 今いるサメとエイのグループ(冠グループ):今生きているすべての種の共通祖先と、その子孫。化石はジュラ紀前期から。

1と2に入る古い仲間の多くは、「幹グループ」です。幹グループとは、今いるサメ・エイのグループに近いけれど、その外側で枝分かれして絶滅した仲間のことです。

雑学の「サメは木より古い」の「サメ」は、1の意味です。ふだん私たちが思いうかべるサメは、3の意味です。同じ「サメ」という言葉で、2億年以上違う時代の生き物を指しているのです。

「木」は、祖先のつながりの名前ではなく、背が高くなる体のつくりの名前

木の側も、同じ問題をかかえています。2007年の論文は、ワッティエザのような「木生シダ型」の体のつくりについて、こう述べています。この形は、維管束植物(水を通す管をもつ植物)の中で、何度もくり返し現れた形だ、と。つまり、「木」は、同じ祖先から続くグループの名前ではありません。背が高くなるという、「体の作り方」の名前なのです。

最古の森のカラモフィトンは、クラドキシロン類という仲間でした。2024年の論文は、カラモフィトンを、後の時代の木より木質(かたい木の部分)が少ない木だと説明しています。いっぽう、アーケオプテリスは、のちに森の主役になる種子植物に近い仲間だと考えられています。

「今の木につながる植物」で数えるか、「背が高くなった植物」で数えるか。どちらで数えるかで、最初の木がどれになるかは変わります。

最初の森から、落ちた枝が川を通って海辺まで運ばれていた

サメと木は、別々の世界の話に見えます。でも、最初の森は、海ともつながっていました。2024年の論文によると、カラモフィトンの森は、大きな川の流域に広がっていました。季節ごとの洪水などにさらされる場所です。落ちた枝などの植物のかけらは、海岸近くの海にまで運ばれていました。

2007年の論文は、次のような可能性を指摘しています。小枝のような部分を次々に落とす木が、大量の落ち葉や落ち枝を生んだ。そして、それを食べる節足動物(昆虫やクモなどの仲間)の暮らしを支えた、というものです。

2020年の論文は、木と森の始まりを、大きな「転換点」としています。木と森は、陸の生き物の世界、大気の二酸化炭素、気候に、長く続く変化をもたらした、というのです。

陸に森ができたことは、川をとおして、海辺の環境ともつながっていました。サメと木のどちらが古いかという問いは、海の生き物と陸の植物の、それぞれの歴史の始まりを比べる問いでもあります。

うろこだけの化石で本当にサメの仲間だと決めてよいかは、研究者も慎重に考えている

もう一つの問題は、化石の量です。オルドビス紀のサメらしいうろこは、微化石(顕微鏡で調べるほど小さな化石)です。体のほかの部分は見つかっていません。うろこの形が似ていても、それが本当にサメの仲間のものかどうかは、慎重に扱われています。論文の著者自身が、「putative(と考えられる)」と書いているほどです。

この雑学を正確に言い直すなら、こうなります。「今のサメにつながる系統の仲間は、背の高い植物が現れるより前から海にいた」。「サメは木より古い」という短い雑学には、2つの判断が含まれています。「サメ」をどの範囲の生き物とするか。そして、どの化石を証拠にするか、です。

05まとめ

「サメは木より古い」は、サメを系統(祖先から子孫へのつながり)の意味で取れば、ホントです。サメらしいうろこは、最古の森より5000万年以上前の地層から見つかっています。

ただし、そのうろこの持ち主も、歯がゆっくりしか生えかわらなかったレオノドゥスも、今のサメの遠い親戚です。今いるサメとエイのグループの化石は、約2億年前からです。最初の森の、葉のない空洞の木々よりも、約1億9000万年新しいのです。

人に話すなら、こう言おう

サメは木より古いって有名だけど、今の海にいるサメやエイのグループの化石は2億年前からなんだって。最初の森は3億9000万年前だから、「今のサメ」で数えると木のほうが古いらしいよ。
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英語で読む

Which Came First, Sharks or Trees?

CEFR A2214 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

You may have heard that sharks are older than trees.サメは木より古い、と聞いたことがあるかもしれません。 It is true, but only if we use the word "shark" in a wide way.それは本当ですが、「サメ」という言葉を広い意味で使う場合だけです。

The oldest signs of sharks are tiny scales.サメの最も古い手がかりは、小さなうろこです。 Scientists found them in rocks in Colorado, in the United States.科学者たちは、それをアメリカのコロラド州の岩の中で見つけました。 The rocks are from a time between about 458 and 443 million years ago.その岩は、約4億5800万年前から4億4300万年前のあいだの時代のものです。 This find pushed the shark story back by about 25 million years.この発見で、サメの歴史は約2500万年さかのぼりました。 But nobody has found the body, so the scientists carefully called them "shark-like."でも体はだれも見つけていないので、科学者たちは慎重に「サメらしい」と呼びました。

The oldest shark with teeth lived in what is now Spain.歯をもつ最古のサメは、今のスペインにあたる場所に住んでいました。 Its name is Leonodus.その名はレオノドゥスです。 Sharks today lose old teeth and get new ones very quickly.今のサメは、古い歯が抜けて新しい歯がとても速く生えてきます。 But a study of 1,103 teeth showed that Leonodus changed its teeth very slowly.でも1103本の歯を調べた研究で、レオノドゥスはとてもゆっくりしか歯が生えかわらなかったことが分かりました。

The oldest known forest grew about 390 million years ago in England.知られている中で最も古い森は、約3億9000万年前にイングランドにありました。 Its trees were only 2 to 4 meters tall.その木々の高さは2〜4メートルしかありませんでした。 They had no leaves, and their trunks were empty inside.葉がなく、幹の中は空っぽでした。 Rivers carried pieces of these plants down to the sea.川は、こうした植物のかけらを海まで運びました。

Now here is the twist.さて、ここからがひねりです。 The group of sharks and rays that lives in the sea today appears in rocks from about 200 million years ago.今の海にいるサメとエイのグループは、約2億年前の岩から現れます。 So the old "sharks" were only distant relatives of today's sharks.つまり大むかしの「サメ」は、今のサメの遠い親戚にすぎなかったのです。 If we only count modern sharks, trees win by almost 200 million years.今のサメだけを数えるなら、2億年近くの差で木の勝ちです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How tall were the trees in the oldest known forest?

    知られている中で最も古い森の木は、どのくらいの高さでしたか。

  3. Q3Why did the scientists call the scales "shark-like"?

    科学者たちがうろこを「サメらしい」と呼んだのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 5, the word "distant" is closest in meaning to ...

    第5段落の "distant" に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about Leonodus?

    レオノドゥスについて正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • scale名詞
    うろこ

    This fish has silver scales.

    この魚には銀色のうろこがある。

    💡 scale には「規模」「はかり」の意味もある。文脈で見分ける。

  • fossil名詞
    化石

    We saw a dinosaur fossil at the museum.

    私たちは博物館で恐竜の化石を見た。

    💡 fossil fuel は「化石燃料」(石油や石炭)。

  • relative名詞
    親戚、近い仲間

    Lions are relatives of house cats.

    ライオンは家ネコの仲間だ。

    💡 形容詞では「相対的な」。relation(関係)と同じ仲間の語。

  • distant形容詞
    遠い

    We could see a distant mountain.

    遠くの山が見えた。

    💡 名詞 distance(距離)。a distant relative で「遠い親戚」。

  • trunk名詞
    (木の)幹

    The tree has a very thick trunk.

    その木の幹はとても太い。

    💡 ゾウの「鼻」や車の「トランク」も trunk。

  • forest名詞
    森

    Many animals live in the forest.

    森にはたくさんの動物がすんでいる。

    💡 wood(s) より大きく広い森を指すことが多い。

  • carefully副詞
    慎重に、注意深く

    Please read the question carefully.

    問題を注意深く読んでください。

    💡 care(注意)+ -ful(〜に満ちた)+ -ly(副詞)。

  • twist名詞
    (話の)意外な展開、ひねり

    The movie has a big twist at the end.

    その映画は最後に大きなどんでん返しがある。

    💡 動詞では「ねじる」。plot twist で「話の急展開」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 22件)。

  1. Sansom, I. J., Smith, M. M. & Smith, M. P. (1996) Scales of thelodont and shark-like fishes from the Ordovician of Colorado, Nature 379doi.org
  2. Botella, H. et al. (2009) Tooth replacement rates in early chondrichthyans: a qualitative approach, Lethaia 42doi.org
  3. Stein, W. E. et al. (2007) Giant cladoxylopsid trees resolve the enigma of the Earth's earliest forest stumps at Gilboa, Nature 446doi.org
  4. Stein, W. E. et al. (2020) Mid-Devonian Archaeopteris Roots Signal Revolutionary Change in Earliest Fossil Forests, Current Biology 30doi.org
  5. Earth's earliest forest discovered in Somerset(University of Cambridge, 2024)cam.ac.uk
  6. Davies, N. S., McMahon, W. J. & Berry, C. M. (2024) Earth's earliest forest: fossilized trees and vegetation-induced sedimentary structures from the Middle Devonian (Eifelian) Hangman Sandstone Formation, Journal of the Geological Society 181doi.org
  7. Guinot, G. et al. (2018) On the need of providing tooth morphology in descriptions of extant elasmobranch species, Zootaxa 4461doi.org

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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