ピーナッツの実は、花のあとに伸びる柄が自分で土にもぐってできる
定番雑学の"その先"No.207

ピーナッツの実は、花のあとに伸びる柄が自分で土にもぐってできる

ピーナッツの花の柄は、自分で土にもぐる。

ホントTRUE

この判定の対象「ピーナッツはナッツではなく豆だ」

うなり度 読む時間9分 出典8件 確認した事実31件
もくじ
  1. ピーナッツは「木の実」ではなく、マメ科の植物の豆
  2. ピーナッツの花は地上で咲き、しぼんだあとに伸びる柄が土にもぐる
  3. ピーナッツのさやは、暗さと土にこすれる刺激の両方がそろうとふくらむ
  4. 今のピーナッツは、南アメリカで2種類の野生の豆がかけ合わさって生まれた
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

落花生(ピーナッツ)の黄色い花は、明け方に開いて、その日の夕方にはしぼみます。花が咲き始めるのは、種をまいてから40〜50日ほどたったころです。

しぼんだ花の付け根からは、細い柄が下へ向かって伸びていきます。柄はそのまま土の中にもぐります。そして、土の中で柄の先がふくらんで、殻つきのピーナッツになるのです。千葉県によると、「落花生」という名前は、花が落ちて豆が生まれることからついています。

ピーナッツは「ナッツ」と呼ばれますが、植物の分類ではマメ科の豆です。研究では、次のことも分かっています。ピーナッツの柄の先は、土の中の「暗さ」と「土にこすれる刺激」の両方がそろわないと、うまくふくらまないのです。

この記事では、まずピーナッツが木の実ではなく豆であることを確かめます。次に、花のあとに伸びる柄が土にもぐるしくみと、ガラスの管を使った実験を紹介します。最後に、ピーナッツが南アメリカで2種類の野生の豆から生まれた歴史を見ます。

01ピーナッツは「木の実」ではなく、マメ科の植物の豆

ノースカロライナ州立大学の園芸の解説ページは、ピーナッツを「マメ科の植物で、本当のナッツではない」と書いています。ピーナッツの殻は、マメ科の植物の実である「さや」に当たります。

食べ物の表示のきまりでも、ピーナッツは木の実と分けられています。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、表示しなければならない主なアレルギー物質を9つ挙げています。その中で、「ピーナッツ」と「木の実(ツリーナッツ)」は別々に数えられています。FDA は、木の実の例として、アーモンド、ペカン、クルミを挙げています。

ピーナッツの花は、自分の花粉で受粉します。変わっているのは、受粉したあとに起きることです。

02ピーナッツの花は地上で咲き、しぼんだあとに伸びる柄が土にもぐる

ピーナッツのさやは、花の子房が育ったものです。子房とは、めしべの根もとにあるふくらみで、中に種のもとが入っています。ピーナッツでは、この子房が土の中まで運ばれてから育ちます。

2019年に出た研究のまとめ(総説)によると、流れは次のとおりです。受精したあと、種の赤ちゃんに当たる胚は、いったん育つのを止めます。その間に、子房のすぐ下の細胞が盛んに分かれて増えます。こうして、子房を先につけた細い柄が伸びていきます。日本ではこの柄を「子房柄(しぼうへい)」と呼びます。

受精から1週間ほどたつと、子房柄は重力を感じて、下へ曲がるようになります。受精していない柄は、重力に反応しません。

子房柄の先は、まず土にまっすぐ入ります。そのあと、土の中で向きを横に変えます。柄が伸びるのは、胚を土の中に埋めたところまでです。受精のあと止まっていた胚が、そこでまた育ち始めます。そして子房がふくらんで、さやになります。

子房柄のつくりは茎に近いものです。でも土に入ると、根のようにふるまいます。土の中の子房柄には、根毛(根の表面に生える細い毛)に似た毛がたくさん生えます。この毛で、土から水や養分を吸うのです。

花のあと、子房柄が下へ伸びて土にもぐる。土の中で先が横を向き、さやがふくらむ。
花のあと、子房柄が下へ伸びて土にもぐる。土の中で先が横を向き、さやがふくらむ。

03ピーナッツのさやは、暗さと土にこすれる刺激の両方がそろうとふくらむ

子房柄が土にもぐれないと、どうなるのでしょう。2019年の総説によると、胚は育たなくなり、硬い緑色のさやになってしまいます。ピーナッツの実りは、子房柄が土に入れるかどうかにかかっているのです。

では、土の中の何が、さやをふくらませる合図になっているのでしょう。中国の広東省農業科学院などの研究チームが、ガラスの管を使って確かめました。実験は2022年の春に畑で行い、2025年に論文として発表しています。

研究チームは、花が咲いて8日目の子房柄を選び、先をガラスの管に差しこみました。管は次の4組に分けました。

  • ①透明な管(暗くもなく、こすれる物もない)
  • ②アルミはくで包んだ、真っ暗な管
  • ③透明なガラス玉を詰めた、明るい管
  • ④アルミはくで包み、ガラス玉も詰めた管

ガラス玉は、柄の先に土のような「こすれる刺激」を与えるためのものです。透明なので、③の管には光が入ります。どの組も同じものを3つずつ用意し、20日後に子房柄を調べました。

結果は、はっきり分かれました。柄の先がいちばん大きくふくらんだのは、暗くてガラス玉もある④の組でした。①は、先が全くふくらみませんでした。暗さだけの②と、こすれる刺激だけの③は、少し太くなっただけで、育たずに止まりました。

同じ論文は、昔の研究も紹介しています。暗い所では、子房柄を伸ばしている細胞の分裂が止まります。また1976年には、子房柄の先を毎日指で触ると、さやができ始めたという報告がありました。

土なら何でもよいわけではありません。2019年の総説によると、さやは土の中ではできますが、水の中ではできません。また、子房柄が入るあたりの土にカルシウムが足りないと、さやがふくらみにくくなります。

04今のピーナッツは、南アメリカで2種類の野生の豆がかけ合わさって生まれた

畑で育てるピーナッツには、2種類の親がいます。2025年の論文によると、栽培ピーナッツは、2種類の野生のピーナッツの仲間がかけ合わさって生まれました。アラキス・デュラネンシス(Arachis duranensis)と、アラキス・イパエンシス(Arachis ipaënsis)です。かけ合わせが起きたのは1回だけで、1万年前より新しい出来事だと考えられています。

生まれた場所は、南アメリカのアンデス山脈の東側です。ボリビアの南東部から、アルゼンチンの北西部にかけての地域です。

このうちイパエンシスは、ボリビアのビジャモンテスという町の近くの1か所でしか見つかっていません。その場所は、イパエンシスに近い仲間が生える地域から離れています。そのため研究者は、大昔に人がイパエンシスをそこへ運んだと考えています。人が2種類の野生の豆を近くに持ちこみ、そこで土地のハチがたまたま2種類の間で花粉を運んだ。研究者は、こうした筋書きを考えています。

栽培されたピーナッツだとはっきり分かる最も古いものは、ペルーのケブラダ・ティエラ・ブランカという約5000年前の遺跡から見つかっています。ペルーのモチェ文化の王の墓(シパン)からは、ピーナッツのさやの形をした金と銀の首飾りも出ています。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

花も実も土の中にある豆もあるが、ピーナッツは花が地上で実が地下

土の中に実をつける性質を、「地下結実性(ちかけつじつせい)」と呼びます。静岡県立大学の薬草園の解説も、落花生をこの性質の例として紹介しています。2019年の総説によると、多くの植物は地上に実をつけます。土の中に実をつける植物は少数です。

その少数派の中でも、ピーナッツは変わっています。たとえばビグナ・スブテラネア(Vigna subterranea)という植物は、地下の茎に花を咲かせます。花は開かないまま自分の花粉で受粉し、そのまま土の中で実をつけます。ピーナッツは違います。花は地上で咲き、実だけが地下にできます。地上の子房を土の中まで運ぶために、子房柄という特別な柄があるのです。

ピーナッツの子房柄は、でんぷんの粒が沈む向きで重力を知る

植物の根は、細胞の中のでんぷんの粒が下に沈むことで、どちらが下かを知ります。このでんぷんの粒を「アミロプラスト」と呼びます。2019年の総説によると、ピーナッツの子房柄も同じしくみを使っています。粒があるのは、柄の先から2〜8mmの部分です。

受精していない柄には、この粒が見られません。重力にも反応しません。研究者が植物ホルモンを与えて、柄の中のでんぷんをなくしました。すると柄は、重力にほとんど反応しなくなりました。

成長をうながすホルモン(オーキシン)の動きも、普通の茎とは逆です。茎を横に倒すと、普通はオーキシンが下側にたまって、茎は上へ曲がります。ところがピーナッツの子房柄を横にすると、オーキシンは上側にたまります。この上側と下側のオーキシンの差によって、柄は下へ曲がります。

地上にある子房柄には、種の成長を止めるホルモン(アブシシン酸)がたくさんあります。このホルモンは、柄が土に入ると減っていきます。総説によると、暗い土の中でアブシシン酸が減ることが、胚がまた育ち始める合図になると考えられています。

土の中に実をつける性質は、乾いた土地に合わせて生まれたという仮説がある

ピーナッツの仲間(ラッカセイ属)は84種あり、すべて南アメリカにだけ生えています。2025年に Annals of Botany に出た論文は、この仲間の DNA を調べて、家系図を作りました。

論文の仮説では、ラッカセイ属は約1500万年前に、近い仲間の植物から分かれました。場所は、今のブラジル北東部の乾いた地域です。土の中に実をつける性質も、そのころ生まれたと考えられています。論文は、この性質が、土地が乾いていったことへの適応だったのかもしれないと書いています。

「自分で種をまく」性質のおかげで、ピーナッツの祖先がとても正確に分かった

2025年の The Plant Journal の論文は、ピーナッツの野生の仲間を「自分で種をまく」植物だと説明しています。花は自分の花粉で受粉し、実を土の中につけるからです。そのため野生の仲間は、同じ場所で何千年も、ほかと混ざらない群れとして残ってきました。

研究チームは、種の保存施設などで保存されている野生の株のほぼすべてと、栽培ピーナッツの DNA を、1600か所以上で比べました。いちばん近い親戚は、アルゼンチンのサルタ州リオ・セコのデュラネンシスと、K 30076 という番号のイパエンシスの株でした。論文は、このように祖先の系統がとても正確に分かるのは、ピーナッツの仲間の変わった生き方のおかげだ、と書いています。

用語ミニ整理

  • 子房柄(しぼうへい):ピーナッツで、花のあとに伸びて子房を土の中へ運ぶ柄
  • 地下結実性:土の中に実をつける性質
  • アミロプラスト:でんぷんをためた粒。下に沈んで、植物に重力の向きを伝える
  • さや:マメ科の植物の実。ピーナッツの殻がこれに当たる

05まとめ

ピーナッツは木の実ではなく、マメ科の植物の豆です。花は地上で咲き、受粉のあとに伸びる子房柄が、子房を土の中まで運びます。

さやがふくらむには、土の中の暗さと、土にこすれる刺激の両方が必要でした。ガラスの管の実験で、柄の先がいちばん大きくふくらんだのは、暗くてガラス玉も詰めた管でした。ほかの3つの組では、どれも育ちが止まりました。次に殻つきのピーナッツを割るときは、思い出してください。その殻は、土の中で暗さと土の刺激を受けてふくらんだ「さや」なのです。

人に話すなら、こう言おう

ピーナッツってナッツじゃなくて豆なんだって。しかも花が咲いたあと、花の付け根から柄が伸びて自分で土にもぐるらしいよ。暗くて土にこすれる場所じゃないと、さやがうまくふくらまないんだって。
READ IN ENGLISH

英語で読む

The Bean That Plants Itself

CEFR A2235 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

A peanut flower opens early in the morning.ピーナッツの花は、朝早くに開きます。 By evening, it begins to wilt.夕方には、しぼみ始めます。 A thin stalk grows down from the base of the flower and pushes into the soil.すると、花の付け根から細い柄が下へ伸びて、土の中へもぐっていきます。 The peanut grows at the end of this stalk, under the ground.ピーナッツは、この柄の先で、地面の下で育ちます。

Many people think peanuts are nuts, like almonds or walnuts.多くの人は、ピーナッツをアーモンドやクルミのようなナッツだと思っています。 But a peanut is a legume, a plant in the bean family.でもピーナッツは、豆の仲間の植物、つまりマメ科の植物です。 Its shell is a pod, the fruit of a bean plant.ピーナッツの殻は、豆の植物の実である「さや」です。

Why must the stalk go into the soil?なぜ柄は土の中に入らなければならないのでしょう。 In a study published in 2025, scientists in China did a simple test.2025年に発表された研究で、中国の科学者たちが簡単な実験をしました。 They put the tips of young stalks into glass tubes.彼らは、若い柄の先をガラスの管に入れました。 Some tubes were clear, and some were covered with foil to make them dark.透明な管もあれば、暗くするためにアルミはくで包んだ管もありました。 Some tubes were also filled with glass beads, so the tips could rub against something, like soil.ガラス玉をつめた管もあり、柄の先が土のように何かにこすれるようにしました。 After 20 days, the tips in the dark tubes with beads grew the most, and the other tips stopped growing.20日後、いちばん大きく育ったのはガラス玉の入った暗い管の先で、ほかの先は育つのが止まっていました。

The peanut plant comes from South America.ピーナッツは南アメリカから来た植物です。 It was born when two kinds of wild peanut plants mixed, less than 10,000 years ago.ピーナッツは、1万年前より最近に、2種類の野生のピーナッツの仲間がかけ合わさって生まれました。 One of these wild plants has been found in only one place in Bolivia.その野生の植物のうち1つは、ボリビアの1か所でしか見つかっていません。 Scientists think early people carried it there.科学者は、大昔の人がそこへ運んだと考えています。 Then a bee may have carried pollen between the two plants.そして、ハチが2つの植物の間で花粉を運んだのかもしれません。

Next time you open a peanut shell, think about where it grew.次にピーナッツの殻を割るときは、それがどこで育ったかを考えてみてください。 It is a bean pod that grew in the dark soil.それは、暗い土の中で育った豆のさやなのです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How long did the scientists wait before they checked the peanut stalks in the tubes?

    科学者たちは、管の中のピーナッツの柄を調べるまでどれくらい待ちましたか。

  3. Q3Why did the scientists put glass beads in some of the tubes?

    科学者たちは、なぜ一部の管にガラス玉を入れたのですか。

  4. Q4In paragraph 1, the word "wilt" is closest in meaning to ...

    第1段落の "wilt" という語に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話の内容と合っているのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • legume名詞
    マメ科の植物、豆類

    Beans and peas are legumes.

    インゲンやエンドウはマメ科の植物だ。

    💡 発音は「レギューム」。栄養の話でもよく出る語。

  • pod名詞
    (豆の)さや

    There were four green beans in the pod.

    そのさやには緑の豆が4つ入っていた。

    💡 pea pod(エンドウのさや)のように使う。

  • soil名詞
    土、土壌

    This plant likes dry soil.

    この植物は乾いた土を好む。

    💡 ground は「地面」、soil は植物が育つ「土」そのもの。

  • stalk名詞
    (植物の)柄、茎

    The flower stood on a long stalk.

    その花は長い柄の上に咲いていた。

    💡 l は発音しない(「ストーク」)。

  • wilt動詞
    しぼむ、しおれる

    The flowers wilted in the hot sun.

    花は暑い日差しでしおれた。

    💡 植物が水不足などでぐったりするときに使う。

  • foil名詞
    (アルミなどの)はく

    Cover the dish with foil and put it in the oven.

    皿をアルミはくでおおって、オーブンに入れなさい。

    💡 aluminum foil で「アルミホイル」。アメリカつづりは aluminum。

  • bead名詞
    ビーズ、小さな玉

    She made a bracelet with glass beads.

    彼女はガラス玉でブレスレットを作った。

    💡 beads of sweat(玉のような汗)のようにも使う。

  • pollen名詞
    花粉

    Bees carry pollen from flower to flower.

    ハチは花から花へ花粉を運ぶ。

    💡 pollen allergy で「花粉症」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 31件)。

  1. Kumar, R. et al. (2019) Peg Biology: Deciphering the Molecular Regulations Involved During Peanut Peg Development, Frontiers in Plant Science 10:1289doi.org
  2. Huang, L. et al. (2025) Transcriptomic insights into the synergistic effects of darkness and mechanical stimulation on peanut pod development, BMC Plant Biology 25:806doi.org
  3. de Blas, F. J. et al. (2025) A single hybrid origin of cultivated peanut, The Plant Journal 124:e70619doi.org
  4. Inglis, P. W. et al. (2025) A slow march along the South American Dry Diagonal: a multi-gene molecular phylogeny and biogeographical history of the peanut genus, Arachis L., Annals of Botany 136:795–820doi.org
  5. Arachis hypogaea(North Carolina Extension Gardener Plant Toolbox、ノースカロライナ州立大学)plants.ces.ncsu.edu
  6. 旬鮮図鑑 落花生(千葉県)pref.chiba.lg.jp
  7. 薬草園歳時記(8)落花生(静岡県立大学)u-shizuoka-ken.ac.jp
  8. Food Allergies(アメリカ食品医薬品局 FDA)fda.gov

公式ページで見てみよう

文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

NEXT TRIVIAこの雑学にうなった人は、これにもうなる