Malcolm GladwellのTED英語|『完璧な1つ』はない
『選択、幸福、スパゲッティソース』というTEDトークで、Malcolm Gladwellが実在の変わり者研究者の話から始めます。結論を先に言わない語りの技術に注目です。
Choice, happiness and spaghetti sauce
選択と幸福とスパゲッティソース/Malcolm Gladwell(ジャーナリスト・作家(『ティッピング・ポイント』著者))・2004年・約17分 字幕つきで見る ↗
なぜ、これほど届いたのか
Malcolm Gladwellの語り口は、結論を先に言わないのが特徴です。冒頭でいきなり『選択とは』と語り出さず、まずHoward Moskowitzという実在の人物の風貌を面白おかしく描写してから、本題に入ります。聞き手は『この人、誰?』と引き込まれたまま、気づけば理論の中に入っています。
もう1つの技は、同じ型の1文をくり返すことです。"There is no perfect pickle; there are only perfect pickles." という言い方を、ソースやコーヒーの話でも形を変えて繰り返します。型が同じだから、2回目以降は聞き取りやすくなるという仕掛けです。
また "I have no idea what psychophysics is" と専門用語を知らないと正直に言うことで、聴衆との距離を縮めています。難しい話をする前に、まず自分を聴衆と同じ側に置く技術です。
名台詞
There is no perfect pickle; there are only perfect pickles.
The mind knows not what the tongue wants.
In embracing the diversity of human beings, we will find a surer way to true happiness.
和訳 完璧なピクルスなど存在しない。存在するのは、いくつもの『完璧なピクルスたち』だ。頭は、舌が何を欲しがっているか分かっていない。人間の多様性を受け入れることの中にこそ、本当の幸福への確かな道がある。
ここが聞き取れない
- "by 〜" の畳みかけ
- "by sweetness, by level of garlic, by tartness, by sourness" のように、同じ形を短く畳みかける場面があります。区切りごとに一拍置かれるので、意味が分からなくてもリズムで『たくさん条件を挙げている』と分かります。
- the perfect Pepsis
- 本来は数えられないはずの商品名Pepsiに、あえて複数のsを付けて強く読む場面です。わざと変な形にして笑いを取る、というのは英語のジョークでよく使う技です。
- kind of の軽さ
- "he has a kind of wonderful exuberance" の kind of は、ここでは『ちょっと』くらいの軽い意味で、はっきり発音されません。断定を避けたいときに挟む口ぐせのようなものです。
この1本の使い方
- 字幕なしで、冒頭30秒(Howard Moskowitzの外見を説明する部分)だけを聞き、聞き取れた単語を3つ書き出す。
- 上の3つの引用を、間の取り方を意識しながら声に出して3回ずつ読む。
- 自分の『完璧な◯◯』を1つ思い浮かべ、"There is no perfect ◯◯; there are only perfect ◯◯s." の形で英語で言ってみる。
このトークが伝えているのは、『みんなに合う1つの正解』を探すのをやめよう、ということです。今日は3つの引用を音読するところまでで十分です。明日は、字幕なしでもう一度、冒頭のHoward Moskowitzの描写だけを聞き直してみてください。
よくある質問
このトークは何がテーマですか?
食品業界が『完璧な1つの商品』を追い求めるのをやめ、『それぞれに合う複数の商品』を作るようになった経緯を、スパゲッティソースの実例から語るトークです。選択と幸福についての大きな主張につながります。
Howard Moskowitzとは誰ですか?
心理物理学者で、45種類のスパゲッティソースを実験し『みんなが好きな1つの味』ではなく『味の好みは3つのグループに分かれる』ことを発見した人物です。この発見がPregoのextra chunkyソースのヒットにつながりました。