ピラミッドができたころ、マンモスはまだ生きていた
思わず唸るNo.081

ピラミッドができたころ、マンモスはまだ生きていた

北極の島で、最後の群れが暮らしていた。

ホントTRUE

この判定の対象「ピラミッドができたころ、マンモスはまだ生きていた」

うなり度 読む時間7分 出典7件 確認した事実22件
もくじ
  1. 1993年まで、マンモスは約9500年前に絶滅したと考えられていた
  2. エジプトのピラミッドの時代は、島にマンモスがいた時代の中にまるごと入る
  3. ウランゲル島の群れは、一度ごく少ない数まで減ったあと、約6000年続いた
  4. ウランゲル島で見つかった人の遺跡は、マンモスが消えた約1000年あとのもの
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

エジプトのギザでは、クフ王のために、高さ約147mの大ピラミッドが建てられました。同じころ、北極海にうかぶ島では、ケナガマンモスの群れが草を食べていました。

マンモスは氷河時代の動物です。だから、人類が文明を作るずっと前に消えた、と思っている人が多いでしょう。研究者たちも、30年ほど前まではそう考えていました。

ところが1993年、北極海のウランゲル島から、「文明より前に消えた」という考えをくつがえす化石の報告が出ました。この記事では、まず、マンモスがいつまで生きていたかを、ピラミッドの時代と比べます。次に、島の群れの数がどう変わったかを、ゲノム(全遺伝情報)の研究から紹介します。最後に、マンモスがなぜ消えたのかについての、いくつかの説を見ていきます。

011993年まで、マンモスは約9500年前に絶滅したと考えられていた

報告したのは、ロシアのバルタニアン(S. L. Vartanyan)らです。科学誌ネイチャーにのった論文でした。

論文の書き出しによると、当時の研究者は、マンモスが約9500年前までにどこでも絶滅したと考えていました。この考えを疑う人は、ほとんどいなかったのです。

ところが、シベリアの北の沖にあるウランゲル島から、たくさんのマンモスの歯が見つかりました。歯の年代は、今から約7000〜4000年前です。論文は、これを「小型のマンモス」の歯だと報告しました。

マンモスは、9500年前で終わっていなかったのです。最後の群れは、そのあとさらに5000年以上も生きのびていました。

02エジプトのピラミッドの時代は、島にマンモスがいた時代の中にまるごと入る

では、エジプトの歴史と並べてみましょう。

ハーバード大学のギザ遺跡プロジェクトによると、エジプトの古王国時代は、紀元前2649年から2100年ごろです。古王国時代は、「ピラミッドの時代」とも呼ばれます。ギザの大ピラミッドも、この時代にクフ王のために建てられました。

一方、ウランゲル島のマンモスが絶滅したのは、約4000年前です。紀元前に直すと、紀元前2000年ごろになります。

つまり、ピラミッドの時代は、初めから終わりまで、地球にマンモスがいた時代の中に入ります。エジプトの人々が石を積んでいたころ、北極の島ではマンモスが歩いていたのです。

ピラミッドが建てられていたころ、北極の島ではマンモスが生きていた。
ピラミッドが建てられていたころ、北極の島ではマンモスが生きていた。

03ウランゲル島の群れは、一度ごく少ない数まで減ったあと、約6000年続いた

ウランゲル島は、もとは大陸とつながっていました。氷河時代が終わると、とけた氷で海面が上がりました。島は大陸から切りはなされ、マンモスはそこに閉じこめられました。

2024年、スウェーデンなどの研究チームが、科学誌セルに論文を出しました。チームは、シベリアのマンモス21頭のゲノムを読みました。

その結果、マンモスは約1万年前に島に閉じこめられたと分かりました。一方、1993年の論文は、島は1万2000年前までには大陸から切りはなされていた、としています。島ができた時期は、2つの論文で少しずれています。

2024年の論文によると、島の群れは、初めに数がごく少なくなりました。びんの首のように、数がぐっと細くしぼられたのです。これを「びん首効果」と言います。それでも、群れはすぐに立ち直りました。その後の約6000年、群れの数はほぼ安定していたのです。島で生きた世代は、200をこえます。

04ウランゲル島で見つかった人の遺跡は、マンモスが消えた約1000年あとのもの

では、最後のマンモスは、人に狩られて消えたのでしょうか。

ウランゲル島には、「チョルトフ・オヴラーグ」という人の遺跡があります。2024年の別の論文によると、ここは海の動物をとる人たちが、短い間使った狩りのキャンプでした。

この遺跡の年代は、紀元前1000年ごろとされています。マンモスが消えた紀元前2000年ごろより、約1000年もあとです。同じ論文によると、この人たちの文化がアジアの北東のはしに現れたのは、約3500年前です。

今分かっている証拠からは、島のマンモスが人に狩りつくされたとは言えません。最後のマンモスは、人に会うことなく消えた可能性があるのです。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

2017年の研究は、遺伝子に害のある変化がたまって、島の群れが弱ったと考えた

小さな群れでは、近い親せき同士で子どもを作るしかありません。そのため、体に害のある遺伝子の変化が、群れの中にたまりやすくなります。これが続くと、群れ全体がだんだん弱っていきます。この考えは、「ゲノムのメルトダウン」と呼ばれます。遺伝情報が、とけるようにくずれていく、という意味です。

2017年、アメリカのロジャーズとスラトキン(R. L. Rogers & M. Slatkin)は、この考えを最後のマンモスに当てはめました。2人は、約4300年前のウランゲル島のマンモス1頭のゲノムを読みました。そして、4万5000年前の大陸のマンモスのゲノムと比べたのです。

島のマンモスでは、次のような変化が多く見つかりました。

  • 遺伝子の一部が欠けた場所
  • 体を作るたんぱく質を、途中までしか作れなくする変化

においを感じる遺伝子も、たくさん働かなくなっていました。毛の性質を決める FOXQ1 という遺伝子にも、働きを失う変化が2つありました。FOXQ1 が働かなくなると、毛はサテンのようなつやのある毛になります。

2人は、島の群れの遺伝子には、害のある変化がたくさんたまっていたと考えました。

2024年の研究は、害のある遺伝子の変化だけでは絶滅を説明できないとした

ところが2024年、セル誌の論文は、違う結論を出しました。この研究は、1頭ではなく、時代の違う21頭のゲノムを並べました。そして、遺伝子の変化が時代とともにどう移り変わったかを追いました。

確かに、少しだけ害のある変化は、時間とともにたまっていました。近親交配の悪い影響も、何百世代も続いていました。けれども、とても害の大きい変化は、逆に減っていました。そうした変化をもつ子は生きのびにくく、群れから取りのぞかれていったと考えられます。

さらに、群れの数は約6000年間ほぼ安定していました。害のある遺伝子の変化が少しずつたまっていても、群れはすぐには消えなかったのです。

骨と歯の成分を調べても、マンモスのえさが減っていった証拠は見つからなかった

では、何が起きたのでしょう。2019年、別の研究チームは、77点のマンモスの骨や歯を調べました。調べたのは、骨や歯に含まれる炭素・窒素・硫黄の「同位体」です。同位体とは、同じ元素の中で、重さが少し違うもののことです。同位体の割合は、その動物が食べた物や飲んだ水の手がかりになります。

結果は、「えさの質や量が落ちていった」という考えを支えませんでした。骨や歯の窒素の同位体の割合は、最後まで大陸の祖先とよく似ていたのです。また、年代が分かった化石の数を時代ごとに見ると、絶滅はかなり急だったようです。

では、何が急な絶滅を起こしたのか。チームは、2つの可能性を挙げています。

  • 島の山の岩が風や雨でくずれて(風化して)、水の質が悪くなった
  • 一度に多くのマンモスが飢えるできごとがあった

この研究は、セントポール島のマンモスのデータとも比べています。ただし、2つのうちどちらが正しいかは、まだ分かっていません。

いちばん新しい化石の年代が、最後の1頭が死んだ年とはかぎらない

化石の年代には、もう一つ注意がいります。見つかる化石は、生きていたマンモスのごく一部です。だから、いちばん新しい化石の年代が、そのまま最後の1頭の年代とはかぎりません。

「約4000年前」という数字は、今ある証拠でいえる、いちばん新しい年代です。もっと新しい化石が見つかれば、この数字はまた動くかもしれません。

05まとめ

1993年まで、マンモスは約9500年前に絶滅したと考えられていました。でも、実際はそうではありませんでした。北極海のウランゲル島の群れは、一度ごく少ない数まで減りました。それでも約6000年続き、約4000年前まで生きていました。

エジプトの古王国時代(紀元前2649〜2100年ごろ)は、まるごと島にマンモスがいた時代の中に入ります。そして、ウランゲル島で見つかっている人の遺跡は、マンモスが消えてから約1000年もあとのものです。

人に話すなら、こう言おう

マンモスって、エジプトでピラミッドを作ってたころも、北極の島でまだ生きてたんだって。しかもその群れは、一度ぐっと数が減ったのに、そこから6000年も続いたらしいよ。
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英語で読む

Mammoths in the Age of the Pyramids

CEFR A2211 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

When people in Egypt were building the Great Pyramid, woolly mammoths were still alive.エジプトの人々が大ピラミッドを建てていたころ、ケナガマンモスはまだ生きていました。 They lived on Wrangel Island, a cold island in the Arctic Ocean.マンモスは、北極海にある寒い島、ウランゲル島に住んでいました。

Before 1993, scientists believed that all mammoths died out about 9,500 years ago.1993年より前、科学者たちは、マンモスはみな約9500年前に絶滅したと考えていました。 Then a team from Russia found many mammoth teeth on the island.そのあと、ロシアのチームが島でたくさんのマンモスの歯を見つけました。 Some of the teeth were only about 4,000 years old.その中には、約4000年前という新しい歯もありました。

The Old Kingdom of Egypt, often called the Pyramid Age, was from about 2649 to 2100 BCE.エジプトの古王国時代は「ピラミッドの時代」とも呼ばれ、紀元前2649年ごろから2100年ごろまででした。 The last mammoths died around 2000 BCE.最後のマンモスは、紀元前2000年ごろに死にました。 So the whole Pyramid Age happened while mammoths were still walking on Earth.つまり、ピラミッドの時代はまるごと、マンモスがまだ地球を歩いていた間に起きたのです。

How did they survive so long?マンモスはどうしてそんなに長く生きのびたのでしょうか。 About 10,000 years ago, the sea rose and the island was cut off from the mainland.約1万年前、海面が上がり、島は大陸から切りはなされました。 A study in 2024 says the group became very small at first, but it recovered quickly.2024年の研究によると、群れははじめにとても小さくなりましたが、すぐに立ち直りました。 After that, the number of mammoths stayed about the same for about 6,000 years.そのあと、マンモスの数は約6000年、ほぼ同じままでした。

Then the mammoths disappeared quite suddenly, and nobody knows exactly why.そのあとマンモスはかなり急にいなくなりましたが、理由はだれにもはっきり分かっていません。 Their genes had some problems, but the group lived on for a long time.遺伝子には問題もありましたが、群れは長いあいだ生きつづけました。 Humans were probably not the reason.おそらく、人間が原因でもありませんでした。 A known human camp on the island is from about 1000 BCE, around 1,000 years after the last mammoths.島で知られている人のキャンプは紀元前1000年ごろのもので、最後のマンモスの約1000年あとです。 The last mammoths may never have met a human at all.最後のマンモスたちは、人間に一度も会わなかったのかもしれません。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2Before 1993, when did scientists think all mammoths died out?

    1993年より前、科学者たちはマンモスがみないつ絶滅したと考えていましたか。

  3. Q3Why were the mammoths trapped on Wrangel Island?

    マンモスがウランゲル島に閉じこめられたのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 5, the word "disappeared" is closest in meaning to ...

    第5段落の "disappeared" に最も近い意味はどれですか。

  5. Q5Which is true about humans on Wrangel Island?

    ウランゲル島の人間について、正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • woolly形容詞
    毛におおわれた、羊毛のような

    She wore a warm woolly hat.

    彼女は暖かい毛糸の帽子をかぶっていた。

    💡 wool(羊毛)から。woolly mammoth は「ケナガマンモス」。

  • survive動詞
    生きのびる

    These plants can survive without much water.

    これらの植物は水が少なくても生きのびられる。

    💡 名詞は survival。survivor は「生存者」。

  • die out句動詞
    絶滅する、死に絶える

    Many kinds of birds may die out in the future.

    将来、多くの種類の鳥が絶滅するかもしれない。

    💡 become extinct とほぼ同じ意味。名詞は extinction(絶滅)。

  • mainland名詞
    本土、大陸

    The ferry goes from the island to the mainland.

    フェリーは島から本土へ行く。

    💡 main(主な)+ land(土地)。island と対で使う。

  • suddenly副詞
    急に、とつぜん

    The rain stopped suddenly.

    雨は急にやんだ。

    💡 形容詞は sudden。all of a sudden も「とつぜん」。

  • gene名詞
    遺伝子

    Eye color is passed down through genes.

    目の色は遺伝子を通して受けつがれる。

    💡 genetic は「遺伝の」。genome は「ゲノム(全遺伝情報)」。

  • probably副詞
    おそらく、たぶん

    It will probably snow tomorrow.

    明日はおそらく雪が降るだろう。

    💡 maybe より確信が強い。形容詞は probable。

  • cut off句動詞
    切りはなす、孤立させる

    The storm cut off the village from the city.

    嵐でその村は町から孤立した。

    💡 be cut off from ~ で「~から切りはなされる」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 22件)。

  1. Vartanyan, S. L., Garutt, V. E. & Sher, A. V. (1993) Holocene dwarf mammoths from Wrangel Island in the Siberian Arctic, Nature 362: 337-340doi.org
  2. Dehasque, M. et al. (2024) Temporal dynamics of woolly mammoth genome erosion prior to extinction, Cell 187: 3531-3540pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  3. Rogers, R. L. & Slatkin, M. (2017) Excess of genomic defects in a woolly mammoth on Wrangel island, PLOS Genetics 13: e1006601doi.org
  4. Arppe, L. et al. (2019) Thriving or surviving? The isotopic record of the Wrangel Island woolly mammoth population, Quaternary Science Reviews 222: 105884doi.org
  5. Graham, R. W. et al. (2016) Timing and causes of mid-Holocene mammoth extinction on St. Paul Island, Alaska, PNAS 113: 9310-9314doi.org
  6. Lebedintsev, A. I. (2024) The History of the Discovery and Archaeological Research of the Paleo-Eskimo Site on the Wrangel Island, Vestnik NSU 23: 19-34doi.org
  7. The Pyramid Age (The Old Kingdom)(ハーバード大学 Digital Giza)giza.fas.harvard.edu

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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