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ミニホワイトボードの授業効果は?挙手の14倍、生徒が答えました

ニュースレター|Vol.77

質問をして、手を挙げた1人に答えさせる。この形で、教室の全員が考えているでしょうか。小学5年生の理科で、全員が板に答えを書いて見せる形に変えました。すると、答える回数が14倍になりました。教科書のデジタル化の素案、教師不足をめぐる財務省と文科相の食い違いも取り上げました。帯活動2本、教室英語4本つきです。

監修:原田高志(原田英語.com)

おはようございます。今日の話は、手を挙げた1人に答えさせる代わりに、全員に答えを書いて見せさせた研究です。「質問すると、いつも同じ生徒しか手を挙げない」と感じている先生に読んでいただきたい号です。

10.25.2026 Vol.77

おはようございます。

今日は、発問のあとの答えさせ方を比べた研究を紹介します。手を挙げた1人に答えさせる形と、全員が小さな板に答えを書いて見せる形です。小学5年生の理科の授業では、生徒が答えた回数は、板を使ったほうが14倍でした。

注目記事は、教科書のデジタル化の素案です。紙とデジタルを合わせた教科書が中心になります。外国語は、デジタルだけでも認め得る教科に入りました。

TODAY'S PICK

新しい教科書は「紙とデジタルのハイブリッド」が中心に。外国語は、デジタルだけの教科書を認め得る教科に

教育新聞(2026年10月22日掲載)

教育新聞によると、10月22日に、文部科学省の検討会議が開かれました。そこで、新しい教科書についての大臣の指針の素案が示されました。

今年6月に、改正学校教育法が成立しています。紙だけの教科書のほかに、2つの形が教科書になりました。デジタルだけの教科書と、紙とデジタルを組み合わせたハイブリッドの教科書です。

記事によると、素案のおもな中身は次のとおりです。

  • ・紙かデジタルかの二者択一にしない。紙が効く学習の場面と、デジタルが効く場面を、教科ごとに表で整理した
  • ・原則として、すべての学年と教科で、ハイブリッドの教科書が中心になる。文科省の意向調査では、ハイブリッドを望む回答が、どの学校段階でも約8〜9割だった
  • ・デジタルだけの教科書は、小学校の低学年と中学年では認めない。認め得る教科として、外国語、小学校高学年の音楽と図画工作、中学校の音楽と美術などが挙がった
  • ・低学年と中学年は紙が中心で、デジタルの部分は補助的で限られたものにする

素案は、近くパブリックコメントにかけられる予定です。

英語の先生にとって大きいのは、外国語の扱いです。デジタルだけの教科書を認め得る教科に入りました。記事には、外国語がどの学校段階の話なのかは書かれていません。素案そのものが公開されたら、そこを確かめる必要があります。

会合では、松谷茂委員(日本私立中学高等学校連合会)が発言しました。デジタルを英語や実技の教科に限らず、国語や算数、社会、理科でも使うことが必要ではないか、と述べたそうです。

明日やることは1つです。ご自分の英語の授業で、紙がよい場面と、画面がよい場面を、3つずつ書き出してください。パブリックコメントが始まったとき、自分の意見を書く材料になります。

WARM-UPS

今日の帯活動(5分でできる)

どちらも、紙やノートだけで回せます。1本目は1語で答えを書いて全員が同時に見せる活動、2本目は手で○×を出す活動です。

英語の質問に1〜2語で答えをノートに大きく書き、合図で全員が同時に見せる

対象 中1〜高校 時間 5分 準備 ノートのみ

  1. 先生が、前の時間の英文について、英語で質問を1つします。たとえば What did Ken buy? のように、答えが1〜2語で済む質問にします
  2. 生徒は、答えをノートの白いページに、大きく書きます。書けたら、ノートを伏せて待ちます
  3. 先生が One, two, three, show me! と言ったら、全員が同時にノートを掲げます
  4. 先生は教室を見回し、多かった答えと、気になった答えを1つずつ読み上げます。5問ほど続けます
  • 💡 全員が同時に見せるので、ほかの人の答えを見てから書き直すことができません。先生は、一目で何人が正しく書けたかが分かります。1人に答えさせる形では、ほかの生徒が分かっているかは見えません。

先生が読む英文が本文と合っていれば親指を上、違っていれば下にして、全員が同時に出す

対象 中1〜高校 時間 4分 準備 なし

  1. 先生が、教科書の本文の内容について、英語の文を1つ読みます。半分は本文と合う文、半分は合わない文にします
  2. 生徒は、手を胸の前に置いて、親指で答えを出します。合っていれば上、違っていれば下、迷ったら横です
  3. 先生が Show me! と言ったら、全員が同時に手を前に出します
  4. 割れた文だけ、本文のどこに書いてあるかをペアで探させます。6文ほど続けます
  • 💡 手を胸の前に置くと、まわりの人から答えが見えにくくなります。迷ったら横、という選び方があると、分からない生徒も手を出せます。先生は、どの文で答えが割れたかが分かります。

CLASSROOM ENGLISH

そのまま使える教室英語

今日の4本は、全員に答えを書かせて、同時に見せるときに先生が言う英語です。

答えを書かせるとき

Write your answer in one or two words.

答えは1語か2語で書いてね。

書く長さを先に決めておくと、全員が同じくらいの時間で書き終わります。in one word とも言えます。

書き終わった生徒に

Don't show anyone yet.

まだ誰にも見せないでね。

yet は「まだ」です。早く書けた生徒が、まわりに答えを見せてしまうのを防げます。

全員で見せるとき

Hold up your answers on three.

3の合図で、答えを上げてね。

on three は「3と言ったときに」という意味です。続けて One, two, three! と数えます。

答えが割れたとき

I see two different answers, so let's check the text.

答えが2つに分かれているね。本文を確かめよう。

誰が間違えたかは言わずに、答えが割れたことだけを伝えます。生徒は、自分の答えを守ろうとせずに本文へ戻れます。

AI TOOLKIT

AI × 英語指導

教師向け1つ、生徒向け1つ

教師向けTwee

Twee の公式サイトによると、語学の先生のための AI のサービスです。話題やリンク、単語の一覧から、英文、会話文、空所補充の問題、質問を作れます。レベルは CEFR の A1 から C2 まで選べます。道具の1つに「Create Open Questions for a Text」があります。英文について、自由に答える質問を作るものです。作ったものは PDF や Word で書き出せます。

使いどころ:🎓 こう使います。自作の英文を入れて、「1〜2語で答えられる質問を8つ」と頼みます。今日の帯活動1本目の質問が、すぐにそろいます。⚠ 質問と答えは、配る前に必ず自分で確かめます。無料で使える範囲は、トップページには書かれていません。登録の前に料金のページを見ます。

生徒向けWordtune

Wordtune の公式サイトによると、AI を使った言い換えのツールで、読み書きの手助けをします。文の言い換えの候補を出し、文を長くしたり短くしたりできます。くだけた言い方と、改まった言い方の切り替えもできます。つづりと文法の直しや、文書の要約にも使えます。

使いどころ:🎓 こう使います。授業で1〜2語で書いた答えを、家で英語の1文に書き直します。その1文を Wordtune に入れ、出てきた言い換えの候補と自分の文を比べます。⚠ 候補をそのまま写さないこと。自分の文のどこが変わったかを、ノートに1行書かせます。無料で使える量は、トップページには書かれていません。

NEWS FLASH

今日のニュース

3本です。教師不足をめぐる財務省と文科相の食い違い、アメリカの教師評価、SNS の規制です。

JAPAN · 10.23

教師不足の大きな要因は「定数改善」と財務省。文科相は「必要な人員だった」と反論

教育新聞によると、財務省は10月22日に、財政制度等審議会の分科会で見方を示しました。教員定数の改善が、教師不足の大きな要因になっている、というものです。

  • ・2021〜2025年度に、小中学校の教員は2,737人増えたが、定数は4,248人増えた。そのため不足が広がった、と財務省は説明した
  • ・新人の教員の奨学金の返還を免除する、という文科省の要求には、慎重な分析が必要だとした
  • ・関芳弘文科相は10月23日の会見で、この見方に反論した。子どもや教師の状況が大きく変わる中で、きめ細かく対応するのに必要な人員だった、と述べた

教員の数は、英語の授業の学級の人数や、先生の持ち時間にも関わります。年末の予算の決まり方を見ておくと役に立ちます。

USA · 10.23

アメリカの「教師評価改革」は、なぜ期待外れに終わったのか。成否を分けたのは「実施への投資」

教育新聞のシリーズ「海外の教育ニュースを読む」の回です。ジャーナリストの中岡望さんが、アメリカの教師評価の改革についての論文を紹介しました。論文は、バージニア大学の James H. Wyckoff 教授が書いたものです。

  • ・改革は教師の質を上げるためのものだったが、成果は限られ、2010年代半ばには期待がしぼんだ
  • ・うまくいかなかった地域では、管理職の訓練や時間が足りず、評価が甘くなった
  • ・論文によると、評価が効果を生むには4つが要る。授業の力を正しく測る。具体的で早いフィードバック。コーチングや研修の支え。続けて習慣にすること

校内の授業参観を見直すときにも、この4つは点検の項目として使えます。

JAPAN · 10.21

SNS の無限スクロールは「1社への規制では不十分」。メタの安全対策の責任者が東京で語る

教育新聞によると、10月21日に、メタ(旧フェイスブック)が東京都内でイベントを開きました。安全対策の世界の責任者、アンティゴネ・デイビスさんが話しました。10代の安全な SNS の使い方を考える会で、総務省が進める官民の取り組みの一つです。

  • ・EU で議論されている無限スクロールの規制について話した。1つのアプリだけを規制しても、子どもは別のアプリへ移る、と指摘した
  • ・13〜17歳は、保護の機能がついた「ティーンアカウント」で使う形だ、と説明した
  • ・ITジャーナリストの鈴木朋子さんは、保護者の悩みでいちばん多いのは使う時間の長さだと話した

スマホの使い方を英語で話す授業の題材にもなります。

FREE TOOLS

無料の学習ツール4選

今号のテーマは「生徒全員の答えを、一度に見るツール」。今日の研究の板と同じことを、紙や画面でできるものを選びました。

Plickers

Plickers のヘルプによると、生徒は一人ひとり違うカードを掲げて、選択式の問題に答えます。生徒の端末やアカウントは要りません。先生がスマホのアプリでカードを読み取ると、答えが集まり、その場で結果を見せられます。インターネットにつながらないときにも使える、と書かれています。

Whiteboard.fi

公式ブログによると、生徒一人ひとりに画面上のホワイトボードが用意されます。先生は全員のボードを、その場で見られます。生徒はリンクや QR コードで入り、生徒のアカウントは要りません。公式サイトによると、運営は Kahoot! のグループの会社です。

AnswerGarden

AnswerGarden の説明のページによると、短い答えを集めて、ワードクラウドで見せるツールです。無料で、答える人にも、作る人にもログインは要りません。1語で答えられる質問に向いています。長い答えや、問題の多いクイズには向かない、とも書いています。

Slido

Slido のページによると、選択式、ワードクラウド、クイズなど、8種類の投票の形があります。参加する人は、リンクか QR コードで、どの端末からでも入れます。無料で投票を作れると書かれていますが、無料の範囲は料金のページで確かめます。

STORY BREAK

生徒に話したくなる小ネタ

どちらも、今日の話に出てくる語です。respond(答える)と card(カード)です。

respond(答える)の中には、「約束する」が入っています

英語版 Wiktionary によると、respond はラテン語の respondeō から来ました。respondeō は、re- と spondeō(約束する)を合わせた語です。

spondeō には、「約束する」「保証する」のほかに、「結婚を約束する」も載っています。Wiktionary の spouse(配偶者)のページによると、spouse も同じ spondeō から来ています。

授業でなら、Please respond in English. と言えます。respond と spouse が同じ語から来ていると話すと、生徒はつづりの spond に気づきます。

card(カード)は、もとをたどると「パピルスの紙」でした

英語版 Wiktionary によると、card は古フランス語の carte から来ました。さかのぼると、ギリシャ語の khartēs(紙、パピルス)です。同じページによると、card と chart(図表)は doublet です。同じ根から、別々に英語へ入った語です。

card には、今は使われない意味として「地図、海図」も載っています。1590年のスペンサーの詩に、その例が引かれています。

授業でなら、Hold up your card. と言えます。今日の研究の生徒たちが、答えを書いて掲げていたものです。

QUOTE

今日の名言

今日の一行

“The important thing is not to stop questioning.”

大切なのは、問うのをやめないことです。(訳は筆者)

アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)。雑誌 LIFE(1955年5月2日号)の記事「Death of a Genius」に載った言葉。William Miller に語ったもの。出典は英語版 Wikiquote

questioning は「問い続けること」です。今日の研究は、先生の問いに、生徒の何人が答えを返すかを数えたものでした。

問いを続けるのは、先生だけではありません。全員が答えを書いて見せる形なら、生徒も自分の答えが合っているかを確かめられます。

明日は、授業の最後に1つだけ、全員にノートへ答えを書かせて見せる問いを出してください。

THE FLIP

常識がひっくり返る話

手を挙げた生徒に答えさせれば、授業は進みます。でも、全員に答えを書いて見せさせると、答えた回数は14倍になりました

英語の授業で、先生が質問をします。何人かが手を挙げます。先生は、そのうちの1人を指名します。正しい答えが返ってきたら、次へ進みます。

この形には、よいところがあります。時間がかかりません。分かっている生徒が答えるので、授業がよどみません。ほかの生徒も、心の中で答えを考えているはずです。

それに、全員に答えさせると時間がかかりそうです。40人に1人ずつ言わせていたら、1問に何分もかかります。

では、手を挙げた1人に答えさせる形で、ほかの生徒は本当に答えを考えているのでしょうか。

ところが

これを調べたのが、オハイオ州立大学などの研究者たちです。William L. Heward が加わった研究が2つあります。どちらも学術誌 Journal of Applied Behavior Analysis に載りました。どちらも、ここでは公開されている要旨から紹介します。

1つ目は、1990年の Narayan たちの研究です(23巻4号、483〜490ページ)。

  • ・小学4年生の学級で、社会科の全体授業を使った
  • ・2つのやり方を、交互に2回ずつくり返して比べた。1つは挙手で、先生は手を挙げた1人を指名した
  • ・もう1つは、全員にラミネート加工した白い板を配り、先生の質問ごとに、1〜2語の答えを書かせた
  • ・授業中に生徒が答えを返すペースは、板のほうがずっと速かった。毎日の小テストも、多くの生徒が、板を使った日のほうが高かった
  • ・学級の20人のうち19人が、挙手より板のほうがよいと答えた

2つ目は、1994年の Gardner たちの研究です(27巻1号、63〜71ページ)。1つ目と同じやり方を、別の学級でくり返しました。

  • ・大都市の中心部(inner-city)にある小学5年生の学級で、理科の授業を使った
  • ・生徒が答えを返した回数は、板のほうが挙手の14倍だった
  • ・22人全員が、板を使って習った内容のほうが点が高かった。翌日の小テストでも、2週間後のまとめのテストでも同じだった

注意点が3つあります。

1つ目。どちらも、1つの学級の小学生を調べた研究です。人数は20人と22人です。教科は社会科と理科で、外国語ではありません。日本の中高の英語の授業で同じになるかは、確かめられていません。

2つ目。答えは1〜2語でした。長い文を書かせる問いでは、書く時間がかかります。同じ数の問いはこなせない、と考えておきます。

3つ目。ここで紹介した数字は、要旨に書かれたものだけです。1つ目の研究の要旨は、差を「ずっと高かった」としか書いていません。

それでも、教室で使える考え方はあります。手を挙げた1人の答えが正しくても、残りの生徒が分かっているとは限りません。答えが1〜2語で済む問いなら、全員に書かせて同時に見せます。誰が分かっているかが、先生にも生徒にも見えます。

明日の授業でやること|次の授業で、本文の確認の質問を、挙手ではなく全員に書いて見せさせる

  1. 本文の確認の質問を、答えが1〜2語で済む形で5つ作ります。Who、What、Where、When で始まる質問にすると作りやすくなります
  2. 生徒にノートの白いページか、裏紙を1枚用意させます。ミニホワイトボードがあれば、それを使います
  3. 質問を1つ言い、10秒ほど待ってから、One, two, three, show me! で全員に同時に掲げさせます
  4. 正しく書けた生徒が何人くらいかを、ざっと数えて黒板の端に書きます。半分に届かなかった質問だけ、本文に戻って確かめます

この号で触れたリンク

今日の研究では、全員が板に答えを書いて見せると、答えた回数が挙手の14倍になりました。ただし、アメリカの小学生の1つの学級ずつを調べた研究で、教科も英語ではありません。

明日は、本文の確認の質問を1〜2語で答えられる形にして、全員に書いて見せさせてください。何人が分かっているかが、その場で見えます。

またあした。

Vol.77 10.25.2026

よくある質問

ミニホワイトボードで全員に答えさせると、授業の効果はありますか。

Gardner たちの1994年の研究は、小学5年生の理科の授業で調べました。全員が板に1〜2語の答えを書いて見せると、答えた回数は挙手の14倍でした。22人全員が、板を使って習った内容のほうが、テストの点が高くなりました。ただし、1つの学級を調べた研究で、教科は英語ではありません。

挙手で1人に答えさせる形と、何が違うのですか。

挙手では、答えるのは指名された1人だけです。板を使う形では、問いのたびに全員が答えを書いて同時に見せます。先生は、誰が分かっているかを一目で見られます。Narayan たちの1990年の研究では、20人のうち19人が、挙手より板がよいと答えました。

新しい教科書で、英語はデジタルだけになるのですか。

教育新聞によると、素案では、原則として紙とデジタルを合わせた教科書が中心になります。外国語は、デジタルだけでも認め得る教科に挙がりました。まだ素案で、近くパブリックコメントにかけられる予定です。