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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
IDIOMS 第5回 標準 読了 7分

I'm all ears の意味は?そう言われたら、どう返しますか

入試に出るイディオム 第5回

ことわざから1本、会話のかたまりから1本、比喩の効いた慣用句から1本。今日はジャンルを散らして3つの表現を四幕でお届けします。Don't judge a book by its cover.、I'm all ears.、bite the bullet。どれも「その由来を知ると、意味が忘れられなくなる」表現です。

監修:原田高志(原田英語.com)

今日は種類の違う表現を1本ずつ選びました。ことわざ、会話のかたまり、比喩の効いた慣用句。句動詞を並べる回とは、味わいがまるで違うはずです。1本ずつ、生まれた場面、いまの高校生の一日、入試での問われ方、教室での使い方の順に見ていきます。

Don't judge a book by its cover.

ドント・ジャッジ・ア・ブック・バイ・イッツ・カバー 先入観のことば

見た目だけで人やものを判断してはいけない

起源 革張りの表紙が、中身より高く売れた時代

19世紀のアメリカでは、本を買うとき、表紙の豪華さがそのまま値段に直結していました。同じ物語でも、革を張った表紙の版のほうが、紙の表紙の版より高く売れたのです。

ところが、表紙にお金をかけた本ほど、中身が薄いことも珍しくありませんでした。買った人ががっかりして、こう言うようになったといわれています。『表紙で選ぶんじゃなかった』。

この経験則が、いつしか本にかぎらない一般論として独り歩きを始めます。人にも、商品にも、話にも当てはまる言葉として。

いま 第一印象だけで、みくびられた日

あなたにも、こんな経験はないでしょうか。おとなしそうに見えるという理由だけで、部活やグループワークで発言を求められなかった日。逆に、見た目が派手だからという理由だけで、真面目に考えていないと決めつけられた日。

SNSのプロフィール写真1枚や、話し方のクセだけで、その人のすべてが分かった気になってしまう。それは、表紙だけで本の中身を決めつけているのと、まったく同じことです。

表紙が豪華でも、中身が薄い本はある。逆もまた然り。

こう使う

He looked strict, but don't judge a book by its cover — he's actually really kind.

彼は厳しそうに見えたけど、見た目で判断しちゃだめだよ。実はすごく優しいんだ。

I almost skipped that restaurant because it looked run-down, but don't judge a book by its cover.

その店、ぼろく見えたから危うく素通りするところだったけど、見た目で判断しちゃいけないね。

発音:judge は「ジャッジ」ではなく「ヂャッジ」に近い、有声の dʒ から始まる音です。cover の最後は軽く「バー」で流します。

入試 ここで差がつく
こう問われる
①会話文の空所補充で、ことわざを丸ごと入れさせる形。The early bird catches the worm. や Better late than never. など、別のことわざと並べられます。②下線部の言い換えで appearances can be deceptive / beauty is only skin deep を選ばせる形。③整序・英作文で judge A by B の前置詞を問う形。
ここで外す
by を on や from に替えてしまう誤りが定番です。judge は「何を材料に判断したか」を by で示すので、judge a book by its cover、judge people by appearances。judge on / judge from という形はありません。 つづりでは its を it's と書く誤りが出ます。its は所有格で「その本の表紙」。アポストロフィを打つと it is になり、cover が宙に浮きます。
決め手
直前で、誰かが見た目や第一印象だけで人を決めつけていれば、それをたしなめる一言がこれです。by のうしろに来るのは判断の材料(cover・appearances・looks)だけ。
I heard the new transfer student barely talks. He must be unfriendly. 転校生、ほとんど話さないらしいよ。感じの悪いやつなんだろうね。
Come on, ______. まあまあ、______。
誤答
The early bird catches the worm./「先に動いた者が得をする」。無口かどうかの話とかみ合いません
正答
Don't judge a book by its cover./A の「話さない=不愛想」という決めつけを、B がたしなめています

Before

Don't judge a book by its cover. を「見た目で判断するな」という訳ごと覚えていました。だから judge people by appearances のように book も cover も出てこない文が来ると、同じことを言っているのだと気づけませんでした。

After

judge A by B(Bを材料にしてAを判断する)という骨組みが見えます。book と cover はその材料の一例でしかないので、appearances でも first impressions でも同じ形として読める。ことわざ1本ではなく、judge の使い方ごと手に入ります。

動画で見る

英国人と米国人が、このことわざの言い方の違いを実演する (BBC Learning English) 1分ほどの短い動画です。cover の語尾の落とし方に注目してください。
Don't judge a book by its cover. を教室で使う(6分)

ねらい: 第一印象と実際の人物像とのズレを、自分の経験から言語化する

  1. 「見た目や第一印象で損をした経験、逆に得をした経験はありますか」と問いかけ、1分間ペアで話させる
  2. 出てきた話を2〜3組指名し、「それはまさに judge a book by its cover の逆ですね」と表現につなげる
  3. 「Don't judge a book by its cover. の cover を、あなたなら何に置き換えますか」と発問し、each 生徒に空所補充させる(例:grades、SNS、話し方)
  4. 「見た目」を表す語(appearance、first impression)を板書し、表現の周辺語彙を確認する

出口チケット: Don't judge a ______ by its ______. を自分の言葉で書き換えて提出させる

Don't judge a book by its cover. をもっと深く(語源・こぼれ話・自分用の例文づくり)

I'm all ears.

アイム・オール・イアーズ 傾聴のことば

ちゃんと聞いているよ、続きをどうぞ

起源 体をまるごと『耳』に変えてしまう発想

この表現に、歴史的な出来事は特にありません。体の一部を大げさに膨らませて気持ちを描く、という英語によくある発想の1つです。

『全身が耳になる』というのは、実際にはあり得ない光景です。けれどその大げささが、『どんな細かい話も聞き逃さない』という気持ちを、理屈抜きで伝えてきます。

いま 友達が『実は…』と切り出した瞬間

友達が声を落として「実はさ…」と話しかけてきた瞬間、あなたはスマホから顔を上げ、体ごとそちらを向くはずです。その姿勢そのものが I'm all ears. の中身です。

面談で先生に「今日は君の話を聞く時間にしよう」と言われたときも同じです。言葉より先に、体の向きが『聞く準備ができている』ことを示している。その状態に、英語は名前をつけました。

体が全部『耳』になった絵を思い浮かべる。それが I'm all ears.

こう使う

Tell me everything that happened. I'm all ears.

何があったのか全部話して。ちゃんと聞くから。

If you have a plan for the festival, I'm all ears.

文化祭の計画があるなら、ぜひ聞かせて。

発音:all ears は、all の l の音と ears の最初の母音がつながって「オーリアーズ」のように聞こえます。

入試 ここで差がつく
こう問われる
①会話文の応答選択。相手が「話していい?」と切り出した直後の返事として選ばせる形。I'm all thumbs.(不器用でね)や I'm all set.(準備はできてる)と並びます。②下線部の言い換えで I'm listening / Go ahead を選ばせる形。③整序で all の位置を問う形。
ここで外す
all を「すべての」と読んで、耳や音の話が続くと身構えてしまうのがいちばん多い誤りです。ここの all は「全身がその一点になっている」という言い方で、I'm all thumbs.(指だらけ=不器用)、I'm all smiles.(笑顔だらけ=上機嫌)と同じ形。耳の数の話ではありません。 整序では I'm ears all. と語順を崩す誤りが出ます。all は名詞の前です。
決め手
「I'm all + 名詞」が来たら、その名詞1つに全身がなっている、と読みます。all ears なら、いま全部が耳。つまり「どうぞ話して」。返事の形なので、直前には必ず相手の切り出しがあります。
Can I tell you something a bit embarrassing? ちょっと恥ずかしい話、してもいい?
Sure, ______. もちろん、______。
誤答
I'm all thumbs./「不器用でね」。手先の話なので、打ち明け話への返事になりません
正答
I'm all ears./「どうぞ話して、ちゃんと聞くから」。全身が耳になっている、という返事です

Before

all ears を「耳がたくさんある」と直訳したまま止まっていました。I'm all thumbs. や I'm all smiles. も、そのつど別の熟語として覚え直しては忘れていました。

After

「I'm all + 名詞」=全身がその1つになっている、という1つの型で読めます。ears でも thumbs でも smiles でも、その名詞が表すものに自分が染まっている、と取ればいい。初めて見る組み合わせでも、その場で見当がつきます。

動画で見る

all ears を、短い物語のなかで使ってみせる解説 (Elevate Your English) 例文が場面つきで出てきます。自分ならどの場面で使うか考えながらどうぞ。
I'm all ears. を教室で使う(5分)

ねらい: 相づち表現のバリエーションを、体の動きと結びつけて覚える

  1. 「誰かに真剣な話をされたとき、無意識にしていることは?」と問い、体の向きや姿勢の変化に注目させる
  2. I'm all ears. を提示し、「体ぜんぶが耳になったところを想像してみて」と絵を思い描かせる
  3. ペアで片方が Can I tell you something? と切り出し、もう片方が I'm all ears. で返す寸劇を1往復させる
  4. Go ahead. / I'm listening. など、同じ場面で使える表現を板書し、使い分けの感覚を確認する

出口チケット: 自分が実際に『全身で聞く』体勢になった経験を、1文の日本語で書かせる

I'm all ears. をもっと深く(語源・こぼれ話・自分用の例文づくり)

bite the bullet

バイト・ザ・バレット 覚悟のことば

嫌なことや辛いことを、覚悟を決めて受け入れる

起源 麻酔の無い手術台で、噛みしめられた1発の弾

戦場の応急処置には、痛み止めが無い時代がありました。手術中に声を上げたり暴れたりしないよう、患者に硬いものを噛ませたと語られています。そのとき使われたと伝えられているのが、実弾です。

痛みそのものは消えません。それでも、噛みしめて耐えるしかない。その光景が、そのまま『覚悟を決めて辛いことに立ち向かう』という意味の慣用句になりました。

いま 後回しにしていた申し込みを、ついに出す日

気が重い進路の面談、緊張する部活のレギュラー争いの申し出、ずっと避けていた誰かへの謝罪の連絡。やらなければいけないと分かっているのに、先延ばしにしていることが、あなたにもあるはずです。

それに手をつける瞬間、深呼吸をして『よし、やろう』と踏み出す。その一歩こそが bite the bullet です。

麻酔の無い時代、痛みに耐えるために銃弾を噛んだ、という言い伝えから。

こう使う

I hate calling the dentist, but I'll just bite the bullet and make an appointment.

歯医者に電話するのは気が重いけど、覚悟を決めて予約を入れることにする。

We finally bit the bullet and told our coach we wanted to switch positions.

私たちはついに腹をくくって、コーチにポジションを変えたいと伝えた。

発音:bullet の最後の t は、アメリカ英語では軽く弾くように発音され、「バレッ」のように聞こえることがあります。

入試 ここで差がつく
こう問われる
①下線部の言い換えで endure / face something unpleasant / make a hard decision を選ばせる形。②長文の内容一致で、先延ばしにしていた人がついに動いた場面を問う形。③会話文で、迷っている相手に決断を促す一言として空所に入れる形。
ここで外す
bite the dust(倒れる・敗れる)との取り違えが最大の失点です。どちらも bite the + 名詞で形がそっくりなのに、意味の向きは正反対。bite the bullet は「これから立ち向かう」、bite the dust は「地に伏して終わる」。 書く側では、the を落として bite bullet とする誤りが整序・英作文で出ます。決まった言い方なので the は残ります。
決め手
うしろの名詞1語だけ見ます。bullet(弾)は口の中=これから噛みしめて耐える。dust(土)は足元=もう倒れている。位置がそのまま意味の向きです。

After putting it off for weeks, she finally decided to bite the bullet and apply for the scholarship.

誤答
何週間も先延ばしにしたあげく、彼女はついに力尽き、奨学金の申請をあきらめた(bite the dust と取り違えた読み)
正答
何週間も先延ばしにしていたが、彼女はついに覚悟を決めて奨学金に申し込んだ

Before

bite the bullet と bite the dust を、どちらも「bite the なんとか」としてひとまとめに覚えていました。長文で出るたび、どちらだったか思い出せず、前後から当てずっぽうで読んでいました。

After

うしろの名詞の位置で向きが決まると分かります。bullet は口の中だからこれから耐える、dust は足元だからもう倒れている。当てずっぽうが、名詞1語を見るだけの判断に変わります。

動画で見る

bite the bullet を会話つきで説明するラジオ番組 (BBC Learning English) The English We Speak の1回分です。3分ほどで、語源にも触れています。
bite the bullet を教室で使う(7分)

ねらい: bite the bullet と bite the dust の意味の向きの違いを、混同せずに区別できるようにする

  1. 「ずっと後回しにしていたことに、ついに手をつけた経験は?」と問いかけ、1分ペアで話させる
  2. bite the bullet を提示し、麻酔の無い時代の手術のエピソードを紹介する(『〜と語り継がれています』と断ってから話す)
  3. 板書に bite the bullet(覚悟して立ち向かう)と bite the dust(倒れる・終わる)を並べて書き、「弾と土ぼこり、どちらが前向きか」を生徒に考えさせる
  4. 「あなたが今度 bite the bullet しようと思っていることは?」と問い、1文で書かせる

出口チケット: It's time to bite the bullet and ______. の空所を自分の言葉で埋めさせる

bite the bullet をもっと深く(語源・こぼれ話・自分用の例文づくり)