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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
TWO WORDS A DAY 時事英語 第9回 標準 読了 6分

watchdog

/ˈwɒtʃdɒɡ/ 名詞 英語ニュースに何度も出てくる語

「①番犬 ②(不正や権力の濫用を防ぐために監視する)監視機関、監督団体」

an organization or person whose job is to check that companies, governments, or other powerful groups are acting properly

どこで出てきたか

EU privacy watchdog warns Europol data reform risks people's privacy rights

EUのプライバシー監視機関、Europol(欧州刑事警察機構)のデータ改革が国民のプライバシー権を脅かすと警告

出典: AML Intelligence(2026年8月13日)

The proposed expansion of Europol's data processing powers risks endangering people's privacy rights, an EU's privacy watchdog warned.

Europol(欧州刑事警察機構)のデータ処理権限を広げる計画は、国民のプライバシー権を脅かしかねないと、EUのプライバシー監視機関が警告した。

ウォイチェフ・ヴィエヴィルフスキ欧州データ保護監督官(EDPS)(AML Intelligence)

警察機関が持てるデータの範囲を広げようとする計画に、独立した監督官が待ったをかけた、という記事です。政府や大企業の力が強くなるたびに、それを外側からチェックする組織が必ずニュースに登場します。watchdog はその「外側からチェックする側」を指す、見出しの常連です。金融・環境・報道・消費者保護、分野を問わず使われます。

この語の芯

「捕まえる犬」ではなく「吠えて知らせる犬」。 watchdog に逮捕する力はありません。おかしいと気づいたら、大きな声で知らせる。それだけが仕事です。

watch 動詞 見張る dog 名詞

watch+dog という組み合わせそのものは、中世から「屋敷を見張る犬」を指す普通の複合語でした。番犬の仕事は、泥棒を取り押さえることではなく、吠えて家の人に知らせることです。

この「取り押さえずに、知らせる」という役割の切り取り方が、19世紀以降、そのまま比喩に転用されます。政府や企業を直接罰する権限は無いが、不正に気づいたら世間に知らせる。そういう組織や記者を watchdog と呼ぶようになりました。新聞業界でいう watchdog journalism(権力監視型の報道)も同じ発想です。

同じ語根の仲間 oversight (監督、監視) overseer (監督者) guardian (守護者) monitor (監視する)

watchdog は逮捕しない。吠えて知らせるだけで仕事は終わり。

ここが面白い

英語には、権力を見張る役目に動物の名を借りる表現がもう1つあります。canary in the coal mine(炭鉱のカナリア=危険をいち早く知らせる存在)です。

どちらも、自分では危険を止められないが、いちばん早く気づいて声を上げる存在という点で発想が同じです。日本語の「お目付け役」も似た機能を指しますが、こちらは人が主語。英語は「動物に見張らせる」という発想を、そのまま組織の名前にしてしまうところが違います。

例文で確かめる

A financial watchdog is investigating the bank's overseas accounts.

金融監視機関が、その銀行の海外口座を調査している。

Consumer watchdogs raised concerns about the app's new data policy.

消費者団体は、そのアプリの新しいデータ方針に懸念を示した。

She works for an environmental watchdog that monitors factory emissions.

彼女は工場の排出物を監視する環境監視団体で働いている。

この形で覚える

a watchdog group 監視団体
a watchdog agency 監督機関
act as a watchdog 監視役を務める
a media watchdog メディア監視機関

似た語とどう違うのか

意味watchdog との違い
regulator 規制当局 regulator は法律にもとづく許認可・罰則まで持つ公的機関。watchdog は監視して警告することが中心で、強制力の強さがちがう。
inspector 検査官 inspector は現場を直接検査する『人』を指すことが多い。watchdog は組織そのものを指す。
supervisor 監督者 supervisor は上下関係の中で日常業務を指揮する立場。watchdog は上下関係の外側からチェックする立場。

使うときの注意

ここで間違える
『番犬』の意味で使われる場面はまれで、ニュース英語ではほぼ必ず比喩の『監視機関』です。文字どおりの犬と読み違えないこと。
使える場面
ニュース・ビジネス英語で頻出。日常の雑談では使わない硬さです。
発音・リズム
【ワッチドッグ】。watch の wa は日本語の『ワ』より口を大きく開けて【ワ】と【ウォ】の中間の音にします。

ミニコラム:原田のミニコラム|『見張る』を仕事にする発想

英語のニュースを読んでいると、権力の近くに必ず watchdog が置かれていることに気づきます。政府の近くに、企業の近くに、警察の近くに。

日本語で近い言葉を探すと「お目付け役」「監督機関」あたりになりますが、どれも人が主語です。watchdog は違います。組織そのものに「犬」の役割を背負わせるという発想が、はじめから比喩として出発しているのです。

生徒に説明するときは、いきなり「監視機関」と訳語だけを渡すより、「捕まえる犬ではなく、吠えて知らせる犬」という一言を添えたほうが、なぜこの語が選ばれたのかが伝わりやすいと思います。権限が弱いからこそ、声を上げることに意味がある。watchdog が犬にたとえられている理由は、ここにあります。

原田高志

確認クイズ

  1. Q1. watchdog の説明として最も適切なものはどれか。