日本の国花を決めた法律はないが、菊の紋は国旗と同じく商標登録できない
定番雑学の"その先"No.214

日本の国花を決めた法律はないが、菊の紋は国旗と同じく商標登録できない

日本の法令を「国花」で検索しても、0件。

うなり度 読む時間9分 出典7件 確認した事実27件
もくじ
  1. 国旗と国歌は1999年に法律で決まったが、国花を決めた法律はない
  2. 菊の紋は、明治時代には使うことが禁じられていた
  3. 菊の紋は、商標法で国旗と並んで「登録できないもの」に入っている
  4. 外国にある大使館の玄関には、国章の代わりに菊の紋がかかげられている
  5. 桜は、国が贈る褒章の模様に使われている
  6. 深掘り講義
  7. まとめ
  8. 英語で読む(A2・4択5問)
  9. 出典・ウラ取り

1999年7月1日、衆議院の委員会で、国旗と国歌を法律で決めるかどうかが話し合われていました。そこで、佐々木秀典という議員が、国花というものもある、日本の国の花は何だろう、と問いかけました。

佐々木議員は続けました。よく言われるのは、菊か桜か、だ。国旗と国歌を法律にするなら、国の花も菊か桜か決めよう、という話が出てもおかしくない。でも、そんな法律はいらない。みんながそう思っていればいいことだ。

国旗と国歌は、この年の8月に法律で決まりました。でも、国の花(国花)を決めた法律は、今もありません。日本の法令(法律や、政府が決めるルール)を集めた国のデータベース「e-Gov法令検索」で、本文を「国花」という言葉で検索してみました。結果は0件でした(2026年10月11日)。

ところが、法令の中をよく見ると、菊と桜はちゃんと出てきます。菊の紋は、商標法という法律で、国旗と並べて特別に扱われています。桜は、国が贈る「褒章(ほうしょう)」の模様として、決まりに書かれています。

この記事では、まず国旗と国歌が法律で決まったいきさつを見ます。次に、菊の紋が法律や国会でどう扱われてきたかを確かめます。最後に、桜が国の印として使われている場所を紹介します。

01国旗と国歌は1999年に法律で決まったが、国花を決めた法律はない

1999年8月13日、「国旗及び国歌に関する法律」ができました。本文は、たった2つの条です。1つ目は「国旗は、日章旗とする」。2つ目は「国歌は、君が代とする」。日の丸の形と、君が代の歌詞と楽譜が、表や図として付いています。

法律にする前から、日の丸と君が代は、多くの人に受け入れられていました。審議の中で、当時の官房長官は、1974年12月の政府の世論調査を紹介しています。「日の丸は国旗にふさわしい」と答えた人は84%、「君が代は国歌にふさわしい」と答えた人は77%でした。

国旗についての法律は、その後も増えています。2026年7月には、人に強い不快感を与えるやり方で、人前で国旗を傷つけたり、取り去ったり、汚したりすることを罰する法律ができました。罰は、2年以下の拘禁刑(刑務所などに入れる刑)か、20万円以下の罰金です。

一方、国の花については、そうした法律は1つもありません。国旗、国歌と並べて語られることはあっても、今の国の法令の中には、「国花」という言葉そのものが出てこないのです。

02菊の紋は、明治時代には使うことが禁じられていた

菊の花の形をした紋(菊の御紋章)は、皇室(天皇の一家)の紋として知られています。1974年の国会で、宮内庁(皇室の仕事をする役所)の担当者は、菊の御紋章を皇室の伝統的な紋章として大切にしている、と答えています。

1979年の国会では、宮内庁の次長が、菊の紋の歴史を説明しました。明治元年(1868年)3月の政府の命令などで、ふつうの人が菊の紋を使うことは禁じられていた。でも、今の憲法になってからは、その決まりは生きていない。今は、ふつうの人が使うことを止める法律はない。

ただ、宮内庁は、菊の紋がもうけや宣伝に使われるのはよくないと、国会で説明してきました。1979年の次長は、そういう使い方を見つけたら、使った人と話し合って、なるべくやめてもらっていると答えています。1980年の国会で、宮内庁は、皇室のお祝いの記念メダルなどを作る業者に、3つのことをお願いしていると説明しました。菊の御紋章を使わないこと、皇室の方々の写真や絵(ご肖像)を使わないこと、宣伝をしすぎないことです。ただし、これは法律の決まりではなく、業者に協力を求めるものです。

03菊の紋は、商標法で国旗と並んで「登録できないもの」に入っている

それでも、菊の紋がはっきり法律に出てくる場所があります。1959年にできた商標法です。商標とは、会社が自分の商品の目印にするマークのことです。国に登録すると、ほかの会社はそのマークを勝手に使えなくなります。

商標法の第4条は、登録できない商標を並べています。その1つ目が、「国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標」です。つまり、菊の紋とそっくりなマーク、または似たマークは、日本の国旗と同じように、だれも自分の商標として登録できません。

ここで大事なのは、「使うこと」と「登録すること」の違いです。宮内庁の説明では、菊の紋を使うこと自体を止める法律はありません。でも、菊の紋を自分の会社だけの目印として、国に登録することはできません。

菊と桜は、どちらも「日本の花」として語られてきた。でも、国花として法律で決められたことはない。
菊と桜は、どちらも「日本の花」として語られてきた。でも、国花として法律で決められたことはない。

04外国にある大使館の玄関には、国章の代わりに菊の紋がかかげられている

日本の大使館など、外国にある国の役所(在外公館)の多くは、玄関に菊の紋をかかげています。1999年7月2日、国会でこのことを聞かれた外務大臣は、こう答えました。

日本には、法律で決めた国章(国の紋章)はない。菊の御紋章は皇室の紋章で、国章ではない。でも、大使館の門に自分の国を示す紋章をかかげるのは、世界の習わしだ。日本は前から菊の紋を使ってきたので、外国にもよく知られている。だから、菊の紋を使っている。

1979年には、内閣法制局(法律の解釈を担当する役所)の長官も、同じ問題に答えています。菊の御紋章は、皇室の紋章だと理解している。でも、天皇は国の象徴なので、国の紋章として大使館に使うことは、まったく問題ない。

05桜は、国が贈る褒章の模様に使われている

では、桜はどうでしょう。桜も、法令の中に何度も出てきます。

たとえば褒章です。褒章は、自分の危険をかえりみず人の命を救った人や、仕事にはげんでみんなの手本になる人などに、国が贈るメダル(記章)です。もとになる決まりは、1881年(明治14年)の褒章条例です。この条例は、褒章の形を「桜花紋」(桜の花の模様)の丸い形としています。リボンは、褒章の種類によって、紅・緑・黄・紫・藍・紺の6色があります。

褒章条例には、同じ褒章を何度ももらう人についての決まりもあります。そのたびに、リボンに銀の飾りを1つ加えます。銀の飾りが5つたまるごとに、金の飾り1つに取り替えます。

2003年の内閣府令(内閣府が出す決まり)は、形をもっと細かく決めています。表の真ん中に「褒章」の文字を書き、桜の花の模様で飾る。そして、取り替えた金色の飾りの表も、桜で飾る、としています。

自衛隊の決まりにも、桜が出てきます。自衛隊法施行規則では、幹部自衛官の階級章などに「桜星」という飾りが使われています。

古い決まりでは、菊と桜が一緒に描かれた例もあります。1915年(大正4年)の「大礼記念章」(天皇の即位の儀式を記念する記章)の決まりです。記章の表の上には金の菊の紋を、両側には桜と橘(たちばな)の枝を描く、と書いてあります。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

「法律で決める」と「みんながそう思っている」は、どう違うのか

国のシンボルには、2つの決まり方があります。1つは、法律で決める方法です。もう1つは、長く使われるうちに、みんながそう思うようになる方法です。日の丸と君が代は、1999年に法律ができる前から、国旗・国歌として広く受け入れられていました。1974年の世論調査の数字が、そのことを示しています。

法律で決めると、何が変わるのでしょう。まず、形がはっきりします。国旗国歌法は、日の丸の縦と横の比、赤い丸の大きさや色まで決めました。次に、ほかの法律が、その決まりを土台に使えるようになります。2026年の国旗を傷つけることを罰する法律は、「国旗」とは、国旗国歌法が決めた国旗として使われている物だ、と書いています。

一方で、1999年に佐々木議員が言ったように、法律で決めなくても、みんなが大切にしていれば十分だ、という考え方もあります。国花は、今も法律では決まっていません。菊と桜の両方が、「日本の花」として語られています。

菊の紋の扱いは、「使うのを禁止」から「登録できない」に変わった

菊の紋の法律上の扱いは、時代によって大きく変わりました。宮内庁の説明によると、明治時代には、ふつうの人が使うことそのものが禁じられていました。今の憲法になってからは、その決まりはなくなり、使うことを止める法律はありません。

それでも、1959年の商標法は、菊の紋を国旗や勲章と同じグループに入れ、商標として登録できないものにしました。商標を登録した人は、そのマークを自分の商品に使う権利を独り占めできます(商標法25条)。国旗や菊の紋は、その独り占めの対象にできない、ということです。

宮内庁の「お願い」は、法律の決まりとは違う

菊の紋について、宮内庁は1980年の国会で、業者に「指導」をして「協力を求めている」と説明しました。同時に、こうした記念メダルを作って売ることを規制する法令は今はない、とも言っています。1979年の宮内庁次長も、ふつうの人が菊の紋を使うことに、法律の上での規制はないと答えていました。では、法令がないのに、役所がお願いをするとは、どういうことでしょう。

1993年にできた行政手続法という法律は、役所が特定の人や会社に「こうしてください」「これはやめてください」と求めることを「行政指導」と呼んでいます。そして、行政指導は、相手が自分から協力してくれることによってだけ実現するものだ、と書いています。相手が従わなかったからといって、役所がその相手を不利に扱ってはいけない、とも決めています。

法律の決まりの中には、守らない人に罰を与えるものもあります。でも役所のお願い(行政指導)では、相手が従わなくても、それを理由に不利に扱うことはできません。菊の紋の場合、「使ってはいけない」という法律は今はなく、宮内庁は話し合いとお願いで、使い方を整えようとしている、ということになります。

国章がない国の、紋章の使い分け

外務大臣の答弁によると、日本には法律で決めた国章がありません。その代わりに、大使館などでは、皇室の紋である菊が「国を示す紋章」の役目をしています。1979年に内閣法制局長官は、天皇が国の象徴だから、それで問題ないと説明しました。

つまり、日本で法律が「これが国の印だ」と決めているのは、国旗と国歌です。菊は皇室の紋として、桜は褒章や自衛隊の飾りとして、それぞれ別の決まりの中で使われています。国花という1つの決まりはなく、2つの花が、それぞれの場面で使われているのが今の姿です。

06まとめ

日本の国花を決めた法律はありません。国の法令のデータベースを「国花」で検索しても、0件です。1999年に国旗と国歌が法律で決まったときも、国の花は決められませんでした。

それでも、菊と桜は法令の中に出てきます。菊の紋は、商標法で国旗と並べて「商標に登録できないもの」とされ、外国にある大使館の玄関にもかかげられています。桜は、国が贈る褒章の模様です。次に桜と菊を見かけたら、「どっちも、法律で決めた国の花じゃないんだよ」と話してみてください。

人に話すなら、こう言おう

日本の国花って、法律では決まってないんだって。国の法令を「国花」で検索しても0件。でも菊の紋は、国旗と同じで商標に登録できないって法律に書いてあるらしいよ。
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英語で読む

No Law Chose Japan's Flower

CEFR A2229 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

Many people say that Japan's national flower is the cherry blossom or the chrysanthemum.日本の国花は桜か菊だ、と言う人はたくさんいます。 But no Japanese law says so.でも、そう決めた日本の法律はありません。 In October 2026, we searched Japan's official database of laws for the words "national flower."2026年10月、私たちは日本の法令の公式データベースで「国花」という言葉を検索しました。 There were zero results.結果は0件でした。

In 1999, Japan made a law about its national flag and its national anthem.1999年、日本は国旗と国歌についての法律を作りました。 During the talks in the Diet, one lawmaker asked, "What is Japan's national flower?"国会での話し合いの中で、ある議員が「日本の国の花は何でしょう」とたずねました。 He said that people often answer the chrysanthemum or the cherry blossom.議員は、よく返ってくる答えは菊か桜だ、と言いました。 But he did not think that Japan needed a law for its flower.でも議員は、国の花のための法律が必要だとは考えていませんでした。

Still, the chrysanthemum appears in Japanese law.それでも、菊は日本の法律に出てきます。 A chrysanthemum crest is the crest of the Imperial family.菊の紋は、皇室の紋です。 Under the Trademark Act, no one can register a mark like this crest as a trademark.商標法のもとでは、この紋に似たマークを商標として登録することは、だれにもできません。 The same rule protects the national flag.同じ決まりが、国旗も守っています。 Many Japanese embassies in other countries also show this crest at their front doors.外国にある日本の大使館の多くも、玄関にこの紋をかかげています。

The cherry blossom appears in the rules, too.桜も、決まりの中に出てきます。 Japan gives Medals of Honor to people who saved lives or worked hard and set a good example for others.日本は、人の命を救った人や、仕事にはげんでみんなの手本になった人に、褒章を贈っています。 A rule from 1881 says that these medals have a cherry blossom design.1881年の決まりに、これらの褒章には桜の模様がある、と書かれています。

So both flowers work as symbols of Japan in different places.つまり、2つの花はどちらも、別々の場所で日本のシンボルとして使われています。 But neither of them is the national flower by law.でも、どちらも法律で決まった国花ではありません。 Next time you see cherry blossoms, you can tell your friends that no Japanese law today names them as Japan's flower.今度桜を見たら、今の日本の法律には桜を日本の花と決めたものはないんだよ、と友達に教えてあげられます。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How many results did the search for "national flower" find?

    「国花」の検索では、何件の結果が見つかりましたか。

  3. Q3What does the Trademark Act say about the chrysanthemum crest?

    商標法は菊の紋について何と言っていますか。

  4. Q4In paragraph 3, the word "crest" is closest in meaning to

    第3段落の crest という語に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    話の内容について正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • national形容詞
    国の、国民の

    Soccer is a national sport in Brazil.

    サッカーはブラジルの国民的なスポーツだ。

    💡 nation(国)の形容詞。national flag(国旗)、national anthem(国歌)。

  • chrysanthemum名詞
    菊

    My grandmother grows yellow chrysanthemums in autumn.

    祖母は秋に黄色い菊を育てている。

    💡 発音は「クリサンセマム」。長いので mum と短く言うこともある。

  • database名詞
    データベース

    The library has a database of old newspapers.

    その図書館には古い新聞のデータベースがある。

    💡 data(データ)+ base(基地)。search a database で「データベースを検索する」。

  • crest名詞
    紋章、家紋

    The old family put its crest on the gate.

    その古い家は、門に家紋をつけた。

    💡 鳥のとさかや、波・山のてっぺんの意味もある。

  • register動詞
    登録する

    You need to register for the class by Friday.

    金曜日までにその授業に登録する必要がある。

    💡 名詞は registration(登録)。cash register は「レジ」。

  • trademark名詞
    商標

    The company's trademark is a small red bird.

    その会社の商標は小さな赤い鳥だ。

    💡 trade(商売)+ mark(印)。商品につける会社の目印のこと。

  • embassy名詞
    大使館

    She went to the embassy to get a visa.

    彼女はビザをもらうために大使館へ行った。

    💡 ambassador(大使)と一緒に覚える。

  • medal名詞
    メダル、記章

    He won a gold medal in swimming.

    彼は水泳で金メダルを取った。

    💡 発音は「メダル」。win a medal で「メダルを取る」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 27件)。

  1. 国旗及び国歌に関する法律(平成11年法律第127号)(e-Gov 法令検索)laws.e-gov.go.jp
  2. 商標法(昭和34年法律第127号)第4条(e-Gov 法令検索)laws.e-gov.go.jp
  3. 褒章条例(明治14年太政官布告第63号)(e-Gov 法令検索)laws.e-gov.go.jp
  4. 褒章の制式及び形状を定める内閣府令(平成15年内閣府令第55号)(e-Gov 法令検索)laws.e-gov.go.jp
  5. 衆議院内閣委員会 1999年7月1日 佐々木秀典委員の発言(国会会議録検索システム)kokkai.ndl.go.jp
  6. 衆議院外務委員会 1999年7月2日 高村正彦外務大臣の答弁(国会会議録検索システム)kokkai.ndl.go.jp
  7. 参議院内閣委員会 1979年5月8日 宮内庁次長の答弁(国会会議録検索システム)kokkai.ndl.go.jp

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