ジーンズとデニムは、どちらもヨーロッパの町の名前からきている
言葉と語源No.111

ジーンズとデニムは、どちらもヨーロッパの町の名前からきている

ジーンズはジェノヴァ、デニムはニーム。

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もくじ
  1. jeans は、もとはズボンではなく、イタリアの町ジェノヴァの布の名前だった
  2. ジェノヴァの博物館には、ジーンズ地の祖先とされる500年近く前の青い布がある
  3. 博物館の青い布が作られた年は、資料によって1530年代とも1540年代とも書かれている
  4. denim は、フランスの町ニームで作られた布の名前が短くなった言葉
  5. ジーンズの発明とされる1873年の特許は、布ではなく、びょうで縫い目を強くする方法の特許だった
  6. 製品番号「501」の由来は記録が焼けて分からず、jeans という呼び名は若者から広まった
  7. 深掘り講義
  8. 英語で使ってみよう
  9. まとめ
  10. 英語で読む(A2・4択5問)
  11. 出典・ウラ取り

1873年5月20日、アメリカで1つの特許(発明した方法を、決まった年数ひとりじめできる権利)が認められました。番号は139,121。ズボンのポケットの口に金属のびょうを打ち、縫い目がほつれないようにする工夫です。リーバイ・ストラウス社(Levi Strauss & Co.)は、これを「ブルージーンズの発明」と呼んでいます。

ところが、この特許の文には「jeans」という言葉が一度も出てきません。「denim(デニム)」もありません。そしてリーバイスは、びょうを打ったこの代表的なズボンを、1960年まで「ジーンズ」と呼んでいませんでした。

では、ジーンズとデニムという言葉は、どこから来たのでしょう。どちらも、ヨーロッパの町の名前から来ています。jeans はイタリアのジェノヴァ、denim はフランスのニームです。

この記事では、まず jeans と denim が、町の名前から布の名前になった道すじを見ます。次に、1873年の特許とリーバイスの記録から、ズボンが「ジーンズ」と呼ばれるまでを追います。

01jeans は、もとはズボンではなく、イタリアの町ジェノヴァの布の名前だった

英語の jean は、jean fustian の略です。アメリカの辞書ディクショナリー・ドットコム(Dictionary.com)が、そう説明しています。もっと古い形は Gene fustian、または Genes fustian。意味は「ジェノヴァのファスチャン」です。

ジェノヴァ(Genoa)は、イタリア北西部の港町です。昔の英語では、この町を Gene や Genes のように書きました。ファスチャン(fustian)は、綿と麻(亜麻)などで作る丈夫な布のことです。「ジェノヴァのファスチャン」という英語の記録は、1485〜95年ごろまでさかのぼります。

つまり、jean はもともと「ジェノヴァから来た丈夫な布」でした。ズボンの名前になったのは、ずっとあとのことです。今でも辞書は、jean の1つめの意味を「丈夫な綾織りの布」としています。jean jacket(ジーンズ地の上着)という言い方の jean は、今も「布」の意味で使われています。

02ジェノヴァの博物館には、ジーンズ地の祖先とされる500年近く前の青い布がある

ジェノヴァの大聖堂のとなりに、教区博物館(Museo Diocesano)があります。ここに「受難の布(Teli della Passione)」と呼ばれる14枚の大きな布があります。

布は、麻と綿でできています。藍で青く染めた布の上に、白い絵の具で絵が描かれています。絵の具は、鉛から作った「鉛白」です。描かれているのは、キリストが十字架にかけられるまでの場面です。一部は、ドイツの画家デューラーの版画集『小受難伝』を手本にしています。

受難の布は、もとはジェノヴァの西の谷にあった修道院の持ちものでした。今はイタリアの国の持ちものです。

博物館の説明では、このような布がジェノヴァで最初に織られたことを示す記録が、16世紀から多く残っているそうです。そしてイングランドでは、ジェノヴァで作られた布なので jeans と呼ばれた、としています。博物館は、受難の布を「ジェノヴァのジーンズ地の、最も古い祖先の一つ」と考えてよい、と紹介しています。

ジェノヴァの教区博物館には、藍で染めた布に白で描いた14枚の「受難の布」が残る(イメージ)
ジェノヴァの教区博物館には、藍で染めた布に白で描いた14枚の「受難の布」が残る(イメージ)

03博物館の青い布が作られた年は、資料によって1530年代とも1540年代とも書かれている

受難の布が描かれた年は、資料によって書き方が違います。博物館を運営する団体のページは、イタリア語では「1530年代」としています。ところが、同じページの英語の文では「1540年代」です。ジェノヴァ市の観光サイトは、1538年に描かれたと書いています。

どの資料も、「16世紀の前半から半ば」という点では同じです。ただ、受難の布が作られた正確な年を一つに決めるのは難しい、ということが分かります。

もう1つ、気をつけたい点があります。博物館は、受難の布をジーンズ地の「祖先の一つ」と言っているだけです。今のデニムと同じ布だ、とは言っていません。地元の博物館が自分の町を自慢する話を読むときは、こうした言い方の違いに気をつけることが大切です。

04denim は、フランスの町ニームで作られた布の名前が短くなった言葉

デニムの名前は、フランス南部の町ニーム(Nîmes)から来ています。メリアム・ウェブスター(Merriam-Webster)によると、もとの言い方は serge de Nîmes。意味は「ニームのサージ」です。サージは綾織りの布のことで、羊毛のものが多いですが、綿や絹のものもあります。

フランス語では、Nîmes の最後の s を読みません。そのため英語に入るとき、serge de Nim と書かれました。それが serge denim になり、やがて頭の serge が落ちて denim だけが残りました。英語の denim の一番古い用例は1695年です。

ここで2つの言葉を並べてみます。jean fustian から fustian が落ちて、jean になりました。serge de Nîmes から serge が落ちて、denim になりました。どちらも、布の種類を表す部分が消えました。そして、町の名前の部分だけが残ったのです。

05ジーンズの発明とされる1873年の特許は、布ではなく、びょうで縫い目を強くする方法の特許だった

この特許の発明者は、ジェイコブ・デイビス(Jacob Davis)です。デイビスは、ネバダ州リノの仕立て屋でした。リーバイ社の資料によると、デイビスは1872年にリーバイ・ストラウスに手紙を書きました。「ポケットのはしをびょうで止める方法を考えたので、一緒に特許を取ろう」という内容です。

特許の文には、びょうを使うのは「ズボン、下ばき、そのほかの衣服」と書かれています。布の種類の名前は出てきません。靴の縫い目にびょうを使う特許がすでにあることにも、ふれています。デイビスたちが発明したのは「布」ではなく、「縫い目を強くする工夫」だったのです。

このズボンの最初の商品名は「ウエスト・オーバーオール(waist overalls)」でした。会社の年表には、単に「XX」とも呼ばれていたとあります。XX は業界の言葉で「最高品質」という意味です。使った布も、アモスケグ社の「XX」というデニムでした。厚さは9オンス(布の厚さを重さで表した数字)です。1900年ごろには、名前はただの「オーバーオール」になります。リーバイ社は、ズボンの形を自分たちが発明したのではない、とも書いています。昔からある作業ズボンに、びょうを打ったのです。

06製品番号「501」の由来は記録が焼けて分からず、jeans という呼び名は若者から広まった

1890年、このズボンに「501」という製品番号がつきました。でも、なぜ501なのかは会社にも分かりません。1906年のサンフランシスコ地震と火事で、本社と工場が焼け、記録がなくなってしまったからです。

後ろポケットにある、弓の形をしたステッチ(縫い目の模様)の理由も分かりません。「鳥がつばさを広げた形」という話がありますが、会社はこれを作り話だとしています。本当の理由は、記録がなくて分からないのです。第二次世界大戦中は、材料を節約する決まりのため、このステッチを縫うのをやめました。そこで工員たちは、ズボン1本ずつに、ペンキでこの形を描いたそうです。

そして1960年、広告とパッケージで、overalls という言葉が jeans に置きかわりました。1950年代の十代の若者たちが、このズボンを jeans と呼び始めたからです。リーバイ社は、なぜ jeans という言葉がこのズボンに結びついたのか「本当のところは誰も知らない」と書いています。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

jean も denim も、布の種類の部分が落ちて、町の名前だけが残った

jean も denim も、町の名前から生まれた言葉です。ある土地の産物が有名になると、土地の名前がそのまま、ものの名前になることがあります。jean と denim では、言葉が短くなるときに、どの部分が残ったかに注目します。

もとの言い方は「ジェノヴァのファスチャン」「ニームのサージ」でした。どちらも「どこの」+「何の布」という形です。ところが、よく使われるうちに、「何の布」のほうが落ちました。言葉の一部を落として短くすることを、言語学では省略や短縮と呼びます。普通に考えると、布の種類のほうが大事な情報に思えます。でも実際には、ほかの布と区別しやすい「町の名前」のほうが残りました。

ジーンズ1本でも jeans と複数形で言うのは、左右2つの部分があるから

辞書は、jeans を「複数として扱う」と書いています。英語では、ズボンのように左右2つの部分からできている服を、複数形で言うのが普通です。pants や trousers も同じです。

一方、単数の jean は今も「布」の意味を残しています。jean jacket の jean は「ジーンズ地の」という意味です。同じ言葉が、単数では布、複数ではズボンを指します。jean がもとは布の名前だったことが、単数と複数の使い分けに残っているのです。

1873年に取ったびょうの特許は、1890年に期限が切れた

特許は、発明した人に、決まった年数だけ、その方法をひとりじめする権利を与える制度です。特許139,121は1873年に認められ、1890年に期限を迎えました。リーバイ社の年表にも、1890年にびょうの特許が切れ、ほかの会社もびょうを打った服を作れるようになったとあります。

同じ1890年に、製品番号「501」がつけられました。会社の資料によると、1886年には、2頭の馬がズボンを引っぱり合う絵の革ラベルも使い始めています。特許が切れると、ほかの会社も同じズボンを作れます。それに備えて、「元祖はこちら」と絵で示すためだったそうです。製品番号やマークで自分の商品を見分けてもらう工夫は、ちょうど特許が切れる時期に始まっていました。

リーバイ社の資料は、分からないことを「分からない」と書いている

有名な商品には、よく「誕生の物語」がつきます。歴史学では、話の出どころとなる資料が信用できるかどうかを確かめます。これを史料批判といいます。

リーバイ社の資料は、史料批判の目で見ても、丁寧に書かれています。501という番号の理由も、ステッチの由来も「分からない」とはっきり書いています。鳥のつばさの話は「作り話」と否定しています。1906年の火事で記録が失われたことを、理由として示しています。分からないことを「分からない」と書く資料は、かえって信頼しやすいと言えます。

ジェノヴァ側の説明も、読み方に注意が必要です。博物館のページは、布の年代を言語によって「1530年代」「1540年代」と書き分けていました。そして、受難の布を祖先の一つと表現しています。同じ布だと言い切ってはいません。

jeans という呼び名は、会社ではなく使う人たちが決めた

jeans という呼び名を、リーバイ社は自分で決めたのではありませんでした。1950年代の若者が使い始め、会社が1960年にそれに合わせました。会社は1930年代に、男の子用のデニムのズボンを jeans と呼んだこともあったそうです。それでも、一番の商品の名前は overalls のままでした。

ものの名前は、作った会社ではなく、使う人たちが決めることがあります。辞書が、人々が実際に言葉をどう使っているかを記録するのも、そのためです。

07英語で使ってみよう

  • These jeans are too long for me.(このジーンズは私には長すぎる。1本でも are)
  • I bought a pair of jeans.(ジーンズを1本買った。a pair of で数える)
  • She wore a denim jacket.(彼女はデニムの上着を着ていた)
  • He has a jean jacket.(彼はジーンズ地の上着を持っている)

08まとめ

jeans は「ジェノヴァのファスチャン」、denim は「ニームのサージ」がちぢんだ言葉です。どちらも、布の種類の部分が消え、町の名前だけが残りました。1873年の特許には、jeans も denim も書かれていません。リーバイスのびょうを打ったズボンは、長いあいだ「オーバーオール」と呼ばれていました。jeans という名前を広めたのは会社ではなく、1950年代の若者たちです。ジーンズのラベルを見たら、「jeans」が500年かけて、町の布の名前からズボンの名前に変わったことを思い出してみてください。

人に話すなら、こう言おう

ジーンズってイタリアのジェノヴァ、デニムはフランスのニームっていう町の名前から来てるんだって。しかもリーバイスは1960年まで、看板のズボンを「ジーンズ」って呼んでなかったらしいよ。
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英語で読む

Two Towns in Your Pants

CEFR A2231 words4択 5問全訳つき
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On May 20, 1873, a tailor named Jacob Davis and Levi Strauss and Company got a patent in America.1873年5月20日、ジェイコブ・デイビスという仕立て屋とリーバイ・ストラウス社が、アメリカで特許を取りました。 It was for metal rivets that made pants stronger.それは、ズボンを丈夫にする金属のびょうについての特許でした。 But the words "jeans" and "denim" do not appear in it even once.でも、その中には「jeans」も「denim」も一度も出てきません。

Both words come from the names of towns in Europe.どちらの言葉も、ヨーロッパの町の名前から来ています。 "Jean" is short for "jean fustian," a strong cloth from Genoa in Italy.「jean」は「jean fustian」を短くしたもので、イタリアのジェノヴァから来た丈夫な布のことです。 At first, it was the name of a cloth, not a kind of pants.最初、それはズボンの種類ではなく、布の名前でした。 A museum in Genoa still keeps 14 large blue cloths from the 1500s.ジェノヴァのある博物館には、1500年代の大きな青い布が今も14枚残されています。

"Denim" comes from French.「denim」はフランス語から来ています。 People called a cloth "serge de Nimes," which means "serge from Nimes."人々はある布を「serge de Nimes」と呼んでいました。これは「ニームのサージ」という意味です。 The French do not say the "s" at the end of Nimes.フランス人は、Nimes の最後の「s」を発音しません。 So in English it became "serge denim," and later just "denim."そのため英語では「serge denim」になり、のちにただの「denim」になりました。 In both words, the cloth part was lost, and only the town name stayed.どちらの言葉でも、布の部分が消えて、町の名前だけが残ったのです。

Levi's first pants were not even called jeans.リーバイスの最初のズボンは、ジーンズと呼ばれてさえいませんでした。 The company called them "waist overalls."会社はそれを「ウエスト・オーバーオール」と呼んでいました。 In the 1950s, teenagers started to call them jeans.1950年代、十代の若者たちがそれをジーンズと呼び始めました。 So in 1960, the company changed the word on its ads and packages.そこで1960年、会社は広告とパッケージの言葉を変えました。 The company says nobody really knows why that word stuck to these pants.会社は、なぜその言葉がこのズボンの名前になったのか、本当のところは誰にもわからない、と言っています。

Many old company records burned in a big earthquake and fire in 1906.会社の古い記録の多くは、1906年の大地震と火事で燃えてしまいました。 So some parts of the story will always be a mystery.そのため、この話のいくつかの部分は、ずっとなぞのままでしょう。 Next time you put on jeans, remember that you are wearing two old towns.次にジーンズをはくときは、2つの古い町を身につけていることを思い出してください。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2When did Levi's change "overalls" to "jeans" on its ads?

    リーバイスが広告の「overalls」を「jeans」に変えたのはいつですか。

  3. Q3Why did "serge de Nimes" become "serge denim" in English?

    なぜ「serge de Nimes」は英語で「serge denim」になったのですか。

  4. Q4In paragraph 5, the word "mystery" is closest in meaning to

    第5段落の「mystery」という語にいちばん意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話の内容と合っているのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • patent名詞
    特許

    She got a patent for her new machine.

    彼女は新しい機械の特許を取った。

    💡 get a patent(特許を取る)。発音は「パテント」。

  • rivet名詞
    リベット、金属のびょう

    The bridge is held together by thousands of rivets.

    その橋は何千本ものリベットで組み立てられている。

    💡 動詞で「くぎづけにする」の意味もある(be riveted to the screen=画面にくぎづけ)。

  • cloth名詞
    布

    This bag is made of thick cloth.

    このかばんは厚い布でできている。

    💡 clothes(服)とつづりと発音のちがいに注意。

  • appear動詞
    出てくる、現れる

    His name does not appear on the list.

    彼の名前はリストにのっていない。

    💡 反対は disappear(消える)。

  • museum名詞
    博物館、美術館

    We saw old tools at the museum.

    私たちは博物館で古い道具を見た。

    💡 art museum(美術館)、science museum(科学館)。

  • teenager名詞
    十代の若者

    Many teenagers use this app every day.

    多くの十代の若者が毎日このアプリを使っている。

    💡 thirteen〜nineteen のように -teen がつく年齢の人。

  • record名詞
    記録

    The school keeps records of every student.

    学校は全生徒の記録を保管している。

    💡 名詞はレコードの「レ」を強く、動詞(記録する)は「コー」を強く読む。

  • mystery名詞
    なぞ、ふしぎなこと

    How the cat got out is still a mystery.

    ネコがどうやって外に出たのかは、いまだになぞだ。

    💡 形容詞は mysterious(なぞめいた)。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 17件)。

  1. jean(Dictionary.com)dictionary.com
  2. denim(Merriam-Webster Dictionary)merriam-webster.com
  3. Museo Diocesano di Genova:I teli della Passione in tessuto "jeans"(Palazzo Ducale Fondazione per la Cultura, Genova)palazzoducale.genova.it
  4. Davis, J. W. US Patent 139,121 "Improvement in fastening pocket-openings"(1873)patents.google.com
  5. History of Levi's 501 Jeans(Levi Strauss & Co.)levistrauss.com
  6. Levi Strauss & Co. Timeline(Levi Strauss & Co.)levistrauss.com

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