アメリカのお葬式に、香典はあるんですか?
香典にあたる習慣はありません。代わりに花か寄付を贈ります。お別れが3つの場に分かれていること、車が葬列に道を譲ること、そして最初にかけるひと言まで、日本との違いをまとめます。
祖父の葬儀に出たあと、アメリカに住む友達にその話をしたら「香典って何?」と聞き返されました。向こうのお葬式は、どんな感じなんでしょうか。お金は渡さないんですか。服装や、かける言葉も違いますか。
英語で友達と身の上話をするようになった高校3年生さんより
アメリカに、香典にあたる習慣はありません。代わりに花を贈るか、訃報に書かれた団体へ寄付します。かける言葉も決まっていて、"I'm sorry for your loss." のひと言で足ります。
包むのはお金ではなく、花か寄付です
日本の香典は、現金を包んで渡すものです。アメリカには、これにあたる習慣がありません。代わりに、葬儀場あてに花(flowers)を届けます。
ただし、訃報(obituary)に "In lieu of flowers, please donate to ..." と書かれていることがあります。in lieu of は「〜の代わりに」。「花の代わりに、故人にゆかりのある団体へ寄付してください」という意味です。この一文があったら、書かれたとおりにするのが作法です。花に使うつもりだった金額を、寄付に回します。
服装は、黒がいちばん間違いがありません。ただし黒しか許されないわけではなく、Emily Post Instituteによれば、紺・チャコールグレー・落ち着いた暗い色も、黒と同じように失礼になりません。避けるのは明るい色・カジュアルな服・目立つ装飾品です。
お別れは、3つの場に分かれています
アメリカの葬儀は、ふつう3つに分かれます。visitation(対面)→ funeral service(式)→ burial または cremation(埋葬・火葬)です。
visitation は式の1〜2晩前に開かれ、wake や viewing とも呼ばれます。日本の通夜に近い場です。ただし棺のふたを開けて、故人の顔を見てお別れする(open casket)ことが多いのが、大きな違いです。それを可能にしているのが embalming(エンバーミング。遺体に保存処理をすること)です。
式では、eulogy(弔辞)を身近な人が読みます。棺を担ぐ役は pallbearers と呼ばれ、故人の親族や友人が務めます。
⚠ 「火葬は日本だけ」ではありません。アメリカの火葬率は2025年に63.4%で、土葬の31.6%の倍です。ただし日本は約99.9%なので、桁が違うという言い方のほうが正確です。
知られざる決まり:ほかの車が、道を譲ります
式のあと、参列者は車を連ねて墓地へ向かいます。この列を funeral procession(葬列)と呼びます。多くの州では、この列に一般の車が割り込むこと自体が交通違反です。
さらに徹底している州もあります。アリゾナ・アイダホ・ケンタッキー・モンタナ・ノースダコタの5州では、葬列は信号に関係なく交差点を通れます。先頭の車は、赤信号でも進めます。
葬列に加わる車は、昼間でもヘッドライトを点ける決まりの州がほとんどです。見た人がすぐに葬列だと分かるようにするためです。ただし、救急車・消防車・パトカーがサイレンを鳴らしていたら、そのときは葬列のほうが道を譲ります。
近年は celebration of life(お別れの会)という形も増えています。遺体を置かずに、あとから開く会のことです。
I'm so sorry for your loss.
Thank you. It means a lot that you came.
Should I send flowers, or would something else help more?
The obituary asked for donations instead.
- A このたびは、ご愁傷さまです。
- B ありがとう。来てくれて、本当にうれしいよ。
- A 花を送ったほうがいい? それとも、別の形のほうがいい?
- B 訃報には、花の代わりに寄付を、と書いてあったんだ。
I'm so sorry for your loss.
In lieu of flowers, the family has asked for donations to the hospital.
He gave the eulogy at his grandfather's funeral.
Pull over — that's a funeral procession.
- ① このたびは、ご愁傷さまです。
- ② 花の代わりに、ご家族は病院への寄付をお願いしています。
- ③ 彼は祖父の葬儀で弔辞を読んだ。
- ④ 車を寄せて。あれは葬列だよ。
アメリカのお葬式でいちばん困るのは、包み方でも服装でもなく、最初のひと言です。"I'm sorry for your loss." だけ覚えておけば足ります。返す側は "Thank you." で構いません。
明日、海外ドラマで葬儀の場面が出てきたら、棺のふたが開いているかどうかを見てください。開いていれば、それは visitation(対面)の場面です。同じ「お葬式」でも、3つのうちどこにいるのかが分かります。
動画で見る
このコーナーは、いただいた質問でできています。どんなに小さな疑問でも お問い合わせフォーム からお送りください。
1問だけ
訃報に "In lieu of flowers, please donate to ..." とあったら、どうするのがいい?
よくある質問
アメリカのお葬式に、香典にあたるものはありますか?
ありません。現金を包んで渡す習慣はなく、代わりに葬儀場あてに花を贈るのが一般的です。訃報に In lieu of flowers, please donate to ... と書かれている場合は、花ではなく指定された団体へ寄付します。花に使うつもりだった金額を寄付に回すのが作法とされています。
お悔やみの言葉は、英語で何と言えばいいですか?
I'm sorry for your loss.(このたびはご愁傷さまです)が、いちばんよく使われる言い方です。長く話す必要はなく、このひと言で足ります。言われた側は Thank you. と返せば大丈夫です。