洋画のスラング、汚い言葉が多いのはなぜですか?
英語がもともと乱暴なわけではありません。1968年に映画の決まりが「禁止」から「年齢の目安」に変わり、汚い言葉が数えるものになったからです。言いたくないときの言い換えも紹介します。
Netflixでアメリカの映画を字幕なしで見ようとしたら、f から始まるあの言葉が何度も出てきて驚きました。日本の映画でここまで聞いた覚えがありません。英語ってもともと口が悪いんですか?それとも映画だけの話ですか?
字幕なしで洋画を見はじめた高校2年生さんより
英語が口の悪い言語なのではありません。1968年にアメリカ映画の決まりが変わり、汚い言葉が「禁止」から「年齢の目安を決める材料」になったからです。いまは、使う回数で映画の格付けが動きます。
1968年まで、アメリカ映画では damn さえ言えませんでした
1934年から1968年まで、アメリカ映画にはヘイズ・コードと呼ばれる自主規制の決まりがありました。禁止事項の一覧には、God・Lord・Jesus・Christ・Hell・damn といった語が、名指しで並んでいます(Wikipedia|Motion Picture Production Code)。
有名なのが、1939年の『風と共に去りぬ』の最後のせりふ "Frankly, my dear, I don't give a damn." です。この damn 1語のために製作者が5000ドルの罰金を払った、という話が広まっていますが、これは事実ではありません。
実際には、決まりのほうが変わりました。1939年11月1日、hell と damn を「歴史上の事実や民話にもとづく場面で、どうしても必要なとき」に限って認める改正が通り、そのせりふはそのまま公開されています(Wikipedia|Gone with the Wind))。
罰金を払ったのではなく、決まりのほうが変わったわけです。当時それだけ重い1語だった、ということでもあります。
いまは、回数が「何歳から見られるか」を決めます
1968年11月1日、この決まりは廃止され、年齢の目安をつける格付けに置きかわりました。禁止されていたものが、数えるものに変わったのです。
はじめの4つは G・M・R・X で、いまよく見る PG-13 はまだありません。これは1984年7月1日に、あとから足された段です。PGでは甘く、Rでは厳しすぎる映画が続いたためで、監督のスティーヴン・スピルバーグが「PGとRのあいだにもう1つ」と提案しています(Wikipedia|MPA film rating system)。
そのPG-13について、アメリカ映画協会(MPA)が公開している目安ははっきりしています。「f から始まるあの語を1回まで。多くはないが、2回か3回のこともある」。それを超えると R(17歳未満は保護者の同伴が必要)になります(MPA|Ratings Guide)。
つまり脚本家は、その語を何回書くかで、映画を見に来られる人の年齢を選んでいることになります。汚い言葉が多いのは、英語が乱暴だからではなく、言ってもいいものになったからです。
ちなみに four-letter word は「4文字の語」という意味ではなく、汚い語そのものを指す言い方です(Merriam-Webster)。多くが4文字なので、こう呼ばれます。
言いたくない人のための言い換えが、ちゃんとあります
英語には、汚い語の一部をわざと別の音に取り替えた言い方があります。minced oath と呼ばれます。意味も勢いもそのままに、角だけを落とした形です。
- damn → darn(しまった)
- hell → heck(いったい、まったく)
- God → gosh(Merriam-Websterは「God の婉曲表現」と書いています)
- shit → sugar(ああもう)
Oh my God! が言いにくい場面では、Oh my gosh! か Oh my goodness! に替えます。意味は「うわあ」「まいった」で変わりません。
⚠ ここで1つ気をつけてください。Damn は言い換えではなく、元のほうです。柔らかくしたいときは Darn に替えます。並べて覚えると、逆に使ってしまいます。
Oh sugar, I left my ticket at home.
Are you serious? The movie starts in ten minutes.
I know. Darn it.
Oh my gosh, just run.
- A ああもう、チケットを家に忘れてきた。
- B うそでしょ? 映画、あと10分で始まるよ。
- A 分かってる。しまったなあ。
- B もう、走って。
Oh my gosh, I completely forgot!
Darn it, I missed the last bus.
Oh sugar, I spilled my coffee.
What the heck is going on here?
- ① うわあ、すっかり忘れてた!
- ② しまった、終バスに乗り遅れた。
- ③ ああもう、コーヒーをこぼしちゃった。
- ④ いったい、ここで何が起きてるの?
洋画に汚い言葉が多いのは、英語が乱暴だからではありません。1968年に、禁止されていたものが「数えるもの」に変わったからです。
明日、海外ドラマを見るときは、gosh・darn・heck・sugar の4つだけ耳で探してみてください。この4つが聞こえたら、その人は本当は別の語を言いたかったということです。そこが分かると、場面の空気まで一緒に読めるようになります。
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Oh my gosh! の gosh は、もともと何の言い換え?
よくある質問
four-letter word とは、どういう意味ですか?
「4文字の語」という字面どおりの意味ではなく、汚い語・下品な語そのものを指す言い方です。Merriam-Websterは「たいてい4文字でできている、下品またはわいせつな語」と説明しています。多くがちょうど4文字なので、この呼び名になりました。
Damn と Darn は、どちらが柔らかい言い方ですか?
Darn のほうです。Damn がもとの語で、その角を落とした言い換えが Darn です。同じ作りで、hell を heck に、God を gosh に、shit を sugar に替える言い方があり、まとめて minced oath と呼ばれます。