退路を断つ、は英語で?burn your bridgesの意味
入試に出るイディオム 第30回
劇作家の戯曲から広まったことわざ、舞台裏の言い伝えが生んだ会話表現、軍の戦術に由来する慣用句。3つの表現の由来といまの使われ方、入試での問われ方までまとめました。
監修:原田高志(原田英語.com)
今日も3つの表現を由来から見ていきます。劇作家が戯曲に書いた一文、舞台裏だけの言い伝え、軍隊が退路を断った戦術。由来を知ると、意味がすっと頭に入ってきます。
The pen is mightier than the sword.
ザ・ペン・イズ・マイティア・ザン・ザ・ソード 信念のことば言葉や文章の力は、武力よりも大きな影響を人や社会に与える
1839年、劇作家エドワード・ブルワー=リットンの戯曲『リシュリュー』の第2幕第2場。家来が中世の両手持ちの大剣を運んでくると、フランスの宰相リシュリューは机に向かい、剣ではなくペンを取り上げてこう言います。本当に偉大な指導者なら、剣を使わなくても国は守れる。それがこの台詞の中身です。この一文が芝居の外へ飛び出し、そのまま英語のことわざとして定着しました。言葉の力が武力に勝るという発想自体は、この戯曲より前からたびたび書かれてきましたが、いまの形の言い回しとして広まったのは、この一文からです。
友達とけんかになりかけたとき、感情のまま怒鳴り返すのではなく、落ち着いて自分の気持ちを言葉で伝えたら、相手も態度を変えてくれた。声を荒げるより、筋の通った言葉のほうが、結局は相手を動かす。The pen is mightier than the sword.は、まさにこういう場面のための言葉です。
こう使う
The editor believed the pen is mightier than the sword, so she kept publishing even after receiving threats.
その編集者は言葉の力が武力に勝ると信じていたので、脅されたあとも記事を発表し続けた。
His calm words changed the whole debate, proving once again that the pen is mightier than the sword.
彼の落ち着いた言葉が議論全体を変え、改めて言葉の力が武力に勝ることを証明した。
発音:mightierはmighty(強い)の比較級で、mightyの語尾をierに変えた形です。マイ・ティ・アの3拍で、最初のマイをいちばん強く読みます。swordのwは発音しないので、『スウォード』ではなく『ソード』です。
- こう問われる
- ①ことわざの意味を選ばせる読解問題。②長文中でthe penが比喩(言論・文章)であることを見抜かせる空所補充・下線部言い換え。③似た形のことわざ(actions speak louder than wordsなど)との混同を突く設問。
- ここで外す
- penを文字どおり『ペン(文房具)』、swordを『剣(道具)』と読み、単なる道具の性能比較の話だと誤読する誤りが定番です。
- 決め手
- penとswordが対比で出てきたら、道具の比較ではなく『言葉の力』対『武力』という抽象の対立に自動的に読み替えます。
In the end, the reporter's article proved that the pen is mightier than the sword.
- 誤答
- 結局、その記者の記事は、ペンが剣より優れた道具だと証明した。
- 正答
- 結局、その記者の記事は、言葉の力が武力よりも大きいことを証明した。
Before
penとswordを見ても、文房具と武器の比較としか読んでいなかった
After
対で出てきた瞬間に、『言論』対『武力』の比喩だと自動的に読み替えられる
The pen is mightier than the sword. を教室で使う(6分)
ねらい: 比喩のペアを見た瞬間に抽象の対立へ変換する練習
- 先生「けんかを、言葉で止めた経験はある?」と問いかける
- ブルワー=リットンの戯曲でこの台詞が生まれた場面を紹介する
- ペアで、実際に『言葉のほうが強かった』場面を1つ話し合う
- 出口チケットで、The pen is mightier than the sword.を使って1文書かせる
出口チケット: 『言葉の力が武力に勝る』と感じた身近な場面を、The pen is mightier than the sword.を使って英語で1文書きなさい。
Break a leg.
ブレイク・ア・レッグ 願掛けのことば(舞台や本番の前に)頑張って、うまくいきますように
劇場の世界には、本番前に直接『Good luck(幸運を)』と言うと、かえって不運を呼んでしまうという言い伝えがあります。そこで、あえて正反対の、悪いことを願うような言葉を口にすることで、幸運を呼び込もうとしたのがBreak a leg.の考え方です。ただし、この表現がいつ、どのようにして生まれたのかは、はっきりと記録に残っていません。俳優のけがにまつわる逸話と結びつける説もありますが、確かめられる証拠はなく、あくまで『直接言わないほうが縁起がいい』という舞台裏の空気から生まれた表現だと考えられています。
模試や発表の日の朝、友達に『頑張ってね』とまじめに言うと、かえって緊張させてしまうことがある。そこで軽い冗談を言って送り出すと、相手の肩の力が抜ける。Break a leg.は、まさにこの『まじめに言わないことで応援する』感覚に近い表現です。
こう使う
I'm so nervous about my speech tomorrow.
明日のスピーチ、すごく緊張する。
You'll be great. Break a leg!
きっとうまくいくよ。頑張ってね!
Everyone told the actors to break a leg just before the curtain went up.
幕が上がる直前、みんなが役者たちに『頑張って』と声をかけた。
発音:breakは『ブレイク』、legの語尾gはしっかり閉じるように発音します。a legをつなげて『アレグ』のように滑らかに読むと自然に聞こえます。
- こう問われる
- ①会話文の応答選択で、Good luckの代わりに使われる表現を選ばせる形。②本番前の場面で、文字どおりの意味(けがを願う)ではないと気づかせる読解問題。
- ここで外す
- 文字どおり『脚を折れ』という物騒な意味だと誤解し、場面に合わないと判断して選択肢から外してしまう誤りが定番です。
- 決め手
- 舞台・発表・試験など『これから本番を迎える人』への声かけとしてBreak a legが出てきたら、必ず『幸運を祈る』の意味で読みます。
- 誤答
- Take care of your leg(脚に気をつけて)
- 正答
- Break a leg(頑張って)
Before
Break a legを聞くと、けがを願う変な表現だと戸惑っていた
After
本番前の応援の言葉として、意味を考えずに自然に受け取れる
Break a leg. を教室で使う(5分)
ねらい: 本番前の応援表現を、直訳ではなく用法で覚える
- 先生「発表会やテストの前、日本語でどんな声をかける?」と問いかける
- 舞台裏の言い伝えを紹介し、直接Good luckと言わない文化を説明する
- ペアで、これから何かの本番を控えている設定を1つ決め、Break a legを使って声をかけ合う
- 出口チケットで、Break a legを使った短い会話を1組書かせる
出口チケット: 友達の試験前に、Break a legを使って応援する短い会話を2行で書きなさい。
burn your bridges
バーン・ユア・ブリッジズ 決別のことば後戻りできなくなるほど、それまでの関係や可能性を自分から断ち切ってしまう
昔の軍隊には、川や海を渡ったあと、自分たちが使ってきた橋や船を自分の手で燃やしてしまう戦術がありました。退路を断てば、兵士たちは後ろに逃げることができず、前に進んで戦うしかなくなります。指揮官が兵士の覚悟を決めさせるための、極端な手段でした。19世紀ごろになると、この戦場のイメージが比喩として使われるようになり、自分から後戻りできない状況を作ってしまうこと全般をburn your bridgesと呼ぶようになりました。
部活を辞めるとき、勢いで顧問やチームメイトに強い言葉をぶつけてしまうと、あとで謝りたくなっても関係を元に戻すのが難しくなる。1つの道に絞るために、ほかの可能性を自分から断ってしまうときにも同じ表現が使えます。Don't burn your bridges.は、そういう場面で『あとで困らないように』と念を押す一言です。
こう使う
She left the company on bad terms and burned her bridges with her former boss.
彼女は気まずいまま会社を辞め、元の上司との関係を修復できないほど壊してしまった。
Even if you disagree with the club, try not to burn your bridges with the other members.
たとえその部活の方針に納得がいかなくても、ほかの部員との関係を壊さないほうがいい。
発音:burnのurは日本語の『アー』に近い音で、rを舌を丸めて発音します。bridgesは複数形なので、語尾のesもはっきり読みます。
- こう問われる
- ①下線部言い換えで、burn one's bridgesの意味を選ばせる形。②似た形のcross that bridge when you come to it(その時になってから考えればいい)との混同を突く設問。③会話文で、関係を修復不能にする行動を表す形として空所に入れる形。
- ここで外す
- burnとbridgeを見て、cross a bridge(橋を渡る、その時になったら対処する)の仲間だと勘違いし、正反対の意味を選んでしまう誤りが定番です。
- 決め手
- burnとbridge(s)が組み合わさっていれば『後戻りできなくする』、crossとbridgeの組み合わせなら『その時になったら考える』で、意味が正反対になる点を確認します。
He quit without notice, burning his bridges with his former employer.
- 誤答
- 彼は予告なく辞め、前の勤め先との橋を燃やした。
- 正答
- 彼は予告なく辞め、前の勤め先との関係を修復できないほど壊してしまった。
Before
burnとbridgeを見ても、ただ橋が燃えている情景としか読んでいなかった
After
後戻りができない状況を自分で作ってしまう、という一つの絵として意味が即座に浮かぶ
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burn your bridges を教室で使う(7分)
ねらい: burn/crossなど動詞の違いで意味が反転する比喩表現を見分ける
- 先生「一度言ってしまったら、もう後には引けない、と思った経験は?」と問いかける
- 軍隊が橋や船を燃やして退路を断った戦術を紹介する
- burn a bridgeとcross a bridgeを板書し、動詞の違いで意味が逆になることを確認する
- ペアで、後戻りできない決断をした(またはしなかった)経験を話し合う
出口チケット: 『部活を辞めるときに、勢いで嫌なことを言ってしまった』という場面を、burn one's bridgesを使って英語で1文書きなさい。