フラミンゴは、自分の脂で羽をピンクに「化粧」している
生き物No.028

フラミンゴは、自分の脂で羽をピンクに「化粧」している

ピンク色は、食べ物と「化粧」の両方から。

うなり度 読む時間8分 出典6件 確認した事実32件
もくじ
  1. フラミンゴのピンクは、えさの藻や小さなエビの色素から来る
  2. フラミンゴは、尾の付け根から出る色つきの脂を首の羽に塗る
  3. フラミンゴが羽に色を塗るのは、おもにつがいの相手を選ぶ季節だった
  4. 動物園では、色素入りの特製のえさでピンクを保っている
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

2012年2月、南フランスの湿地カマルグを寒波が襲いました。そのとき、寒さで死んだオオフラミンゴが見つかりました。スペイン・フランス・アルゼンチンの研究者たちは、そのうち30羽の首から羽を抜きました。そして羽を黒い台紙に貼り、日なたに40日間置いてみました。

40日後、羽の赤みは平均で57.8%もあせていました。同じ鳥の別の羽を、日光の当たらない所に置いた場合は、11.4%しかあせていません。フラミンゴの羽の色は、日光にさらすだけで、どんどん抜けていくのです。

では、生きているフラミンゴの首は、なぜずっと赤いのでしょう。それは、フラミンゴが自分で羽に色を塗り足しているからです。研究者たちは、この行動をそのまま「化粧(make-up)」と呼んでいます。

この記事では、まずフラミンゴのピンクが、えさの色素から来ることを説明します。次に、フラミンゴが自分の体から出る色つきの脂を羽に塗っていることと、それがいつ多くなるかを見ます。最後に、動物園でピンクを保つ工夫を紹介します。

01フラミンゴのピンクは、えさの藻や小さなエビの色素から来る

まず、よく知られている話からです。フラミンゴがピンクなのは、食べ物のせいです。

フラミンゴのえさは、湖の藻や、ブラインシュリンプなどの小さな甲殻類(エビやカニの仲間)です。サンディエゴ動物園によると、これらにはカロテノイドという色素がたっぷり含まれています。カロテノイドは、ニンジンのオレンジ色やトマトの赤色のもとでもある色素です。ブラインシュリンプ自身も、カロテノイドを含む小さな藻を食べています。フラミンゴの体はこの色素を取りこんで処理し、羽をピンクに染めます。

鳥の羽の色素がえさから来ていることは、古くから調べられてきました。1990年に、それまでの研究をまとめた論文(総説)が出ています。この論文は、フラミンゴやフィンチ(小鳥の仲間)にえさを与えて調べた実験を、その証拠として挙げています。

鳥の体は、えさの色素をそのまま使うだけではありません。体の中で少し作りかえてから、羽に入れることもあります。オオフラミンゴの羽では、カンタキサンチンという作りかえられた色素が、カロテノイド全体の6割以上をしめています。

フラミンゴのひなは、白っぽい灰色の産毛で生まれます。スミソニアン国立動物園によると、おなじみのピンクになるまでには、何年もかかり、何度も羽が生えかわります。

02フラミンゴは、尾の付け根から出る色つきの脂を首の羽に塗る

鳥の多くは、尾の付け根に尾脂腺(びしせん)という小さな器官をもっています。鳥は、ここから出る脂を羽に塗り広げて、羽の手入れをします。いわば、羽用のワックスです。

2011年、スペインの研究者フアン・アマト(Juan A. Amat)らは、オオフラミンゴの尾脂腺の脂に、カロテノイドが含まれていることを初めて確かめました。しかも、その色素は、羽に入っている色素と同じ種類でした。

フラミンゴは、この色つきの脂を、首や頭の羽に塗ります。研究チームが調べると、脂を塗った羽ほど色が鮮やかでした。そして、塗った色素の量が多いほど、さらに鮮やかになっていました。羽の中にもともとある色の上に、外から色を重ねているのです。これが「化粧」と呼ばれる理由です。

尾の付け根の尾脂腺から出る脂にも、色素が入っている。フラミンゴはこれを首の羽に塗り、赤みを足している
尾の付け根の尾脂腺から出る脂にも、色素が入っている。フラミンゴはこれを首の羽に塗り、赤みを足している

03フラミンゴが羽に色を塗るのは、おもにつがいの相手を選ぶ季節だった

アマトらは、フラミンゴが化粧をする回数を観察しました。すると、群れで「集団ディスプレイ」をする時期に、化粧の回数が他の時期よりずっと多くなっていました。集団ディスプレイとは、つがいの相手を選ぶために、群れで行進のような動きをすることです。研究チームは、化粧のおもな目的は相手選びだと考えています。実際、羽の色が鮮やかなフラミンゴほど、早く巣づくりを始めていました。

2018年の研究では、オスとメスの違いも分かりました。化粧に使う脂に含まれるカロテノイドの濃さは、メスのほうが高かったのです。オオフラミンゴは、メスのほうが色鮮やかになりやすい鳥です。

これは、鳥としては珍しいことです。メスのほうが目立つ鳥は、普通、オスとメスの役割が入れかわった種に多く見られます。たとえば、メスのほうが体が大きい種や、オスだけが子育てをする種です。ところがオオフラミンゴは、メスがオスより大きいわけでも、オスだけが子育てを引き受けるわけでもありません。研究チームは、メスがよく化粧をすることが、「なぜメスのほうが鮮やかなのか」の説明になるかもしれない、と考えています。

さらに、ひなにえさを運ぶ時期になると、脂の中の色素は減りました。ところが、血液中の色素は減っていませんでした。2021年の研究も、ひながかえったあとは化粧の行動がずっと少なくなる、と書いています。相手選びの季節が終われば、化粧はやめる。そして、化粧に使っていた色素を、体を守る働きに回しているのではないか、と考えられています。

04動物園では、色素入りの特製のえさでピンクを保っている

野生の藻や甲殻類が手に入らない動物園では、どうしているのでしょう。サンディエゴ動物園とサンディエゴ動物園サファリパークでは、動物園のフラミンゴ用に作られた特製のペレット(固形のえさ)を与えています。このえさには、必要な栄養と、羽の色を保つための色素が入っています。

また、フラミンゴは水ごとえさを口に入れ、くちばしで水をこし出して食べます。そこで、えさのすぐ近くに食事用の水場を置き、野生と同じ食べ方ができるようにしています。

ワシントンD.C.のスミソニアン国立動物園では、60羽以上のカリブフラミンゴを飼育しています。冬でも寒くないよう、プールの水を華氏70度(約21℃)に温めているそうです。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

動物は、カロテノイドを自分で作れない

カロテノイドは、植物や藻などが作る色素です。鳥の羽の赤・オレンジ・黄色の多くは、カロテノイドの色です。そして、そのもとはすべて食べ物から来ています。鳥は、取りこんだ色素をそのまま羽に入れることもあれば、体の中で少し作りかえてから入れることもあります。フラミンゴの羽で6割以上をしめるカンタキサンチンは、作りかえられた色素の代表です。

鳥は、色素を自分で作れません。そのため、色の鮮やかさは「どれだけ上手にえさを集められたか」を表しているのかもしれません。鳥の研究では、こんな仮説が長く議論されてきました。カロテノイドの色は、えさを集める力や体の調子を、相手に正直に伝える合図になっている、という仮説です。このような合図を「正直な信号」と呼びます。

羽の色は生えかわるまで変わらない、と長く考えられてきた

羽は、いったん生えてしまえば、生きた組織ではありません。そのため、羽の色は生えかわり(換羽)のときに決まり、次の換羽まで変わらないと、長く考えられてきました。2011年の論文も、この思いこみを紹介するところから書き始めています。

ところが実際には、羽の色は、次の換羽までのあいだにも変わります。すり減りや日光、汚れ、そして鳥自身が塗る物質によって変わるのです。フラミンゴの化粧は、その一番はっきりした例の1つです。羽が生えたのが何か月も前でも、化粧をすれば、「今の自分」の調子を色に出せます。研究者は、このように、すぐに強めたり弱めたりできる合図を、動的な信号と呼んでいます。

化粧は、もともと赤いフラミンゴをもっと赤く見せる

2011年の研究では、脂を落とす前の羽の色と、落としたあとの羽の色を比べました。すると、もともと赤い鳥ほど、化粧をしたあとも赤いという傾向がありました。つまり化粧は、鳥どうしの色の差を消すのではなく、差を大きく見せる働きをしていると考えられます。研究者は、この働きをシグナル増幅器(合図を大きくする装置)と呼びました。

2021年の実験は、この化粧が長持ちしないことも示しました。日光にさらされたカロテノイドは、分解されて色があせていきます。フラミンゴは、日差しの強い開けた湿地で暮らしています。そのため化粧は、一度塗ればおしまいではなく、塗り直しが欠かせません。また、表面の色素が多い羽ほど、色があせにくいことも分かりました。厚く塗ることには、色を守る役目もあるのかもしれません。

子育ての時期は、色素を見た目より体を守るほうに回しているらしい

カロテノイドには、色をつけるだけでなく、体を守る働きもあるとされています。体の中で細胞を傷つける物質から、細胞を守る働きです。これを「抗酸化」の働きと呼びます。

2018年の研究では、ひなにえさを運ぶ時期に、化粧用の脂の色素だけが減りました。血液中の色素は減りませんでした。研究チームはこれを、「色」と「抗酸化の守り」のあいだでの、色素の取り合いだと考えました。片方に多く使えば、もう片方に使える分が減る、という関係です。

化粧は、塗ったりやめたりできる合図です。だから、子育てで体に負担がかかる時期には化粧をやめて、限られた色素を見た目より体の守りに回せる。これが研究チームの考えです。論文によれば、化粧は、合図に使う資源(ここでは色素)の使い道を、必要に応じてすばやく変えられるしくみです。

2021年の実験は羽の色を数字で測ったが、使ったのは寒波で死んだ鳥だった

研究チームは、羽の色を、目で見た印象ではなく数値で測りました。使ったのは、色を数字で表す方法(L*a*b*表色系)の「a*」という値です。この値は、赤みの強さを表します。また、羽の表面についた色素と、羽の中の色素は、薬品で別々に取り出して比べています。

2021年の実験に使ったのは、寒波で死んだ鳥です。この鳥たちは、飢えていた可能性もあります。論文自身も、健康な鳥とは化粧の量が違ったかもしれない、と限界を書いています。

05まとめ

フラミンゴのピンクは、えさの藻や小さな甲殻類に含まれるカロテノイドから生まれます。ただし、話はそこで終わりません。相手を選ぶ季節になると、フラミンゴは尾の付け根から出る色つきの脂を首の羽に塗り、赤みを足しています。

この化粧は、日光ですぐにあせます。日なたに40日置いた羽では、赤みが半分以上消えたほどです。動物園でフラミンゴが首を曲げ、尾の付け根あたりに顔をうずめていたら、それは化粧直しの最中かもしれません。

人に話すなら、こう言おう

フラミンゴがピンクなのは食べ物のせいって知ってた?でもそれだけじゃなくて、恋の季節には尾の付け根から出る色つきの脂を首に塗って、もっと赤く見せてるんだって。
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英語で読む

The Flamingo's Pink Makeup

CEFR A2228 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In February 2012, very cold weather hit a wetland in southern France.2012年2月、南フランスの湿地をひどい寒さがおそいました。 Scientists found 30 dead flamingos there.科学者たちは、そこで死んだフラミンゴ30羽を見つけました。 They took pink feathers from the birds' necks and put them in the sun for 40 days.彼らは鳥の首からピンクの羽をとり、40日間、日なたに置きました。 The red color became 57.8 percent weaker.赤い色は57.8%も弱くなりました。

So why do living flamingos stay pink?では、生きているフラミンゴは、なぜピンクのままなのでしょう。 The first answer is food.一つ目の答えは食べ物です。 Flamingos eat tiny plants called algae and small animals like brine shrimp.フラミンゴは、藻と呼ばれる小さな植物や、ブラインシュリンプのような小さな生き物を食べます。 These foods have carotenoids, the same kind of color that makes carrots orange.これらの食べ物には、ニンジンをオレンジ色にしているのと同じ種類の色素、カロテノイドが含まれています。 Baby flamingos are gray, and it takes several years for them to turn pink.フラミンゴの赤ちゃんは灰色で、ピンクになるまで何年もかかります。

The second answer is makeup.二つ目の答えは「化粧」です。 Near the base of its tail, a bird has a small gland that makes oil.鳥は、尾の付け根の近くに、脂を出す小さな腺をもっています。 Birds put this oil on their feathers to keep them in good condition.鳥はこの脂を羽に塗って、羽をよい状態に保ちます。 In 2011, scientists in Spain showed that flamingo oil has carotenoids in it.2011年、スペインの科学者たちは、フラミンゴの脂にカロテノイドが含まれていることを示しました。 Flamingos put the colored oil on their neck feathers, and the feathers look redder.フラミンゴは色のついた脂を首の羽に塗り、羽はより赤く見えるようになります。

They use this makeup much more when they are looking for a partner.フラミンゴは、相手を探している時期に、この化粧をずっと多く使います。 Birds with brighter colors started their nests earlier.色が鮮やかな鳥ほど、早く巣づくりを始めました。 But after their chicks hatch, they use less makeup.でも、ひながかえったあとは、化粧をあまりしなくなります。 The parents feed their chicks a kind of milk from their throats, and their feathers can turn pale.親はのどから出るミルクのようなものでひなを育て、羽の色が薄くなることもあります。

At the San Diego Zoo, flamingos eat special food with color in it.サンディエゴ動物園では、フラミンゴは色素の入った特別なえさを食べています。 So a flamingo with its head near its tail may be fixing its makeup!だから、尾のそばに顔を近づけているフラミンゴは、化粧直しの最中かもしれません!

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How long did the scientists put the feathers in the sun?

    科学者たちは羽をどれくらいの間、日なたに置きましたか。

  3. Q3Why do flamingos put the colored oil on their neck feathers?

    フラミンゴはなぜ色のついた脂を首の羽に塗るのですか。

  4. Q4In paragraph 4, the word "pale" is closest in meaning to

    第4段落の pale に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話の内容と合っているのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • feather名詞
    羽、羽毛

    I found a blue feather in the park.

    公園で青い羽を見つけた。

    💡 Birds of a feather flock together.(類は友を呼ぶ)ということわざが有名。

  • algae名詞
    藻、藻類

    The pond turned green because of algae.

    池は藻のせいで緑色になった。

    💡 複数形の扱い。単数形は alga。発音は「アルジー」。

  • carotenoid名詞
    カロテノイド(赤・オレンジ・黄色の色素)

    Carrots and tomatoes are rich in carotenoids.

    ニンジンやトマトにはカロテノイドが多い。

    💡 carrot(ニンジン)と同じ語源。カロテンの仲間。

  • gland名詞
    腺(液を出す器官)

    Sweat comes from glands in your skin.

    汗は皮膚の中の腺から出てくる。

    💡 sweat gland(汗腺)など。器官の名前によく使う。

  • makeup名詞
    化粧、化粧品

    She does not wear makeup at school.

    彼女は学校では化粧をしない。

    💡 wear makeup(化粧をしている)、put on makeup(化粧をする)。

  • partner名詞
    相手、パートナー

    Find a partner and practice the dialog.

    相手を見つけて会話の練習をしなさい。

    💡 動物では「つがいの相手」の意味でも使う。

  • hatch動詞
    (卵が)かえる

    The eggs will hatch in two weeks.

    卵は2週間でかえるだろう。

    💡 The chicks hatched.(ひながかえった)のように、ひなを主語にもできる。

  • pale形容詞
    (色が)薄い、青白い

    You look pale. Are you OK?

    顔色が悪いよ。大丈夫?

    💡 pale blue(淡い青)のように色の前にも置ける。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 32件)。

  1. Amat, J. A. ほか (2011) Greater flamingos Phoenicopterus roseus use uropygial secretions as make-up, Behavioral Ecology and Sociobiology 65:665-673doi.org
  2. Amat, J. A. ほか (2018) Dynamic signalling using cosmetics may explain the reversed sexual dichromatism in the monogamous greater flamingo, Behavioral Ecology and Sociobiology 72:135doi.org
  3. Chiale, M. C. ほか (2021) The color of greater flamingo feathers fades when no cosmetics are applied, Ecology and Evolution 11:13773-13779doi.org
  4. Brush, A. H. (1990) Metabolism of carotenoid pigments in birds, FASEB Journal 4:2969-2977doi.org
  5. Flamingo(サンディエゴ動物園)animals.sandiegozoo.org
  6. Why Are Flamingos Pink? And Other Flamingo Facts(スミソニアン国立動物園)nationalzoo.si.edu

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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