brain rot
/breɪn rɑːt/ 名詞 いま英語圏で流行っている言い方
「くだらない・質の
a supposed decline in a person's mental state, caused by consuming too much trivial or low-quality online content
どこで出てきたか
'Brain rot' named Oxford Word of the Year 2024
『ブレインロット』が2024年Oxford『今年の言葉』に選出
While England endeavours to cure the potato rot, will not any endeavour to cure the brain-rot – which prevails so much more widely and fatally? イングランドがジャガイモの疫病を治そうと努めているというのに、それよりもはるかに広く、はるかに恐ろしい病気である『brain-rot(脳の腐敗)』を治そうとする者は、誰もいないのだろうか。
2024年、Oxford University Pressは一般投票で3万7千人以上が参加した『今年の言葉』に brain rot を選びました。2023年から2024年にかけて使用頻度が230%増えたことが理由です。選ばれた瞬間に生まれた新語ではありません。実はこの語、南北戦争より前、1854年に出版された本の中にすでに登場していました。SNSで質の低い動画を見続けたときの感覚に、172年前の作家が名前を付けていたことになります。
この語の芯
『くだらないものの見過ぎ』に、昔からあった言葉を再利用しただけ。新しく生まれた症状ではなく、昔からある感覚に、ぴったりの古い言葉が見つかった、という話です。
brain rot という言葉を最初に書き残した記録は、1854年、アメリカの作家ヘンリー・デイヴィッド・ソローの『ウォールデン 森の生活』にあります。ソローは、当時イングランドで広まっていたジャガイモの疫病(potato rot)になぞらえて、中身のない考えばかりが広まる社会の状態を『brain-rot』と呼びました。
この言葉は長いあいだ忘れられていましたが、2010年代後半から、SNSで質の低い動画を延々と見続けたあとの『頭がぼんやりする感覚』を表す言葉として、若い世代のあいだで独自に広まります。誰かが新しく作った語ではなく、172年前の語が、まったく別の時代にふさわしい意味を持って掘り起こされた、という珍しい経路をたどっています。
同じ語根の仲間 brainrot content (頭を空っぽにするような、くだらない動画やコンテンツ) doomscrolling (悪いニュースばかりを延々とスクロールし続けること) slop (AIなどが大量生産する、質の低いコンテンツ) skibidi (brain rot系のコンテンツから生まれた、意味を持たない合いの手(本コーナー既出))
ここが面白い
この語のいちばんの見どころは、『若者言葉』だと思われているのに、実は南北戦争より前からある、という点です。しかもソローが brain rot を使ったのは、いまと同じ文脈でした。次々に消費される軽い情報に、人の考える力が蝕まれていく、という警告です。
違うのは、テレビもスマホも無かった1854年の情報源が『新聞や噂話』だったのに対し、いまはショート動画だという点だけ。『くだらない情報の見過ぎで頭が鈍る』という不安そのものは、172年間ずっと同じ形で存在していたことになります。Oxfordがこの語を選んだのは、新語を認定したのではなく、大昔からあった不安に、ようやく居場所を与え直した、という出来事だったわけです。
例文で確かめる
I've been scrolling short videos for three hours straight, I think I have brain rot.
3時間ぶっ通しでショート動画を見続けてる、頭がおかしくなりそう。
Teachers are worried that brain rot content is shortening students' attention spans.
先生たちは、brain rot 系のコンテンツが生徒の集中力を短くしているのではと心配している。
That meme compilation is pure brain rot, but I can't stop watching.
あのミーム集はもう完全にbrain rotだけど、見るのが止まらない。
この形で覚える
| brain rot content | 頭を空っぽにするようなくだらない動画 |
| have brain rot | 頭がぼんやりする(ネット動画の見過ぎで) |
| brain rot era | ネット動画に脳を蝕まれている今の時代 |
似た語とどう違うのか
| 語 | 意味 | brain rot との違い |
|---|---|---|
| doomscrolling | 悪いニュースを延々と見続けること | doomscrolling は悪いニュースに限定される行為。brain rot はジャンルを問わず、くだらない・軽い内容全般を見過ぎた『状態』を指す。 |
| burnout | 燃え尽き症候群 | burnout は仕事や責任からくる心身の消耗。brain rot は娯楽的な動画の見過ぎからくる、思考力の低下を指す点が違う。 |
| skibidi | 意味を持たない合いの手(本コーナー既出) | skibidi は brain rot系動画から生まれた具体的な語の1つ。brain rot はそうした動画やその影響全体を指す、より大きな括りの語。 |
使うときの注意
- ここで間違える
- 医学的な診断名ではありません。本人や友達が冗談めかして使う、あくまで比喩表現です。深刻な意味で使うと大げさに聞こえます。
- 使える場面
- 友達同士のカジュアルな会話やSNS向け。先生や目上の人への正式な文章では使わないこと。
- 発音・リズム
- 【ブレイン ロット】。rot は『ロット』と短く、日本語の『ロト』に近い響きで発音します。
ミニコラム:同じ不安を、いつの時代も言葉にしてきた
生徒に『brain rot って知ってる?』と聞くと、たいてい『動画の見過ぎで頭がバカになる感じ』という答えが返ってきます。まさにそのとおりの意味なのですが、面白いのは、この感覚に最初に名前をつけたのが、SNSどころかテレビもない172年前の作家だったという事実です。
ソローは、当時の人たちが軽い情報ばかりを追いかけて、自分の頭で考えなくなっていく様子を見て、brain rot という言葉を残しました。情報が軽くなりすぎることへの不安は、時代が変わっても形を変えて繰り返されているのだと思います。
新しい言葉を覚えるとき、それが本当に新しいのかどうかを一度疑ってみると、思わぬ発見があります。brain rot は、その良い例です。次に古そうな言い回しを見つけたら、いつごろ生まれた言葉なのか、辞書で語源を調べてみてください。
原田高志
確認クイズ
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Q1. brain rot の説明として最も適切なものはどれか。