
星はまたたくのに惑星があまりまたたかないのは、空で見える大きさが違うから
木星の衛星は、星とほとんど同じようにまたたく。
もくじ
晴れた夜に空を見上げると、星がチカチカとまたたいて見えます。ところが、同じ空に明るい惑星が出ていると、その光はあまりまたたかず、落ち着いて見えます。
このことに気づいていた人は、昔からいました。古代ギリシャのアリストテレスの『天体論』は、紀元前350年ごろに書かれたとされる本です。この本にも、恒星はまたたくのに惑星はまたたかない、という話が出てきます。ただ、アリストテレスが考えた理由は、今の説明とは違っていました。
今の説明では、星がまたたくのは、星そのものではなく、地球の空気のせいです。そして、惑星があまりまたたかないのは、空で見える大きさが星と違うからです。
この記事では、まず星がまたたくしくみを説明します。次に、惑星がまたたきにくい理由と、木星の衛星の例を紹介します。最後に、アリストテレスとニュートンがこの現象をどう考えたかを見ていきます。
01星がまたたくのは、地球の空気が揺らいでいるから
NASAの子ども向けの解説によると、ほとんどの星は、本当は一定の明るさで光っています。またたいて見えるのは、地球の空気が動いているからです。星の光は、動く空気の中を通るときに、少しずつ曲げられます。そのため、光がまっすぐ目に届いたり、少しそれたりして、明るさが変わって見えるのです。
NASAの研究者の解説は、もう少し詳しく説明しています。空気の中には、まわりと温度や湿り気、空気の濃さが少しずつ違う、小さなかたまりがたくさんあります。空気の濃さが違うと、光の曲がり方も変わります。このかたまりが動いて、星と目を結ぶ線の上を次々に横切ります。すると、星の像が1秒ごとにあちこち動き、明るさも揺れます。これがまたたきです。
NASAの解説によると、地平線に近い星ほど、よくまたたきます。地平線に近い星の光は、頭の上の星の光より、ずっと多くの空気の中を通ってくるからです。
02惑星は、空で小さな円盤に見えるので、またたきにくい
星は、とても遠くにあるので、空の上では点のように見えます。惑星も、肉眼では点のように見えます。でも、NASAの研究者の解説によると、惑星は本当は、空の上で小さな円盤の形に広がっています。肉眼では点にしか見えなくても、星よりずっと大きいのです。
空で見える大きさは、天体の端から端までを見るときの、目の向きの角度で表します。1度の3600分の1を、1秒角といいます。NASAの資料によると、地球から見た木星の直径は、30.5〜50.1秒角です。火星は3.5〜25.6秒角です。地球との距離によって、見える大きさが変わります。
NASAの研究者の解説によると、望遠鏡で星を写したとき、空気の揺らぎで星の像がにじんで広がる大きさは、地球で最もよい天文台でも0.5秒角ほどです。惑星の円盤は、これよりずっと大きいのです。
惑星の円盤の、それぞれの場所から来た光は、少しずつ違う空気のかたまりを通ってきます。ある場所の光が暗くなったとき、別の場所の光は明るくなっているかもしれません。そのため、全体としては明るさの揺れが打ち消されて、惑星は落ち着いて見えるのです。

NASAの天体写真の解説に、この違いがよく分かる写真があります。2010年6月4日、しし座のアルファ星レグルスと火星が、ほぼ同じ明るさで、空の上で1.5度離れて並んでいました。カメラを揺らしながら10秒間写すと、2つの光は線のような跡になりました。レグルスの跡は、色と明るさが細かく変わって虹のようになりました。火星の跡は、赤っぽい色のまま、なめらかでした。
03木星はまたたかないのに、木星の衛星は星のようにまたたく
1997年、スウェーデンのルンド天文台のドラビンス(Dainis Dravins)らが、論文を発表しました。星のまたたきを大がかりに調べた論文です。この論文は、それまでの研究をまとめて、惑星のまたたきについても書いています。
論文によると、惑星のまたたきは、星よりはっきり小さくなります。例えば、木星の見かけの直径は約35秒角です。1秒間に10回ほどの速さで起きる明るさの揺れは、木星では、星の100分の1ほどの強さまで弱まります。ところが、見かけの直径が約3秒角より小さくなると、惑星のまたたき方は星に近づきます。
ここで、木星の大きな衛星が登場します。木星の衛星は、空で見ると1〜2秒角の大きさしかありません。論文によると、それまでの測定では、木星の大きな衛星は、星とほとんど同じようにまたたいていました。
木星の衛星は、木星のまわりを回っています。つまり、地球からの距離は、木星とほとんど同じです。それでも、木星はまたたかず、衛星はまたたきます。この例は、またたくかどうかを決めるのが、天体までの距離そのものではなく、空で見える大きさであることを示しています。
NASAの資料によると、火星は、地球から遠いときには、見かけの直径が3.5秒角まで小さくなります。論文の「約3秒角」という目安に近い大きさです。
04アリストテレスは、惑星がまたたかないのは「近いから」と考えた
アリストテレスの『天体論』(第2巻第8章)は、またたきを目の側から説明しようとしました。英語に訳された文を読むと、こう考えていたことが分かります。目からは、ものを見るための光線のようなもの(視線)が出ている。遠くの恒星まで届くと、視線は長く伸びすぎて弱くなり、震える。その震えが、星が動いているように見せる。惑星は近いので、視線が力を保ったまま届き、震えない。
アリストテレスの説明は、目から出る「視線」を考えた点で、今の説明とは違います。それでも、「近いから」という考えは、今の説明と少しだけつながっています。NASAの天体写真の解説も、火星がまたたきにくい理由を2つ挙げています。星よりずっと近いことと、広がりを持った光の源であることです。ただ、木星の衛星の例が示すように、決め手になるのは、近さそのものではなく、空で見える大きさです。
深掘り講義
ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。
またたきには「明るさの揺れ」と「位置の揺れ」がある
ドラビンスらの論文は、空気が星の光に与える影響を2つに分けています。1つは、星の像の位置が動いたり、像がぼやけたりすること(シーイング)です。もう1つは、星の明るさが速く揺れること(シンチレーション)です。肉眼で見る「またたき」は、主に明るさの揺れです。
論文によると、2つは、空気のどの高さで起きるかが違います。望遠鏡で測る明るさの揺れは、主に上空の何キロメートルも高い所の空気の乱れから生まれます。ある理論では、その7割以上が、高さ7〜15キロメートルの空気から来ると計算されています。一方、像のぼやけは、望遠鏡の近くの空気の影響も大きく受けます。
1955年の研究では、気球で高い所に上げた小さな電球(人工の星)が、本物の星よりあまりまたたかないことが確かめられました。この結果は、明るさの揺れが主に上空で生まれることを示していました。
ただし、論文によると、肉眼のまたたきは少し事情が違います。目のひとみは直径約5ミリと小さく、1秒間に15回ほどより速い揺れは感じ取れません。そのため、肉眼で見えるまたたきは、主に地面から1キロメートル以内の空気の乱れから生まれます。
地面には、星の光の「飛ぶ影」が映っている
空気のかたまりは、弱いレンズのように光を集めたり広げたりします。そのため、星の光が地面に届くと、明るい所と暗い所がまだらに並んだ模様ができます。論文は、これを「飛ぶ影」と呼んでいます。模様は風に流されて、地面の上を動いていきます。
模様の一つ一つの大きさは、数センチから10センチほどです。高さによって風の速さが違うので、一つ一つの模様は100分の1秒ほどで形が変わります。目のひとみは模様よりずっと小さいので、明るい所と暗い所が次々に通りすぎると、星がまたたいて見えます。
一方、大きな望遠鏡の鏡は、たくさんの模様を一度に受け止めます。明るい所と暗い所が平均されるので、明るさの揺れは小さくなります。ニュートンが書いた、口径の大きい望遠鏡では星はまたたかないという話は、このしくみで説明できます。ニュートン自身も、口径のいろいろな部分を通った光の震えが混ざり合うから、と説明していました。惑星の円盤が空気の揺らぎを打ち消すのと、よく似た考え方です。
この飛ぶ影は、普段は目に見えません。でも、論文によると、皆既日食の直前と直後には、肉眼で見えることがあります。細く残った太陽の光が地面に映す、しま模様の影として現れます。
山の上の天文台では、星があまりまたたかない
ドラビンスらが観測したのは、スペインのカナリア諸島のラ・パルマ島にある、高さ2360メートルの山の上の天文台です。論文によると、このような世界でも有数の天文台では、夏の条件のよい夜、肉眼で見る星のまたたきはほとんど感じられません。冬でもわずかに見える程度です。初めて訪れた人には、普通の場所との違いがとても印象に残るといいます。
ニュートンが期待した、静かな空気の高い山の頂上での観測は、こうした天文台で行われています。
05まとめ
星がまたたくのは、星そのものではなく、地球の空気が揺らいでいるからです。惑星があまりまたたかないのは、肉眼では点に見えても、本当は空で小さな円盤として見えているからです。円盤のあちこちから来る光の揺れが、打ち消し合うのです。
木星の大きな衛星は、木星とほぼ同じ距離にあるのに、星とほとんど同じようにまたたきます。空で見える大きさが、1〜2秒角ととても小さいからです。今夜、明るい惑星を見つけたら、近くの星と光り方を比べてみてください。
人に話すなら、こう言おう
星がチカチカするのは、地球の空気が揺れてるせいなんだって。惑星があまりまたたかないのは、空で小さな丸に見えるくらい大きいから。木星の衛星みたいに小さく見えるものは、星みたいにまたたくらしいよ。
英語で読む
Why Stars Twinkle and Planets Shine
英文をタップすると、その文の訳が出ます。
On a clear night, stars seem to twinkle.晴れた夜、星はまたたいているように見えます。 But bright planets, like Jupiter, shine with a calm, steady light.でも、木星のような明るい惑星は、落ち着いた変わらない光で輝きます。 Why are they different?なぜ違うのでしょうか。
Most stars really shine with a steady light.ほとんどの星は、本当は一定の光で輝いています。 The twinkling happens in the air of Earth.またたきは、地球の空気の中で起きているのです。 Small pockets of air have different temperatures.空気の小さなかたまりは、それぞれ温度が違います。 They bend starlight a little as they move.そのかたまりは、動きながら星の光を少し曲げます。 So the light that reaches your eyes keeps changing.そのため、目に届く光が変わり続けるのです。
A star is so far away that it looks like a tiny point.星はとても遠くにあるので、小さな点のように見えます。 A planet also looks like a point to our eyes, but it is really a small disk.惑星も目には点のように見えますが、本当は小さな円盤です。 Light from different parts of the disk passes through different pockets of air.円盤のいろいろな部分から来る光は、それぞれ違う空気のかたまりを通ります。 The changes cancel each other out, so the planet looks steady.その変化が打ち消し合うので、惑星は落ち着いて見えるのです。
Jupiter's large moons show this well.木星の大きな衛星が、このことをよく示しています。 They look very small in the sky.木星の衛星は、空ではとても小さく見えます。 They are about as far away as Jupiter.地球からの距離は、木星とほとんど同じです。 But the moons twinkle almost like stars, while Jupiter does not.でも、木星はまたたかないのに、衛星は星とほとんど同じようにまたたきます。 So size in the sky matters more than distance.つまり、距離よりも、空で見える大きさが大事なのです。
Long ago, the Greek thinker Aristotle also noticed that stars twinkle and planets do not.昔、ギリシャの思想家アリストテレスも、星はまたたき惑星はまたたかないことに気づいていました。 He thought the reason was that planets are near.彼は、その理由を、惑星が近いからだと考えました。 Much later, Isaac Newton wrote that very calm air might be found on top of high mountains.ずっと後に、アイザック・ニュートンは、とても静かな空気は高い山の頂上にあるかもしれないと書きました。 Some of the best observatories in the world, like those on La Palma and Mauna Kea, are on mountains.ラ・パルマ島やマウナケア山のような、世界有数の天文台は、山の上にあります。
4択問題 Reading Quiz
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Q1What is this story mainly about?
この話は主に何についてのものですか。
正解:B Why stars twinkle but planets mostly do not
第1段落3文目で「なぜ違うのか」と問い、第2〜4段落でその理由を説明しているのでB。Aの木星の見つけ方や、Cの望遠鏡の作り方は本文に出てきません。
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Q2What looks very small in the sky and twinkles almost like a star?
空でとても小さく見えて、星とほとんど同じようにまたたくものは何ですか。
正解:C Jupiter's large moons
第4段落2・4文目に、木星の大きな衛星は空でとても小さく見え、星とほとんど同じようにまたたくとあるのでC。Aの木星はまたたかないと書かれています。
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Q3Why does a planet look steady?
惑星はなぜ落ち着いて見えるのですか。
正解:A Because the changes from different parts of its disk cancel out
第3段落3・4文目に、円盤のいろいろな部分からの光が違う空気を通り、変化が打ち消し合うので落ち着いて見えるとあるのでA。惑星の光も空気を通るので、Bは誤りです。
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Q4In paragraph 1, the word "steady" is closest in meaning to
第1段落の steady という語に最も意味が近いものはどれですか。
正解:D not changing
steady は「一定の、変わらない」という意味なのでD。第1段落2文目は、またたく星と違って惑星の光は落ち着いて変わらない、という内容です。
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Q5Which is true about Aristotle?
アリストテレスについて、正しいものはどれですか。
正解:B He thought planets do not twinkle because they are near.
第5段落2文目に「He thought the reason was that planets are near.」とあるのでB。第5段落1文目で、彼は星がまたたくことに気づいていたので、Dは誤りです。
重要語 Key Words(タップで裏返る)
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twinkle動詞(星が)またたく、きらきら光る
Her eyes twinkled when she smiled.
彼女はほほえむと、目がきらきらと輝いた。
💡 童謡 Twinkle, twinkle, little star でおなじみ。
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steady形容詞一定の、安定した
He walked at a steady speed.
彼は一定の速さで歩いた。
💡 反対は unsteady(不安定な)。
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planet名詞惑星
Which planet do you want to visit?
あなたはどの惑星に行ってみたいですか。
💡 太陽のまわりを回る大きな天体。自分で光る star(恒星)と区別して使う。
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bend動詞曲げる、曲がる
Please do not bend this card.
このカードを曲げないでください。
💡 過去形・過去分詞は bent。
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disk名詞円盤
The moon looks like a white disk tonight.
今夜の月は白い円盤のように見える。
💡 イギリスでは disc とつづることも多い。
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cancel out句動詞打ち消し合う
The good news and the bad news cancel each other out.
よい知らせと悪い知らせが打ち消し合う。
💡 cancel each other out の形でよく使う。
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observatory名詞天文台、観測所
We visited an observatory on a school trip.
私たちは修学旅行で天文台を訪れた。
💡 observe(観察する)+ -atory(場所)。
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notice動詞気づく
Did you notice the new picture on the wall?
壁の新しい絵に気づいた?
💡 notice that ~ で「~ということに気づく」。
SOURCES出典・ウラ取り
この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 29件)。
- Why do the stars appear to twinkle while the planets don't?(NASA Imagine the Universe, Ask an Astrophysicist)imagine.gsfc.nasa.gov
- Why do stars twinkle?(NASA StarChild)starchild.gsfc.nasa.gov
- APOD 2011 April 28 - Scintillating(NASA Science)science.nasa.gov
- Dravins, D. et al. (1997) Atmospheric Intensity Scintillation of Stars, I. Statistical Distributions and Temporal Properties, Publications of the Astronomical Society of the Pacific 109: 173doi.org
- Jupiter Fact Sheet(NASA NSSDCA)nssdc.gsfc.nasa.gov
- Mars Fact Sheet(NASA NSSDCA)nssdc.gsfc.nasa.gov
- Aristotle, On the Heavens, Book II, Part 8(J. L. Stocks 訳, The Internet Classics Archive, MIT)classics.mit.edu
- Newton, I. (1730) Opticks, 4th ed., Book I, Part I, Prop. VIII(Project Gutenberg)gutenberg.org
公式ページで見てみよう
- NASAの「なぜ星はまたたくのに惑星はまたたかないの?」imagine.gsfc.nasa.gov
文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。
NEXT TRIVIAこの雑学にうなった人は、これにもうなる
No.024グレーGRAY金星は、1回自転するのにかかる時間が1年より長い
ただし日の出から次の日の出までは、1年より短い。
No.025ホントTRUE月は、毎年約3.8cmずつ地球から遠ざかっている
月に置いた鏡にレーザーを当てて測っている。
No.153グレーGRAY宇宙から帰った宇宙服には、宇宙のにおいが残っている
月の砂は、地球ではにおわなくなった。
No.210ホントTRUEホッキョクグマの皮膚は黒く、白く見える毛には色がない
ホッキョクグマの毛は、光ファイバーではなかった。
No.174スコッチガードは、ジェット機の燃料ホース用のゴム液が助手の靴にこぼれて生まれた
最初のスコッチガードは、羊毛にしか効かなかった。
No.246グレーGRAY6000〜1万年前に生まれたとされた「青い目の型」は、1万4000年前の骨にもあった
青い目の型は、1万4000年前の骨にもあった。