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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
TWO WORDS A DAY 流行英語 第29回 標準 読了 6分

it's giving

/ɪts ˈɡɪvɪŋ/ 口語表現(動詞句) いま英語圏で流行っている言い方

「①〜っぽさが出ている、〜な雰囲気がある ②(目的語なしの It's giving. で)モロにそれ、って感じ」

used to say that something strongly reminds you of, or gives off the same energy as, something else

どこで出てきたか

it's giving

it's giving(スラング解説ページ)

出典: Dictionary.com(Slangコーナー)(2026年6月5日)

It's giving… 80s Trapper Keeper #TightsTuesday

なんか…80年代の柄物バインダーって感じ #TightsTuesday

@Himbobrite(Blueskyへの投稿、2026年5月12日)(Dictionary.com(Slangコーナー))

it's giving 〜 は、いまSNSでいちばんよく見かける言い方の1つです。服装・音楽・部屋の雰囲気・人の態度まで、なんでも『it's giving 〜』の後ろに置くだけで感想が言えます。英語の辞書サイト Dictionary.com が、正式にスラングの項目として取り上げるほど定着しました。目的語を付けずに It's giving. だけで使う人もいます。

この語の芯

it's giving+何か=それが放っている雰囲気を、似た何かで言い当てる

it's giving は、1960〜70年代にニューヨークで育った、黒人とラテン系のLGBTQ+コミュニティによる『ボールルーム文化』の言葉が元になっています。ファッションやダンスを競い合うこの文化の中で、『it's giving face(表情で魅せている)』のように、パフォーマンスの雰囲気を言い表す言い方として使われていました。

この言い方が広く知られるきっかけになったのが、インフルエンサーの Rolling Ray(ローリング・レイ)です。2019年のテレビ番組『Divorce Court』への出演で何度もこの言葉を口にしたことから注目され、そのあと『RuPaul's Drag Race』でも使われ続けたことで、2020〜2021年ごろに一気にSNS全体へ広がりました。

it's giving 〜 は『それ、〜な感じがにじみ出てる』。give A B の形を崩して、動詞1つで感想を言い切る

ここが面白い

it's giving は、文法的にはかなり変わった形をしています。give はふつう『give A B(AにBを与える)』のように、あとに具体的な物を置く動詞です。ところが it's giving 〜 では、主語の it が何を指しているのかはっきりしないまま、あとに雰囲気を表す名詞や固有名詞をそのまま置きます。

『主語を深く考えず、動詞1つで感想をぱっと言い切る』というのが、この言い方のいちばんの発明です。さらに崩れた形として、目的語を付けずに『It's giving.(それな、って感じ)』とだけ言う使い方まで生まれています。

例文で確かめる

Your outfit is giving vacation vibes.

その服、休暇中って感じの雰囲気が出てるね。

Honestly, that ending is giving plot twist.

正直、あの終わり方はどんでん返しって感じだった。

It's giving early morning energy in here.

ここ、なんか早朝っぽい空気が漂ってる。

この形で覚える

It's giving major character energy. 完全に主人公って感じがする。
It's giving red flag. それ、危険信号って感じ。
It's giving nothing. (それらしさが)全然伝わってこない。

似た語とどう違うのか

意味it's giving との違い
vibe 雰囲気、ノリ vibe は雰囲気そのものを指す名詞。it's giving 〜 は、その雰囲気が何に似ているかを言葉で言い当てる言い方。
big ~ energy いかにも〜な感じ big ~ energy も似た意味だが、名詞のあとに energy を続ける形。it's giving は動詞から始まる文の形で使う。
that's so ~ いかにも〜 that's so ~ は形容詞で直接特徴を言う言い方。it's giving 〜 は、名詞や固有名詞を置いて『似ている何か』を示す点が違う。

使うときの注意

ここで間違える
It's giving nothing. のように、否定的な意味でも使われる。『何も giving していない=それらしさが伝わってこない』という逆の意味になるので、文脈で判断すること。
使える場面
かなりくだけたSNSのスラング。先生や初対面の大人との会話、英作文の答案では使わない。
発音・リズム
続けて『イッツ・ギヴィン』のように読み、giving の g は軽く弱める。強く読むのは giving のあとに続く語のほう。

ミニコラム:文法をあえて崩すと、新しい言い方が生まれる

it's giving 〜 を初めて見たとき、『主語の it は何を指しているの』と気になった人もいると思います。実はそこがこの言い方のねらいで、主語をあいまいにしたまま、動詞1つで感想を言い切ってしまうのが新しさです。

こういう言い方は、ボールルーム文化のように、既存の言葉のルールの外にいたコミュニティから生まれることが少なくありません。正しい文法を1つ崩すだけで、誰も思いつかなかった短い言い方ができあがる。it's giving 〜 は、その好例だと思います。

原田高志

確認クイズ

  1. Q1. it's giving 〜 という言い方が最初に使われていた文化として、本文の説明で正しいものはどれか。