英語の nickname は、もともと「an ekename」だった
言葉と語源No.109

英語の nickname は、もともと「an ekename」だった

n が、となりの単語へ引っこした。

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もくじ
  1. 英語の a と an の使い分けのせいで、an の n がどちらの単語のものか聞き分けにくくなる
  2. エプロンは、もとは napron で、頭の n が前の a にくっついて an apron になった
  3. 審判の umpire とヘビの adder も、頭の n が前の a にくっついて消えた
  4. イモリの newt と「今回だけ」という意味の nonce は、前の言葉の n が頭にくっついてできた
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

「an ekename」と、声に出して言ってみてください。「アン・イークネーム」。少し速く言うと「アネークネーム」です。

では、「a nekename」はどうでしょう。「ア・ネークネーム」。これも速く言うと「アネークネーム」。耳で聞くと、ほとんど区別がつきません。

この聞き間違いから生まれたのが、英語の nickname(ニックネーム)です。もとの言葉は ekename。「eke(つけ足しの)+ name(名前)」で、本名につけ足すもう一つの名前、という意味でした。

ところが、an ekename の n が、後ろの単語の頭に移ってしまいました。そして a nekename になり、のちに nickname になったのです。英語には、これと同じように、n がとなりの単語に移ってできた言葉が、ほかにもいくつもあります。

この記事では、まず nickname ができたしくみを説明します。次に、反対に頭の n をなくした apron(エプロン)や umpire(審判)、頭に n がついた newt(イモリ)などを紹介します。

01英語の a と an の使い分けのせいで、an の n がどちらの単語のものか聞き分けにくくなる

英語では、母音(ア・イ・ウ・エ・オのような音)で始まる単語の前には、a ではなく an を使います。an apple、an egg のようにです。

このルールのせいで、an の n は、後ろの単語にくっついて聞こえやすくなります。「アン・アップル」ではなく「アナップル」と聞こえるのと同じです。耳だけで言葉を覚えた人には、どこで単語が切れるのかが分かりにくいのです。

Dictionary.com によると、nickname は1400〜50年ごろの英語にある nekename から来ています。もとは ekename で、an ekename というまとまりが a nekename と受け取られた、と説明しています。

eke という言葉は、今の英語ではあまり使いません。アメリカン・ヘリテージ辞典は、ekename の eke を「追加、つけ足し」という意味の古い言葉だとしています。つまり nickname は、もともと「追加の名前」でした。

02エプロンは、もとは napron で、頭の n が前の a にくっついて an apron になった

n が移る向きが、nickname と反対の言葉もあります。単語の頭にあった n が前の a にくっつき、a が an になってしまうパターンです。

その代表が apron(エプロン)です。Dictionary.com によると、apron は1275〜1325年ごろの英語では napron でした。a napron(ア・ナプロン)が、an apron(アン・エプロン)と取り違えられたのです。

napron のもとは、中世のフランス語 naperon です。nape は「テーブルクロス」。そこに「小さい」を表す語尾がついて、「小さな布」という意味になりました。さらにさかのぼると、ラテン語の mappa(ナプキン)にたどりつきます。地図の map も、この mappa の仲間です。

アメリカン・ヘリテージ辞典によると、napkin(ナプキン)も、同じ nape に「小さい」を表す -kin がついた言葉です。エプロン、ナプキン、地図の三つの言葉は、もとをたどると同じ mappa から生まれたのです。そのうちエプロンだけが、前の a に頭の n を取られて、n のない形になりました。

エプロン、ナプキン、地図は、同じラテン語 mappa(ナプキン)から生まれた親戚(イメージ)
エプロン、ナプキン、地図は、同じラテン語 mappa(ナプキン)から生まれた親戚(イメージ)

03審判の umpire とヘビの adder も、頭の n が前の a にくっついて消えた

頭の n を前の a に取られた言葉は、エプロンだけではありません。

野球の審判を表す umpire(アンパイア)もそうです。Dictionary.com によると、1350〜1400年ごろの英語に umpere という形で出てきます。これは、もとの noumpere が変わった形です。a noumpere が an oumpere と受け取られ、n が消えました。

もとは古いフランス語の nonper です。non は「〜でない」、per は「対等の、組になった」という意味です。つまり nonper は「どちらの組にも入らない人」でした。争っている二人のどちらにもつかずに、間に入って争いを収める人のことです。野球の審判が、どちらのチームにも入らない人であることを思うと、ぴったりの名前です。

ヘビの一種 adder(クサリヘビ)も同じです。昔は nadder でした。a nadder が an adder になったのです。ドイツ語では、今もヘビの一種を Natter と呼びます。こちらは n が残っています。

04イモリの newt と「今回だけ」という意味の nonce は、前の言葉の n が頭にくっついてできた

nickname と同じく、前の言葉の n が頭にくっついてできた言葉も、ほかにあります。

イモリを表す newt(ニュート)です。Dictionary.com によると、1375〜1425年ごろの英語では newte。もとは ewte で、an ewte が a newte と受け取られました。辞書は、nickname と同じ型だと書きそえています。

もう一つは、for the nonce(さしあたり、今回だけ)という言い方の nonce です。もとは for then ones、つまり「その一回のために」でした。then の n が、後ろの ones にくっついて nones になったのです。then は、the の昔の形です。nonce の場合は、a や an ではなく、the の n が後ろの言葉に移ったことになります。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

nickname のような言葉のでき方を、「単語の切れ目のずれ」と呼ぶ

言葉の切れ目がずれて、新しい単語の形ができることを、英語で metanalysis(メタナリシス)といいます。Dictionary.com は、この言葉を「句の中で、単語と単語の切れ目がずれること」と説明し、an ekename → a nickname を例に挙げています。この用語自体は、1910〜15年ごろから記録されている、比較的新しい言葉です。

話し言葉には単語のすき間がないので、聞き手が切れ目を間違える

話し言葉には、単語と単語のあいだに「すき間」がありません。私たちは、ずっとつながった音の流れを聞きながら、頭の中で「ここで切れる」と決めています。

ふだんは、知っている単語を手がかりに切れ目を決めます。でも、ekename のように使われる回数が少ない言葉だと、手がかりが弱くなります。そこへ a と an の使い分けが重なると、「an + ekename」と「a + nekename」のどちらでも、同じ音の流れになります。聞き手が間違った方を選び、それが多くの人に広まると、新しい形が定着します。

ここで大事なのは、n が移る向きは、言葉ごとに違うことです。nickname と newt は、n が後ろへ移りました。apron、umpire、adder は、n が前の冠詞に取られました。どちらの向きになるかは、その時代の人に、どちらの形が「ありそうな単語」に聞こえたかで決まったと考えられます。

nickname のもとの eke が名詞か副詞かは、辞書によって説明が違う

nickname の eke について、アメリカン・ヘリテージ辞典は「追加」という名詞だとしています。一方、Dictionary.com は、古い副詞の eke(「〜もまた」)の項目を参照するよう書いています。どちらも「つけ足し」「もう一つ」という意味の点では同じですが、品詞の説明が違います。

このように、細かいところでは辞書の説明が分かれることがあります。でも、「an ekename が a nekename になった」という大筋は、どちらの辞書も一致しています。語源を調べるときは、一冊だけでなく、何冊かの辞書を並べて見ることが大切です。

もう一つ注意したいのは、年の書き方です。Dictionary.com は「1400〜50年」のように、幅をもたせて書いています。これは、その形が文書に現れた時期を示すもので、誰かが「この日から言い方を変えよう」と決めたわけではありません。切れ目のずれは、たくさんの人の耳と口の中で、少しずつ進んだと考えられます。

a や the のような小さな言葉は、後ろの単語の形を変えることがある

文字で書かれた言葉は、切れ目がはっきりしています。でも、言葉の変化の多くは、話し言葉から始まります。英語の a と an の決まりも、切れ目がずれる原因になりました。冠詞(a、an、the)という小さな言葉は、すぐ後ろの単語とくっついて発音されやすいからです。そのため、冠詞のような小さな言葉が、となりの単語の形を変えてしまうことがあるのです。

05まとめ

nickname は、もとは ekename(つけ足しの名前)でした。an ekename が a nekename と聞き間違えられ、n が後ろの単語に移って生まれた言葉です。反対に、apron(もとは napron)、umpire(もとは noumpere)、adder(もとは nadder)は、頭の n を前の a に取られました。エプロンという言葉は、昔の英語では「ナプロン」だったのです。

人に話すなら、こう言おう

ニックネームって、もとは「an ekename(つけ足しの名前)」だったんだって。「アネークネーム」って言ってるうちに n が引っ越して、a nekename になったらしいよ。エプロンは逆で、もとは napron だったんだって。
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英語で読む

The Letter N That Moved

CEFR A2215 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

Say "an ekename" quickly.「an ekename」と速く言ってみてください。 Now say "a nekename" quickly.次に「a nekename」と速く言ってみてください。 They sound almost the same, don't they?ほとんど同じに聞こえますよね。 This small mistake gave English the word nickname.この小さなまちがいが、英語に nickname という言葉をもたらしました。

Long ago, people in England said ekename.ずっと昔、イングランドの人たちは ekename と言っていました。 Eke meant an extra thing, so an ekename was an extra name.eke は「つけ足しのもの」という意味だったので、ekename は「つけ足しの名前」でした。 In English, we say "an" before a vowel sound, like "an apple."英語では、「an apple」のように、母音の音の前では an と言います。 So people heard "an ekename" as "a nekename."そのため人々は「an ekename」を「a nekename」と聞き取りました。 The letter n moved to the next word, and later the word became nickname.n の文字が次の単語へ移り、のちにその言葉は nickname になりました。 This change happened about 600 years ago.この変化は、およそ600年前に起きました。

Sometimes the n moved the other way.ときには、n が逆の方向へ移ることもありました。 An apron was once called a napron.エプロンは、かつて napron と呼ばれていました。 People heard "a napron" as "an apron," and the n was lost.人々は「a napron」を「an apron」と聞き取り、n がなくなりました。 The word napron came from an old French word for a tablecloth.napron という言葉は、テーブルクロスを表す古いフランス語から来ていました。 So apron and napkin are cousins.ですから、エプロンとナプキンはいとこのような関係なのです。 Even the word map is part of this family.地図を表す map という言葉でさえ、この家族の一員です。

The same thing happened to umpire.同じことが umpire(審判)にも起きました。 It was once noumpere, from an old French word for "not equal."それはかつて noumpere で、「対等でない」という意味の古いフランス語から来ていました。 An umpire is a person who is not on either side.審判とは、どちらの側にもつかない人のことです。 The snake called an adder was once a nadder, too.adder というヘビも、かつては nadder でした。 In German, a similar snake word, Natter, still has its n.ドイツ語では、よく似たヘビを表す言葉 Natter に、今も n が残っています。

Small words like "a" and "an" can change big words.a や an のような小さな言葉が、大きな言葉を変えることがあるのです。 So the next time you put on an apron, remember its lost letter.だから今度エプロンをつけるときは、その失われた文字を思い出してください。 It was once a napron.それはかつて napron だったのです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2What did the old word ekename mean?

    古い言葉 ekename はどんな意味でしたか。

  3. Q3Why did "a napron" become "an apron"?

    「a napron」が「an apron」になったのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 3, the word "cousins" means that apron and napkin are

    第3段落の cousins は、エプロンとナプキンがどういう関係だという意味ですか。

  5. Q5Which is true about the word umpire?

    umpire という言葉について正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • nickname名詞
    あだ名、愛称

    His nickname at school was Speedy.

    学校での彼のあだ名はスピーディーだった。

    💡 動詞としても使う。They nicknamed him Speedy.(彼をスピーディーと呼んだ)

  • extra形容詞
    追加の、余分の

    I bought an extra pen just in case.

    念のためにペンをもう1本買った。

    💡 extra time(延長時間)、extra money(余分なお金)。

  • vowel名詞
    母音

    The word "egg" begins with a vowel.

    egg という単語は母音で始まる。

    💡 反対は consonant(子音)。a, e, i, o, u が母音字。

  • apron名詞
    エプロン

    My father wears an apron when he cooks.

    父は料理をするときエプロンをつける。

    💡 発音は「エイプロン」。母音で始まるので an apron。

  • tablecloth名詞
    テーブルクロス

    She put a white tablecloth on the table.

    彼女はテーブルに白いテーブルクロスをかけた。

    💡 table + cloth(布)。clothes(服)とつづりを区別する。

  • cousin名詞
    いとこ、(比ゆ的に)親戚のようなもの

    My cousin lives in Osaka.

    私のいとこは大阪に住んでいる。

    💡 発音は「カズン」。男女どちらにも使う。

  • umpire名詞
    (野球などの)審判

    The umpire said the ball was out.

    審判はそのボールをアウトだと言った。

    💡 サッカーやバスケットボールの審判は referee と言うことが多い。

  • equal形容詞
    等しい、対等な

    All people are equal.

    すべての人は平等だ。

    💡 be equal to ~ で「~に等しい」。名詞は equality(平等)。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 14件)。

  1. nickname(Dictionary.com)dictionary.com
  2. nickname(The American Heritage Dictionary of the English Language)ahdictionary.com
  3. apron(Dictionary.com)dictionary.com
  4. umpire(Dictionary.com)dictionary.com
  5. adder(Dictionary.com)dictionary.com
  6. newt(Dictionary.com)dictionary.com
  7. nonce(Dictionary.com)dictionary.com
  8. metanalysis(Dictionary.com)dictionary.com

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