📚 海外の英語授業実践シリーズ Vol.5
Information Gap(インフォメーション・ギャップ)で
「英語を話す必然性」を教室に生み出す!
~ 相手が持っていない情報を伝えるから、全員が「本気で」英語を使う最強のペアワーク ~
✅ ペア活動で「話す必然性」が生まれる
✅ プリント1枚で実施可能
✅ 中1〜高3まで難易度調整自在
✅ スピーキングの流暢性に即効性あり
🔑 Information Gap Activityとは何か?
Information Gap Activity(インフォメーション・ギャップ・アクティビティ)とは、ペアやグループの各メンバーが「異なる情報」を持ち、お互いに英語で情報を交換しなければ課題を完成できない活動です。
「情報の差(ギャップ)」が存在するため、生徒は自分の持っている情報を相手に伝え、相手の情報を聞き取るという、実社会でのコミュニケーションに極めて近い行為を教室で体験できます。
💡 普通のペアワークとの決定的な違い
普通のペアワーク → 「同じ教科書を見ながら会話練習」(=答えが見えているので話す必要がない)
Information Gap → 「相手の紙は絶対に見えない → 英語で聞かないと自分の課題が完成しない」
この「話さなければ終わらない」という構造こそが、生徒を本気のコミュニケーションに駆り立てる最大の仕掛けです。
🌍 どこの国で実践されているの?
Information Gap Activityは、1980年代にインドの言語学者N.S. Prabhuが「バンガロール・プロジェクト」でタスクベース教授法(TBLT)の中核概念として体系化して以来、コミュニカティブ言語教育の「基本中の基本」として世界中に広まりました。
イランの研究(Namaziandost et al., 2019)では、140名の中級EFL学習者をInformation Gap群・Opinion Gap群・Reasoning Gap群・統制群の4グループに分け、Information Gap群が他のすべてのグループと比べてスピーキング流暢性の向上幅が最も大きかったことが報告されています。
インドネシアの準実験研究では、Information Gap活動を用いた実験群のスピーキング正確性スコアが事前テスト1.55から事後テスト3.06へとほぼ倍増。統制群(1.90→2.32)を大きく上回る結果でした。
📖 Prabhuの「3つのギャップ」を理解する
Information Gap Activityを深く理解するには、N.S. Prabhu(1987)が提唱した3種類のタスクギャップを知っておくと便利です。
🔴 Information Gap
=情報の差
AさんにはあるがBさんにはない「事実情報」を交換する。
例:不完全な時間割を持つ2人が、お互いの情報を聞いて完成させる
🟠 Reasoning Gap
=推論の差
与えられた情報から推論・判断して新しい情報を導き出す。
例:交通手段と時刻表を見て「最も効率的なルート」をペアで決める
🔵 Opinion Gap
=意見の差
同じ情報を共有した上で、個人の意見・感情・態度を交換する。
例:社会問題について自分の意見を述べ合い、解決策を提案する
🔧 Information Gap Activityの具体的な手順(完全版)
同じフォーマットのワークシートA・Bの2種類を作成します。それぞれ異なる情報が空欄になっていて、ペアで情報交換しなければ完成しません。
🌟 ワークシート例(中2「人物紹介」の場合)
📄 Student A
| Name | Takeshi |
| Age | ❓ ________ |
| Hobby | playing soccer |
| Favorite food | ❓ ________ |
| Dream | teacher |
📄 Student B
| Name | ❓ ________ |
| Age | 14 |
| Hobby | ❓ ________ |
| Favorite food | curry rice |
| Dream | ❓ ________ |
ペアを組ませ、絶対ルールを確認します。
🚫 3つの鉄則
① 相手のプリントを見てはいけない!(No peeking!)
② 日本語禁止!(English only!)
③ 必ず完全な文で答える!(Full sentences only!)
次に、活動中に使う質問・応答のフレーズを確認します。
🗣 使わせたいフレーズ
質問する側:
“What is (his/her) ____?”
“How old is ____?”
“Can you tell me about ____?”
“Could you repeat that, please?”
答える側:
“His/Her ____ is ____.”
“He/She likes ____.”
“Sure, it’s ____.”
ペアが向かい合い、相手の紙を見ずに英語だけで情報交換します。
🔄 やりとりの流れ
❓
① 質問する
空欄の情報を聞く
👂
② 聞き取る
相手の答えを注意深く聞く
✍️
③ 書き込む
聞いた情報を記入
🔁
④ 交代
今度は相手が質問
教師はペア間を巡回しながら、生徒が本当に英語で情報交換しているかをモニターします。日本語に流れているペアがいたら、そっと近づいて “In English, please!” と声をかけるか、使える表現カードを指差すだけでOKです。
ペアでお互いのシートを見せ合い、正しく情報が伝わっていたかを確認します。
その後、数組のペアを指名してクラス全体への口頭報告をさせます。
🗣 報告で使わせたいフレーズ
“I found out that Takeshi is 14 years old.”
“My partner told me that his favorite food is curry rice.”
“The most surprising thing was that…”
“We had trouble understanding ____, so we asked again.”
🎯 なぜInformation Gap Activityが効果的なのか?(5つの理由)
① 話す「必然性」が構造に組み込まれている
従来型の会話練習は「やりたくなければやらなくてもいい」構造ですが、Information Gapでは英語で聞かなければ自分の課題が完成しないため、全員が「本気で」話す必然性に迫られます。LongのInteraction仮説(意味の交渉が第二言語習得を促進する)を実証するアクティビティです。
② 「意味の交渉(Negotiation of Meaning)」が自然に起きる
相手の言ったことがわからなければ “Sorry?” “Can you say that again?” と聞き返す。これはSLA研究で最も重視される意味の交渉であり、Information Gap活動では毎回の会話で自然に発生します。
③ 実社会のコミュニケーションに最も近い
現実の会話は「相手が知らないことを伝える」行為です。道を尋ねる、レストランで注文する、仕事の引き継ぎをする——すべてInformation Gapです。教室で最もリアルな言語使用場面を再現できます。
④ 文法ターゲットを自然に練習させられる
ワークシートの設計次第で、疑問文・比較級・受動態・現在完了など特定の文法項目を集中的に使わせることが可能です。ドリルとは違い、意味のあるコミュニケーションの中で文法を使うので定着度が格段に高まります。
⑤ 低い不安感で発話量が最大化される
クラス全員の前で話すのではなく、1対1のペアワークなので心理的ハードルが極めて低い。さらに「正解がある」という安心感が、英語への不安が強い生徒にとっても取り組みやすい環境を作ります。
📋 日本の授業で使える!応用アイデア5選
💬 応用① Spot the Difference(間違い探し型)
AとBにそれぞれ微妙に違う2枚のイラストを配布。相手の絵を見ずに英語で描写し合い、違いを見つけます。中1の現在進行形の練習に最適です。
A: “In my picture, a boy is reading a book.”
B: “In my picture, a boy is watching TV. That’s different!”
💬 応用② スケジュール調整型(Schedule Negotiation)
AとBにそれぞれ異なるスケジュール表を配布。二人とも空いている日時を英語で交渉して見つけます。高校の「日常会話」「ビジネス英語」の単元に直結する超実用的タスクです。
A: “Are you free on Wednesday afternoon?”
B: “Sorry, I have piano lessons. How about Thursday?”
💬 応用③ 道案内型(Direction Gap)
AとBにそれぞれ異なる建物が記入された地図を配布。お互いに道を聞いて、自分の地図に足りない建物を書き込みます。中2の道案内表現(”Turn right at the corner.” “Go straight for two blocks.”)の練習に最適です。
💬 応用④ 比較級・最上級強化型(Survey Gap)
クラス全員にアンケート(好きな教科・好きな季節など)を取り、結果をAチームとBチームで別々に集計。お互いのデータを聞き合い、「クラス全体の傾向」を英語でまとめます。比較級・最上級を使い倒すタスクです。
A: “In our group, math is more popular than science.”
B: “Really? In our group, science is the most popular subject.”
💬 応用⑤ Running Dictation+Information Gap(ハイブリッド型)
教室の壁に英文テキストの一部を貼っておく。ペアのうち1人が壁まで走って読みに行き(Running Dictation)、パートナーに口頭で伝える。パートナーが書き取ったら、次はもう1人が別の壁の情報を取りに行く。身体性+情報ギャップ+4技能統合の超パワフルなハイブリッド活動です。
⚠️ 失敗しないための注意点
⏱ 明日からすぐ使える!50分授業タイムテーブル
| ⏰ 時間 | 📝 内容 |
|---|---|
| 0:00〜0:03 | Today’s goal の説明(”Today, you will get missing information from your partner!”) |
| 0:03〜0:08 | Useful Expressions の確認&ペアでリハーサル(例文を1往復練習) |
| 0:08〜0:10 | ワークシート配布&ルール確認(No peeking!) |
| 0:10〜0:28 | 🔥 Information Gap本番(ペアワーク) |
| 0:28〜0:33 | ペアで答え合わせ(プリントを見せ合う) |
| 0:33〜0:38 | 🔁 ペアを変えて2回目のInformation Gap(別タスク or 難易度UP版) |
| 0:38〜0:44 | 全体で口頭報告(3〜4組)&教師のフィードバック |
| 0:44〜0:50 | Reflection(振り返り)&重要表現の整理 |
Gallery WalkやSocratic Seminarは準備に時間がかかりますが、Information Gapはプリント1枚で5〜15分の短時間タスクにできるので、50分の授業の中に2回組み込むことも可能です。「ウォームアップ用」と「メイン活動用」の2段構えが理想です。
📊 研究で実証されている効果
Information Gap Activityの教育効果は、世界各地で多数の実証研究が行われています。
イランでの大規模研究(Namaziandost et al., 2019)では、140名のB1レベルEFL学習者を対象に3種類のタスクギャップの効果を比較。Information Gap群がスピーキング流暢性において最大の向上を示し、統制群との差は統計的に有意でした。
インドネシアの複数の研究では一貫した効果が報告されています。MAN 2 Semarangでの研究では、実験群のスピーキングテスト平均が事前45.81→事後70.76と約25ポイント向上したのに対し、統制群は42.12→49.48にとどまりました。別の研究でもスピーキング正確性が事前1.55から事後3.06へとほぼ倍増しています。
チリでの行動研究(Ortiz-Neira, 2019)では、高校EFL学習者の口頭流暢性が事前・事後テストで統計的に有意な向上(p < 0.001)を示しました。生徒からも「通常の会話練習より目的意識があって取り組みやすい」という肯定的な声が報告されています。
ホンジュラスの農村部公立校での研究(Caballero Guillén, 2023)でも、A1レベルの9年生がInformation Gap活動を7回実施した結果、発話速度・ポーズの減少・自己修正能力の3指標すべてで改善が見られ、生徒のスピーキングへの態度も肯定的に変化しました。
✨ まとめ
Information Gap Activityの最大の魅力は、「英語を話す必然性」を構造的に生み出す点にあります。
従来のペアワークでは「話しても話さなくてもタスクが終わる」構造でしたが、Information Gapでは相手に聞かなければ自分のシートが完成しない。この「仕掛け」によって、英語を話すことが「練習」ではなく「目的を達成する手段」に変わります。
必要なのはA・B 2種類のワークシートだけ。しかも1枚の紙で5分から20分まで自在にタスクの長さを調整でき、文法ターゲットも自由に設定できる——この圧倒的な汎用性と手軽さこそが、世界中の英語教師に40年以上愛され続けている理由です。
明日の授業で、教科書のダイアログをA・Bに分けてみてください。
「先生、これめっちゃ英語使う!」という声が聞こえるはずです。🔥
• Prabhu, N. S. (1987). Second Language Pedagogy. Oxford: Oxford University Press.
• Namaziandost, E., Hashemifardnia, A., & Shafiee, S. (2019). “The Impact of Opinion-gap, Reasoning-gap, and Information-gap Tasks on EFL Learners’ Speaking Fluency.” Cogent Social Sciences, 5(1), 1630150.
• Abdul, N. B. et al. (2013). “The Implementation of Information Gap Activities to Improve Students’ Speaking and Reading Skills.” EXPOSURE: Jurnal Pendidikan Bahasa Inggris, 2(1).
• Ortiz-Neira, R. A. (2019). “The Impact of Information Gap Activities on Young EFL Learners’ Oral Fluency.” PROFILE: Issues in Teachers’ Professional Development, 21(2), 113-125.
• Caballero Guillén, M. E. (2023). “The Contribution of Information Gap Activities to Support Honduran Ninth-grade Students’ Speaking Fluency.” GIST Education and Learning Research Journal, 27, 53-78.
• American English / U.S. State Department. “Teacher’s Corner: Speaking – Information Gap Activities.”
• Anderson, J. (2019). “On the Origins of ‘Jigsaw’ and ‘Information Gap’.” Jason Anderson Blog.
