英語の発音指導に効果はある?86件の研究をまとめた分析
ニュースレター|Vol.72
英語の発音を授業で教えることに、効果はあるのか。86件の研究報告をまとめた2015年の分析を紹介します。IIBC の「英語で話す一歩を、もっと軽やかに。」プロジェクトの発表も取り上げました。発音の音を聞かせる道具4つと、pronounce・accent の語源も載せました。帯活動2本、教室英語4本つきです。
監修:原田高志(原田英語.com)
おはようございます。今日の話は、英語の発音を授業で教えることに、効果があるのかです。発音の指導に時間を使うか迷っている先生に、読んでいただきたい号です。
10.20.2026 Vol.72
おはようございます。
今日は、英語の発音を教える効果について、86件の研究報告をまとめた分析を紹介します。全体として、効果は大きいと報告されています。ただし、測り方によって、はっきり出る場合とそうでない場合があります。
注目記事は、10月19日の「TOEICの日」に始まった、英語で話すことへの心理的なハードルを下げるプロジェクトです。
TODAY'S PICK
IIBC、「英語で話す一歩を、もっと軽やかに。」プロジェクトを始動
リセマム(2026年10月19日掲載)
TOEIC Program を運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が、10月19日の「TOEICの日」にあわせて、プロジェクト「英語で話す一歩を、もっと軽やかに。」を始めました。
記事によると、内容は次のとおりです。
- ・目的は、英語で話すことへの心理的なハードルを下げること
- ・目指す姿は「英語で話すことへの壁を、感じなくなる社会へ」
- ・対象は、発音や文法の正確さ、流暢さへの不安から、英語で話すのをためらう人
- ・賛同パートナーとして、エンワールド・ジャパン、国際協力機構(JICA)、キリン、シェーン英会話、神田外語グループ、東洋大学などが名を連ねている(記事に名前が出ているのは、この6団体)
記事には、具体的な取り組みの内容や期間は書かれていません。
記事から分かるのは、プロジェクトの狙いまでです。具体的に何をするのかは、この記事だけでは分かりません。
教室で気になるのは、対象にある「発音や文法の正確さ、流暢さへの不安」です。自分のクラスで、生徒が黙る理由を考えてみてください。英語が分からないからではなく、間違えた音を聞かれたくないからかもしれません。
明日やることは1つです。生徒が英語を声に出したあと、発音の指摘より先に、「言いたいことは伝わったよ」と先生が1回言ってください。直す音は、そのあとで1つだけ選びます。
リセマム|IIBC「英語で話す一歩を、もっと軽やかに。」プロジェクト始動
WARM-UPS
今日の帯活動(5分でできる)
どちらも黒板と教科書だけで回せます。1本目は聞き手が書き取る活動、2本目は引っかかった語を口の形でまねる活動です。
ペアの一方が教科書の5語を読み、もう一方が聞こえた語を書き取る
- 今日の教科書の本文から5つの語を選び、番号をつけて黒板に書きます。ペアの一方(読む人)だけが黒板を向き、もう一方(聞く人)は黒板に背を向けます
- 読む人が、1番から5番までを1語ずつ読みます。聞く人は、聞こえた語をノートに書きます
- 5語が終わったら、聞く人のノートと黒板を見比べます。書き取れなかった語に○をつけます
- ○をつけた語だけ、読む人がもう一度ゆっくり読みます。役割を交代して、別の5語でもう1回行います
- 💡 伝わったかどうかを、聞き手のノートが示します。先生が直す前に、生徒が自分の音の伝わり方を知る機会になります。
読んでいて引っかかった語に印をつけ、先生の口の形を見てから言い直す
- 本文を1回、小さな声で音読させます。言いにくかった語に、鉛筆で印をつけさせます
- 印の多かった語を、先生が3つ選んで黒板に書きます
- 先生が1語ずつ、口の形が見えるようにゆっくり言います。生徒は声を出さず、口だけ動かします
- そのあと全員で声に出して言い、最後にペアで1回ずつ言い合います
- 💡 生徒自身が印をつけた語から始めるので、本人が実際に引っかかった語を練習できます。
CLASSROOM ENGLISH
そのまま使える教室英語
今日の4本は、発音を聞いて直すときに先生が言う英語です。
生徒の言った語が聞き取れなかったとき
I didn't catch that word. Can you say it one more time?
その語が聞き取れなかったよ。もう一度言ってくれる?
catch は「聞き取る」です。聞こえなかったのは自分のほうだと伝えると、生徒を責めずに言い直しを頼めます。
口の形を見せるとき
Watch my mouth first, and then try it.
まず先生の口を見て、それからやってみて。
first と then で順番を示します。声を出す前に、目で口の形を確かめさせられます。
直す音を1つに絞るとき
Let's work on just one sound today.
今日は1つの音だけ練習しよう。
just one で範囲を絞ります。全部は直さないと決めたことを、生徒にも伝えられます。
ペアで聞き合わせるとき
Say the word, and your partner will tell you what they heard.
語を言って。パートナーが、何と聞こえたか教えてくれるよ。
what they heard は「聞こえたもの」です。聞き手が答えるので、先生の評価より前に、伝わり方が分かります。
AI TOOLKIT
AI × 英語指導
教師向け1つ、生徒向け1つ
教師向けMicrosoft Word の「読み上げ」
Word の文書を、音声で読み上げる機能です。Microsoft のサポートページによると、読み上げの途中で、読んでいる語が1語ずつ強調表示されます。再生速度を速くしたり遅くしたりでき、声も変えられます。教科書の本文やプリントの英文を、授業の前に聞いて確かめるのに使えます。
使いどころ:🎓 こう使います。教科書の本文やプリントの英文を Word に貼り、カーソルを読み始めたい位置に置いて、「校閲」タブの「読み上げ」を選びます。「再生速度」で読む速さを変えます。声を変えるときは、「その他」の「音声の選択」を開きます。⚠ 使える声や言語は、お使いの環境で違うかもしれません。英語の文が英語の声で読まれているか、授業で流す前に先生が聞いて確かめてください。
生徒向けGoogle ドキュメントの音声入力
Google ドキュメントで、話した言葉が文字になる機能です。Google のヘルプによると、対応ブラウザは Chrome、Edge、Safari の最新版です。日本語を含む多くの言語に対応しています。生徒が英語を話して、機械にどう聞こえたかを画面で見る使い方ができます。
使いどころ:🎓 こう使わせます。「ツール」から「音声入力」を選び、マイクを押して、英語の短い文を言わせます。話す前に、入力の言語が英語になっているか確かめます。画面に出た文字が、言った文と合っているか、ペアで見比べます。⚠ 文字が合っていても、発音が正しいとは限りません。違っていても、機械の聞き間違いのことがあります。「伝わりやすさの目安」として使わせてください。
NEWS FLASH
今日のニュース
3本です。TOEIC L&R の受験地追加、GMOメディアのAI作問の模試、生成AIの教員研修会のレポートです。
JAPAN · 10.02
TOEIC L&R、2027年2月と3月の公開テストに14の受験地を追加
リセマムによると、国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が、TOEIC Listening & Reading Test の公開テストの受験地を14増やします。
- ・2027年2月14日実施分:33から45の受験地へ(12追加)
- ・2027年3月6日実施分:16から18の受験地へ(2追加)
- ・申込受付は、2月14日分が2026年11月27日から2027年1月7日まで。3月6日分が2026年12月10日から2027年1月27日まで
追加の理由として、記事は、大学院入試や就職活動を控えた学生や、新年の学習成果を測りたい社会人の需要に応えるため、と説明しています。
高校の先生に直接かかる話ではありません。卒業後に TOEIC を受けたいと言う生徒には、2月14日分の申込が11月27日から始まると案内できます。
JAPAN · 10.19
GMOメディア、AIで作問した「情報Ⅰ」のデジタル模試を無料で開催
ICT教育ニュースによると、GMOメディアが、大学入学共通テスト「情報Ⅰ」の対策として、第2回デジタル模試を無料で開きます。対象は全国の高校生で、参加できるのは「コエテコStudy byGMO」に登録した学校(トライアル登録を含む)です。
- ・申込は2026年10月15日から11月27日16時59分まで
- ・実施は12月1日から12月20日23時59分まで。45分のCBT形式
- ・AIによる作問技術でオリジナル問題を作り、実教出版が内容、難易度、共通テストとの整合性を監修する
- ・採点と集計は自動で、校内の順位や問題別の結果をまとめた分析レポートが学校に提供される
英語の話ではありません。ただ、AIが作った問題を、出版社が監修してから出す、という手順は参考になります。AIに作らせた小テストは、そのまま配らず、先生が1問ずつ解いて確かめてから使ってください。
JAPAN · 10.19
ロイロ、教員コミュニティ主催の「教育と生成AI 大研修会2026」のレポートを公開
ICT教育ニュースによると、LoiLo は、教員コミュニティ「LEG(ロイロ教育者グループ)」が主催し、LoiLo が協賛した「教育と生成AI 大研修会2026」を取材し、ロイロノート公式 note でレポートを公開しました。
- ・研修会は2026年8月から9月にかけて、全国5都市で開かれた
- ・8月2日の福岡会場と8月11日の大阪会場には、それぞれ約100名の教員が参加した
- ・内容は、基調講演、ロイロ認定ティーチャーによる事例共有、ワークショップ
- ・公開済みなのは福岡と大阪のレポート。仙台、東京、名古屋のレポートは順次公開予定
記事に、参加者の感想や調査の数字は載っていません。校内で生成AIの研修を企画するとき、講演、事例共有、ワークショップという流れは参考になります。
FREE TOOLS
無料の学習ツール4選
今号のテーマは「英語の音を、聞かせる・見せる道具」。生徒に音を聞かせたいとき、口の動きを見せたいときの4つです。
LearnEnglish Sounds Right(ブリティッシュ・カウンシル)
ブリティッシュ・カウンシルの、無料の発音チャートのアプリです。音をタップするとその音が聞こえ、下向きの矢印をタップすると、その音を含む3つの語が聞こえます。母音は口の形に合わせて並んでいます。ページのコメントによると、2023年の時点で、Android は11以下のみに対応していました。使う前に、お手持ちの端末で確かめてください。
Phonemic chart for English teachers(TeachingEnglish)
ブリティッシュ・カウンシルの教師向けサイトにあるページです。教室に掲示できる発音記号のチャートと、発音記号1つにつきA4のポスター1枚をダウンロードできます。ページには、音を少しずつ、何度も出していく進め方と、最小対(sit と seat のように、1つの音だけが違う語の組)を使った練習が載っています。
Sounds of Speech(アイオワ大学)
アイオワ大学の Jerry Moon 教授が作った、英語の音の教材です。音を聞きながら、その音を出すときの口の中の動きをアニメーションで見られます。2014年の大学の記事によると、ウェブ版の教材は英語、スペイン語、ドイツ語の音を扱っています。スマホ用のアプリは、無料の簡易版と有料の完全版があると、同じ記事に書かれています。
Forvo
利用者が録音した音声を集めた、発音のサイトです。語を検索すると、いろいろな人が録音した読み方を聞けます。録音は投稿者によるので、標準的な発音とは限りません。授業で使う前に、先生が聞いて確かめてください。
STORY BREAK
生徒に話したくなる小ネタ
どちらも発音の話で出る語です。pronounce(発音する)と accent(なまり、強勢)です。
pronounce(発音する)は、もともと「正式に宣言する」ことでした
Wiktionary によれば、pronounce は1330年ごろの中英語 pronouncen にさかのぼります。古フランス語の prononcier を経て、ラテン語の prōnūntiō から来ました。
prōnūntiō は、prō-(前へ、人前で)と nūntiō(知らせる)が組み合わさった語です。nūntiō のもとは、nūntius(使者)です。
最初の意味は、「正式に、公式に宣言する」でした。「語や句を声に出して言う」という意味も、同じ語の意味の1つとして載っています。
英語では、How do you pronounce your name?(あなたの名前は、どう発音しますか)と自然に聞けます。
accent は、もとは「〜に合わせて歌う」という動詞から来ています
Wiktionary によれば、accent は中英語の accent から来ています。中世ラテン語の accentus と古フランス語の accent を経て、ラテン語にたどり着きます。
accentus は、accinō(〜に合わせて歌う)の過去分詞です。accinō は、ad-(〜へ)と canō(歌う)が組み合わさった語です。
いまの accent には、音節の強勢、なまり、記号など、たくさんの意味があります。Wiktionary は名詞だけでも多くの意味を載せています。
英語では、I have a Japanese accent when I speak English.(英語を話すと、日本語なまりが出ます)と言えます。
QUOTE
今日の名言
今日の一行
“It is impossible for an Englishman to open his mouth without making some other Englishman hate or despise him.”
イギリス人が口を開けば、必ず、ほかのイギリス人に憎まれるか、見下される。(訳は筆者)
バーナード・ショー(Bernard Shaw)。戯曲『ピグマリオン』の序文より。英文は Project Gutenberg の版(eBook #3825)から
この一文は、話し方によって人への見方が決まってしまうことを、皮肉をこめて書いたものです。
教室では、発音の違いを、生徒の優劣を測るものさしにしないでください。発音を直すときは、まず「伝わった」と言い、それから直す音を1つだけ選びます。
THE FLIP
常識がひっくり返る話
発音は教えても直らない、と思っていませんか。86件の研究報告をまとめた分析では、教えた効果は大きいと報告されました
英語の発音は、授業で教えても直りにくい。そう感じている先生は多いと思います。
考え方は分かりやすいです。1回直しても、次の授業ではもとに戻ってしまう。それなら、点数に直結する文法や語彙に時間を使うほうがいい、というものです。
では、発音を教えることには、教えなかった場合と比べて、どれだけ効果があるのでしょうか。
ところが
この問いを含めて調べたのが、Junkyu Lee、Juhyun Jang、Luke Plonsky の分析です。応用言語学の学術誌 Applied Linguistics の2015年7月号(36巻3号)に載りました。
- ・外国語の発音指導の効果を調べた研究報告を探し、86件を集めた
- ・各報告の方法の特徴を記録し、効果の大きさを表す数字(効果量)を出した
結果はこうでした。
- ・発音指導の効果は、全体として「大きい」と報告された。効果量は、教えた組の前と後を比べると0.89、教えた組と教えなかった組を比べると0.80。数字が大きいほど差が大きく、0なら差なし
- ・効果がより大きかったのは、期間の長い指導、フィードバック(直しを返すこと)のついた指導、そして「より制御された測り方」で測ったとき
「制御された測り方」が具体的に何を指すかは、要約には書かれていません。
2019年には、Kazuya Saito と Luke Plonsky が、1982年から2017年の77件の研究を、測り方の種類ごとに分けて調べ直しました(Language Learning 69巻3号)。要約によると、結果はこうです。
- ・効果がはっきりしていたのは、特定の音(個々の母音や子音、強さや抑揚)を、意識して発音させて測ったとき
- ・自由に話させて、人が全体の印象を採点する測り方では、効果は「比較的はっきりしない」とされた
注意点が2つあります。
1つ目。ここで紹介した数字は、どちらも論文の要約に書かれたものです。本文は読めていません。中学・高校の生徒が何件含まれていたか、日本語を母語とする生徒の結果がどうだったかは、要約からは分かりません。
2つ目。2015年の分析は、期間の長い指導のほうが効果が大きいと報告しています。1回の指導で何が変わるかは、この分析からは言えません。
教室への結論は、次のとおりです。発音は教えてよい。ただし、音を1つに絞り、直しを返しながら、期間をかけて続けます。自由に話す場面で伸びたかどうかは、いまの時点ではっきり言えません。
明日の授業でやること|次の2週間、毎時間3分、1つの音だけを練習して、直しを返す
- クラスの生徒が間違えやすい音を、1つだけ選びます。たとえば、th の音です
- 毎時間の最初の3分を使い、その音が入った語を5つ、先生のあとについて言わせます。先生が口の形を見せてから、声を出させます
- 生徒が言ったあと、先生か隣の人が「聞こえた語」を言います。伝わっていれば「伝わった」と言い、違って聞こえたら、もう一度言わせます
- 2週間後、教科書の音読で、その音が入った語を何語、聞き取れる形で読めたか、ペアで数えてメモに残します。結果を見て、続けるか、次の音に移るかを決めます
この号で触れたリンク
- リセマム|IIBC「英語で話す一歩を、もっと軽やかに。」プロジェクト始動
- Applied Linguistics|Lee, J., Jang, J., & Plonsky, L. (2015) The Effectiveness of Second Language Pronunciation Instruction: A Meta-Analysis
- Language Learning|Saito, K., & Plonsky, L. (2019) Effects of Second Language Pronunciation Teaching Revisited
- Microsoft サポート|Word の文書を読み上げで聞く
- Google ドキュメント ヘルプ|音声入力を使用して入力と編集を行う
- リセマム|TOEIC L&R、2027年2-3月に14受験地を追加し拡充
- ICT教育ニュース|GMOメディア、AI作問の「情報Ⅰ」デジタル模試を無料開催
- ICT教育ニュース|ロイロ、「教育と生成AI 大研修会2026」のレポートを公開
- ブリティッシュ・カウンシル|LearnEnglish Sounds Right
- TeachingEnglish|Phonemic chart for English teachers
- アイオワ大学|Sounds of Speech provides animated libraries of individual phonetic sounds(2014年)
- Forvo
- Wiktionary|pronounce
- Wiktionary|accent
- Project Gutenberg|Bernard Shaw, Pygmalion
今日の分析では、発音を教えた効果は大きいと報告されました。ただし、自由に話す場面での効果は、まだはっきりしていません。
明日は、クラスで間違えやすい音を1つだけ決めてください。次の2週間、毎時間3分、その音だけを練習して、直しを返します。
またあした。
Vol.72 10.20.2026
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よくある質問
英語の発音指導は、効果がありますか。
86件の研究報告をまとめた2015年の分析では、全体として効果は大きいと報告されました。効果量は、教えた組の前後の比較で0.89、教えなかった組との比較で0.80です。数字は論文の要約から確かめたものです。
どんな発音指導が効きやすいですか。
同じ分析では、期間の長い指導と、フィードバックのついた指導で、効果が大きく出ました。
自由に話すときの発音も、良くなりますか。
2019年の77件の分析の要約では、特定の音を意識して発音させる測り方では効果がはっきりし、自由な発話を人が全体の印象で採点する測り方では、比較的はっきりしないとされています。