シャドーイングをしても、リスニングを聞き込んでも、口から出てくる音はやっぱり「カタカナ英語」。
──その理由は、あなたの “耳” ではなく “口” にあります。
正確には、口の形・口の開き・舌の位置の3点。この3つを変えない限り、ネイティブの音は出ません。
「とにかく発音をネイティブのようにするには、どうすればいいですか?」
1日本人の英語が通じない本当の理由──「耳」ではなく「口」だった
「リスニングを毎日聞いているのに発音が良くならない」
「シャドーイングを1年続けても、ネイティブには程遠い」
──そんな経験、ありませんか?
実は、これには明確な理由があります。多くの日本人は 「音を耳から入れて、口から出そうとする」 練習をしています。けれど、これだけでは絶対に発音は変わりません。なぜなら、そもそもネイティブと口の形が違うから、いくら音を真似しても同じ音は出ないのです。
真実:人間の脳には「発音できない音は聞き取れない」という特性があります。つまり、発音ができなければ、リスニングも上達しない。発音は “音” の問題ではなく “身体” の問題なのです。
日本語は、口をほとんど動かさなくても話せる、世界でも珍しい言語です。試しに鏡の前で「おはようございます」と言ってみてください。唇はほぼ動いていません。一方、英語の “Good morning!” は、唇も舌も顎も、全身運動レベルで動いています。
つまり、英語は 「目で見える発音」。だからこそ、ネイティブの口元を観察するだけで、発音の謎の半分は解けてしまうのです。
2Westlife “Seasons in the Sun” で観察する “ネイティブの口”
ここで、最強の “教材” を紹介します。アイルランド出身の5人組ボーカルグループ Westlife(ウエストライフ)の名曲、“Seasons in the Sun”。
死を前にした主人公が、幼なじみの親友、父、そして愛する人へ──それぞれに別れを告げていく、切なく美しいバラード。原曲はジャック・ブレル(Jacques Brel)の “Le Moribond”で、その後、テリー・ジャックスを経てWestlifeがカバーした名曲です。
ですが今回、注目してほしいのは 歌詞でも歌唱力でもありません。
5人の “口の動き” です。
動画の1分10秒付近から始まる “Goodbye Papa, please pray for me…” のパート。
Shaneの口に注目してください。縦にも横にも、グワッと大きく開けています。日本人ではまずやらないレベル。「そこまで動かす?」と驚くほど。これがネイティブの口です。
そして、これはShaneだけの話ではありません。Westlifeの5人全員が、誰のパートでも同じように “口を大きく動かして” 歌っているのです。これは演出ではなく、英語ネイティブの “標準装備”。
逆に言えば、このレベルで口を動かさない限り、ネイティブの音は絶対に出ないということです。
前任校で生徒たちにものすごく好評だった名曲です。歌詞の世界観も美しいんですが、それ以上に「英語の口の動かし方の教材」として、これ以上のものはなかなかありません。文京高校生にも、ぜひ “口元だけ” を凝視しながら見てほしいんです。
3秘訣①:口の “形”──日本語と英語は別の楽器
ネイティブ発音の第一の秘訣は、「口の形」です。
日本語と英語の口の使い方の違いを、まずは表で見比べてみましょう。
つまり、英語と日本語は 「同じ口でも、まったく別の楽器」 なのです。バイオリンとギターを同じ弾き方で鳴らそうとしても、当然うまくいかない。発音も同じです。
例えば、英語の “see [siː]” と “she [ʃiː]” の違いを見てみましょう。
この2つの音、日本人には「シー」と「シー」で同じに聞こえます。でもネイティブには 口の形が違うので、まったく別の音 に聞こえている。音の違いではなく、口の形の違い──これがネイティブ発音の本質です。
4秘訣②:口の “大きさ”──「開きすぎ?」が正解
ネイティブ発音の第二の秘訣は 「口の大きさ」。
これも日本人と英語ネイティブで決定的に違うポイントです。
特に重要なのが、日本人を最も苦しめる音──“æ”(アとエの中間音)。
“cat” [kæt] / “apple” [ǽpl] / “bag” [bæg]
失敗例:普通の「キャット」「アップル」になる。これでは絶対に通じない。
成功例:「キェァト」「ェアプル」のような、ちょっと変な音に聞こえれば正解。
ここでのキーワードは 「自分が思っているより、もう一段階大きく開ける」。「開きすぎかな?」と感じるくらいで、ようやくネイティブの口の大きさに追いつきます。
逆に、口の開きが小さい音もあります。例えば [u:](”food”, “moon” など)の音は、唇を思いっきり前に突き出して、小さく丸めるのが正解。「ウ」を言う時よりもさらにすぼめて、タコの口を作る。
結論:英語は、口を大胆に “大きく / 小さく / 横に / 前に” 動かす言語。 中途半端なサイズでは、どの音も曖昧になってしまうのです。
原田流チェック法:鏡の前で英語を発音してみてください。日本語と同じ口の動きで話していたら、それは絶対に通じない発音です。「日本語を話している時の自分」と「英語を話している時の自分」は、別人の顔になっていなければなりません。
5秘訣③:舌の “位置”──英語は5箇所、日本語は2箇所
ネイティブ発音の第三の秘訣は 「舌の位置」。
これは多くの日本人が最も意識していない、しかし最も差がつくポイントです。
驚くべき事実をお伝えします。
日本語で舌を使う位置は、わずか「2箇所」。これに対して、英語では「5箇所」もあります。
注目すべきは ④の “どこにも触れない” という位置。日本人が苦手な R音 は、舌を巻くのではなく、「どこにも触れさせず、口の中で浮かせる」のが正解です。
ここで、多くの日本人が一生気づかない衝撃の事実をお伝えします。
日本語の「ラリルレロ」は、英語のLでもRでもなく、Lに近い別の音です。
日本語のラ行:舌を上あごの真ん中あたりにつけて発音。
英語のL:舌を前歯のすぐ裏側+上の歯茎につけて発音。
英語のR:舌をどこにもつけずに浮かせ、唇を丸めて前に突き出す。
つまり、日本語の「ラ」でRを発音しているつもりの人は、ネイティブにとっては「Lでも、Rでも、それ以外の何か」を聞かされている状態。だから通じないんです。
6日本人が絶対に押さえるべき “魔の6音”
すべての発音を完璧にする必要はありません。
ただ、この6音だけは確実に押さえてください。これらは「通じる / 通じない」の分岐点になる音です。
舌:どこにも触れさせず、口の奥に引く
例:right, red, road, very, sorry
舌:舌先を上の歯のすぐ裏側(歯茎)にしっかり押し当てる
例:light, love, play, animal, simple
例:cat, apple, bag, man, happy
例:about [əbáut], banana [bənǽnə], the [ðə]
この6音をマスターすれば、あなたの英語は劇的に通じるようになります。逆に、この6音を曖昧にしたまま単語をいくら覚えても、肝心な場面で「もう一回言ってもらえる?」と聞き返され続けます。
7今日から始める「目で盗む」3ステップ・トレーニング
では、具体的に何をすればいいのか?
原田流の 「目で盗む発音トレーニング」 を3ステップで紹介します。すべて、今日から無料で始められます。
STEP 1:ひたすら “口元” を観察する(インプット期)
まずは 「音を聞く」のではなく「口を見る」 練習から始めましょう。
おすすめは以下のソース。
- 洋楽のMV:Westlife, Ed Sheeran, Adele など、口元がはっきり映る歌手
- 洋画・海外ドラマ:会話シーンを音を消して口元だけ見るのも有効
- YouTubeの英語Vlog:カメラに向かって話す動画は口元がドアップで見える
- TEDトーク:プレゼン中のスピーカーの口元が大画面で観察できる
ポイントは 「あ、こんなに開けるの?」「舌、こんなに前に出てる!」 という驚きを発見すること。その瞬間に、あなたの脳の中で “発音回路” が組み変わり始めます。
STEP 2:鏡の前でモノマネする(コピー期)
観察ができたら、次は 「鏡の前で完コピ」。
ここで大切なのは、「音を真似る」のではなく「口の形を真似る」 こと。
- 唇は前に突き出ているか?
- 顎は縦に大きく開いているか?
- 舌の先は見えているか?(特にth音)
- 下唇を歯で噛んでいるか?(f/v音)
- 表情筋は動いているか?
スマホで自撮りして、ネイティブの口元と並べて見るのも超有効。「全然違う!」と気づくことが、上達の第一歩です。
STEP 3:オーバーラッピング&シャドーイング(定着期)
口の形を意識できるようになったら、いよいよ 音と動きを同時に。
特に リップ・シンク は、原田流イチオシ。「口だけ動かす」ことで、舌や顎の動きを意識しやすくなります。
Westlifeのようなバラードは、テンポがゆっくりで口の動きが大きく、教材として最適。ラップやアップテンポの曲は上級者向けです。最初は「ゆっくり・はっきり・口が大きい」歌手を選びましょう。
8原田流・発音上達ロードマップ【初心者→中級→上級】
「結局、何から始めればいい?どこを目指せばいい?」
そんな疑問に答える、レベル別ロードマップです。
- リエゾン(音の連結)を学ぶ:”want to” → 「ワナ」, “get up” → 「ゲラップ」
- 強弱リズムを意識する(内容語は強く、機能語は弱く)
- 洋楽を1曲完コピする
- シャドーイングを毎日10分
- 録音して自分の発音を客観視する
- 感情・意図に応じてイントネーションを使い分ける
- flap T(パーティー→パーリー)など、ネイティブの音の崩しを習得
- イギリス英語・アメリカ英語の違いを楽しむ
- 「自分が話したい英語の話者」を一人決め、完全コピーする
- TEDトークでスピーチを丸暗記&再現
まとめ──「耳」じゃなくて「目」で発音を盗もう
ネイティブ発音への扉は、すでにあなたの目の前にあります。
YouTube、洋画、洋楽──どれも無料で手に入る最高の “口元教材” です。
耳じゃなくて、目で発音を盗もう。
あの “口の動き” が見えた瞬間、ネイティブ発音への扉は開く。
英語のことで気になることがあったら、いつでも原田まで!
「教えて原田先生」のコーナーで、あなたの質問をお待ちしています。
