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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
COLUMN 第6回 標準 読了 4分

大谷翔平選手の英語スピーチ|通訳を挟まず話した理由

はらだコラム 第6回

大リーグの優勝パレードで、大谷翔平選手が通訳を挟まず、自分の英語でファンに語りかけた場面がありました。うまい英語だったからではなく、自分の言葉で話したから、あの場は温まったのだと思います。

監修:原田高志(原田英語.com)

大リーグの優勝パレード。マイクの前に立った大谷翔平選手は、いつもそばにいる通訳を挟まずに、自分の口で英語を話し始めました。

完璧な発音でも、なめらかな文法でもありませんでした。それでも、スタジアムを埋めたファンの反応は、通訳を介した会見のときよりずっと大きかったように見えました。今日は、その場面から考えたことです。

通訳を挟まず、まず一言

会見の場では、大谷選手はふだん通訳を通して話します。誤解のない、正確な言葉を届けるためには、そのほうが確実だからです。

ところがこのパレードでは、自分の英語で「Hello, hello.」と切り出し、「I want to say I am so proud of this team, and I want to say you guys are the greatest fans in the world.」と続けたと伝えられています。チームへの誇りと、ファンへの感謝を、誰かを介さずに直接伝えた瞬間でした。

動画で見る

大谷選手が優勝パレードで英語スピーチをする様子 (KTLA 5) 通訳なしで話し始める瞬間から見られます。

なぜ、あえて自分の言葉で

正確さを優先するなら、この場面でも通訳を使う選択肢はあったはずです。それでも自分の英語を選んだのは、正確さより先に届けたい気持ちがあったからではないかと思います。

感謝や興奮のような感情は、間に人が入るほど、伝わるまでに時間がかかります。多少不完全でも、自分の口から出た言葉のほうが、その場の熱量をそのまま運べる。そう考えると、あの一言には意味があったのだと思います。

Sports Illustrated の記事には、大谷選手が英語で「And I'm ready to get another ring next year. Let's go.」と締めくくり、スタジアムがさらに沸いた様子が伝えられています。

うまさより、伝わったかどうか

生徒に英語を教えていると、文法のミスを気にして、口を開く前に止まってしまう場面によく出会います。気持ちは分かります。間違えたくない、という気持ちは真面目さの証でもあるからです。

ただ、あの日のスタジアムを沸かせたのは、文法の正しさではありませんでした。伝えたい、という一点だけで押し切った言葉でした。完璧な英語を話してから伝えよう、ではなく、伝わる分だけの英語で、まず伝える。この順番のほうが、実は近道なのではないかと思います。

自分の言葉で言う練習

教科書の例文を正確に言えることと、自分の気持ちを英語にすることは、少し別の力です。後者は、間違いを気にせず口に出す回数でしか育たないと思います。

今日、誰かに感謝を伝えたい場面があったら、日本語でまとめる前に、短い英語を1つだけ声に出してみてください。Thank you. だけでも構いません。間違えることより、口に出さないことのほうが、もったいないと思います。

今日の英語のひとかけら

I'm ready to get another ring next year. Let's go.

来年も、また優勝指輪を取る準備はできている。さあ、行こう。

大谷選手がパレードの英語スピーチを締めくくったとされる一言です。文法の正確さより、勢いがそのまま伝わってきます。

うまく話せるようになってから話そう、と思っているうちに、話す機会そのものが過ぎてしまうことがあります。

大谷選手のあの一言は、完璧な英語ではなかったかもしれません。それでも、伝えたいことは伝わりました。英語を学ぶ目的が『正しく話すこと』ではなく『伝えること』だと思い出させてくれる場面だったと思います。

原田高志