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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
NEWSLETTER Vol.7 標準 読了 12分

中高英語教師のニュースレター Vol.7|まとめて練習は逆効果?

英語教育ニュースレター 第7号

学校でのスマホ禁止は、成績にはほとんど効果が無かったという4万校超の大規模調査。そして『同じ種類をまとめて練習するより、混ぜたほうが定着する』という、条件つきの研究結果まで。明日の授業にそのまま使える形でまとめました。

監修:原田高志(原田英語.com)

08.16.2026 Vol.7

おはようございます。今日いちばんお伝えしたいのは、「同じ種類の問題をまとめて練習するより、あえて混ぜたほうが定着する」という研究です。直感には反しますが、条件がはっきりしています。ほかに、学校のスマホ禁止は成績にほとんど効かなかったという大規模調査と、明日そのまま使える帯活動2本を。

TODAY'S PICK

学校のスマホ禁止、成績への効果は『ほぼゼロ』|4万校超の大規模調査

govtech.com(2026年5月)/Axios(2026年8月2日)

アメリカの複数の大学の研究チームが、2019年から2026年にかけて4万500校以上を調べました。施錠式のポーチでスマートフォンを預ける「スマホ禁止」の効果です。

GPSの記録と教員の観察の両方で確認したところ、日中の利用はGPS計測でおよそ30%、教員の観察ではおよそ80%減っていました。

ところが、標準化テストの点数への効果は、3年間を通してほぼゼロでした。高校の数学ではわずかにプラス、中学校ではわずかにマイナス。教科と学年で結果が割れています。

「スマホを禁止すれば成績が上がる」という期待は、この規模の調査では裏づけられませんでした。ただし、生徒の自己申告による満足度(wellness)は、導入1年目に落ち込んだあと、2年目以降に元の水準を上回っています。

論文は面白い指摘もしています。授業中に気が散る場面は減っても、教師が違反を取り締まる手間が増え、合計するとゼロになっている可能性がある。

禁止そのものより、違反への対応にどれだけ時間を取られているかを、まず自分の教室で振り返ってみてください。

WARM-UPS

今日の帯活動(5分でできる)

準備ゼロか黒板だけで回せる、5〜6分の帯活動2本です

きのうの単語ときょうの単語を、まぜて復習

対象 中1〜高校 時間 5分 準備 黒板のみ

  1. 前回の授業で扱った単語・表現と、今日扱う予定の単語・表現を、黒板に1つの列としてランダムに混ぜて書く
  2. 1人ずつ順に指名し、黒板の単語を1つ選んで英文を作らせる
  3. 『きのうの分』か『きょうの分』かを意識させず、順番もランダムにする
  4. 全員が1回ずつ答えるまで、テンポよく続ける
  • 💡 種類ごとにまとめず、あえて混ぜて出す。これが、最後の「常識がひっくり返る話」で紹介する交互練習そのものです。

2つの文法、交互に当てるクイズ

対象 中1〜高校 時間 6分 準備 問題を書いたメモ数枚

  1. 直近で習った文法項目を2つ選ぶ(例:現在完了と過去形)
  2. それぞれの文法を使う英文の空所問題を、3問ずつ交互の順番で用意する
  3. 順番のとおりに1問ずつ出題し、生徒に『どちらの文法か』を答えさせてから解かせる
  4. 答え合わせのたびに、2つの文法の見分け方を一言で確認する
  • 💡 同じ文法をまとめて出すより、交互に出すほうが『見分ける力』まで鍛えられます。

CLASSROOM ENGLISH

そのまま使える教室英語

そのまま使える教室英語、5本です

新しい話題に移るとき

Let's switch gears for a moment.

ここでちょっと話題を変えましょう。

授業の切り替えを、生徒にやわらかく伝える定番表現です。

生徒の答えが半分正解のとき

You're halfway there — what's missing?

半分は合ってるよ。足りないのは何だろう?

不正解と決めつけず、次の一歩を促す言い方です。

じっくり考える時間を作りたいとき

Let's sit with this question for a bit.

この問題は、少し時間をかけて考えてみましょう。

急かさず考えさせる合図になる表現です。

前回の内容を思い出させたいとき

Does this remind you of something we did last week?

これ、先週やったことと似てない?

新旧の内容をつなげる問いかけです。

授業の最後に、今日のまとめをさせたいとき

In one sentence, what did we practice today?

今日練習したことを、一文でまとめてみて。

締めくくりに使う簡潔な振り返りの一言です。

AI TOOLKIT

AI × 英語指導

教師向け1つ、生徒向け1つ

教師向けTwee

英語教師向けのAI教材作成ツールです。トピックを入力するだけで、読解用の英文、内容確認問題、ディクトグロス用の音声原稿などを、レベル別に自動生成してくれます。

使いどころ:🎓 Reading passage generator機能に、扱いたい語彙レベル(CEFR)とテーマを入力すると、そのレベルに合わせた英文と設問一式が数十秒で出力されます。

生徒向けDuolingo Max(AIロールプレイ機能)

Duolingoの上位プランに搭載されているAI機能で、買い物や道案内などの場面を想定した会話を、AI相手に練習できます。答えたあとに『もっと自然な言い方』を提案してくれる点が特徴です。

使いどころ:🎓 Roleplay機能でシーンを選び、AI相手に3〜4往復の会話を行わせたあと、Review機能で自分の発話のどこが不自然だったかを確認させると効果的です。

NEWS FLASH

今日のニュース

教室にそのまま持ち込める、英語教育まわりのニュース3本です

JAPAN · 共通テスト2026

大学入学共通テスト2026、英語リーディング・リスニングはおよそ120点で横ばい

2026年の大学入学共通テストの英語(リーディング・リスニング)は、平均点がおよそ120点(200点満点)前後でした。前年からの落ち込みからは、やや持ち直しています。ただし2022年の121.3点は、依然として下回る水準です。

JAPAN · 2025.10〜

Duolingo英語テスト、MEXTと提携し現職の英語教員に75%割引を提供

Duolingo英語テスト(DET)が日本の文部科学省と提携しました。対象となる小中高の英語教員は、通常より75%安い17米ドルで受験できます。

教員自身の英語運用力を、オンラインで手軽に確かめられる機会が増えました。

GLOBAL · AI採点

AI採点ツールCoGraderの利用者数、教員5万人・学校1,000校超に

英作文の採点を支援するAIツール CoGrader が、2026年4月時点で50,000人以上の教員、1,000校以上に使われていると発表しました。運営会社は、採点時間を最大80%短縮できるとしています。

ただしこれは自社発表の数字で、第三者機関の検証ではありません。

FREE TOOLS

無料の学習ツール4選

今号のテーマは「文章の難易度を測る無料ツール」です

CEFRLookup

単語を1つ入力するだけで、その語のCEFRレベル(A1〜C2)を判定してくれる無料サイトです。教材に出てくる語彙が生徒の学年に合っているか、その場で確認できます。

VocabKitchen

英文をまるごと貼り付けると、単語ごとにCEFRレベルで色分けして表示してくれる無料サイトです。どの語を事前に教えておくべきかが、ひと目で分かります。

Text Inspector

文章の語彙・文法・読みやすさを総合的に分析できる無料の英文解析ツールです。読解教材だけでなく、リスニングやライティングの教材づくりにも使えます。

WebFX Readability Test Tool

英文を貼り付けると、Flesch-Kincaidなど複数の指標で読みやすさのスコアと対象学年を計算してくれる無料ツールです。教材の難易度を数値で確認したいときに便利です。

STORY BREAK

生徒に話したくなる小ネタ

生徒に話したくなる小ネタ、2本です

英単語のおよそ3割は、1066年のある戦いから来ている

1066年、ノルマン人がイングランドを征服しました。これをきっかけに、その後の数百年でフランス語の単語が大量に英語へ流れ込みます。いまの英語の語彙の、およそ30%がフランス語起源だと見積もられています。

面白いのは、同じ動物でも「生きている状態」と「料理された状態」で語が変わることです。牛は生きていれば cow(古英語系)、肉になれば beef(フランス語系)。豚は pig と pork、羊は sheep と mutton。

育てていたのは英語を話す農民、食べていたのはフランス語を話す支配層でした。その歴史が、そのまま語彙に残っています。

字幕をつけて動画を見るだけで、語彙が定着しやすくなる

外国語の動画を見るとき、字幕をつけるかどうかで語彙の定着に差が出ます。複数の研究が報告しており、あるメタ分析では中程度の効果、別の分析ではさらに大きな効果が確認されました。

しかも、日本語字幕より英語の字幕のほうが、語彙学習への効果が高いとされています。映画を見せる授業で英語字幕を選ぶ理由が、ここにあります。

QUOTE

今日の名言

今日の名言

“What we can observe is performance, but what we have to infer is learning, and that makes us subject to possible illusions of comprehension.”

私たちが観察できるのは『できているように見えること(パフォーマンス)』にすぎず、実際に推し量らなければならないのは『学習そのもの』だ。そのせいで、私たちは『分かった気になっている』という錯覚に陥りやすい。

ロバート・ビョーク(心理学者、UCLA名誉教授)

「よく分かった」という手応えと、「本当に身についた」は別物だ。そういう指摘です。

最後の「常識がひっくり返る話」で紹介する交互練習も、まさにこのズレを使います。練習中の手応えは悪くなるのに、あとから振り返ると定着している。

THE FLIP

常識がひっくり返る話

同じ種類をまとめて練習するほど、実は身につきにくい

文法や単語を練習させるとき、多くの授業は「今日は現在完了だけ」「今週は不規則動詞だけ」と、同じ種類の問題をまとめて練習させます。理由は単純です。そのほうが正答率が上がり、教える側も「定着した」という手応えを得られます。

この進め方は、ほとんど疑われないまま、多くの教室で標準になっています。

ところが

ところが認知心理学では、逆の結果が繰り返し報告されています。同じ種類をまとめる(block practice)より、複数の種類を混ぜる(interleaving)ほうが、時間が経ったあとの定着率が高い。ロマンス諸語の動詞の時制を扱った研究では、似た時制どうしだけでなく、まったく違う時制を混ぜても効果が出ました。

ただし、話はそこで終わりません。

2025年、学習に苦戦しがちな中高生を対象にした研究(Hwang, 2025, Language Learning 誌)です。いきなり交互練習だけを行ったグループは、むしろ定着で苦戦しました。うまくいったのは、最初にまとめて練習して基礎を作り、あとで交互練習に切り替えたグループです。

交互練習は、練習中の難しさをわざと増やす手法です。土台となる知識が無い状態でやると、難しすぎて逆に効きません。

「混ぜて練習させたほうがいい」は正しい方向です。ただし、誰にでも・いつでも当てはまる話ではありません。

新しい文法や単語を導入するときは、これまでどおりまとめて練習させて土台を作る。混ぜるのは、そのあとの復習とテスト対策から。順番さえ守れば、無理なく持ち込めます。

明日の授業でやること|明日の授業でやること

  1. 新出の文法・単語は、これまでどおりまとめて練習させて土台を作る
  2. 復習用のプリントや小テストでは、単元ごとに分けず、直近2〜3単元の問題をあえて混ぜて出題する
  3. 帯活動の中に、きのう習った内容と今日の内容を交互に当てる時間を1つ入れる(→帯活動①)
  4. 生徒には『今日は正答率が下がって見えるかもしれないが、そのほうが後で残る』と一言伝えておく

この号で触れたリンク

「まとめて練習」か「混ぜて練習」か。正解が1つに決まる話ではありませんでした。順番を間違えなければ、両方とも味方になります。

2学期が本格的に始まる時期です。今日の1つでも、明日の教室に持ち込んでいただけたら嬉しいです。

またあした。

Vol.7 08.16.2026