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聞きながら読む効果は?自分のペースで読む組とは、差がほぼ出ませんでした

ニュースレター|Vol.75

本文の音声を流しながら読ませると、理解は深まるのか。30本の研究をまとめた分析を紹介します。新しい教科書は紙とデジタルのハイブリッドが中心になる、という文科省の会議の素案と、AIとなら話せるのに人が相手だと黙ってしまう、という調査も取り上げました。帯活動2本、教室英語4本つきです。

監修:原田高志(原田英語.com)

おはようございます。今日の話は、本文の音声を流しながら読ませると、理解が深まるのかです。「CDに合わせて目で追ってごらん」と生徒に言ったことのある先生に、読んでいただきたい号です。

10.23.2026 Vol.75

おはようございます。

今日は、音声を聞きながら読む場合と、読むだけの場合とを比べた研究30本を、まとめて分析した論文を紹介します。聞きながら読む効果は小さく、読む側が自分のペースで読める研究では、差はほぼ見られませんでした。

注目記事は、新しい教科書の形です。文部科学省の会議の素案で、紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド型」が中心になる、と示されました。

TODAY'S PICK

新しい教科書は、紙とデジタルのハイブリッドが中心に。フルデジタルを認め得る教科に外国語

教育新聞(2026年10月22日掲載)

文部科学省の検討会議が10月22日に第6回の会合を開き、新しい教科書についての大臣指針の素案を示しました。今年6月に成立した改正学校教育法で、紙の教科書に加えて、フルデジタルと、紙とデジタルのハイブリッドも、教科書として位置づけられています。指針は今秋に作る予定です。

記事によると、素案のおもな内容は次のとおりです。

  • ・紙かデジタルかの二者択一にしない。教科ごとに、紙が効く学習場面とデジタルが効く学習場面を表に整理した
  • ・当面は、ハイブリッド型が、すべての学年・教科で中心になると想定する。文科省が採択権者に聞いた調査では、ハイブリッド型を望む回答が、どの学校段階でも約8〜9割だった
  • ・フルデジタルは、一部の学年・教科に限って認める。小学校の低学年・中学年では認めない
  • ・フルデジタルを認め得る教科として、外国語のほか、小学校高学年の音楽・図画工作、中学校の音楽・美術などが挙がった
  • ・スクリーンタイムの影響については、続けて調べる

素案は、近くパブリックコメントにかけられる、とのことです。

外国語は、フルデジタルの教科書を認め得る教科に入りました。教科書が画面に載ると、本文の音声を流しながら読ませる場面も考えやすくなります。

ただ、聞きながら読めば、読むだけより分かるのでしょうか。今日の IX は、その問いを30本の研究でまとめた論文です。

明日やることは1つです。次に本文の音声を流すとき、何のために流すのかを、生徒に1文で伝えてください。意味を取るためか、発音を確かめるためか。目的が決まると、流すタイミングも決まります。

WARM-UPS

今日の帯活動(5分でできる)

どちらも、教科書と音声だけで回せます。1本目は音声ありとなしで読み比べる活動、2本目は音にしないと読めない語を探す活動です。

同じ段落を、音声つきで1回、音声なしで1回読み、どちらが分かったかを手で示す

対象 中2〜高校 時間 6分 準備 教科書の音声のみ

  1. 教科書の1段落を選びます。前半の半分は、音声を流しながら、目で本文を追って読ませます
  2. 後半の半分は、音声を流さず、自分の速さで黙って読ませます
  3. 前半と後半から1問ずつ、内容の問いを英語で出し、ノートに答えを書かせます
  4. 最後に、音声ありと音声なしのどちらが分かりやすかったかを、指1本か2本で示させます。次の授業では、前半と後半を入れ替えます
  • 💡 今日の研究のまとめでは、自分のペースで読めるときは、音声を足しても理解の差はほぼ見られませんでした。どちらが合うかは、生徒自身に比べさせます。前半と後半で文の難しさが違うこともあるので、次の授業で入れ替えて、もう一度比べます。

黙読しながら、声に出して読めない語に丸をつけ、その語だけ音声で聞く

対象 中1〜高校 時間 5分 準備 教科書の音声のみ

  1. 本文を黙って読ませます。読みながら、声に出して読めない語に丸をつけさせます
  2. ペアで丸をつけた語を見せ合い、2人とも丸をつけた語に、もう1つ印をつけさせます
  3. 先生が、印の多かった語を3つ選び、その語が入った文だけ音声で流します
  4. 最後に、本文をもう一度、黙って読ませます
  • 💡 研究のまとめは、音声が特に役に立つ可能性があるのは、文字を音に直すところでつまずく読み手だ、と書いています。ただし、確かめた研究はまだ多くありません。全文に音声をつける前に、どの語でつまずいているかを先に見つけます。

CLASSROOM ENGLISH

そのまま使える教室英語

今日の4本は、本文の音声を流すときと、そのあとに、先生が言う英語です。

音声を流す前に

Follow the text with your eyes while you listen.

聞きながら、目で本文を追ってね。

follow は「あとについていく」です。with your eyes を足すと、声に出さずに目だけで追う、という指示になります。

音声を止めたあとに

Now read it again silently, at your own speed.

じゃあ、今度は黙って、自分の速さでもう一度読んで。

at your own speed は「自分の速さで」です。音声の速さから離れてよい、と伝える一言です。

黙読の前に

Circle any word you can't say out loud.

声に出して読めない語に、丸をつけてね。

say out loud は「声に出して言う」です。any word と言うと、いくつ丸をつけてもよい、という意味になります。

読み比べたあとに

Which was easier to understand, with the audio or without it?

音声ありと音声なし、どっちが分かりやすかった?

with the audio と without it を並べると、2つから選ぶ問いになります。指1本か2本で答えさせると、全員の答えが一度に見えます。

AI TOOLKIT

AI × 英語指導

教師向け1つ、生徒向け1つ

教師向けClipchamp のテキスト読み上げ

マイクロソフトの動画編集アプリ Clipchamp には、打ち込んだ文を音声にする機能があります。ヘルプによると、音声づくりには Microsoft Azure AI Speech が使われています。言語と声を選べて、声の高さは5段階、速さはスライダーで変えられます。個人用のアカウントのほか、職場・学校用のアカウントでも同じように使える、とヘルプは説明しています。

使いどころ:🎓 こう使います。「録画と作成」のタブから「テキスト読み上げ」を選びます。言語で英語を選び、声を試し聞きしてから、自作のプリントの英文を貼り付けます。速さを少し落とした版と、ふつうの速さの版を2つ作っておくと、生徒が選べます。⚠ 1回に入る文字数には上限があり、言語によって違います。長い英文は、いくつかに分けて作ります。

生徒向けGoogle レンズの「聞く」

スマホの Google アプリに入っている Google レンズで、カメラを紙の英文に向け、文字を選ぶと、「聞く」でその部分を読み上げます。Google のヘルプによると、この機能は Android と iOS で使えます。読み上げている間は「停止」が表示され、押せば止まります。

使いどころ:🎓 こう使います。家で教科書の本文を読んでいて、読み方の分からない語が出てきたら、その語を含む1文だけをレンズで選び、「聞く」を押します。⚠ 本文を最初から最後まで聞かせる道具にはしません。今日の研究では、自分のペースで読めるとき、音声を足しても理解の差はほぼ見られませんでした。つまずいた1文だけに使います。

NEWS FLASH

今日のニュース

3本です。AIと人との英会話の調査、英語の先生を支えるプロジェクトの1年、東京都のAIと校務の会議です。

JAPAN · 10.20

英語で話しやすい相手は「AI・アプリ」が最多。人が相手だと黙ってしまう、が約9割

ICT教育ニュースによると、イーオンが「AI・デジタル時代の英語学習」に関する実態調査の結果を、10月20日に公表しました。対象は全国の18〜50歳の男女1,000人で、調査は9月4日から8日に、インターネットで行われました。

  • ・英語で話しやすい相手は、「AI・アプリ」が62.8%で最も多かった。実際の場面で出会う外国人は19.2%
  • ・人を相手に話すと、AI・アプリで練習するときより、言葉に詰まって黙ってしまうことが多いと感じる人は、合わせて89.1%
  • ・実践(人と話すこと)に力を入れた人のうち、出会う外国人とスムーズに話せると感じる人は32.0%。力を入れなかった人では8.6%

AIで練習させるだけで、人と話す練習の代わりになるとは考えないほうがよさそうです。ただし、対象は大人で、自分で感じていることを答えた調査です。

JAPAN · 10.22

英語の先生の悩みの1位は「授業の流れ作り」。QQEnglish の教員支援プロジェクトが1周年

ICT教育ニュース(10月22日掲載)によると、QQEnglish が、英語の先生を支えるプロジェクト「English for Teachers Project」の1周年に合わせて、参加した先生への調査結果を公表しました。プロジェクトは2025年10月16日に始まり、小・中・高校の英語の先生が対象です。調査は、2026年10月1日までに申し込んだ70人の申込フォームの回答です。

  • ・参加した時点の課題は、「授業の流れ作り」25.7%、「アクティビティのネタ不足」20.0%、「発音・リズム・リンキング」18.6%の順
  • ・参加理由でいちばん多かったのは、「自分の英語力を高めたい」で48.6%

授業の流れとネタに困っている先生が多い、という結果です。このニュースレターの帯活動も、そのまま使える形で書いています。ただし、70人の回答で、運営会社が自社のプロジェクトの参加者に聞いた調査です。

JAPAN · 10.19

AIの問題作成は、全面的には信頼できない前提で使う。東京都教育委員会の有識者会議

教育新聞によると、東京都教育委員会の「学校教育のDX推進に向けた有識者会議」が、10月19日に2回目の会合を開きました。テーマの1つは、先生の仕事を減らすために、どんなAIの機能を学校に入れるかです。

  • ・委員からは、AIによる問題作成もチェックを丁寧にし、全面的には信頼できない前提で使うべきだ、という意見が出た
  • ・文章で答える問題の採点は、AIの力は高くない、という見方も示された
  • ・会議は、年度内に提言をまとめる予定

英作文の採点をAIに任せたくなったときは、少なくとも何枚かは自分で採点して、AIの点と比べてください。

FREE TOOLS

無料の学習ツール4選

今号のテーマは「英文と音声の両方が無料で手に入る素材」。音声を使うかどうかを、生徒が自分で選べます。

Lit2Go

南フロリダ大学の教育学部にある Florida Center for Instructional Technology が運営している、物語と詩の無料の音声(MP3)のコレクションです。作品ごとに、要約、再生時間、語数が載っていて、本文は PDF で印刷できます。読みやすさのレベルからも探せるので、生徒に合う作品を選べます。

English e-Reader

英語学習者向けに書き直された本(グレーデッド・リーダー)を、無料で読めるオンラインの図書館です。本は A1 Starter から C2 Unabridged までのレベルに分かれていて、音声つきの本もあります。自分のレベルが分からないときのための、短いテストもあります。

Loyal Books

著作権の切れた本の、無料のオーディオブックと電子書籍をそろえたサイトです。合言葉は「Books Should Be Free」です。英語のほか、フランス語、ドイツ語、日本語などの本もあります。

Chrome のリーディング モード(読み上げ)

パソコンの Chrome で、ページを右クリックして「リーディング モードで開く」を選ぶと、本文だけが表示されます。Google のヘルプによると、その画面で本文を読み上げられます。読む速さと声を変えられ、読んでいる語や文に色をつけることもできます。

STORY BREAK

生徒に話したくなる小ネタ

どちらも、今日の話に出てくる語です。listen(聞く)と text(本文)です。

listen(聞く)と loud(大きな声の)は、同じ「聞く」の根から出ています

英語版 Wiktionary によると、listen は古英語の hlysnan(聞く)から来ています。さらにさかのぼると、「聞く」という意味のインド・ヨーロッパ祖語の根に行き着きます。同じページは、listen は loud と関係がある、と書いています。

loud のページを見ると、古英語の形は hlūd です。ゲルマン祖語の形は「聞かれた」という意味だった、と書かれています。

授業でなら、Listen. と Speak loudly. を並べて書けます。どちらの語にも、もとは「聞く」が入っています。

text(本文)は、もともと「織る」から来た語です

英語版 Wiktionary によると、text は、フランス語を通って、ラテン語の textus から来ています。textus は「作品の文体や手ざわり」という意味で、もとは「織る」という意味の動詞 texō の形です。同じページは、texture(手ざわり・きめ)と同じ語源だ、と書いています。

英語では、教科書の本文を the text と言います。授業でなら、Open your textbook and find the text on page 30. と言えます。textbook にも、同じ text が入っています。

QUOTE

今日の名言

今日の一行

“Words, words, words.”

ことば、ことば、ことば。(訳は筆者)

ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)『ハムレット』第2幕第2場より。ポローニアスの「何をお読みで?(What do you read, my lord?)」に、ハムレットが返したことば。英文は MIT の The Complete Works of William Shakespeare の版から

このあとポローニアスは、What is the matter, my lord?(何が書いてあるのですか)と聞き直します。ハムレットは Between who?(誰と誰の?)と返します。

音声を流せば、語は全部、生徒の耳に入ります。それでも、聞きたいのは中身(matter)のほうです。読み終えたら、何が書いてあったかを、生徒に1文で言わせてください。

THE FLIP

常識がひっくり返る話

本文の音声を流しながら読ませれば、読むだけより分かるでしょうか。自分のペースで読める研究では、差はほぼ見られませんでした

「CDに合わせて、目で本文を追ってごらん」。英語の授業で、よく使う指示だと思います。再生ボタンを押せば、すぐに流せます。

理由も分かりやすいです。目と耳の両方から英文が入ります。読めない語も、音で分かります。読む速さも、音声が引っぱってくれます。

では、聞きながら読むと、読むだけのときより、本当に内容が分かるのでしょうか。

ところが

これをまとめて調べたのが、ノースダコタ大学の Virginia Clinton-Lisell です。学術誌 Educational Research: Theory and Practice の34巻3号(2023年)に載りました。論文によると、内容は次のとおりです。

  • ・聞きながら読む場合と、読むだけの場合とで、本文の理解を比べた研究を集めた。対象は30本、参加者は合わせて1,945人
  • ・全体では、聞きながら読むほうが、わずかに上だった。効果量は 0.18(よく使われる目安では、0.2 で「小さい」)。論文は、この差を「ごくわずか」と書いている
  • ・差が出ていたのは、読むだけの組の読む速さを、実験する側が決めていた研究だった(9本)。効果量は 0.41(目安では、0.2 が「小さい」、0.5 が「中くらい」)
  • ・読むだけの組が自分のペースで読めた研究(24本)では、差はほぼゼロだった。効果量は 0.06 で、偶然の範囲を出なかった
  • ・学んでいる外国語で読んだ研究と、母語で読んだ研究とで、はっきりした違いは見られなかった

もう1本、2016年に学術誌 SAGE Open に載った Rogowsky、Calhoun、Tallal の研究もあります。91人を、オーディオブックで聞く組、電子書籍で読む組、両方を同時に使う組に分けました。直後と2週間後の理解のテストで、3つの組のあいだに、統計で意味のある差は見られませんでした。

注意点が3つあります。

1つ目。まとめたのは、その場で読んだ本文の理解です。何か月も聞きながら読み続けて、読む力が伸びるかは、このまとめの対象に入っていません。

2つ目。論文は、文字を音に直すところでつまずく読み手には、聞きながら読むことが特に役に立つ可能性がある、と書いています。外国語で読みながら新しい語を覚える場面でも、大きな効果が出た研究が2本ありました。ただし、どちらも研究の数が少なく、言い切れる段階ではない、とも書いています。

3つ目。論文は、生徒が音声を使いたいなら、止める必要はない、と結んでいます。音声が悪いのではありません。

教室への結論は、次のとおりです。自分のペースで読める生徒に、意味を取らせる目的で、毎回全文の音声を流す必要はありません。音声は、読めない語でつまずいている生徒や場面に絞って使います。

動画で見る

Do audiobooks count as reading? Here's what the science says (NPR Podcasts) 英語の動画です。オーディオブックで聞くことは読書に入るのか、を扱った NPR Podcasts の動画です。

明日の授業でやること|次の授業で、音声を「全員に全文」から「つまずいた所だけ」に変えてみる

  1. 最初の1回は、音声を流さずに、自分の速さで本文を黙って読ませます
  2. 読みながら、声に出して読めない語に丸をつけさせます
  3. 丸の多かった語を含む文だけ、音声で流します。丸がたくさんついた生徒には、全文の音声を使ってよいと伝えます
  4. 最後に、内容の問いを1つ出し、何が書いてあったかを英語か日本語の1文で書かせます

この号で触れたリンク

今日の研究では、自分のペースで読める場合、本文の音声を流しても、読むだけのときと理解の差はほぼ見られませんでした。ただし、読めない語でつまずいている生徒には、音声が役に立つ可能性があります。

明日は、最初の1回を音声なしで読ませてください。声に出して読めない語に丸をつけさせ、その文だけ音声で聞かせます。

またあした。

Vol.75 10.23.2026

よくある質問

音声を聞きながら読むと、読むだけより内容が分かりますか。

Clinton-Lisell の2023年の分析では、30本の研究をまとめると、聞きながら読むほうがわずかに上でした。ただし、読む側が自分のペースで読めた研究(24本)では、差はほぼありませんでした。差が出たのは、読むだけの組の読む速さを、実験する側が決めていた研究です。

英語のような外国語で読む場合は、違いますか。

同じ分析では、外国語で読んだ研究と母語で読んだ研究とで、はっきりした違いは見られませんでした。外国語で読みながら新しい語を覚える場面では、大きな効果が出た研究が2本ありましたが、数が少なく、言い切れる段階ではありません。

新しい教科書は、どうなりますか。

教育新聞によると、文部科学省の検討会議が2026年10月22日に示した素案では、当面は紙とデジタルのハイブリッド型が中心です。フルデジタルは一部の学年・教科に限って認め、認め得る教科に外国語が挙がりました。素案は近くパブリックコメントにかけられます。