
1901年から100年以上ともり続けている電球がある
長持ちのひみつは「暗さ」にあるらしい。
この判定の対象「1901年から使われ、120年以上切れていない電球がある」
もくじ
アメリカ・カリフォルニア州のリバモアという町に、第6消防署があります。その天井から、コード1本で電球がぶら下がっています。
この電球は、1901年から灯っています。ギネス世界記録に、「最も長く灯っている電球」として認められています。
ただし、見に行くと、たぶん少しがっかりします。光はとても弱く、常夜灯(夜につけておく小さな明かり)くらいの明るさしかないからです。また、記録を読むと、この電球は「一度も消えたことがない」わけでもありません。
この記事では、まず、電球がどこで作られ、どうして消防署に来たのかを紹介します。次に、電球が実際に何回消えたのかを、記録で確かめます。そのあと、研究者が同じ会社の電球を分解して調べた結果を見ます。電球が長持ちしている理由は、光が弱いことにあると考えられています。
01この電球は1890年代に作られ、1901年に町の電力会社の持ち主が消防署に贈った
電球を作ったのは、オハイオ州シェルビーの「シェルビー電気会社」です。作られたのは、1890年代の終わりです。設計したのは、フランス人のアドルフ・シャイエ(Adolphe Chaillet)とされています。
ガラスは、職人が息を吹き込んでふくらませた手作りです。中で光る細い線(フィラメント)は、炭素でできています。1912年のシェルビー社のカタログでは、1個40セントでした。
1901年、この電球は、リバモアの消防隊に贈られました。贈ったのは、町の電力会社の持ち主だったデニス・バーナルです。バーナルの娘は、父が会社を売ったときに電球を贈ったと、あとで語っています。
電球が最初に取りつけられたのは、ホースを積んだ車の置き場でした。夜でも消防車や道具が見えるように、一日中つけておくための明かりです。つまり、特別な電球ではなく、仕事のための普通の明かりでした。
02ギネスは「消えたのは一度だけ」と書くが、電球は1937年と2013年にも消えていた
ギネスの記録の説明文には、「止まったのは一度だけ。別の消防署へ移したとき」と書かれています。でも、電球を見守っている地元の委員会の記録を読むと、ほかにも消えたことがあると分かります。
まず、電球は何度も引っ越しています。1903年に、別の消防署へ移りました。1937年には、建物を直す工事のために、約1週間消えていました。1976年に今の第6消防署へ移るときは、パトカーと消防車が付き添いました。
2013年5月にも、電球は消えました。原因は、停電に備えた電源(停電しても電気を送り続ける装置)まわりのトラブルです。委員会は電源装置の故障だと書き、ギネスの記事は延長コードの問題だと書いています。
電球の様子はインターネットのカメラで中継されていて、見ていた人たちが、消えたことに気づきました。消えていたのは約10時間です。電球そのものは切れておらず、また灯りました。
つまり、正しく言うと、「1901年から、ほとんどの時間灯っている」電球です。それでも、ギネスが認めた電球の中で、これより長く灯っている電球はありません。
03この電球は今、常夜灯くらいの4ワットの電力で弱く光っている
この電球は、もともとは60ワットだったとされます。60ワットは、普通の部屋を照らせる明るさです。ところが今は、約4ワットの電力しか使っていません。ギネスは、今の明るさを「常夜灯くらい」と書いています。
なお、もとのワット数には、別の説もあります。委員会のサイトにのせられている別の記事では、「30ワットだったと考えられる」とされています。もとのワット数の、はっきりした記録は残っていないようです。
60ワットでも30ワットでも、今の電球は、もとの何分の一かの電力で弱く光っています。そして、弱く光っていることが、長持ちしている理由の1つだと考えられています。
04研究所が、同じ会社が作った別の古い電球を割って、中を調べた
消防署の電球そのものは、壊れると困るので調べられません。そこで、同じ会社が作った、別の古いシェルビー電球が調べられました。
リバモアには、アメリカの国の研究所の1つ、サンディア国立研究所があります。研究者のバーニス・ミルズらは、古いシェルビー電球を1個分解しました。
まず、X線で電球の中を写しました。すると、フィラメントは、ガラス越しではほとんど写りませんでした。このことから、フィラメントは、X線を通しやすい軽い元素でできていると分かります。
次に、ガラスを割りました。この電球は、ガラスが内と外の二重になっていました。そして中には、特許(発明を守る権利)の番号を書いた紙が、折りたたまれて閉じ込められていました。
フィラメントを調べると、材料は炭素でした。表面も炭素で、金属のメッキ(表面を金属でおおう加工)はされていません。太さは約80マイクロメートル(0.08ミリ)で、髪の毛と同じくらいです。

05同じ会社の電球の光る線は、今の電球と逆で、熱くなるほど電気が通りやすい
アメリカ海軍兵学校の物理学者デボラ・カッツ(Debora Katz)も、シェルビー電球を調べました。カッツは、テレビ番組でリバモアの電球のことを知り、調べ始めました。
カッツは、学生に、設計者シャイエの特許の書類を探させました。でも、書類には、フィラメントの形とガラスの形しか書かれていませんでした。フィラメントが何の材料でできているか、電球の中にどんなガスを入れたのかは、分からないままでした。
そこで、カッツたちは、レーザーの光を当てて、フィラメントの太さを測りました。結果は約0.08ミリでした。今の電球のフィラメントは、0.01ミリほどの線を、ばねのように巻いたものです。シェルビーのフィラメントは、その線の約8倍の太さでした。
2010年には、学生のジャスティン・フェルガーが、フィラメントの電気の通り方を測りました。シェルビーのフィラメントは、熱くなるほど電気が通りやすくなりました。今の電球に使われるタングステンの線は、その逆です。
カッツは、この電球を「代謝の低い動物のようなもの」とたとえています。代謝とは、生き物が体の中でエネルギーを使うはたらきのことです。少しずつしかエネルギーを使わないから、長く生きられる、という意味です。
深掘り講義
ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。
白熱電球は、明るくするほど寿命が短くなる
白熱電球は、細い線に電気を流してとても熱くし、その熱で光らせる電球です。流す電気を増やすと、もっと明るくなります。でも、そのぶん線の温度も上がります。熱い線ほど早くやせ細り、切れやすくなります。
つまり、白熱電球では、明るくすると寿命が短くなり、寿命を長くすると暗くなります。明るさと寿命のどちらをどれだけ取るかは、電球を作る人が決めることです。リバモアの電球は、もとの何分の一かの電力で、弱く光っています。これは、明るさをあきらめて、寿命を取った状態だと考えられます。
ギネスの記事は、長持ちの理由として、次のような説明を紹介しています。
- めったに消さない。つけたり消したりすると、温度が急に上下して線に負担がかかる
- ワット数が低く、光り方が安定している
- 手作りで、丈夫な材料が使われている
- 炭素のフィラメントは、今のタングステンよりゆっくりすり減る
ただし、どれも「そう考えられている」理由です。消防署の電球そのものを割って確かめた人はいません。
世界の電球メーカーは1924年、電球の寿命を1000時間に決める約束をした
電球の明るさと寿命をどう決めるかは、20世紀の電球の業界で、大きな問題になりました。メディアの研究者マルクス・クライェフスキ(Markus Krajewski)が、2014年に書いた記事によると、次のようなことがありました。
1924年12月23日、スイスのジュネーブに、世界の電球メーカーが集まりました。ドイツのオスラム、オランダのフィリップス、日本の東京電気などです。メーカーたちは、「フィーバス・カルテル」という協定(約束)を結びました。カルテルとは、会社どうしが競争をやめて、値段や作る量を取り決めることです。
この協定は、一般の電球の寿命を1000時間に決めました。それまでの電球は、1500〜2000時間もつのが普通でした。決まりより長持ちする電球を作った工場は、罰金を払わされました。
メーカー側は、寿命を短くする理由を、こう説明しました。「電流を上げたほうが、1ワットあたりの明るさが上がる」。これは、物理としては正しい面もあります。でもクライェフスキは、本当の目的は、電球をたくさん売ることだったと見ています。協定は1955年まで続く予定でしたが、1940年に無効になりました。
長持ちする電球が、よい電球だとは限らない
リバモアの電球は、よく「電球の寿命をわざと短くする商売」に反対する例として語られます。でも、話はそれほど単純ではありません。
4ワットの光では、部屋はほとんど照らせません。部屋を照らせるほど明るくするには、たくさんの電気を流す必要があります。リバモアの電球は、「よく光る、すぐれた電球」の例ではありません。「弱く光らせると長くもつ」ことを示す例だと考えるのが、記録に合った見方です。
電球が灯った時間が100万時間に届いた年は、資料によって2011年と2015年に分かれる
電球が灯った時間が「100万時間」に達した年も、資料によって違います。地元の委員会がお祝いをしたのは、2015年6月27日です。ところが、ギネスの2025年の記事は、2011年としています。
計算してみましょう。1年は、およそ8766時間です。1901年から110年後の2011年なら、約96万時間です。114年後の2015年なら、約99万9000時間で、ほぼ100万時間です。だから、委員会の日付のほうが計算に合います。有名な記録ほど、数字を自分で確かめてみる価値があります。
06まとめ
リバモアの消防署には、1901年から灯る電球が本当にあります。ただし、今は4ワットほどの弱い光です。また、1937年には約1週間、2013年にも約10時間消えました。
研究所が、同じ会社の古い電球を割ってみると、フィラメントは髪の毛ほどの太さの炭素の線でした。ガラスは二重で、中には特許の番号を書いた紙まで閉じ込められていました。
この電球は、2015年ごろに、灯った時間が100万時間に届きました。弱い光で静かに光り続けたことが、世界で一番長く灯っている電球になった理由の1つだと考えられています。
人に話すなら、こう言おう
アメリカの消防署に、1901年からついている電球があるんだって。でも今は常夜灯くらいの明るさしかないらしい。暗く光らせているから長持ちしている、という見方もあるんだよ。
英語で読む
The Light Bulb That Will Not Quit
英文をタップすると、その文の訳が出ます。
In a fire station in Livermore, California, a single light bulb hangs from the ceiling.カリフォルニア州リバモアの消防署で、1個の電球が天井からぶら下がっています。 It has been on since 1901.それは1901年からついています。 Guinness World Records calls it the longest burning light bulb.ギネス世界記録は、それを最も長く灯っている電球と呼んでいます。
A company in Shelby, Ohio, made the bulb in the late 1890s.オハイオ州シェルビーの会社が、1890年代の終わりにこの電球を作りました。 The glass was blown by hand, and the filament, the thin line that glows, is made of carbon.ガラスは手で吹いて作られ、フィラメント、つまり光る細い線は炭素でできています。 The owner of the town's power company gave it to the firefighters.町の電力会社の持ち主が、それを消防士たちに贈りました。 They kept it on day and night so they could see their fire engines.彼らは消防車が見えるように、昼も夜もそれをつけておきました。
But the bulb has gone dark a few times.でも、この電球は何度か消えたことがあります。 In 1937, it was off for about a week while the building was repaired.1937年には、建物の修理のあいだ約1週間消えていました。 In 2013, a power problem turned it off for about 10 hours.2013年には電源のトラブルで、約10時間消えていました。 People watching it on a web camera noticed first.ウェブカメラでそれを見ていた人たちが最初に気づきました。
Today the bulb uses only about 4 watts.今、この電球は約4ワットしか使っていません。 That is as weak as a night light.それは常夜灯くらいの弱さです。 Some people think this low power is one reason for its long life.この低い電力が長持ちの理由の一つだと考える人もいます。 A hotter filament gives more light, but it also wears out faster.熱いフィラメントほど光は強くなりますが、早くすり減りもします。
Scientists cannot test the real bulb, because it might break.科学者は本物の電球を調べることができません。こわれるかもしれないからです。 So a lab in Livermore opened a bulb of the same kind from the same company.そこでリバモアの研究所は、同じ会社の同じ種類の電球を開けてみました。 The filament was carbon, about as thick as a human hair.フィラメントは炭素で、人の髪の毛くらいの太さでした。 And inside the glass, they found a folded piece of paper with patent numbers on it.そしてガラスの中に、特許番号が書かれた折りたたまれた紙が見つかりました。
4択問題 Reading Quiz
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Q1What is this story mainly about?
この話は主に何についてのものですか。
正解:B A very old bulb that is still on today
第1段落で1901年からついている電球を紹介し、その後の段落もすべてこの電球の歴史と長生きの理由の話なので正解はB。Aの火事やCのエジソンは本文に出てこない。
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Q2How long was the bulb off in 2013?
2013年に電球はどのくらい消えていましたか。
正解:C About 10 hours
第3段落3文目に「2013年には電源のトラブルで、約10時間消えていた」とあるので正解はC。Aの約1週間は1937年の修理のときの話。
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Q3Why can't scientists test the real bulb?
なぜ科学者は本物の電球を調べられないのですか。
正解:A Because it might break
第5段落1文目に「こわれるかもしれないから」とあるので正解はA。Dの紙は、別の電球を開けたときに見つかったもので、秘密とは書かれていない。
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Q4In paragraph 4, the words "wears out" are closest in meaning to
第4段落の "wears out" に最も意味が近いのはどれですか。
正解:D gets used up
第4段落4文目で、熱いフィラメントは光が強いが「早く wears out する」と、長生きと反対の意味で使われているので正解はD。Aの「明るくなる」は同じ文の前半の内容で、wears out の意味ではない。
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Q5Which is true about the bulb?
この電球について正しいのはどれですか。
正解:C Its filament is made of carbon.
第2段落2文目に「フィラメントは炭素でできている」とあるので正解はC。Aは第4段落で約4ワットとあり、Bは第3段落で何度か消えたとあり、Dは第2段落でオハイオ州の会社が作ったとあるので誤り。
重要語 Key Words(タップで裏返る)
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bulb名詞電球
The bulb in my room is broken.
私の部屋の電球がこわれている。
💡 light bulb とも言う。もとは「球根」の意味で、形が似ているから。
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ceiling名詞天井
A fan hangs from the ceiling.
天井から扇風機がぶら下がっている。
💡 つづりは c-e-i。floor(床)とセットで覚える。
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filament名詞フィラメント(電球の中で光る細い線)
The filament glows when electricity goes through it.
電気が通ると、フィラメントは光る。
💡 ラテン語の filum(糸)から。file(書類をとじるひも)も同じ仲間の語。
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glow動詞(熱や光で)ぼうっと光る
The fire glowed in the dark.
暗やみの中で火がぼうっと光った。
💡 炎を上げずに光るイメージ。glowing(光っている)の形でもよく使う。
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power名詞電力、力
The storm cut the power to our town.
あらしで町の電気が止まった。
💡 power company は電力会社、power outage は停電。
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wear out句動詞すり減る、使われてだめになる
My shoes wore out after one year.
私のくつは1年ではきつぶれた。
💡 wear-wore-worn と変化する。worn out で「くたくたに疲れた」の意味にも。
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patent名詞特許
She got a patent for her new machine.
彼女は新しい機械で特許をとった。
💡 発明を一定期間守る権利。get a patent で「特許をとる」。
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notice動詞気づく
Did you notice the new sign?
新しい看板に気づいた?
💡 名詞では「お知らせ、掲示」の意味もある。
SOURCES出典・ウラ取り
この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 23件)。
- Longest burning light bulb(Guinness World Records)guinnessworldrecords.com
- On the bright side, famous light bulb still shining after over 100 years in fire station(Guinness World Records, 2025)guinnessworldrecords.com
- Facts(Livermore Centennial Light Bulb Committee)centennialbulb.org
- Mills, B. E., Chames, J. M. & Johnsen, H. A. (2015) Images for possible inclusion in book on Livermore Light Bulb(Sandia National Laboratories, Livermore)centennialbulb.org
- Shelby Bulbs Annapolis Tests(Livermore Centennial Light Bulb Committee)centennialbulb.org
- Krajewski, M. (2014) The Great Lightbulb Conspiracy, IEEE Spectrumspectrum.ieee.org
公式ページで見てみよう
- Livermore Centennial Light Bulb(電球を見守る委員会の公式サイト。ライブカメラあり)centennialbulb.org
文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。
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