ヒゲペンギンは、4秒の居眠りを1日に1万回以上している
生き物No.122

ヒゲペンギンは、4秒の居眠りを1日に1万回以上している

合わせると、1日11時間以上眠っていた。

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もくじ
  1. 巣のペンギンは、平均4秒の居眠りを1時間に600回以上していた
  2. ペンギンは、脳の左右の片側だけで眠ることもある
  3. 天敵が来やすい群れのはしのペンギンのほうが、群れの真ん中のペンギンよりよく眠っていた
  4. 眠りが細切れでも、ペンギンは子育てに成功していた
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

南極の島の岩場で、ヒゲペンギンが卵を抱いています。目を閉じたかと思うと、すぐに開きます。また閉じて、また開きます。実はこのとき、ペンギンの脳は、ほんの数秒だけ眠っていました。脳波(脳から出る弱い電気の波)に、眠っているときの形の波が出ていたのです。

1回の眠りの長さは、平均でたった4秒です。ペンギンはこの短い居眠りを、1日に1万回以上繰り返していました。細切れの眠りを全部たすと、脳の左右それぞれで、1日11時間以上になります。

2023年、フランス・韓国・ドイツの研究チームが、科学誌「サイエンス」にこの結果を発表しました。チームは、野生のペンギンの頭に小さな装置をつけ、巣にいるときも海にいるときも、脳波を記録したのです。

この記事では、まずペンギンが1日に何回、どれくらい眠っていたかを紹介します。次に、天敵が来やすい場所のペンギンほどよく眠っていた、という意外な結果を見ていきます。最後に、細切れの眠りでも足りるのか、という問いを考えます。

01巣のペンギンは、平均4秒の居眠りを1時間に600回以上していた

研究が行われたのは、南極のキングジョージ島です。島のバートン半島で、2019年12月に記録がとられました。ヒゲペンギンが、巣で子育てをしている時期です。

研究チームには、3つの研究所の研究者が加わっていました。リヨン神経科学研究センター(フランス)、韓国極地研究所、マックス・プランク生物知能研究所(ドイツ)です。チームは、巣にいる14羽のペンギンに、特別に作った記録装置をとりつけました。

この装置は、脳波のほかに、次のものも記録します。首の筋肉の動き、体のかたむき、いる場所(GPS)、潜った深さです。記録は、陸と海で11日間続きました。海に出たペンギンは、深さ200mまで潜っていました。

脳波を調べると、巣にいるペンギンは、1時間に600回以上も眠りに落ちていました。1日にすると、1万回を超えます。2026年には、別の研究チームが、2023年の論文の数字から1日の回数を計算し直しました。その研究では、1日当たり約1万3700〜1万4900回と見積もられています。

02ペンギンは、脳の左右の片側だけで眠ることもある

鳥の脳は、左右で別々に眠ることができます。左右の両方が一緒に眠ることもあれば、片側だけが眠ることもあります。ヒゲペンギンでも、この両方の眠り方が見られました。

脳の片側が眠ると、反対側の目が閉じます。そのため、ペンギンの目は、片方ずつ閉じたり開いたりを繰り返していました。

研究チームは、両側の眠りと片側の眠りが切りかわりながら続いたときも、1回の眠りとしてまとめて数えました。それでも、ほとんどの眠りは5秒未満でした。脳の片側ごとに合計すると、眠った時間は1日11.5〜12時間です。眠りは昼か夜かに偏らず、24時間にまんべんなく散らばっていました。

人間でいえば、会議中に「カクッ」となる、一瞬の居眠りに近いものです。数秒だけ目が閉じて、脳が眠りの波を出す状態を、マイクロスリープと呼びます。人が車を運転しているときにマイクロスリープが起きると、とても危険です。また、マイクロスリープは短すぎて、眠りの役目を果たせないのでは、とも考えられてきました。

巣のペンギンは、片目ずつ閉じたり開いたりしながら、数秒の眠りを繰り返していた
巣のペンギンは、片目ずつ閉じたり開いたりしながら、数秒の眠りを繰り返していた

03天敵が来やすい群れのはしのペンギンのほうが、群れの真ん中のペンギンよりよく眠っていた

ヒゲペンギンの巣は、敵だらけの場所にあります。群れのはしには、卵を狙うトウゾクカモメの仲間(ブラウン・スクア)がやってきます。巣の周りでは、ほかのペンギンが鳴き声をあげ、けんかをしかけてきます。

研究者たちは、初めにこう予想していました。群れの外側に巣があるペンギンは、眠る量が少ないはずだ。そして、脳の片側だけで眠る割合が多いはずだ。カモの研究で、群れのはしにいる鳥は、片目を開けて眠ると分かっていたからです。

ところが、結果は予想と逆でした。群れのはしのペンギンは、真ん中のペンギンより、約10%多く眠っていました。1回の眠りも約40%長く、時間にして約1秒長くなっていました。脳の片側だけで眠る割合も、増えていませんでした。

研究者たちは、こう考えています。ペンギンの眠りを一番じゃましているのは、天敵よりも、周りのペンギンなのかもしれない。群れの真ん中は、仲間が多くてにぎやかな場所だからです。

04眠りが細切れでも、ペンギンは子育てに成功していた

この研究で一番大事な点は、ペンギンたちが子育てに成功していたことです。眠りが何千回にも細切れになっていても、親としての仕事をやり遂げていたのです。

論文は、この結果から一つの考えを示しています。眠りの効きめは、少しずつためていけるのかもしれない、というものです。もしそうなら、4秒の居眠りでも、何千回も重ねれば、まとまった眠りの代わりになりうるということです。

研究者たちは、細切れに眠ることは、ペンギンの「工夫」だと考えています。こうして眠れば、眠りながらも、天敵や周りのペンギンに目を配り続けられるからです。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

細切れの眠りが、まとまった眠りの代わりになるかは、まだ分からない

睡眠の研究には、大きな問いがあります。眠りの効きめは、眠った時間の長さに比例するのか。それとも、深くまとまった眠りでないと意味がないのか、という問いです。

2023年の論文は、人のマイクロスリープの話から始まります。論文の考えの流れは、次のとおりです。

  • 人の数秒の居眠りは、運転中には危険だ。しかも、短すぎて眠りの役目を果たせないかもしれない。
  • でも、もし短い眠りでも眠りの役目を果たせるなら、いつも見張りが必要な動物は、短い眠りを繰り返すやり方をとるかもしれない。

研究チームは、この考えを、野生のペンギンで確かめようとしたのです。この研究で数えた眠りは、徐波睡眠です。脳波がゆっくり大きく波打つ、深い眠りのことです。

ただし、注意も必要です。この研究で確かめられたのは、「細切れの眠りでも、子育てに成功した」ことです。細切れの眠りが、まとまった眠りと同じくらい体を回復させるのかは、まだ分かっていません。

マックス・プランク研究所のラッテンボルク(Niels Rattenborg)は、2025年の論文で、次の問いを残しています。4秒の眠りは、体の回復に十分な長さなのか。もし足りないとしても、起きている時間を短くすることで、脳の傷みを減らしているのではないか。

カモは、危険な場所では片目を開けて、脳の片側だけで眠る

鳥やイルカは、脳の片側だけで眠ることができます。この眠り方を、半球睡眠と呼びます。

1999年、ラッテンボルクらは、マガモの眠り方を調べた結果を発表しました。群れのはしで眠るカモは、片目を開けたまま眠りました。開いた目は、群れの外側に向けていました。一方、両側を仲間にはさまれたカモは、両目を閉じて眠るほうを好みました。カモは、危険が大きいほど、脳の片側だけで眠る時間を増やしていたのです。

ヒゲペンギンの研究者も、このカモの結果から、「群れのはしの巣では、片側の眠りが増える」と予想しました。しかし、実際には増えていませんでした。カモとペンギンでは、危険の種類が違うのかもしれません。

飛びながら眠るグンカンドリは、眠る量そのものを減らしていた

2016年には、オオグンカンドリという海鳥が、飛びながら眠ることが、脳波で確かめられました。この鳥は、海の上を最大10日間飛び続けます。

飛んでいるあいだの眠りは、1日わずか0.69時間でした。これは、陸で眠る量の7.4%です。1回の眠りの長さは、飛んでいるときが平均約11秒、陸では約28秒でした。

グンカンドリは、「眠る量そのものを減らす」ことで、飛び続ける時期を乗り切っていました。ヒゲペンギンは、「眠る量は減らさず、細かく分ける」ことで、子育ての時期を乗り切っていました。同じ鳥でも、まったく違うやり方です。

「眠るか、見張るか」を一瞬ごとに選ぶと考えて計算すると、1日に眠る回数は実際に近くなった

2026年、アメリカの研究者たちが、ペンギンの眠りを「選択」として計算する研究を発表しました。動物は一瞬ごとに、「眠るか、起きて見張るか」を選んでいる、と考える計算のしかた(モデル)です。この考え方は、もともとゾウやナマケモノの眠りを調べるのに使われたものです。

このモデルで計算すると、1日に眠る回数は、実際の回数に近くなりました。2023年の論文の数字から見積もった回数は約1万4300回、モデルで計算した回数は約1万5000回です。

一方、1日に眠った合計の時間は、実際のデータより2割ほど少なく出ました。理由の一つは、このモデルが、脳の片側だけの眠りを計算に入れていないことだと考えられています。脳の片側で眠りながら見張れるという鳥の特技を、この単純な計算では表しきれていないのです。

05まとめ

南極のヒゲペンギンは、平均4秒の居眠りを、1日に1万回以上繰り返していました。細切れの眠りでも、合計すると、脳の左右それぞれが1日11時間以上眠っていました。

天敵が来やすい群れのはしのペンギンのほうが、真ん中のペンギンより約10%多く眠っていたことも分かりました。卵を抱きながら目を閉じたり開いたりしているペンギンは、閉じるたびに、およそ4秒ずつ眠っているのです。

人に話すなら、こう言おう

南極のヒゲペンギンって、4秒くらいの居眠りを1日に1万回以上もするんだって。それを全部たすと、11時間以上も眠ってることになるらしいよ。
READ IN ENGLISH

英語で読む

Four Seconds of Sleep, Ten Thousand Times

CEFR A2234 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

On an island in Antarctica, a chinstrap penguin sits on its nest.南極のある島で、一羽のヒゲペンギンが巣の上に座っています。 It closes its eyes, and then it opens them again.目を閉じたかと思うと、また開きます。 In those few seconds, the penguin is really asleep.そのわずか数秒のあいだ、ペンギンは本当に眠っているのです。

In December 2019, scientists from France, Korea, and Germany studied 14 penguins on King George Island.2019年12月、フランス・韓国・ドイツの科学者たちが、キングジョージ島で14羽のペンギンを調べました。 They put small machines on the birds to record their brain waves.彼らは鳥に小さな装置をつけて、脳波を記録しました。 The machines worked for 11 days, on land and in the sea.装置は陸でも海でも、11日間働きました。 Some penguins dived 200 meters deep.200mの深さまでもぐったペンギンもいました。

The results were very strange.結果はとても変わったものでした。 Each sleep lasted only about 4 seconds.1回の眠りは、たった4秒ほどしか続きませんでした。 But the penguins fell asleep more than 10,000 times a day.でもペンギンたちは、1日に1万回以上も眠りに落ちていました。 These short sleeps are called microsleeps.このような短い眠りは、マイクロスリープと呼ばれます。 When the scientists added them up, each half of the brain slept more than 11 hours a day.科学者たちが合計すると、脳の片側ごとに1日11時間以上眠っていました。 Birds can sleep with one half of the brain while the other half stays awake.鳥は、脳の片側を起こしたまま、もう片側で眠ることができます。

Why do they sleep like this?なぜこんな眠り方をするのでしょう。 A nest is a dangerous place.巣は危険な場所です。 Big brown birds called skuas try to steal eggs, and other penguins often fight.スクアという大きな茶色い鳥が卵を盗もうとし、ほかのペンギンもよくケンカをします。 The scientists thought birds at the edge of the group would sleep less.科学者たちは、群れのはしの鳥は眠る量が少ないだろうと考えていました。 But those birds slept about 10 percent more than birds in the busy center.ところが、その鳥たちは、にぎやかなまん中の鳥より約10%多く眠っていました。 Maybe noisy neighbors are worse than hungry skuas.うるさいお隣さんのほうが、おなかをすかせたスクアよりも困りものなのかもしれません。

The penguins still raised their young well.それでもペンギンたちは、ちゃんと子育てをやりとげました。 So small pieces of sleep may add up to real rest.小さな眠りのかけらでも、積み重なれば本当の休息になるのかもしれません。 For a penguin, a good night of sleep is four seconds, again and again and again.ペンギンにとって、ぐっすり眠るとは、4秒の眠りを何度も何度もくり返すことなのです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How long did each sleep usually last?

    1回の眠りはたいていどれくらい続きましたか。

  3. Q3What did the scientists find about birds at the edge of the group?

    群れのはしの鳥について、科学者たちは何を見つけましたか。

  4. Q4In paragraph 3, the word "microsleeps" means

    第3段落の microsleeps の意味はどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話の内容と合っているのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • nest名詞
    巣

    A bird is building a nest in that tree.

    あの木で鳥が巣を作っている。

    💡 build a nest(巣を作る)。動詞で「巣を作る」の意味もある。

  • record動詞
    記録する

    We recorded the song on my phone.

    私たちはその歌をスマホで録音した。

    💡 動詞は re-CORD、名詞は REC-ord とアクセントが変わる。

  • brain wave名詞
    脳波

    Doctors can check brain waves while you sleep.

    医者は眠っているあいだの脳波を調べることができる。

    💡 ふつう複数形 brain waves で使う。口語では「名案」の意味もある。

  • last動詞
    続く

    The movie lasted two hours.

    その映画は2時間続いた。

    💡 形容詞の last(最後の)と同じつづり。last for ~ で「~のあいだ続く」。

  • asleep形容詞
    眠っている

    The baby is asleep on the sofa.

    赤ちゃんはソファで眠っている。

    💡 fall asleep(眠りに落ちる)。名詞の前には置かず、be asleep の形で使う。

  • edge名詞
    はし、ふち

    Do not stand at the edge of the cliff.

    がけのふちに立ってはいけない。

    💡 at the edge of ~(~のはしで)。刃物の「刃」の意味もある。

  • add up動詞句
    合計する、積み重なる

    Small savings add up over a year.

    小さな貯金も1年で積み重なる。

    💡 add A up(Aを合計する)、A adds up(Aが積み重なる)の両方で使う。

  • raise動詞
    育てる

    My grandparents raised five children.

    祖父母は5人の子どもを育てた。

    💡 「上げる」の意味もある。raise a hand(手を上げる)。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 25件)。

  1. Libourel, P.-A., Lee, W. Y. ほか (2023) Nesting chinstrap penguins accrue large quantities of sleep through seconds-long microsleeps, Science 382:1026-1031doi.org
  2. Penguins obtain large quantities of sleep via seconds-long microsleeps(マックス・プランク協会 研究発表)mpg.de
  3. Libourel ほか (2023) データセット(Dryad)datadryad.org
  4. Phillips, K. L. ほか (2026) A Dynamic Model of Microsleep and Vigilance Tradeoffs in Nesting Chinstrap Penguins, Nature and Science of Sleep 18:1-12doi.org
  5. Rattenborg, N. C. (2025) Functional implications of sleeping little in the wild, SLEEP 49doi.org
  6. Rattenborg, N. C. ほか (2016) Evidence that birds sleep in mid-flight, Nature Communications 7doi.org
  7. Rattenborg, N. C., Lima, S. L., Amlaner, C. J. (1999) Half-awake to the risk of predation, Nature 397:397-398doi.org

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