AIが3秒で書く読書感想文と、あなたにしか書けない一行
はらだコラム
読書感想文は、いまや本の題名を打ち込めば生成AIが数秒で返してきます。実際にそうしている人もいます。ただ、コンクールの応募要項も学校の指示も、それを認めていません。AIが書けるところと書けないところを切り分けて、自分で書くときにどの順で書けばいいのかを書きます。
監修:原田高志(原田英語.com)
夏休みの宿題で、最後まで残るものがあります。読書感想文です。
ただ、いまは事情が変わりました。本の題名を打ち込めば、生成AIが数秒で1200字を返してきます。原稿用紙の前で止まる、という話が当てはまらない人も増えています。実際に、そうやって出している子がいることも聞きます。
だから今日は「書けない人へ」ではなく、その先を書きます。出そうと思えば出せるのに、なぜ自分で書くのか。そして、自分で書くなら何をどの順で書くのか、の2つです。
まず、ルールの話をします
第72回青少年読書感想文全国コンクールの応募要項を開いてみました。主催は公益社団法人全国学校図書館協議会と毎日新聞社です。字数は小学校低学年が800字以内、中学年と高学年が1200字以内、中学校と高等学校が2000字以内。応募は学校を通して行います。
そして条件に、日本語で書かれた、個人のオリジナルで未発表の作品であること、と書かれています。AIが作った文章をそのまま出すことは、ここから外れます。
国のほうにも記述があります。文部科学省のガイドライン(初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0、2024年12月)は、AIの利用を想定していないコンクールに、生成AIが作ったものをそのまま自分の成果物として応募することは、評価基準やコンクールの規定によっては不適切または不正になりうる、という趣旨を書いています。
⚠ 学校ごとに、使ってよい範囲の説明は違います。先生からの指示があるなら、それが最優先です。下に書くことも、その指示の中で読んでください。
AIが得意なのは、あらすじと「一般的な感想」です
AIが数秒で書けるものは、はっきりしています。①あらすじの要約 ②誰にでも当てはまる教訓(「命の大切さを学びました」) ③体裁の整った文章、の3つです。
英語圏の学校で出る似た課題を book report と呼びます。あらすじ・登場人物・主題を説明する課題で、いま挙げた3つとほぼ同じ中身です。本を評価して人にすすめるかどうかを書く book review とは別のものですが、どちらにしても、AIがいちばん得意な形をしています。
では、AIに書けないものは何か。あなたが読んでいるあいだに、あなたの中で起きたことです。何ページ目で本を閉じたか。どの一行で手が止まったか。そのとき誰の顔を思い出したか。AIはその本を知っていますが、あなたの一日を知りません。
私はそう考えているので、感想文を読むときも、そこだけを探しています。あらすじが上手にまとまっているかどうかは、もう読み手にとっての手がかりになりません。
自分で書くなら、順番を逆にしてください
これまでは「あらすじ→感想」の順で教えられてきました。この順で書くと、あらすじで字数を使い切り、感想が最後の3行だけになります。しかもその3行は、AIがいちばん上手に書ける場所です。
順番を逆にします。3つだけです。
- ①止まった一行を写す … 本の中で、線を引きたくなった一文をそのまま書き写す
- ②そのとき浮かんだことを書く … その一行を読んだときに思い出した自分の出来事を書く。本の話でなくてかまいません
- ③必要な分だけ、あらすじを足す … ①と②を人に分かってもらうのに要る説明だけ、あとから前に置く
この順番なら、AIに代わりに書かせることができません。①でどの一行を選ぶかも、②で何を思い出したかも、あなたしか知らないからです。書き出しに困ることもありません。写すところから始まるので、一行目は必ず埋まります。
AIを使うなら、「書かせる」ではなく「聞かせる」
学校が認めている範囲であれば、という前提つきで、使い方を1つだけ書きます。
✕ 「この本の読書感想文を800字で書いて」
○ 「私が書いた次の3行を読んで、質問を3つしてください。答えは書かないでください」
頼み方をこう変えると、返ってくるのは文章ではなく質問です。「そのとき、どうして怖いと思ったの?」と聞かれて答えると、その答えが自分の言葉のまま原稿用紙に増えていきます。英語の学習で使うときも同じで、書かせる側に回ると力が付きません。
それでも、出す前に自分で全部読み直してください。自分の口で説明できない一文が残っていたら、それはまだ自分の文章ではありません。
今日の英語のひとかけら
Tell me what happened first, then tell me what you think.
まず何が起きたのかを話して。そのあとで、どう思ったかを話して。
書いた文章が自分のものになっているかは、口で説明してもらうといちばん早く分かります。first と then で順番を先に示しておくと、答えるほうも迷いません。tell me what you think は「あなたの考えを教えて」で、感想をたずねるときの決まった言い方です。
今日、家族の誰かが原稿用紙の前で止まっていたら、「どんな話だったの」の前に、「どこで止まった?」と聞いてみてください。ページでも、一行でもかまいません。そこが、その人にしか書けない場所です。
そして、AIに手伝わせるなら、書かせるのではなく質問させてください。出すのは、自分の言葉に直したものだけです。学校からの指示がある場合は、そちらが先になります。
原田高志
よくある質問
読書感想文を生成AIに書いてもらってもいいですか。
青少年読書感想文全国コンクールの応募要項は、日本語で書かれた、個人のオリジナルで未発表の作品であることを条件にしています。AIが作った文章をそのまま出すことは、この条件から外れます。文部科学省のガイドライン(初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0、2024年12月)にも、AIの利用を想定していないコンクールに生成物をそのまま自分の成果物として応募することは、評価基準やコンクールの規定によっては不適切または不正になりうる、という趣旨が書かれています。まず、自分の学校の指示を確かめてください。
読書感想文は英語で何と言いますか。
英語圏の学校で出る似た課題は book report と呼ばれます。あらすじ・登場人物・主題の説明が中心で、感想はその一部です。本を評価して、読む価値があるかどうかを人に伝える book review とは別のものです。