しかしXのタイムラインに並んだのは、合格の歓喜ではなかった。
「要約問題が0点」「全観点0/0/0/0」「英作文は満点なのに要約だけ0点」──
英語教育のプロフェッショナルたちまでもが困惑する、前代未聞の事態が起きている。
1速報──何が起きたのか? X投稿で辿る時系列
2026年2月16日の午前、英検の合否結果がオンラインで閲覧可能になった瞬間から、X(旧Twitter)は異様な空気に包まれた。
通常、英検の結果発表日のタイムラインは「合格しました!」という歓喜の報告で溢れる。実際、今回も準1級や2級の合格報告は多数上がっていた。しかし英検1級の受験者のタイムラインだけが、明らかに異常だった。
𝕏 TIMELINE
2月16日〜17日の主要ポスト(要約)
注目すべきは、これが一部の受験者の愚痴レベルの話ではない点だ。英語教育業界で名の知れた講師、コーチ、TOEIC満点保持者、海外進学の専門家──つまり「英語のプロフェッショナル」たちが軒並み0点を報告しているのである。
Xで「英検1級 要約 0点」と検索すると、結果発表から24時間以内に数十件の報告が確認できる。英検1級の受験者数は年間約3万人程度であることを考えると、SNS上で確認できる人数だけでも異常な割合と言わざるを得ない。
2被害の全貌──「プロ中のプロ」たちまで0点に
今回の問題が深刻なのは、0点になった人々の「英語力のレベル」だ。もし初受験の人が0点になったなら「対策不足」で説明がつくかもしれない。しかし実態は、まったく逆である。
特に衝撃的なのは、同じ試験の英作文(意見論述)で満点を取った人ですら、要約は0点だったケースだ。英作文で32/32を取れる英語力の持ち主が、同じライティングセクションの要約だけ0点──これは「英語力の問題」では到底説明がつかない。
さらに、9回目の挑戦で素点わずか1点差で不合格になった受験者の投稿も反響を呼んだ。もしこの人の要約が0点ではなく数点でもついていれば、合格ラインに達していた可能性がある。「人生を左右しかねない」──複数の投稿者がこの言葉を使っている。
3なぜこうなった?──2025年度「語数制限厳格化」の衝撃
この事態の背景にあるのが、2025年度第1回検定(2025年6月実施)から適用された、要約問題の語数指定の厳格化だ。
英検協会は2025年4月15日付の公式発表で、以下の変更を明らかにしていた。
キーワードは「Suggested length(目安)」から「between(〜の間で)」への変更だ。一見すると微妙な文言の違いだが、その運用上のインパクトは劇的だった。
つまり、2024年度までは「90-110語はあくまで目安」であり、多少の語数オーバーや不足は許容されていた。実際に、85語で要約を書いて満点(32/32)を取った受験者の報告すら存在する。
ところが2025年度からは「90語から110語の間で書きなさい」と明確に指定に変わった。そして今回の結果を見る限り、この語数範囲を外れた場合は内容の質に関係なく全観点0点という、極めて厳しい運用がなされた可能性が高い。
語数制限を厳格化すること自体は、試験運営として理解できる判断だ。しかし「1語でも範囲外なら全観点0点」という運用は、果たして「英語力を測る試験」として適切なのか?これが今回の議論の核心である。
4採点の不可解な「3つの異常パターン」
英検コーチのエイゴフルは、今回の結果を集約分析し、「採点基準がおかしい」3つのポイントを指摘している。
異常パターン ①
異常パターン ②
異常パターン ③
これらのパターンは、「人間の採点者が1枚1枚読んで判断した」結果としてはあまりにも不自然であり、何らかのシステム的な基準(例:語数による自動フィルタリング)が適用されている可能性を強く示唆している。
推測されるシナリオ:語数が指定範囲(90-110語)を外れた答案は、採点システムによって自動的に「採点対象外=全観点0点」と処理された可能性がある。手書き答案の語数をどのように機械的にカウントしたのか(AI?目視?)も疑問が残る。
5賛否両論──「ルールはルール」vs「試験として破綻」
この問題に対して、意見はきれいに二分されている。双方の立場を公平に見てみよう。
• 語数制限は事前に告知されていた
• 「90-110語で書け」と言われて書けないなら、それも能力の一部
• IELTSでも語数不足は大幅減点の対象
• 「指示通りに答えていないので仕方ない」(本人の弁)
• ルールを曖昧にすると試験の公平性が損なわれる
• 減点ならわかるが「0点」はあまりに過酷
• 内容・構成・語彙・文法を個別評価する意味がなくなる
• 12,500円の受験料、人生を左右する結果
• 事前に「語数違反=0点」とは明示されていなかった
• 手書きで語数を正確に数えること自体が非合理的
実は、一ノ瀬安氏のように0点を取った本人が「指示通りに答えていないので仕方ない」と自ら認めているケースも存在する。これは「ルールはルール」派の論拠を補強する事実だ。
しかし問題は、語数制限違反がどこまでの減点に値するかという「程度」の議論だ。88語で書いたら0点、90語で書いたら満点の可能性もある──この「2語の差」が32点の差になることに、多くの人が違和感を覚えている。
PERSPECTIVE
ある受験者の投稿より──
6海外の英語試験はどうなっている?──IELTS・TOEFL・ケンブリッジ英検との比較
今回の問題を客観的に評価するために、世界の主要英語試験がライティングの語数制限をどう扱っているかを比較してみよう。
国際的な英語試験と比較すると、英検の対応は異例の厳しさであることがわかる。IELTSでさえ語数不足は「減点」であって「0点」ではない。内容が優れていれば、語数不足でもそれなりのスコアが与えられる。
重要なのは、IELTSやTOEFLなどの試験は「パソコン上でタイピング」するため語数カウントは正確だが、英検は手書きであるという点だ。手書きで90語から110語の範囲にぴったり収めるのは、英語力とは別次元のスキルが求められる。
なお、IELTS・TOEFL・ケンブリッジ英検には「要約問題」という形式自体が存在しない。英検独自の問題形式であるがゆえに、採点基準も前例のない領域で模索している段階と言える。
7受験者が今できること──問い合わせ先と具体的なアクション
英検の受験規約第20条には「採点結果や合否判定に関する異議申し立ては一切受け付けない」とある。しかし、今回のような大規模な問題が発生した場合、個人としてできるアクションはある。
ACTION 1
ACTION 2
ACTION 3
重要:問い合わせの際は、感情的な抗議ではなく、冷静かつ具体的な質問を心がけたい。「要約問題が0点になる具体的な採点基準」「語数制限違反の場合の減点ルール」「今回の採点が適正だったかの確認」など、事実を問う姿勢が最も効果的だ。
8英検協会への5つの提言──試験の信頼を守るために
この問題を「炎上」で終わらせないために、建設的な提言を5つまとめたい。
まとめ──「測りたいもの」を見失わないでほしい
英検1級の要約問題は、2024年度のリニューアルで導入された
英検独自の意欲的な問題形式だ。
「英語で読み、英語でまとめる」──これは本物の英語力を測る良い設計だと、多くの英語教育者が評価していた。
英語力を正当に評価する試験であり続けるために。
英検協会には、沈黙ではなく「対話」を選んでほしい。
