
小さくなり続ける木星の大赤斑は、1665年に見つかった斑点とは別の嵐らしい
木星の大赤斑は、1800年代末から長さが半分以下に縮んだ。
もくじ
木星の写真を見ると、しま模様の中に、赤っぽい楕円形の模様があります。大赤斑(だいせきはん)です。大赤斑は、地球より大きな、木星の嵐です。
2014年、NASAは、ハッブル宇宙望遠鏡の観測から「大赤斑は、これまで測った中でいちばん小さくなった」と発表しました。1800年代の終わりには、地球が3つ並ぶほどの長さがありました。それが、地球1つ分と少しになっていたのです。
大赤斑には、もう1つあまり知られていない話があります。1665年、天文学者のカッシーニが、木星に斑点を見つけました。この斑点と今の大赤斑が同じものかどうかは、はっきりしていませんでした。2024年、スペインの研究チームが昔の記録を調べ直し、今の大赤斑は別の嵐らしいと発表したのです。
この記事では、まず大赤斑がどんな嵐かを紹介します。次に、大赤斑がどれだけ小さくなったかを、数字で見ていきます。最後に、大赤斑がいつからあるのかという問題を、2024年の研究から説明します。
01大赤斑は、地球より大きな、木星の巨大な嵐
木星の表面には、白とオレンジのしま模様の雲が広がっています。大赤斑は、その雲の中にある、巨大なうずです。
NASAの発表によると、大赤斑は、高気圧のうず(まわりより気圧の高いうず)です。
NASAによると、熱心な観測者たちは、昔から大赤斑の大きさを測ってきました。望遠鏡ののぞく側のレンズ(接眼レンズ)に、十字の線を入れて測るのです。1878年からは、少なくとも1年に1回の観測記録が、途切れずに残っています。
02大赤斑の長さは、1800年代の終わりから2014年までに半分以下になった
NASAの2014年の発表には、いくつかの年に測った大赤斑の長さ(長いほうの直径)が並んでいます。発表はマイルで書かれているので、キロメートルに直して紹介します。
- 1800年代の終わり:約4万1000キロメートル。
- 1979年(探査機ボイジャーの観測):約2万3300キロメートル。
- 1995年(ハッブル宇宙望遠鏡の写真):約2万1000キロメートル。
- 2009年(ハッブル宇宙望遠鏡の写真):約1万7900キロメートル。
- 2014年(ハッブル宇宙望遠鏡の観測):約1万6500キロメートル。
地球の直径は、約1万2700キロメートルです。1800年代の終わりの大赤斑は、地球が3つ以上並ぶ長さでした。2014年には、地球1つ分と少しの長さになっています。長さで比べると、1800年代の終わりの4割ほどです。
NASAによると、2012年からは、縮む速さが上がりました。アマチュアの天文家たちの観測で、1年に約930キロメートルずつ縮んでいることが分かったのです。形も、横長の楕円から、円に近づいていました。
03大赤斑は、縮みながら高く伸び、色も濃くなっている
2018年、NASAのゴダード宇宙飛行センターのエイミー・サイモンらが、論文を発表しました。大赤斑の大きさ・形・色・動きの変化をまとめた論文です。1878年からの観測記録と、1979年のボイジャー以降の探査機やハッブル宇宙望遠鏡のデータを合わせて調べたのです。
NASAの発表によると、大赤斑の長さは1878年から全体として縮み続けています。ただし、1920年代には、大赤斑の面積が一時的に大きくなっていました。ずっと縮み続けてきたわけではないのです。
研究チームは、うずが小さくなれば、中の風がもっと速くなると予想していました。フィギュアスケートの選手が腕を縮めると、速く回るのと同じ考え方です。ところが、大赤斑は速く回るようにはならず、かわりに上に高く伸びているようだ、と分かりました。NASAは、これをろくろで粘土を形作る様子にたとえています。土台を細くするほど、花びんは高くなる、というわけです。
大赤斑の色も変わっています。NASAによると、2014年からは、色がとても濃いオレンジになりました。理由ははっきりしていません。大赤斑が高く伸びて、色のもとになる物質が高い所まで運ばれ、紫外線を多く浴びて色が濃くなった可能性がある、とされています。

041665年にカッシーニが見た斑点は、今の大赤斑とは別の嵐らしい
1665年、天文学者ジョバンニ・ドメニコ・カッシーニたちが、木星に暗い楕円形の斑点を見つけました。場所は、今の大赤斑と同じくらいの緯度です。この斑点は「永久斑点」と呼ばれ、1713年まで観測されました。
この永久斑点と、今の大赤斑は同じものなのか。これは、長い間はっきりしない問題でした。2024年、スペインのバスク大学のサンチェス・ラベガらが、地球物理学の専門誌に論文を発表しました。1665年から2023年までの、手で描いた絵・写真・デジタル画像の記録を集め直して、大きさと動きを年ごとに測ったのです。
論文によると、1713年から1831年までの約118年間、永久斑点や似た斑点の記録はありません。残っている木星の観測を調べても、見つからないのです。メシエやハーシェルといった有名な天文学者が描いた木星の絵にも、その位置に斑点はありませんでした。
今の大赤斑につながる記録は、1831年の絵から始まります。1879年には、大赤斑がはっきり写った写真が撮られました。
論文は、大きさの変化からも考えました。永久斑点の長さは、1879年の大赤斑の2分の1から3分の1ほどでした。もし同じ嵐なら、1713年から1879年まで、1年に約160キロメートルずつ大きくなり続けたことになります。でも、木星のうずが、そのように長い間大きくなり続けた例は、知られていません。そこで論文は、永久斑点は消えてしまい、今の大赤斑は別の嵐である可能性が高いとしました。論文は、今の大赤斑は、論文を出した2024年の時点で、少なくとも193年は続いていると書いています。
深掘り講義
ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。
大赤斑の大きさは、木星の「経度」で測る
木星を写した絵や写真から大赤斑の大きさを測るとき、研究者は、東西の長さを木星の経度(東西の位置を表す角度)で表します。サンチェス・ラベガらの論文は、経度1度を約1151キロメートルとして計算しています。
論文によると、大赤斑の東西の長さは、平均すると1年に経度0.18度、つまり約207キロメートルずつ縮んできました。最近は、1年に0.3度ほどに速まっています。一方、1927年から1939年ごろには、一時的に長くなりました。このとき大赤斑は、近くで長く続いた大きな雲の乱れ(「南熱帯の乱れ」と呼ばれるもの)の雲を飲み込んでいました。
形も変わりました。楕円がどれくらい細長いかを表す数(離心率)は、1879年の約0.92から、2023年には約0.6まで下がりました。0に近いほど円に近い形です。大赤斑は、横長の楕円から、丸い形へと変わってきたのです。
大赤斑は、はじめから赤かったわけではない
サンチェス・ラベガらの論文によると、1831年の絵に記録されたのは、今の大赤斑のまわりにある「くぼみ」と呼ばれる部分の形でした。1870〜71年の絵では、暗い楕円の輪に囲まれた、明るい楕円として描かれています。この楕円が赤っぽくなったのは、1872〜1876年ごろです。
1879年9月3日には、ロンドンのイーリングで、天文家のコモンが、口径91センチの反射望遠鏡で木星を撮影しました。この写真には、大赤斑が暗い楕円としてはっきり写っています。写真の板が青や紫の光によく反応するので、赤い大赤斑が暗く写ったのです。
縮み続けると、大赤斑は消えるのか
論文によると、大赤斑の面積は、ほぼ一定の速さで小さくなっています。このまま縮み続けると、どうなるのでしょうか。論文は、2つの道を挙げています。1つは、永久斑点と同じように消えてしまう道です。もう1つは、ある大きさで落ち着き、長く続く道です。どちらになるかは、まだ分かりません。NASAも2018年の発表で、大赤斑が少し縮んで安定するのか、完全にばらばらになるのかは分からない、としています。
論文によると、今の大赤斑の形や面積は、永久斑点と似ています。大赤斑の南北の幅は、北と南を反対向きに流れる2つの強い風の帯の間の距離に近くなっています。
大赤斑は、どうやって生まれたのか
サンチェス・ラベガらは、コンピューターで木星の大気を再現して、大赤斑の生まれ方も調べました。いくつかのうずが合体してできた場合や、巨大な嵐からできた場合を計算しました。しかし、どちらも今の大赤斑の様子とは合いませんでした。
いちばんありそうなのは、次の筋書きでした。大赤斑の北側では風が西向きに、南側では東向きに吹いています。その間に、東西に細長い空気の流れの乱れができました。それが閉じた回転を始め、縮みながらまとまって、今の大赤斑になった、というものです。
この筋書きが正しければ、生まれたころの大赤斑は、今よりゆっくり回っていたはずです。そして、縮むにつれて、回る速さが上がってきたことになります。一方、NASAの2018年の発表は、探査機の時代の大赤斑は、速く回るより、上に伸びているようだと伝えています。大赤斑の回り方がどう変わってきたのかは、まだ研究の途中です。
05まとめ
木星の大赤斑は、地球より大きな嵐です。その長さは、1800年代の終わりの約4万1000キロメートルから、2014年には約1万6500キロメートルまで縮みました。縮みながら、上に高く伸び、色も濃くなっていると考えられています。
2024年の研究は、1665年にカッシーニが見た斑点と今の大赤斑は、別の嵐らしいとしました。今の大赤斑の記録は1831年から始まります。次に木星の写真を見たら、その赤いうずが、少なくとも190年以上続いている嵐だと思い出してください。
人に話すなら、こう言おう
木星の大赤斑って、昔は地球が3つ並ぶくらい長かったのに、今は地球1つ分くらいまで縮んでるんだって。しかも2024年の研究だと、1665年に見つかった斑点とは別の嵐らしいよ。
英語で読む
Jupiter's Shrinking Storm
英文をタップすると、その文の訳が出ます。
Jupiter has a giant red storm called the Great Red Spot.木星には、大赤斑と呼ばれる巨大な赤い嵐があります。 It is bigger than the Earth.それは地球より大きな嵐です。 But it is getting smaller.でも、だんだん小さくなっています。
In the late 1800s, the storm was about 41,000 kilometers long.1800年代の終わりには、この嵐の長さは約4万1000キロメートルありました。 That is more than three Earths in a row.それは、地球を3つ以上並べた長さです。 In 2014, the Hubble Space Telescope measured it at about 16,500 kilometers.2014年、ハッブル宇宙望遠鏡の観測では、約1万6500キロメートルでした。 That is a little longer than one Earth.それは、地球1つ分より少し長いくらいです。 Its shape is also changing from a long oval to a circle.形も、細長い楕円から円へと変わってきています。
Scientists expected its winds to spin faster, like a skater who pulls in her arms.科学者たちは、腕を縮めたスケート選手のように、嵐の風が速く回るようになると予想していました。 But instead, the storm seems to stretch up.ところが、嵐はかわりに上へ伸びているようなのです。 Its color has also become a deeper orange since 2014.色も、2014年から、より濃いオレンジになりました。 Scientists are not sure why.その理由は、科学者にもはっきり分かっていません。
This storm has one more story.この嵐には、もう1つの話があります。 In 1665, the astronomer Cassini saw a dark spot on Jupiter.1665年、天文学者のカッシーニが、木星に暗い斑点を見つけました。 People were not sure if it was the same storm as today's Great Red Spot.それが今の大赤斑と同じ嵐なのかどうかは、はっきりしていませんでした。 This spot was seen until 1713.この斑点は、1713年まで観測されました。 After that, there were no reports of it for about 118 years.その後、約118年間、この斑点の記録はありません。
In 2024, a team in Spain studied old drawings and photos.2024年、スペインの研究チームが、昔の絵や写真を調べました。 They decided that Cassini's spot probably disappeared.チームは、カッシーニの斑点はおそらく消えてしまったと判断しました。 The Great Red Spot we see today was first recorded in 1831.今見えている大赤斑が初めて記録されたのは、1831年です。 So it is probably a different storm, and it has lasted at least 193 years.つまり、それはおそらく別の嵐で、少なくとも193年続いているのです。 Next time you see Jupiter, remember this old storm.次に木星を見たら、この古い嵐のことを思い出してください。
4択問題 Reading Quiz
-
Q1What is this story mainly about?
この話は主に何についてのものですか。
正解:D How the Great Red Spot is changing and how old it is
第1〜3段落で大赤斑が小さくなり形や色が変わっていること、第4・5段落でいつからある嵐かを述べているのでD。Bのしま模様やCのカッシーニの経歴は本文に出てきません。
-
Q2How long was the Great Red Spot in 2014?
2014年、大赤斑の長さはどれくらいでしたか。
正解:C About 16,500 kilometers
第2段落3文目に「In 2014 … about 16,500 kilometers」とあるのでC。Aの約4万1000キロメートルは1800年代の終わりの長さです。
-
Q3What happened after 1713?
1713年のあと、何が起きましたか。
正解:A There were no reports of Cassini's spot for about 118 years.
第4段落4・5文目に、斑点は1713年まで観測され、その後約118年間記録がないとあるのでA。Bのカッシーニが斑点を見たのは1665年で、1713年より前です。
-
Q4In paragraph 3, the phrase "stretch up" is closest in meaning to
第3段落の stretch up という語句に最も意味が近いものはどれですか。
正解:B grow taller
stretch は「伸びる」、up は「上へ」なので、stretch up は「上へ伸びる」。grow taller(高くなる)のBが最も近い。第3段落では、風が速く回るかわりに嵐が上へ伸びていると述べています。
-
Q5Which is true about today's Great Red Spot?
今の大赤斑について、正しいものはどれですか。
正解:D It was first recorded in 1831.
第5段落3文目に「first recorded in 1831」とあるのでD。第1段落2文目で地球より大きいとあるのでAは誤り。第5段落で、カッシーニの斑点とはおそらく別の嵐だとされているので、Bも誤りです。
重要語 Key Words(タップで裏返る)
-
storm名詞嵐
The storm brought strong wind and heavy rain.
その嵐は強い風と大雨をもたらした。
💡 a snowstorm は「吹雪」、a thunderstorm は「雷雨」。
-
shrink動詞縮む、小さくなる
My sweater shrank in the wash.
私のセーターは洗濯で縮んだ。
💡 過去形は shrank、過去分詞は shrunk。
-
oval名詞楕円、卵形
She drew an oval on the paper.
彼女は紙に楕円をかいた。
💡 an oval face(卵形の顔)のように、形容詞としても使う。
-
measure動詞測る
We measured the size of the room.
私たちは部屋の大きさを測った。
💡 名詞 measurement は「測定、寸法」。
-
stretch動詞伸びる、伸ばす
Cats often stretch after they wake up.
猫は起きたあとによく体を伸ばす。
💡 体を伸ばす運動は stretching(ストレッチ)。
-
astronomer名詞天文学者
The astronomer watched the stars all night.
その天文学者は一晩中星を観察した。
💡 astronomy は「天文学」。astrology(占星術)と区別する。
-
disappear動詞消える
The sun disappeared behind the clouds.
太陽が雲の後ろに隠れて見えなくなった。
💡 dis-(反対)+ appear(現れる)。
-
record動詞記録する
He recorded the temperature every morning.
彼は毎朝、気温を記録した。
💡 名詞は「記録」。動詞と名詞でアクセントの位置が違う。
SOURCES出典・ウラ取り
この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 30件)。
- NASA's Hubble Shows Jupiter's Great Red Spot is Smaller than Ever Measured(NASA Science, 2014)science.nasa.gov
- Jupiter's Great Red Spot Getting Taller as it Shrinks(NASA Science, 2018)science.nasa.gov
- Simon, A. A. et al. (2018) Historical and Contemporary Trends in the Size, Drift, and Color of Jupiter's Great Red Spot, The Astronomical Journal 155: 151doi.org
- Sánchez-Lavega, A. et al. (2024) The Origin of Jupiter's Great Red Spot, Geophysical Research Letters 51: e2024GL108993doi.org
- Earth Fact Sheet(NASA NSSDCA)nssdc.gsfc.nasa.gov
公式ページで見てみよう
- 縮みながら高くなる大赤斑(NASA Science)science.nasa.gov
文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。
NEXT TRIVIAこの雑学にうなった人は、これにもうなる
No.024グレーGRAY金星は、1回自転するのにかかる時間が1年より長い
ただし日の出から次の日の出までは、1年より短い。
No.025ホントTRUE月は、毎年約3.8cmずつ地球から遠ざかっている
月に置いた鏡にレーザーを当てて測っている。
No.153グレーGRAY宇宙から帰った宇宙服には、宇宙のにおいが残っている
月の砂は、地球ではにおわなくなった。
No.241指の中には筋肉がほとんどなく、腕の筋肉が長い腱で指を引っぱっている
指を曲げる大きな筋肉は、指ではなく腕にある。
No.016ウソFALSEナポレオンの身長は約169cmで、当時のフランス人の平均より高かった
「背の低いナポレオン」は、イギリス発のイメージ。
No.287約120年に1度咲くとされる竹のマダケは、海外に移した株も日本と同じころに咲いた
約120年に1度の竹の花が、イギリスでも日本と同じころ咲いた