「満月の日は赤ちゃんが多く生まれる」は、数十万件の出生記録で否定された
都市伝説ファクトチェックNo.271

「満月の日は赤ちゃんが多く生まれる」は、数十万件の出生記録で否定された

満月の日の出生数は、ふだんの日から予想した数とぴったり同じ

ウソFALSE

この判定の対象「満月の日は、赤ちゃんがたくさん生まれる」

うなり度 読む時間8分 出典6件 確認した事実19件
もくじ
  1. アメリカの56万件の出生記録では、月の形で出生数は変わらなかった
  2. オーストリアでは、満月の日の出生数が、計算で予想した数とぴったり同じだった
  3. 病院で働く人の中にも、満月の日はお産が多いと信じる人がいる
  4. 深掘り講義
  5. まとめ
  6. 英語で読む(A2・4択5問)
  7. 出典・ウラ取り

「満月の夜は、お産が多いんだよ」。こんな話を聞いたことはありませんか。病院で働く看護師や助産師の中にも、そう信じている人がいると言われています。

この話は、たくさんの研究者が、実際の出生記録で確かめてきました。2025年に発表されたオーストリアの研究では、国じゅうの病院の約46万件の出生記録を調べました。8年間の満月の日に生まれた赤ちゃんを合計すると、1万5649人でした。曜日や月、年による差を考えに入れて計算した「普通なら生まれるはずの数」は、1万5649.0人。ぴったり同じでした。予想の数は計算で出すので、小数になります。小数点の下までそろったのは偶然です。それでも、満月の日に生まれた数が予想より多くなかったことは、はっきりしています。

この記事では、まずアメリカとオーストリアの大きな調査の結果を紹介します。次に、それでもこの話が信じられ続ける理由を考えます。最後に、「月と出産に関係がある」という結果を出した少数の研究を紹介します。その結果をどう読めばよいかも考えます。

01アメリカの56万件の出生記録では、月の形で出生数は変わらなかった

まず、2005年に発表されたノースカロライナ州の研究です。研究チームは、1997年から2001年までの5年分の出生証明書のデータを調べました。出生証明書は、赤ちゃんが生まれたときに役所に出す書類です。調べた出生は56万4039件、月の満ち欠けのくり返しにして62回分です。

チームは、月の満ち欠けを8つの段階に分けました。そして、それぞれの段階で、生まれた赤ちゃんの数や、帝王切開などのお産の方法、お産のときのトラブルの数を比べました。

結果は、どの段階でも、はっきりした差はありませんでした。論文は、月の満ち欠けで出産やトラブルの数を予測することはできない、と結論しています。そして、この広く信じられた話には証拠がない、とまで書いています。

02オーストリアでは、満月の日の出生数が、計算で予想した数とぴったり同じだった

もっと新しい研究もあります。オーストリアのウィーン医科大学などのチームが、オーストリアの出生の記録を8年分調べました。この記録には、国じゅうの82の産科の病院のお産が入っています。

チームは、薬でお産を始めた人や、予定して帝王切開をした人を、調べる対象から外しました。残った出生は46万2947件でした。

チームは、満月の日、新月の日、それ以外の日に分けて、生まれた数を比べました。お産の数は、曜日や、何月か、何年かによって変わることが知られています。そこでチームは、そうした差を考えに入れて、「普通ならこの日に生まれるはずの数」を計算しました。

満月の日に生まれた赤ちゃんは1万5649人で、予想した数も1万5649.0人でした。新月の日も、それ以外の日も、予想と大きな差はありませんでした。どの月の形でも、出生の数に意味のある差はありませんでした。

月の形がどれでも、その日に生まれる赤ちゃんの数は、ほとんど変わらなかった。
月の形がどれでも、その日に生まれる赤ちゃんの数は、ほとんど変わらなかった。

03病院で働く人の中にも、満月の日はお産が多いと信じる人がいる

アリゾナ州フェニックスの研究(2005年)は、目的をはっきり書いています。病院で働く人たちが信じている「月の形や天気で出産の数が変わる」という考えを、確かめることです。

チームは、1995年から2000年の、自然に始まったお産で、妊娠37〜40週に生まれた16万7956件を調べました。そして、毎日の出生数を、空港で測った天気の記録と、月の形の記録とつき合わせました。結果は、月の形とも天気とも、関係は見つかりませんでした。

ジャン=リュック・マーゴは、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校で、惑星や天文学を研究する学者です。マーゴは2015年に、看護の専門雑誌に、この問題をまとめた論文を書きました。マーゴは、多くの看護師や助産師が、満月のときにお産が多いと信じているらしいと書いています。そして、その考えはデータと合わない、と書いています。

マーゴによると、1979年に発表された研究では、ロサンゼルスの大学病院の4年分の記録を、天文学者と医師が一緒に調べました。1万1961件の出生と、そのうち薬や帝王切開によらない8142件のお産です。月の形との関係は、まったく見られませんでした。その約10年後の1988年には、7か国の21の研究をまとめて見直した論文も出ました。多くの研究は関係なしという結果で、関係ありとした研究どうしも、結果が食い違っていました。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

人は、たまたま起きた重なりにも意味を見つけてしまう

マーゴは、満月の話が信じられ続ける理由として、心理学者ギロビッチの説明を紹介しています。人の考え方には、次のようなくせがあります。

  • でたらめなデータの中にも、パターンやまとまりを見つけてしまう。
  • 自分の考えに合う出来事は重く受け止め、合わない出来事は無視しがち。
  • 自分と同じ考えの人が、実際より多いと思いこむ。

マーゴが紹介する別の研究者たちは、こうしたくせの1つに「選んで思い出す」くせを挙げています。人は、自分の考えに合う出来事を思い出しやすく、合わない出来事は忘れやすいのです。たとえば、満月の夜にお産が重なると、「やっぱり満月だ」と強く記憶に残ります。満月なのにひまだった夜は、思い出されにくいでしょう。新月の夜に忙しくても、月の形を気にすることは少ないはずです。こうして、満月の話を裏付けるような思い出だけが、たまっていきます。

曜日の差が、月のせいに見えることがある

マーゴは、月と関係があるように見えたデータが、実は曜日の差だった例を挙げています。交通事故の数が月の形と関係していると主張した研究がありました。ところが、休日や週末、月ごとの差を考えに入れて計算し直すと、月との関係は消えました。事故は週末に増えやすく、その差が月のせいに見えていたのです。

出産でも、曜日による差はよく知られています。オーストリアの研究が、曜日や、何月かによる差を考えに入れて「予想の数」を計算したのは、このためです。

「満月の日」の数え方をまちがえると、ないはずの差が生まれる

マーゴは、月の影響を調べるときの決まりも挙げています。いつ起きた出来事かを正確に記録すること。月とは関係のない周期を取りのぞくこと。偶然では説明できないかを、きちんとした計算で確かめること。そして、ほかの病院でも同じ結果が出るか確かめることです。

マーゴは、この決まりを守らなかった例として、スペイン・バルセロナの病院の研究(2004年)を取り上げています。胃や腸からの出血で入院する人は、満月のときに多い、と主張した研究です。この研究は、月の満ち欠けを29日のくり返しとして数えていました。ところが、本当の満ち欠けは約29.5日です。そのため、満月が30日目に来た回も、「29日目=満月の日」として数えていました。マーゴが、満月の日とその前後1日の3日間で数え直すと、入院の数は、ふだんの日と見分けがつきませんでした。

オーストリアの研究は、満月の日と、その前後の日を、それぞれ分けて調べています。どの日が満月かも、アメリカ海軍天文台の記録を使って決めました。

月と出産に関係があるとした2つの研究は、どちらも病院1か所の記録を使っていた

月と出産に関係がある、という結果を出した研究もあります。2020年には、福岡県福津市の病院の研究が発表されました。1996年から2007年までに、自然に始まったお産で、早産ではなく生まれた1507件を調べたものです。病院は当時、まだ開発が進んでいない地域にありました。

1日ごとの出生数で見ると、月の形による差はありませんでした。ところが、夜の決まった時間帯に生まれた赤ちゃん362人だけを取り出すと、満月のころに多くなっていました。昼の決まった時間帯に生まれた377人では、逆に新月のころに多くなっていました。著者たちは、夜の月明かりが、夜のお産に影響しているのではないか、と考えています。人工の明かりがなかった昔に、満月の夜のお産が多いと気づかれて、言い伝えになったのかもしれない、とも書いています。

イタリアのウーディネの大学病院の研究(2024年)は、2001年から2019年までの、自然に始まったお産1万3349件を調べました。月が空に出ている(地平線より上にある)時間に生まれた割合は50.63%、出ていない時間は49.37%でした。わずかですが、偶然とは言いにくい差です。著者たちは、月と太陽の位置が、生まれる時刻に関わっているのかもしれない、と考えています。ただし、この研究でも、月の形と出生には関係がありませんでした。

オーストリアの研究も、月の明かりに注目していました。ルクスは明るさの単位です。満月の夜の明るさは最大で0.25ルクスほどで、新月の夜の約250倍です。それでも、満月の日に生まれる数は増えていませんでした。夜に生まれた赤ちゃんだけで比べても、満月の日は7560人、新月の日は7616人で、満月の日のほうが多くはありませんでした。小さな研究で見つかった差が本物かどうかは、大きな調査や、ほかの病院での調査で同じ結果が出るかで確かめる必要があります。

04まとめ

「満月の日は赤ちゃんがたくさん生まれる」という話は、大きな調査では確かめられませんでした。アメリカの56万4039件の記録でも、オーストリアの46万2947件の記録でも、月の形で出生数は変わりませんでした。オーストリアでは、満月の日に生まれた数は1万5649人で、予想の1万5649.0人とぴったり同じでした。

それでもこの話が信じられ続ける理由を、マーゴは人の考え方のくせで説明しています。満月の夜が忙しいと記憶に残り、ほかの夜の忙しさは忘れやすい、というくせです。次の満月の夜には、「今日生まれる赤ちゃんは、いつもの日とほぼ同じ数」と思い出してください。

人に話すなら、こう言おう

満月の日は赤ちゃんがたくさん生まれるって話、オーストリアの46万件の記録で調べたら、満月の日の出生数は予想した数とぴったり同じだったんだって。病院の看護師さんでも信じている人が多いらしいよ。
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英語で読む

Are More Babies Born on a Full Moon?

CEFR A2214 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

Some people say that more babies are born when the moon is full.満月のときにはもっと多くの赤ちゃんが生まれる、と言う人がいます。 Even some nurses and midwives in hospitals seem to believe it.病院の看護師や助産師の中にも、それを信じている人がいるようです。 But is it true?でも、それは本当でしょうか。

In the United States, a team studied 564,039 births in North Carolina.アメリカでは、ある研究チームがノースカロライナ州の56万4039件の出生を調べました。 The records covered five years, from 1997 to 2001.記録は、1997年から2001年までの5年分でした。 The team divided the moon's cycle into eight phases.チームは、月の満ち欠けを8つの段階に分けました。 They found no real difference in the number of births between the phases.どの段階でも、出生の数にはっきりした差は見つかりませんでした。

A newer study in Austria used records from 82 hospitals across the country.オーストリアのもっと新しい研究は、国じゅうの82の病院の記録を使いました。 It looked at 462,947 births that started naturally.自然に始まった46万2947件のお産を調べました。 The researchers first calculated how many babies should be born on each day.研究者たちはまず、それぞれの日に何人の赤ちゃんが生まれるはずかを計算しました。 They thought about the day of the week and the month.曜日や、何月かということも考えに入れました。 On full moon days, 15,649 babies were born.満月の日には、1万5649人の赤ちゃんが生まれました。 The expected number was also 15,649.予想した数も1万5649人でした。

So why do people still believe the story?では、なぜ人々は今もこの話を信じているのでしょうか。 One scientist says that our brains often find patterns in random events.ある科学者は、私たちの脳は、でたらめな出来事の中にもよくパターンを見つけてしまう、と言います。 A busy night with a full moon is easy to remember.満月の夜に忙しかったことは、記憶に残りやすいのです。 A quiet night with a full moon is easy to forget.満月の夜にひまだったことは、忘れやすいのです。

A few small studies have found a link.いくつかの小さな研究は、関係を見つけています。 One hospital in Fukuoka, Japan, found more night births around the full moon.日本の福岡県のある病院は、満月のころに夜の出生が多いことを見つけました。 But that study looked at only 362 night births.でも、その研究で調べた夜の出生は362件だけでした。 The big studies did not find more babies on full moon days.大きな研究では、満月の日に赤ちゃんが多いという結果は出ませんでした。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How many births did the Austrian study look at?

    オーストリアの研究は何件の出生を調べましたか。

  3. Q3Why do people still believe the story, according to the text?

    本文によると、人々がこの話を今も信じているのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 4, the word "random" is closest in meaning to

    第4段落の random という語に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the study in Japan?

    日本の研究について正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • full moon名詞
    満月

    We watched the full moon from the beach.

    私たちは浜辺から満月を見た。

    💡 新月は new moon、半月は half moon。

  • birth名詞
    誕生、出生

    The birth of the baby made everyone happy.

    赤ちゃんの誕生はみんなを幸せにした。

    💡 birthday は「誕生日」。give birth to ~で「~を産む」。

  • midwife名詞
    助産師

    The midwife helped the mother all night.

    助産師は一晩中その母親を助けた。

    💡 複数形は midwives。

  • phase名詞
    (月の)形、段階

    The moon has different phases in a month.

    月は1か月のうちにいろいろな形になる。

    💡 the phases of the moon で「月の満ち欠け」。

  • record名詞
    記録

    The school keeps records of all students.

    学校は全生徒の記録を保管している。

    💡 動詞では「記録する」で、アクセントが後ろに来る(reCORD)。

  • expect動詞
    予想する、期待する

    We expect rain this afternoon.

    今日の午後は雨になると予想している。

    💡 expected number で「予想される数」。

  • random形容詞
    でたらめな、たまたまの

    The teacher chose a random student.

    先生は生徒を1人、適当に選んだ。

    💡 at random で「でたらめに、無作為に」。

  • pattern名詞
    パターン、決まった形

    There is a pattern in these numbers.

    これらの数には決まった形がある。

    💡 日本語の「パターン」と同じ。服の「模様」の意味もある。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 19件)。

  1. Arliss, J. M., Kaplan, E. N. & Galvin, S. L. (2005) The effect of the lunar cycle on frequency of births and birth complications, American Journal of Obstetrics and Gynecologydoi.org
  2. Windsperger, K. et al. (2025) The Impact of Lunar Phases During Day and Night Cycles on Perinatal Outcomes: A Nationwide Cohort Study, Birthdoi.org
  3. Morton-Pradhan, S., Bay, R. C. & Coonrod, D. V. (2005) Birth rate and its correlation with the lunar cycle and specific atmospheric conditions, American Journal of Obstetrics and Gynecologydoi.org
  4. Margot, J.-L. (2015) No Evidence of Purported Lunar Effect on Hospital Admission Rates or Birth Rates, Nursing Researchdoi.org
  5. Matsumoto, S. & Shirahashi, K. (2020) Novel perspectives on the influence of the lunar cycle on the timing of full-term human births, Chronobiology Internationaldoi.org
  6. Londero, A. P. et al. (2024) Exploring the mystical relationship between the Moon, Sun, and birth rate, BMC Pregnancy and Childbirthdoi.org

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